RJP理論とは?4つの効果や具体的な実践方法、導入するメリットを解説

RJP理論とは?4つの効果や具体的な実践方法、導入するメリットを解説

「せっかく採用してもすぐ離職してしまう。どうすれば人材が定着するのだろう」

このように悩む採用担当者は多くいらっしゃるでしょう。入社後すぐに離職してしまう理由として「想像していた仕事ではなかった」「待遇や人間関係がよくなかった」という声を聞くことがあります。

採用のミスマッチが起こる原因としては、選考から入社前にかけて会社のネガティブな情報を知らされていなかった点が挙げられます。良い情報だけを受け取っていた場合、入社後に会社の実情を知ってショックを受け、離職につながってしまうのです。

このような採用のミスマッチを防止し、人材の定着率を上げるために注目されているのが「RJP理論」です。RJPとは「現実的な仕事情報の事前開示」と訳され、入社前の候補者に会社の良い情報だけでなく、重い課題も含めて伝えることを指します。

この記事では、そんなRJPの意味や注目されている理由、4つの効果や実践方法を解説します。RJPを採用活動に導入すると離職率の改善が期待できますので、ぜひ参考にしてください。

目次

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    RJP(Realistic Job Preview:現実的な仕事情報の事前開示)とは

    RJP(Realistic Job Preview)は「現実的な仕事情報の事前開示」と訳され、アメリカで1970年代に提唱された理論です。採用活動において、企業の良い部分のみを求職者に提示するのではなく、悪い部分も含めてありのままを開示することを指します。

    入社する前に企業の良し悪しを把握してもらい、人材定着を図ることがRJPの目的です。早期退職が多くの企業で課題となるなか、持続可能な組織づくりのためにRJP理論が注目されています。

    1-1. RJPに基づく採用とこれまでの採用方法の違い

    従来の採用方法とRJPに基づいた採用方法では、次のような違いがあります。

    採用方法比較

    従来の採用方法 RJPに基づく採用方法
    求人 主に良い情報を伝える 悪い情報も含めありのままを伝える
    選考 母集団を大きくすることを重視し、適合性は二の次にする 自社にフィットする人材に絞り、適合性を重視する
    入社後 離職につながる 人材定着につながる

    これまでの採用活動では、企業の魅力や働きがいを伝えて母集団形成をし、その中から候補者を選定していました。しかし、そのような採用方法で選ばれた人材が入社すると、現実とのギャップにショックを受けて早期離職に至ってしまうケースが多く生じていたのです。

    一方、RJPは、求人募集や選考段階から悪い情報を含めて候補者に伝えることを重要視しています。候補者はありのままを知ったうえで次の選考に進むか決定できるので、自社にフィットする人材のみが残ります。

    実際に働き始めて辛い出来事があったとしても、入社前にあらかじめ知らされていれば大きなショックはなく、企業と求職者にミスマッチが起こりにくくなる点が大きなメリットといえます。

    RJPが日本でも注目されている理由

    国内でも退職や転職に対するハードルが低くなるなか、入社後数ヶ月〜数年で離職する人が増加し、人材定着に課題を抱える企業は多く存在します。そのような状況を打開する方法としても、RJPに注目が集まっています。

    これまで企業は、優秀な人材を集めようと懸命に自社の魅力をアピールしてきました。しかし、実際に働いてみると「残業時間が長かった」「職場の雰囲気がギスギスしている」「前任者からの引き継ぎが十分にない」など悪い部分に気づき始めます。

    入社前の情報提供の段階で、候補者に「働きやすい」会社のイメージのみを与え続けてしまうと、入社後のギャップに耐えられず不満が大きくなり離職に至ってしまうのです。

    つまり、早期離職の原因は、企業と候補者における“情報の非対称性”だといえます。そこでRJPの理論に基づき、自社の魅力だけでなく改善すべき点も含めて誠実に伝えることで、長く働ける人材のみを集められるようになるのです。

    以上のように、採用のミスマッチを防いで人材定着に寄与するとして、日本でもRJPが注目されているというわけです。

    RJPによる4つの効果

    RJPを実践すると、どのような効果があるのでしょうか。ここでは、4つを挙げて解説していきましょう。

    効果(1)ワクチン効果

    ワクチン効果とは、会社のリアルをそのまま伝えることで、入社後の失望感を緩和させる効果です。あらかじめ悪い情報も伝えて免疫をつけ、ショックから自分を守り課題に立ち向かう力をつけます。

    従来のリクルーティングでは、RJP理論でいう「ワクチン」がなかったため、現実に耐えられず早期離職が起こっていました。RJPでは、事前に十分な情報を開示することで、入社後の幻滅感を抑制することができます。

    効果(2)スクリーニング効果

    スクリーニング効果とは、ネガティブな情報も含め理解したうえで、求職者が自分に合う企業を選択できるという、その名の通り「スクリーニング」ができる効果です。

    ここで重要なのが、自己選択をするという点です。「入社したら辛いこともあるかもしれないけれど、自分に適した会社だから入社したい」と気持ちが固まりますので、責任感を持って安定的に働けるようになります。

    逆に、「自分には合っていない」と判断した候補者は選考中に自ら離脱するので、入社後のミスマッチが起こりにくくなる効果もあります。

    効果(3)コミットメント効果

    コミットメント効果とは、企業がネガティブな情報を開示することで、求職者が企業の“誠実さ”を感じ、愛着心を高める効果です。愛着が生まれると、「この会社に貢献したい」という熱意や帰属意識も生まれ、従業員エンゲージメントが高まります。

    エンゲージメントの高い従業員は離職率が低く、定着しやすい特徴があります。困難があっても乗り越えるチャレンジ精神もありますので、生産性の向上が期待できるでしょう。

    効果(4)役割明確化効果

    役割明確化効果とは、選考段階で企業が候補者にどのような仕事をして欲しいか、何を期待しているか、入社前に明確にすることです。
    そのことで、候補者は入社後にどのような働き方をすればいいかイメージしやすくなり、入社意欲が高まります。

    RJP理論のメリット

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    それでは続いて、RJP理論のメリットを2点ほど挙げて解説しましょう。

    メリット(1)候補者からの信頼を得やすくなる

    企業の良い情報だけでなく、会社案内やホームページに書けないような『課題』や『仕事での辛い部分』を伝えることで、候補者の信頼を得やすくなります。

    候補者は「正直に自分と向き合ってくれた」と感じ、好印象を抱きます。その結果、効果的な採用コミュニケーションが実現でき、良い採用活動につながるでしょう。

    メリット(2)企業カルチャーに合った人材と出会いやすくなる

    面接官が候補者に対し、企業カルチャーや組織風土のありのままを伝えることで、自社に適した人材を見つけやすくなります。

    候補者は面接で知ったネガティブな情報も聞いているため、入社後のイメージがしやすい状態になっています。会社のありのままの姿を知ったうえで入社するので、ミスマッチが起こりにくくなるのです。

    その結果、無理なく長く働き続けることができ、離職率の改善が期待できるでしょう。

    RJPの導入における5つのガイドライン

    RJPを導入しようと思っても、どうしていいかが分からないと思います。まずは、RJP理論の提唱者「ジョン・ワナウス氏」が示している以下のガイドラインに沿って導入してみるのが良いでしょう。

    1. RJPの目的を求職者に説明し、誠実な情報提供を行う
    2. 提供する情報にみあったメディアを使用し、信用できる情報のみを提供する
    3. 現役の社員がリアルな情報を提供する
    4. 組織の実態に合わせて開示する良い情報と悪い情報とのバランスを考慮する
    5. これら情報開示を採用活動の早期段階で行う

    基本的にはこれらのガイドラインに沿って導入するのが好ましいとされていますが、企業によってどのような形が良いのか、どのような手順で進めていくのが良いかは異なるでしょう。

    より具体的に「なにを、どうするか」という実践方法については、次に解説させていただきます。

    RJPの実践方法

    ここでは、5つの具体的な実践方法を解説しましょう。

    方法(1)紹介予定派遣を導入する

    紹介予定派遣は、派遣先企業に職業紹介することを前提とした労働者派遣です。派遣期間中の様子を見て、派遣先企業と派遣社員側が直接雇用するかどうかを決めます。双方の合意があった場合、正社員か契約社員として雇用される仕組みです。

    正社員になる前に「派遣」として企業の良い面も悪い面も知ることができるので、入社後のミスマッチが起こりにくくなります。

    方法(2)インターンシップから採用する

    インターンシップに参加した学生を正社員に採用する方法もあります。学生は企業で働く体験を得られることで、入社するか見極められるようになります。

    インターンシップ期間中、社員は学生に対してリアルな情報を提供し、適合性があるか判断してもらうことが重要です。率直に関わり合うことで、入社に至った際の定着率が高まります。

    方法(3)リファラル採用を促す

    リファラル採用とは、社員に“自社に合いそうな人材”を紹介してもらう採用方法です。社員と候補者が友人など近しい関係の場合、正直な意見を伝えやすいため、入社後のギャップを事前に解消できます。

    社員も候補者のことをよく理解しているため、企業カルチャーにフィットした人材獲得につながりやすい点もメリットのひとつです。

    方法(4)社員インタビューのコンテンツを作る

    企業で働く社員のリアルな声が伝わるインタビューコンテンツも、RJP理論に基づいた方法です。作成したコンテンツは、動画やテキストにしてSNSやメディアに掲載します。

    社員インタビューではリアルな働く姿を伝えやすく、入社後の姿をイメージしやすくなります。特に、働いていて辛かったエピソードや乗り越えた方法などを入れると、親近感が湧き入社意欲が高まるでしょう。

    方法(5)選考の初期段階から情報を開示する

    選考がある程度進んだ段階や内定後ではなく、初期段階から情報を開示することが重要です。採用ページによくある「社員の1日のスケジュール」ではなく、繁忙期の忙しさや残業時間、さらには事業における課題や弱みを具体的に伝えましょう。

    早めに知ることで候補者は考える時間を長く持てるので、「自分なら繁忙期をどう乗り越えるか」「事業の課題を解決するために何ができるか」といったイメージまでしやすくなります。

    リアルな情報は候補者の選択に役立ちますので、できるだけ多く、そして選考の初期段階から伝えるようにしましょう。

    RJPを実践する際の注意点

    RJPを実践する際の注意点として、3点を挙げて簡単に解説してみましょう。

    注意点 (1) 自社で働くメリット・デメリットをバランス良く伝える

    候補者に自社のありのままの様子を伝える際、メリットとデメリットの両面をバランス良く伝えましょう。デメリットについて話すときは自虐的になる必要はなく、誠実に伝えることが重要です。

    注意点 (2) 採用担当者と現場の担当者が連携して採用活動を実施する

    採用担当者と配属先の社員が面接に同席することで、リアルな声を伝えられるでしょう。可能であれば、選考途中で社員との座談会を設けるのも効果的です。社員には事実ベースで話してもらうと、候補者は入社すべきかどうかの“セルフスクリーニング”ができます。

    注意点 (3) 面接官が候補者の特徴を見極める力を身に付ける

    面接官もトレーニングが必要です。そうして候補者の特徴を見極め、本音を引き出すスキルや、ネガティブな情報を適切に伝える方法を身に付けることが重要です。候補者は面接官を『企業の顔』と捉えますので、丁寧な採用コミュニケーションを心がけましょう。

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    RJPとはアメリカで発展した「仕事情報の事前開示」に関する理論で、人材定着が図れることから日本でも注目されています。

    RJPを企業で実践するには、面接官のスキルが必要です。たとえば、これまでは企業の良い点ばかりをアピールしていましたが、RJPではネガティブな部分も含めて伝える必要があります。言い方によっては候補者に悪い印象を与えかねないため、面接官はネガティブを伝えつつも誠実さを感じてもらう話し方を学ぶことが重要なのです。

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