内野 潤

内野 潤

JUN UCHINO

ビジネスエンジニアリング事業本部 エネルギービジネス第3統括部 GXソリューション部 / マネジャー

地球温暖化や気候変動といった社会課題を受けて「脱炭素」の取り組み(GX:グリーントランスフォーメーション)を推進したい企業や自治体に対し、国際的なルールなど脱炭素経営に必要な専門知識の提供や人的・プロセス支援を行う部署に従事。脱炭素経営支援を通して、最終的に企業価値の向上に貢献することを目標としている。

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経歴・専門領域

2017年6月からの約5年間、環境省委託事業の受託企業先である大手シンクタンクに常駐し、民間企業に対する脱炭素経営支援業務に従事。グローバルスタンダードに基づく排出量の算定支援や削減目標設定のコンサルティング、国際イニシアチブに関する調査業務などを担当した。2022年10月よりGXソリューション部へ異動し、民間企業に対する脱炭素経営のコンサルティングやサービス支援に関わる。

実績

これまで40ほどの企業でGXを支援。脱炭素経営を推進する企業の課題に対して、排出量の算定支援や、削減目標の策定および削減計画の作成などのコンサルティングサービスを提供してきた。コンサルティング支援に加え、プライム企業の役員や管理職100名以上を対象としたカーボンニュートラル研修や、脱炭素化推進に関する対外セミナー・講演などを実施している。

保有資格・受賞

「LCAエキスパート」の認定をはじめとし、「LCAF:初級検定試験」「家庭の省エネエキスパート検定」「ITIL Foundation Certification」など複数の資格を保有。

「お客様が適切な目標を立てられるように」を意識した伴走支援

インタビューイメージ

GX(グリーントランスフォーメーション)とは、温室効果ガス(Green House Gas:以下GHG)の排出削減プロセスを通して経済社会システムの抜本的変革を目指す考え方のこと。ESG投資などへの関心が高まる中で、GXに積極的に取り組む企業が増えています。今回は、「環境保全と企業成長の両立」に日々向き合っている脱炭素のスペシャリストにお話を伺いました。

――GX領域で、どのような支援をされているのでしょうか?

内野:GHG排出量算定コンサルティングでは、国際的なルールに則って企業の排出量を算定しています。ルール自体は日本語化されているのですが、計算方法が細かく、ガイドラインには抽象的な内容も多いため、お客様自身でゼロから算定するのは体制の確保や専門知識のインプットの面であまり現実的ではありません。そのため私たちが解釈の仕方や算定するためのデータ抽出方法・ロジックなどを整理し、お客様自身で算定できるプロセスを構築しています。

排出量削減目標の設定についても、国際的に求められている基準の解釈は複雑です。お客様が適切な削減目標を立てられるように、関連する情報のリサーチと目標設定に関するコンサルティングを行っています。

――GXへの注目度が高まるにつれて、お客様の意識も変化してきているのでしょうか?

内野:脱炭素に関する情報自体や、私たちのような脱炭素の実行支援に関するサービスを提供する事業者が増えたことで、お客様の理解は深まっているように感じます。しかし、プロジェクトを主導できる脱炭素の専門家は少なく、社内に専任のスタッフを配置するのは困難という企業が現時点では多いかもしれません。

――GXを実行する難しさはどのようなところにありますか?

内野:サプライチェーンのグローバル化が進んだことにより、近年では排出量の算定や目標設定の難易度が高まっています。製造業であれば原材料が多いほど収集しなければならないデータが増えますし、海外に拠点があれば各拠点から同じ項目のデータを集める必要があるからです。

「脱炭素経営」という言葉の浸透や情報開示の流れが強まる中、自社で算出して間違った情報を開示することは企業のリスクにつながる恐れもあります。そういった課題や懸念に対し、専門的な知見を有する私たちが支援することによって、お客様が円滑に安心して脱炭素経営を進められると考えています。

脱炭素経営の推進により「企業価値が向上した姿」を明確に示すことが重要

――業務において、今最も注力していることは何ですか?

内野:私たちの支援によって、どれだけお客様の企業価値が高まったのか、その実態を可視化できる仕組みの構築に取り組んでいます。GHG排出量を削減しても直接的に財務状況につながるわけではなく、排出量を算定しても受注金額が増えたり株価が上がったりするわけでもありません。脱炭素の意識が強くなり過ぎて、「脱炭素活動に取り組んだ結果、利益がまったく出ませんでした」となってはそれこそ本末転倒です。

重要なのは、脱炭素の取り組みがその企業の経営に利すること。「脱炭素経営」という言葉にあるように、各企業においては脱炭素の推進によって企業価値を高めることが重要です。しかし、実際の相談でも「必要性は感じているが、なぜ自社として脱炭素に取り組まないといけないのか」など、明確な目的や意義を見出せていない企業は少なくありません。「脱炭素推進後の景色が見えていない」「事業価値とどう紐づけていくかが不明瞭」という状況では、企業価値を高めるところまでプロジェクトを持っていくことは難しいでしょう。

――では、企業価値を高めるには何が必要なのでしょうか?

内野:「成果」にあたる部分を説明することが重要だと考えます。適切な算定方法やデータ取得のプロセスを構築するのはもちろん、私たちのサービスを通してお客様の業務プロセスにどのような変革が起こるのか、どのようなロジックで企業価値の向上につながるのかを明確に示していきたいですね。より高いレベルでそれができれば、パーソルグループが日本におけるGXをリードできる存在になれると思っています。

「お客様よりもお客様のことを考える人」でありたい

――お客様に提供していきたい価値について教えてください。

内野:ただ課題解決に応えるだけではなく、「お客様よりもお客様のことを考える人」になって、持続的に企業の成長を支援できる関係性を作っていくことが重要です。私は表面的な会話だけで判断するのではなく、言葉の裏に隠れている「本当にお客様に必要なこと」を突き詰めて考えるようにしています。事業内容や企業規模によってお客様が感じる課題は異なり、お客様がお客様自身を見つめ直すことには限界もある。だからこそ、本当にためになると思えば、求めているものと違う手段を提案することもありますね。

私たちの知見を活かし、お客様からも「自社のことを深く考えてくれる人だ」と思ってもらえるように取り組んでいきます。

――今後、自身の業務や役割とはどのように向き合っていきたいですか?

内野:私はマネジャー職にありますが、できるだけ現場でのコンサルティング業務には携わっていたいですね。お客様との対話の中からしか感じ取れない「真のニーズ」がありますし、現場の経験があるからこそ新しい仕組み作りが可能だと思うからです。個別の課題に対するコンサルティングも多いですが、私たちの仕事はプロセスをデザインすること。豊富な経験と深い知見を活かして、より多くのお客様に適用できる仕組み作りを実現したいですね。

脱炭素の業界は移り変わりが早く、情報をキャッチアップし続けないとすぐに置いていかれてしまいます。しかし、それは裏を返せば「知識があればあるほどお客様に価値を提供できる」とも言えます。私自身、「知りたい」「成長したい」という欲求が強いので、この個性も活かしながら最前線でお客様の価値創出に貢献していきたいです。