リファラル採用の導入メリット・デメリットとは?定着に向けた運用方法や注意点を解説

リファラル採用の導入メリット・デメリットとは?定着に向けた運用方法や注意点を解説

採用手法が多角化する近年、急速に導入が進んでいるのが、従業員の人脈を利用した『リファラル採用』です。リファラル採用には、「人材ミスマッチが起こりにくい」「転職潜在層までアプローチできる」など、従来の採用手法にはないメリットがあります。しかし、従業員の協力が不可欠なため、制度を定着させるには難しさもあるでしょう。

この記事では、リファラル採用の導入メリット・デメリットや、定着に向けて人事担当者が取り組むべきことなどを解説していきます。

目次

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    リファラル採用とは

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    リファラル採用とは、自社の従業員から採用候補者を紹介してもらう採用手法です。企業から人材にアプローチするダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)のひとつであり、応募に頼らないいわゆる”攻めの手法”として注目されています。従業員自身の人脈を使って採用活動を行うため、自社に合った社員を低コストで採用できるのもメリットです。
    ※ダイレクトリクルーティングは、ビジョナル株式会社の登録商標です。

    リファラル採用はもともと中途採用で多く活用されてきましたが、現在では採用難化が進む新卒採用でも活用されるようになっています。

    なお、従業員の人脈を利用した採用手法には、リファラル採用の他に“縁故採用”があります。しかし、縁故採用は社内で一定の権力を持つ人の紹介による、いわゆる「コネ」採用の側面が強いと言えるでしょう。そのため、採用される従業員は、経営層の親族や縁者であるケースが散見されます。

    一方リファラル採用は、縁故採用とは異なり自社の採用基準を満たすことが前提条件となっています。従業員から紹介された採用候補者は、通常の採用プロセスで選考を行うため、業務に見合ったスキルや経歴がなければ採用にはつながりません。

    ちなみに、海外での採用活動は求人媒体よりもリファラル採用が一般的です。日本でも急速に普及が進んでおり、2020年時点で『大手企業の約8割がリファラル採用を導入している』という調査結果もあります。

    リファラル採用のメリット

    従業員の紹介を前提としたリファラル採用には、通常の求人媒体などを利用した採用と比べて「人材ミスマッチを防止できる」、「採用費用を抑えられる」などのメリットがあります。ここからは、より具体的にどのようなメリットがあるのか、4つほど挙げて見ていきましょう。

    メリット(1)採用ミスマッチを防止できる

    リファラル採用は、自社をよく知る従業員からの紹介を通して行なわれます。そのため採用候補者は、『企業理念』や『働き方』など、具体的な情報を従業員から直接入手することが可能です。入社後の働き方がイメージしやすくなりますので、採用ミスマッチが起こりにくいと言えるでしょう。

    従業員によるリファラルの紹介は、応募者と紹介者の間に信頼関係や共通の価値観が存在するため、求める人材像との一致度が高い傾向があります。紹介者は採用候補者の考え方や応募の背景、性格をよく知っており、自社の文化や環境との相性を熟知しています。そのため、採用候補者の適応性や組織へのフィットが高まり、採用ミスマッチのリスクが低減されます。

    さらに、リファラル採用は入社後の定着率を高める効果も期待できます。採用候補者は入社前から知人がすでに社内にいることを知っており、安心感を抱きやすくなります。既に社内につながりを持つことで、新たな環境への適応や同僚との関係構築がスムーズに進むことがあります。これにより、入社後のストレスや不確実性が軽減され、採用候補者が長期的なキャリアを築くことができるでしょう

    メリット(2)採用費用を抑えられる

    リファラル採用は、自社従業員の人脈を通じて行われるため、一般的な求人媒体や人材紹介サービスを利用した採用活動に比べて、採用費用を抑えられることも大きなメリットと言えます。

    以下は、中途採用に活用されている採用サービス費用を比較したものです。

    転職エージェント・人材紹介サービス 成功報酬制 年収の約30%
    中途採用向け求人サイト 課金制 月額20万円前後~
    リファラル採用 成功報酬制 2万~30万円前後



    リファラル採用に発生する主な費用は、紹介者に支払う報酬費用と会食などの交際費のみです。採用管理ツールを使用する場合にはその利用料金が必要になりますが、年収額に対して報酬が発生する人材紹介よりもコストは大幅に抑えられるでしょう。

    また、求人サイトは課金制で採用に至らなければ何度も費用が発生しますが、リファラル採用の場合、成功報酬制は採用に至らなければ費用は不要です。これは、採用にコストをかけにくい場合、大きなメリットとなります。

    メリット(3)転職潜在層にもアプローチできる

    求人媒体を用いた採用活動では、コンタクトできるのは転職活動中の人のみです。一方リファラル採用では、「転職活動をはじめてはいないものの、転職を検討している」という転職潜在層にもアプローチできます。そのため、通常の採用プロセスでは出会う機会のなかった人材と出会える可能性も期待できます。

    メリット(4)従業員のエンゲージメントを高める効果も

    会社や仕事に対して価値や信頼感を抱き、会社に貢献しようとする心理状態を『エンゲージメント』と呼びますが、採用活動を行う従業員側のエンゲージメントを高められるのも、リファラル採用のメリットです。

    それというのも、紹介にあたっては採用候補者に対して「企業理念」や「仕事のやりがい」、「会社の魅力」などを伝える必要があるからです。採用活動を通して「自身の働き方」や「企業の一員としての役割」を見直すことで、従業員自身のエンゲージメントが高まる効果も期待できるでしょう。

    リファラル採用のデメリット・注意点

    ここまで、リファラル採用のメリットについてご説明してきました。しかし、紹介ゆえのデメリットや注意点もあります。失敗やトラブルを防ぐために、デメリットについても理解しておきましょう。

    デメリット(1)人間関係への配慮が必要

    リファラル採用は、紹介した従業員と採用候補者間の人間関係に影響をおよぼすことがあります。なぜなら、従業員が採用候補者として会社に紹介しても、採用基準を満たしていなければ当然、不採用になることもあるからです。仮に紹介した友人が不採用となった場合、個々人の関係性に亀裂が入るリスクもゼロではありません。

    トラブル防止のためには、「最初は会って話をするだけにとどめる」「会社と採用候補者、双方の感触が良ければ選考に進む」といったフローを設けておくのもおすすめです。

    他にも、紹介者と被紹介者に上下関係が生まれて関係性が悪化したり、紹介者の退職によって紹介された従業員も退職を検討してしまったりする、ということもリスクとして考えられるでしょう。

    リファラル採用は一般の採用とは異なり「人間関係」を軸としているため、選考時はもちろん、入社後の配属にも配慮が必要です。紹介した従業員に責任や負担が生じないよう、注意しなければなりません。

    デメリット(2)人材の同質化が起こりやすい

    紹介者は、自身の友人などから採用候補者を紹介するため、似たようなバックグラウンドや考え方を持つ人材が集まりやすくなります。

    リファラル採用を続けた結果、社員の多様性が失われて価値観が“似たり寄ったり”になり、長期的には社内でのイノベーションが起こりにくくなるおそれもあるでしょう。

    そういった“人材の同質化”を回避するには、社内組織の強みや弱み・足りない部分などを考慮し、自社に必要な人材像を明確に設定することが必要です。

    また、リファラル採用ではすでに構築された人間関係を利用します。公私混同が起きたり、社内で派閥やグループが生まれやすかったりする点にも注意しなければなりません。

    デメリット(3)即時・大量採用が難しい

    先ほども書きましたが、リファラル採用のメリットは「現在転職活動をしていない段階の人材」も採用候補者として挙がることです。しかし、転職活動中でなければ具体的な転職スケジュールは想定できておらず、入社時期の調整が長期化してしまう可能性があります。

    加えて、社内にリファラル制度が浸透するまでにも時間が必要となるうえ、従業員が必ず採用候補者を紹介してくれるとは限りません。大量採用や即人材が欲しい場合の採用手法としては不向きなため、他の方法と併用する必要があるでしょう。

    リファラル採用を活用しやすい企業の特徴

    ここまで説明してきたリファラル採用のメリット・デメリットを踏まえたうえで、リファラル採用を活用しやすい企業の特徴を2つほど紹介しましょう。

    従業員満足度(ES)が高い企業

    リファラル採用は、従業員の紹介を前提としているので、従業員満足度(ES)が高い企業でないと制度が成り立ちません。紹介者自身が会社や仕事に満足していないと、他の人に紹介しようという気が起きないからです。

    ですから、ESやエンゲージメントの高い企業であれば制度活用はスムーズに進むといえるでしょう。

    スタートアップ・ベンチャー企業

    リファラル採用は1つ目の特徴に当てはまる大手企業で導入が進んでいますが、採用にかけられる予算が少ないスタートアップやベンチャー企業が導入するのにも向いています。

    リファラル採用は前述した通り、紹介をしてくれた従業員への成功報酬制がとられているため、大きな費用はかかりません。紹介者の人脈活用が前提のため、広告や採用媒体を利用して採用市場で競争する必要がなく、採用コストを中長期的に抑えることができます。

    ただし、それぞれの従業員が紹介できる人数には限度があります。従業員が少ない会社の場合、「リファラル採用のみを行うのは難しい」ということを覚えておきましょう。

    リファラル採用の導入手順

    リファラル採用の導入には、ルールや採用基準を明確にしたあと、従業員の間に制度を浸透させていく必要があります。ここでは、導入手順を大まかに3ステップで解説します。

    ステップ(1)ルールの制定

    まず、リファラル採用に関して採用基準や紹介フローなどの「ルール」や「問い合わせ窓口」など、必要な運用設計を行います。

    リファラル採用には、紹介者に対してのインセンティブを設定することが一般的なので、あわせて制度の内容も取り決めておきましょう。

    インセンティブは従業員の紹介意欲を喚起する効果が期待できますが、高額すぎると採用コストが増大します。加えて、紹介が「有料の人材紹介業」とみなされ、法的な問題にも発展するかもしれません。

    紹介は業務の一環であることを就業規則や賃金規程に記載したうえで、人材紹介会社の報酬を超えないように設定しましょう。一般的な相場とされる報酬額は20万円以下ですので、参考にしてください。

    なお、現金ではなく商品や体験チケットを支給するといった方法や、インセンティブを設定しないことも可能です。「インセンティブを高額にすれば良い人材を紹介してもらえるようになるわけではない」ということも認識したうえで、適切な報酬を設定しましょう。

    ステップ(2)求める人材や採用基準の明確化

    採用ミスマッチを防止するために、「求める人材」や「採用基準」を明確化し、従業員に共有しておきましょう。

    従業員のなかには、紹介したいと思う人材がいても、「はたして会社に合う人材なのか」、「紹介しても採用に至らないのではないか」などの不安を抱えて紹介を躊躇することもあります。しかし、あらかじめ「求める人材像」が明らかであれば、紹介ハードルも下がるはずです。

    逆に、人材像が明確でなければ紹介数ばかりが増え、採用業務に負担がのしかかります。ミスマッチを起こさないためにも、人材像の明確化は必須でしょう。

    ステップ(3)少数から開始して広げていく

    リファラル採用は最終的に全社に広げることが必要ですが、最初から全社一斉に取り組むのは混乱の元となるでしょう。

    リファラル採用は、成功と改善を繰り返すことで、自社に合った制度運用ができるようになります。まずは社内でエンゲージメントの高いメンバーからスタートし、少しずつメンバーを増やして社内の理解を進めつつ、全社に展開していく方法がおすすめです。

    リファラル採用を成功・定着させるには?

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    リファラル採用は、従業員の協力なしでは成立しません。リファラル採用を成功・定着させるためには、従業員が紹介したいと思える環境を整えたうえで、制度を定着させていく必要があります。

    具体的なポイントについて、3つを挙げながら解説してみましょう。

    ポイント(1)従業員が紹介しやすい環境を作る

    リファラル採用においては、インセンティブはもちろん、従業員自身が満足して働き、自信を持って自社を紹介できるような制度環境を整えていくことも大切です。魅力的な環境としては、「能力が正当に評価される制度」や「働きやすい労働環境」、「福利厚生の充実」などが挙げられますが、従業員に対して意見を求めるのも良いでしょう。

    また、紹介に関して従業員が負担に感じることがないように制度設計を行っていくことも重要です。面談のスケジュール調整をはじめ、採用に関する対応は人事がすべて責任を持つようにしましょう。

    リファラル採用は、会社と従業員が一緒に進めるものです。情報共有や管理を円滑に行うために、専用の管理ツールを活用するのも良いかもしれません。

    ポイント(2)効果測定をする

    リファラル採用を定着させるには、中長期的な取り組みが必要です。「制度運用に問題がないか」、「改善ポイントはないか」を知るためにも、KGIやKPIを設定し、効果測定を行っていきましょう

    たとえば、KGIには採用数を、KPIには紹介者数や協力率・採用決定率などの各フローを設定してPDCAを回していくと、より効果的な制度運用が可能です。

    リファラル採用のベストなやり方は、企業風土や社員の特性によって異なります。効果測定を活用して、より良い制度にブラッシュアップしていくようにしましょう。

    ポイント(3)リファラル採用以外の採用活動も並行する

    先に述べたように、リファラル採用は従業員の紹介を前提としているため、中長期的に進めていくものです。大規模な採用や急ぎの採用には向きません。基本的には、既存の採用活動プラスアルファ、という位置づけで考えておくと良いでしょう。

    なお、リファラル採用率を上げるために従業員に無理に採用候補者を紹介させようとするのはやめましょう。人材ミスマッチを引き起こしてしまいますし、社内での協力意欲も低下させるため禁物です。従業員の自発的な紹介を期待するようにしましょう。

    リファラル採用の運用方法

    リファラル採用を効果的に運用するためには、具体的な手法やプロセスの確立が重要です。下記のようなポイントを押さえることで、リファラル採用を効果的に運用していくことができます。

    1. プログラムの整備 

    まずは従業員が参加しやすい仕組みやルールを整備することが重要です。具体的には、リファラルプログラムの目的や概要、報酬制度、参加方法などを明確に定義し、従業員に広く周知します。また、リファラルの受け入れ条件や適格な候補者の特徴についても明確化し、情報を共有します。

    2. コミュニケーションと啓発

    従業員がリファラルに積極的に参加するためには、リファラルの重要性や利点について、定期的に啓発や情報共有を行う必要があります。内部でのコミュニケーションチャネルを活用して、成功事例や報酬プログラムの詳細を共有し、従業員の参加意欲を高めることが重要です。また、リファラル採用に関するトレーニングやワークショップを実施することで、リファラルのスキルやノウハウを向上させることも効果的です。

    3. システムとプロセスの強化

    応募者の紹介情報の収集や管理を容易にするために、リファラルシステムを導入することが推奨されます。また、リファラルの進捗状況や報酬支払いのプロセスも明確にし、迅速かつ円滑に処理できるようにします。

    4. フォローアップと報酬の提供

    上記内容に合わせて、参加者へのフォローアップと報酬の提供が欠かせません。リファラルが採用に至った場合や選考段階を通過した場合には、リファラル本人に感謝の意を示し報酬を提供します。また、参加者全員への適切なフィードバックや情報共有も行うことで、従業員の参加意欲を維持し続けることができます。

    リファラル採用を効果的に行うためには、適切な運用方法を確立し、従業員の参加意欲を高めることが大切になります。プログラムの整備やコミュニケーション、システムとプロセスの強化、フォローアップと報酬の提供といった要素をバランス良く取り入れながら、リファラル採用の戦略を展開していきましょう。

    リファラル採用における報酬制度の考え方

    報酬制度はリファラル採用の成功に大きな影響を与える要素です。適切な報酬を設定することで、従業員が積極的に関係者を紹介し、採用につなげるインセンティブを与えることができます。報酬制度の考え方は企業ごとに異なる場合がありますが、以下のポイントを考慮することが重要です。

    1. 公平かつ透明性がある報酬体系の構築

    報酬制度はフェアであり、従業員が公正に評価されることを保証する必要があります。報酬の内容や基準は明確に定義されるべきで、全ての関係者が理解しやすい形で提示されることが重要です。

    2. フィットする報酬形態の選定

    報酬は企業の文化や価値観に合致し、従業員がモチベーションを保ちながら紹介行動に取り組むことができるように設計されるべきです。報酬形態としては、キャッシュボーナス、ギフトカード、社内特典、昇進・昇給など様々な方法が考えられます。

    3. 面白みや競争要素の導入

    より多くの従業員が積極的に参加できるように、ユニークな報酬やイベント、競技が取り入れられることもあります。例えば、紹介者ランキングや紹介成功数に基づく特別な報酬などの仕組みを導入することで、従業員の関与を高めることができます。

    リファラル採用を推進するためには、報酬制度を柔軟かつ魅力的に設計することが重要です。企業の状況や文化に合わせた報酬制度を構築することで、従業員が積極的に紹介活動に参加し、高質な候補者の獲得につなげることができます。

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    リファラル採用は自社に合う人材を獲得できるのみならず、従業員のエンゲージメントが高まるなど、企業の糧となり得るさまざまなメリットがあります。導入にあたっては、従業員が進んで協力できるような制度を設定しましょう。

    紹介に際して従業員に負担や責任がかかれば、制度は利用されなくなり形骸化します。必要な部分は人事担当者がフォローし、無理のない運用を行いましょう。また、自社にフィットする人物を探し出すうえで、外部のプロの手を借りることも有効な手段と言えます。

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