半構造化面接とは?
前述した通り、半構造化面接とは、構造化面接と非構造化面接の中間に位置する面接方法です。両者の特徴を併せ持っており、事前に決めていた質問を実施したあとに候補者に応じて面接官が自由に質問を行います。
構造化面接よりも柔軟なコミュニケーションを取りやすく、非構造化面接より評価基準を設けやすいのが特徴といえるでしょう。また、事前に聞く質問を用意しておくことで、面接をスムーズに行いやすく、候補者の中立性を保ちやすい特徴もあります。
半構造化面接と構造化面接・非構造化面接の違い
半構造化面接と構造化面接・非構造化面接の違い
では、半構造化面接が構造化面接や非構造化面接と異なる点はどこなのでしょうか。半構造化面接をより理解しやすくするため、構造化面接・非構造化面接と違う点について解説しましょう。
違いを知るためには、構造化面接・非構造化面接の特徴も知っておくことで、より理解が深まります。ですので、まずは各面接方法の特徴について紹介していきます。特徴と違いを理解して、ご自身の組織に適した面接方法を選択するための判断材料にしてください。
2-1. 構造化面接とは
2-1. 構造化面接とは
構造化面接は、事前に決めた質問項目や評価基準に基づき、面接を行う方法です。質問項目・順番がすべて統一されており、評価基準も定まっているので、候補者を一定の水準で評価できるのが特徴です。
しかし、面接官が自由に質問することはできませんので、候補者の人間性や能力を見逃してしまう可能性もあります。採用面接の時間を短縮したい場合や、面接後の評価にばらつきが出やすい企業におすすめの方法といえるでしょう。
2-2. 非構造化面接とは
2-2. 非構造化面接とは
非構造化面接は、事前に決めた質問をするのではなく、面接官が候補者に自由に質問を行う方法です。候補者の回答や反応・表情に応じて、面接官が柔軟に質問できますので、人間性や能力など適性を理解しやすいのが特徴です。
しかし、非構造化面接は、評価に一定の基準を設けられませんので、面接官の経験などによって採用の質が変化する可能性があります。面接官の経験値が高く、候補者と密にコミュニケーションを取りながら面接を進めたい企業におすすめの方法といえるでしょう。
各面接の特徴と評価基準を下表にまとめてみました。
面接方法 | 面接の特徴と評価基準 |
---|---|
構造化面接 | 特徴:候補者全員に同様の質問を決まった順番で行う 評価基準:事前に決められている評価基準に基づいて判断する |
半構造化面接 | 特徴:候補者全員に同様の質問を実施後、面接官が個別の質問を行う 評価基準:事前に決めた評価基準と面接官の判断の両方で判断する |
非構造化面接 | 特徴:面接官が候補者に自由に質問を行う 評価基準:一定の評価基準がなく、面接官が独自で判断する |
この表を見ても、半構造化面接が構造化面接と非構造化面接の中間に位置する面接方法であることがよく分かるかと思います。
半構造化面接のメリット
では次に、半構造化面接のメリットを見ていきましょう。ここでは3つを挙げて解説していきます。
メリット(1)面接官を誰がやっても一定の情報は得られる
メリット(1)面接官を誰がやっても一定の情報は得られる
半構造化面接は、基本的に決めておいた質問項目や採用基準に沿って面接を進めていきます。つまり、共通している質問に関しては、面接官を誰がやっても一定の情報が得られます。
すべて自由質問である非構造化面接の場合には、一定の情報が得られるかどうかは面接官に左右されてしまうでしょう。そういったリスクがなく、自社に欠かせない能力を見極める質問を共通の質問にしておけば、採用の可否に必要な一定の情報は得られるのです。
また、構造化面接のように、すべての質問項目やフローをきっちりと用意しておく必要もないため、非常に効率的な面接を展開できます。
メリット(2)必要に応じて掘り下げることができる
メリット(2)必要に応じて掘り下げることができる
決められた質問だけでなく、求職者の回答に応じて必要となれば質問をして掘り下げられることも半構造化面接のメリットでしょう。質問する内容によって、求職者の思考や価値観などを深く理解する機会になります。
例えば、単に「担当していたプロジェクトが終了しました」といった回答をされたとしても、それだけでは事実しか分かりません。その回答に対して「その時に、どのような行動を取りましたか?」「何を感じましたか?」と追加で質問することで、その人の思考が垣間見えるのです。
そうすることで、より深く評価することが可能になり、求職者を見極める精度を高められるでしょう。
メリット(3)公平性と自由度を兼ね備えている
メリット(3)公平性と自由度を兼ね備えている
前述の通り、構造化面接が持つ「評価の公平性」と非構造化面接の「自由度」を兼ね備えているのが半構造化面接の大きなメリットです。
すべての求職者に共通する質問があることで評価の公平性を保ちつつ、面接官の判断により自由度の高い対応が可能となります。それにより、偏りは少ないながらも的確に人材を見極めることができるのです。
半構造化面接のデメリット
半構造化には、もちろんデメリットもあります。ここでは2つを挙げて解説していきます。
デメリット(1)事前の準備に大きな労力が掛かる
デメリット(1)事前の準備に大きな労力が掛かる
構造化面接と半構造化面接では、決められた共通の質問をするため、あらかじめ質問項目や評価基準を用意する必要があります。特に、初めて半構造化面接を実施しようとする場合には大きな労力が掛かることになるでしょう。
時間を優先して質問項目や評価基準を曖昧なまま設定してしまうと、成果の出ない面接や採用ミスマッチのリスクが高まってしまいます。
採用に効果的な質問や評価基準を定めるには、自社のビジョンや社風、求める人材像などを明確にしていく必要があります。しかし、日々の業務のなかでそういった取り組みの時間を確保できるかどうかは大きな課題点といえるでしょう。
デメリット(2)面接官によるばらつきが発生する
デメリット(2)面接官によるばらつきが発生する
非構造化面接と半構造化面接では、面接官の判断で質問を追加して深掘りします。そこで得られた回答から評価しますので、面接官によって評価のばらつきが生じてしまう可能性があります。
質問を追加しなかった、深掘りが足りなかった、などの理由から十分な見極めの材料が得られない可能性もあるのです。そうすると求職者にとっては不利な評価になっていまい、公平性が欠けてしまいます。
それによりミスマッチにつながってしまうだけでなく、優秀な人材を見逃してしまうことにもなる恐れがありますので注意が必要です。
半構造化面接が向いている企業とは
「うちの会社では半構造化面接を導入すべきなのか?」と迷っている人事部の方も多いのではないでしょうか。そこで、続いては“半構造化面接が向いている企業の特徴”について2つを挙げて解説します。
5-1. 面接フローの構築に時間を掛けられない企業
構造化面接には「質問項目や評価基準が定まっている」というメリットもありますが、「面接フローの構築に時間が掛かる」というデメリットもあります。
一方で、半構造化面接は構造化面接ほど作り込みませんので、あまり時間を割けない企業に向いているといえるでしょう。共通の質問をいくつか設定したら、その他は各面接官の自由質問に任せる形で問題ないからです。
構造化面接ほどの時間や労力は掛かりませんので、リソースを確保することが難しい企業にとっては実現しやすい形式といえるでしょう。
5-2. 自由質問も実施して人材を見極めたい企業
構造化面接を実施して同じような回答が続いてしまった場合、魅力的な個性やポテンシャルを見逃してしまう可能性も拭えません。募集する職種によっては、求職者の非言語的な動作や醸し出す雰囲気を重視しなければならない場合もあるでしょう。
半構造化面接であれば自由質問も実施しますので、求職者の人柄や雰囲気、価値観なども考慮することができます。
決められた質問で評価に必要な一定の情報は得ながらも、自由質問を通じて自社にフィットした人材を丁寧に見極めたい企業に向いています。
半構造化面接の流れ
半構造化面接の特徴や向いている企業が分かっても、流れを理解しなければ適切な面接が行えません。続いては、半構造化面接の流れを5ステップで紹介します。
STEP(1)自社が求める人物像を明確にして、採用条件を定める
STEP(1)自社が求める人物像を明確にして、採用条件を定める
まずは、自社が必要とする人物像を決めて、採用条件を定めましょう。人物像を明確にすると、適切な評価を行うための条件を設定しやすくなります。
例えば、人物像には「募集職種に合う人柄」や「自社のポリシーに合う価値観」「求める能力やスキル」などがあります。複数の職種で募集をする場合、業務内容によって求める人物像が変わる可能性もありますので、職種ごとに人物像を定めると良いでしょう。
また、採用条件を定める際は、厚生労働省から出されている「採用選考時に配慮すべき事項」や「公正な採用選考の基本」を確認し、しっかりと国の基準を守った採用活動をするようにしましょう。
STEP(2)評価項目や基準を定める
STEP(2)評価項目や基準を定める
続いて、採用する際の評価項目や基準を定めます。評価項目や基準を定めることで判断材料ができますので、面接官ごとの評価のばらつきを防ぎやすくなります。評価項目や基準は、募集職種の求める人物像や採用条件を基に設定しましょう。
STEP(3)共通の質問項目を確定させる
STEP(3)共通の質問項目を確定させる
評価項目や基準が決まったら、共通の質問項目を考えましょう。共通の質問項目を定めることで、誰が面接を実施しても採用に最低限必要な情報を得られることになります。
共通の質問は、抜け落ちを防ぐために質問リストを作成しておくと良いでしょう。また、質問ごとに目的や聞き出したい内容をまとめておくと、追加質問による深掘りができるはずです。
STEP(4)テスト面接を面接官で実施する
STEP(4)テスト面接を面接官で実施する
共通質問のリスト化ができたら、テスト面接を面接官同士で実施してみましょう。面接官のみでテスト面接を実施することで、半構造化面接の進め方を理解することができます。
また、テスト面接を実施する際は、実際に候補者に面接する時と同様の流れで進行させ、フィードバックを行いましょう。実際の流れと同様に実施すると、改善点を知ることができたり、追加質問の質を向上できたりします。面接官の評価基準を再度共有できるきっかけにもなりますので、テスト面接は重要なのです。
STEP(5)候補者に面接・評価を行う
STEP(5)候補者に面接・評価を行う
テスト面接で半構造化面接の進め方を共有し、評価項目や基準も共有できたら、実際に採用面接を実施します。テスト面接のフィードバックや追加質問による深掘りの内容を意識して、候補者に面接を行いましょう。
面接の実施後、STEP(1)/(2)で決めた採用条件や評価基準に基づいて候補者の適性を判断していきます。
半構造化面接での質問例
半構造化面接での質問は、候補者共通の質問と候補者個別の質問の2種類に分けられます。ここでは、具体的な質問例をいくつか紹介しましょう。
7-1. 候補者共通の質問
7-1. 候補者共通の質問
候補者共通の質問は、採用に必要な情報を聞くのが目的です。そのため、候補者の基本情報や志望動機、能力面の情報を得る質問が多い傾向にあります。
また、候補者共通の質問は構造化面接と同一の構成です。構造化面接は、主に「候補者の過去を知るための質問」「仮説状況の行動を知るための質問」の2つの視点から質問を行います。
それぞれの質問例は以下の通りです。
<候補者の過去を知るための質問例>
- 前職の業務内容および役職や役割を教えてください
- 前職で最も過酷な状況に直面したのはどのような内容でしたか
- 過酷な状況をどのように乗り越えましたか
- 前職で学んだことを教えてください
- 前職で目標達成のために実行したことと、成果がどのように出たかを教えてください
<候補者が仮説状況においてどのような行動をするか知るための質問例>
- 今後業務のなかで自身が特に苦手とする内容をお願いされた場合はどのように対処しますか
- もし、自分の部下が重大なミスをして顧客が求めていた期日に間に合わない可能性が出たら、あなたはどのように対応しますか
- もし、顧客や上司から条件的に厳しい依頼をされたらどのように対応しますか
自社の採用条件や評価項目によって適切な質問は変わりますので、候補者全員に聞くべき内容は何なのかを考えながら質問を選定しましょう。
7-2. 候補者個別の質問
7-2. 候補者個別の質問
候補者個別の質問は、共通の質問の回答を得たあとに行います。採用条件や評価項目に基づいて、面接官が詳しく知りたいと感じた内容について深堀りの質問を実施すると良いでしょう。
候補者個別の質問は、非構造化面接と同様に面接官が独自の判断で質問を考えます。候補者によって深掘りの内容は考えつつ、人間性やスキル面・履歴書の内容に関する部分を質問すると評価基準に基づいた判断が可能になります。
候補者個別の質問例は以下の通りです。
<候補者個別の質問例>
- 前職で〇〇のリーダーをされていたとのことですが、「一番大変だったこと」と「どのように乗り越えたのか」を教えてください
- 前職の〇〇職の経験を、今後弊社のどのような場面で活かせると考えていますか?理由とともに教えてください
- 部下が重大なミスをした場合、直属の上司に報告するとのことでしたが、そのように判断した理由を詳しく教えてください
個別の質問とはいえ、採用条件や評価項目・基準に基づくコミュニケーションを行いながら面接を実施しましょう。
半構造化面接の注意点
半構造化面接は、適切な準備や対策をしておかなければ効果を発揮できません。続いては、半構造化面接の注意点として2つを挙げて解説します。
注意点(1)自社で活躍している人材の特徴を把握する
注意点(1)自社で活躍している人材の特徴を把握する
半構造化面接は、自社の求める人物像を明確にして採用条件を設定します。人物像を明確にするには、自社で活躍している人材の行動特性を分析する必要があります。
分析を行ったうえで、「どのような行動特性を有した人材が必要か」「どれくらいのレベルを有した人材を採用したいか」を判断していくと良いでしょう。
注意点(2)面接官が公平に判断する力を養う
注意点(2)面接官が公平に判断する力を養う
個別の質問を実施する際は、公平に判断する力が必要です。候補者に対する偏見や先入観が入ってしまうと公平性に欠けますので、採用に影響を及ぼす可能性があるからです。また、偏見や先入観に左右されると、潜在的に評価基準も変わってしまう恐れがあります。
面接の質を下げないためにも、面接官が公平に判断する力を養うことが重要です。そのためにも、必要に応じて面接官のトレーニングを実施すると良いでしょう。
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本記事では半構造化面接について解説してきましたが、誰でもすぐにできるわけではありませんので、ある程度のトレーニングが必要になるでしょう。
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