健康を未来へつなぐ糖尿病予防のアプローチ
健康を未来へつなぐ糖尿病予防のアプローチ
企業にとって、社員の健康管理は円滑な業務遂行のために欠かすことのできない要素であり、福利厚生の重要な一部となっています。しかし、サイレントキラーとも呼ばれる糖尿病は、意識障害や神経障害、昏睡、網膜症、腎不全など多くの合併症を引き起こす危険な病気でありながら自覚症状に乏しく、重篤化してから発見されるケースが少なくありません。反面、適切な食事や運動といった生活習慣の改善によって、本人の意思で予防可能な病気でもあるため、健康管理の担当者には、社員と糖尿病予防の知識を共有し、適切なサポートを提供することが求められます。今回は、管理栄養士としての豊富な経験を元に、熱意を持ってクライアント企業に糖尿病予防のため指導業務を行なっているスペシャリストに、その思いをお聞きしました。
ーー得意分野を教えてください。
大久保:私は、前職で糖尿病専門のクリニックに所属していたときから、合併症リスクが高い患者様に対し、医師や看護師と連携しながら対面での栄養指導を実施してきました。特に企業の従業員の健康管理を担っている人事部から、健康診断で血糖値が高めの従業員への栄養指導を依頼されてきた経緯もあり、パーソルビジネスプロセスデザインでも、管理栄養士として糖尿病領域に特化した指導業務を行っています。特に、糖尿病の予防と進行を防ぐための栄養指導に力を入れており、単に数値の改善を目指すだけでなく、患者様一人ひとりのQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を高めることを重視し、彼らがその人らしい人生を送れるようにサポートしていることが私の大きな誇りです。
また、クリニック時代から、糖尿病予防には、単に指導を行うだけでなく、患者様の生活背景やメンタル面にも配慮することが重要だと感じていました。クリニックに来られる糖尿病患者様は、多くの場合、自覚できる症状が出たときにはすでに病状がかなり進行しています。そのため治療に対する不安やストレスも大きく、そうした患者様に寄り添い、希望を持って治療に臨んでもらえるように、医療チームと協力して最適なサポート体制を構築していました。このような経験が、現在の私の特定保険指導や今後の重症化予防サービスにも大きく役立っています。
ーーどのような課題を持ったお客様が多いですか?
大久保:私たちがサービスを提供している企業で指導を受けられる方々の多くは、糖尿病などの生活習慣病に対して漠然とした不安を抱えています。特に健康診断の結果で血糖値の異常を指摘されても、まだ自覚症状がないために、気にはされても放置してしまうケースが多く見られるのです。先にも触れたように、そうした方々は、症状が出たときには病状が進行しており、治療に多くの時間やお金がかかる状況に陥ってしまうことが少なくなく、企業にとっても人的リソースの大きな損失につながりかねません。
私たちのサービスでは、健康診断の結果を早期に把握し、その時点で対策を講じることを目指しています。具体的には、特定保険指導を通じて、食生活の見直しや運動習慣の改善をサポートし、糖尿病の進行を防ぐことが目的です。そうすることで、企業は貴重な人材を失わずに済み、ご本人にとっても健康維持を通じて将来的な医療費を削減できるという大きなメリットがあります。そして、重症化を防ぐことで精神的な不安が軽減される点も重要です。
ーー早期発見を重視する観点から独自の取り組みはありますか?
大久保:はい、健康診断の結果を元にした面談だけでなく、リアルタイムで血糖値を測定できるデバイス「リブレ」を活用したモニタリングも行っており、この点が、他の糖尿病予防サービスと大きく異なるポイントだと考えています。「リブレ」によって、指導対象者が日々の生活の中で食事や運動が血糖値にどのような影響を与えているかを、視覚的に把握できる仕組みを提供しているからです。このように、予防医療の視点から健康管理を多面的に支援することが大切であると捉え、生活習慣病のリスクを減らしていく取り組みを行っています。
テクノロジーの活用と人間らしいサポートの両立を目指して
テクノロジーの活用と人間らしいサポートの両立を目指して
ーー最新のテクノロジーも有効に使っていくということですね。
大久保:はい、テクノロジーの進化は、健康管理において非常に大きな役割を果たしています。「リブレ」のほかにも、自宅での継続的な健康管理を支援するために、YouTubeを利用した運動指導動画の提供を行っていることも、その1つです。動画をご自身でご覧になり、ご自宅で取り組んでいただくことで、適切な運動ができるようになっています。
将来的には、個別の健康データに基づいてパーソナライズされた指導を強化していくためにも、さらにDXを進め、ITを活用していく予定ですが、テクノロジーの活用には慎重なアプローチも必要です。たとえば、すべての方がすぐに最新のデバイスやシステムを受け入れられるわけではありません。そのため、初めて使用する方への丁寧な説明やサポートを行うことが必要です。最終的な目的は、あくまでも指導対象者の健康を維持・改善することであり、テクノロジーはあくまで手段に過ぎませんから、人間らしい温かいサポートとのバランスが重要だと考えています。
ーー指導対象者と向き合う際に心がけていることはありますか?
大久保:そうですね、まずは信頼関係を構築することを最も大切にしています。糖尿病やその予防に関しては、多くの対象者が「自分の健康状態が思わしくない」と感じているものの、どう対処すれば良いのか分からず、それが不安につながっているのです。そのため、最初の面談では、ご本人のお話をじっくりと伺い、彼らのライフスタイルや考え方に合った指導を心がけています。
特に、生活習慣の改善を促す際には、無理な制限を課すのではなく、少しの工夫や意識の変化で大きな効果が得られることを伝えるようにしています。たとえば、食事の摂り方やタイミングを少し見直すだけでも血糖値の安定につながるというようなアドバイスです。このように、指導対象者が前向きに取り組めるような助言によって、彼らのモチベーションを高めることを意識しています。
また、指導を行う際には、常に対象者の立場に立って考えることが重要だと感じています。ご本人が「自分の健康を管理できる」という自信を持ってもらえるように、一人ひとりに寄り添ったサポートを提供することが、長期的な成果につながるからです。時には指導対象者からのフィードバックを受けて、指導内容を調整することもありますが、その場合でも、常にご本人にとって最良の選択肢を提供できるよう努めています。
血糖値改善の先にある健康生活の促進
血糖値改善の先にある健康生活の促進
お客様に提供していきたい価値について教えてください。
大久保:私たちのサービスは、単に血糖値などの数値を改善することが目的ではなく、クライアント企業の社員の皆様が継続的に健康な生活を維持できるようサポートすることにあります。糖尿病は生活習慣の改善によって予防できる病気です。そのため、ご自身で自分の健康を積極的に管理できるよう、継続的なサポートを提供することに価値があると考えています。
その意味では、日常的に血糖値を把握できる「リブレ」も、大きな価値の提供につながるでしょう。生活の中での小さな変化がどのように血糖値に影響を与えるかを理解していただければ、改善するための意欲も高まります。その観点からも、一人ひとりのライフスタイルや仕事の環境に合わせて、きめ細かな個別のアドバイスを提供することを実践しているのです。
今後、自身の業務や役割を企業の課題解決にどう活かしていきたいですか?
大久保:現在はクライアント企業に対して特定保険指導や重症化予防サービスの提供に力を入れていますが、今後はさらに多角的なアプローチを取り入れていきたいと考えています。実は昨年度までの特定保険指導業務に対する国の方針は、対象者の方に参加していただくことが大きな目的となっておりました。それが、今年からは、体重や腹囲が減少しているという結果をしっかり出すことが求められるように変更されたのです。そのため、数値の改善はもちろんですが、それ以外にも指導対象者のニーズや健康状態を素早く的確にキャッチして対処することが重要で、それが従事している組織にとってのメリットにもなります。糖尿病予防に限らず、心身両面での健康維持をサポートするために、これまで以上にクライアント企業とのコミュニケーションを密にしていくと共に、チーム内での連携を強化し、より広範な支援ができる体制を整えていきたいですね。
そして、さらに視野を広げると、企業で働くすべての人たちの健康への貢献が、ひいては国全体の医療費の削減にもつながっていけたら素晴らしいと思います。いずれにしても、まずはクライアント企業の社員の皆様が健康で仕事に取り組むことができ、豊かな生活を送れるよう、私たちの提供する価値をさらに高めていくことが大きな目標です。