採用手法のトレンドは移り変わってきている
新型コロナウイルスをはじめとする社会環境の変化に伴って、従来の採用手法だけで優秀な人材を確保することは困難になってきています。採用で成果を出すためには、市場動向や採用手法のトレンドを把握することが重要といえるでしょう。
採用市場の動向
現在の採用市場では、以下にあげるトピックが大きなテーマとなっています。
積極的に採用活動に取り組んでいるものの、なかなか結果が出ない会社が多いのは、採用環境の変化によるものといえるかもしれません。
- 採用活動のオンライン化
- 「売り手市場」から「買い手市場」へ
- 労働力人口の減少
- 採用後のミスマッチ増加
それでは1つずつみていきましょう。
(1)採用活動のオンライン化
新型コロナウイルスの拡大を受けて、リモートワークが一般的になりました。
オンラインでの採用活動を実施したことがある企業は約7割にのぼり※、半数以上の企業は最終面接をWEBで実施していることからも、採用の現場でもオンラインでの対応が常識となりつつあります。
※<参考>「2023年卒の採用活動における『オンライン』の導入状況」に関する企業調査/学情(2022年2月)
オンラインでの選考実施は、企業側にとっても応募者にとっても、金銭的・時間的なコストが削減できるほか、一部では「応募者を見極める精度が高い」という研究結果もあるようです。オンラインによる選考は、リモートワークへの対応度合いを確認する意味でも、今後より定着していくといえるでしょう。
(2)「売り手市場」から「買い手市場」へ
独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査結果によると、経済活動が縮小したことにより、新型コロナウイルスの流行前と比べて、全国の有効求人倍率は2022年2月時点で1.21と低い水準にとどまっています。
※<参考>「都道府県別有効求人倍率」/労働政策研究・研修機構
採用市場全体としては企業側に有利な「買い手市場」になっているといえるでしょう。この買い手市場において、企業側は積極的な集客をする必要性は薄く、なるべくコストを抑えた採用手法を導入する傾向があります。
一方、少ない求人に多くの応募者が集まるため、「良い人材に出会えない」「社員が定着しない」といったマッチングに関する悩みを抱えている企業も多いといえます。
(3)労働力人口の減少
日本においては少子高齢化の進行によって、労働力人口が減少傾向にあります。総務省の報告によれば、15歳から64歳までの生産年齢人口は、2020年の7,341万人と比べて2025年には7,085万人と256万人減少する見込みです。
※<参考>人口減少社会の到来/総務省
優秀な人材の数も限られてくると予想されるため、多彩な採用手法を用意して応募者に振り向いてもらう必要があるのです。
(4)採用後のミスマッチ増加
企業と応募者の間で起こる認識のズレが「採用のミスマッチ」です。ミスマッチが起こる要素は、雇用条件や仕事内容、会社の文化など数多くあります。
ミスマッチが引き起こす最大の問題は早期離職です。リクルート社の「就職白書2020」によれば、平均的な採用コストは、新卒採用で93.6万円、中途採用で103.3万円といわれています。
※<参考>「就職白書2020(PDF)」/リクルート
離職した場合、雇用や教育にかかるコストを含めると、かなり大きな損失が発生するといえるでしょう。
従来の採用手法と問題点
これまで採用の現場で用いられてきた定番の採用手法としては、以下のようなものが挙げられます。
- 就職フェア
- 合同企業説明会
- 就職サイト
- 人材紹介サービス
- 自社採用サイト
- ハローワーク
これらは「求人を出した後は応募があるのを待つ」のが基本となりますので、受け身の採用手法といえます。しかし、自社にマッチした応募者が集まるかどうかは不確実な部分が多い割りに、採用コストが高いというのが特徴です。
そうしたことからも、これらの手法は必ずしも現在の採用市場の動向に合っているとはいえないでしょう。
採用手法のトレンドをチェック!
多種多様なWEBサービスの誕生により、求職者は以前よりも幅広く採用情報を収集できるようになりました。企業にもよりオープンな情報開示が求められているなかで、SNSや様々なメディアを活用した採用手法が広がっています。
ここでは、具体的な採用手法のトレンドについて解説していきます。
新卒採用における採用手法のトレンド
新卒採用においては約半数の企業が、就職サイトのように広く募集をする「マス型採用」に加えて、応募者個別に最適化された「個別採用」に取り組んでいるといわれます。
そんな新卒採用のトレンドを、いくつか見てみましょう。
(1)ダイレクトリクルーティング
企業側から自社の採用要件に合致する人材に対して直接アプローチする方法が「ダイレクトリクルーティング」です。就職サイトのスカウト機能を利用してメッセージを送ったり、TwitterやFacebookなどのSNSでメッセージを送ったりするパターンがあります。
採用担当者が応募者のプロフィールやSNS上での発信内容を確認したうえでアプローチをするため、自社にマッチした人材を獲得しやすいメリットがあります。知名度が低くマス型媒体では成果が出にくい中小企業やベンチャー企業でも、応募者とのやりとり次第で優秀な人材を獲得できる可能性があるのもメリットです。
魅力的な動機付けができれば、「現時点では応募を考えていなかった」という学生に対しても有効なアプローチとなるでしょう。
(2)採用オウンドメディア
採用オウンドメディアとは、企業風土や理念、会社の制度などを発信することで、自社にマッチした人材の採用を狙う採用手法のことです。
単なる応募窓口として使われることの多かった「自社採用サイト」と比べて、よりオープンかつ長期的に自社の魅力を発信します。学生が就職活動をする上で有用な情報の発信を続けていけば、長期的に接点を持つことができ、自社の認知度向上や潜在層へのアピールにもつながるでしょう。
ある調査によれば、実際に採用オウンドメディアを運営している企業の8割以上が採用ミスマッチの減少を実感しているようです。
(3)採用ピッチ資料(会社紹介資料)
採用ピッチ資料とは、会社紹介の資料です。
企業の良い部分だけではなく課題についてもオープンにしながら、自社の魅力を伝える内容になっているという点で、従来の会社説明資料とは異なります。
採用ピッチ資料は、面接の前に企業と応募者の情報交換の場として開かれる「カジュアル面談」でもよく用いられているようです。
(4)定番の採用手法をブラッシュアップするケース
これまで定番とされていた採用手法をブラッシュアップするケースも増えています。たとえば、就業体験をする「インターンシップ」は、選考方法の一つとして定番となっていましたが、オンラインで実施されるケースも多くなってきました。オンライン化によってインターンシップへ参加できる人数が増えれば、選考に進む応募者の数も増える可能性があるでしょう。
また、これまで企業の実態について知る手段として、OB訪問や座談会が行われてきました。現在では、よりリアルに企業の実態を伝えるために、採用担当者が匿名で応募者の質問に回答する「覆面座談会」が企画されるケースも増えているようです。
中途採用における採用手法のトレンド
中途採用でも新卒採用同様に「個別採用」がメインとなってきています。中途採用では新卒採用と異なり、「即戦力」を求めるケースが多いため、企業と応募者のマッチングがより重視されているといえるでしょう。
それでは、中途採用のトレンドもいくつか見てみましょう。
(1)アルムナイ採用
アルムナイ採用は、自社を一度退職した人材を再雇用する手法です。
「カムバック制度」や「ジョブリターン制度」と呼ばれることもあります。
企業側は、スキルや企業文化を理解している人材を獲得でき、応募者側も企業文化や業務の進め方について深く理解しているため、ミスマッチが起こりにくく、双方にメリットがある採用方法といえます。
本人からの直接応募や在職時の同僚からの紹介などで入社するケースが多く、採用コストがかかりにくくなっています。即戦力のため教育コストがさほどかからないのも魅力の一つです。
(2)リファラル採用
リファラル採用は、自社の従業員からの推薦や紹介を受けて選考をする手法です。縁故採用(コネ採用)と似ていますが、採用を保証しているわけではなく、あくまで自社の採用水準を満たした場合のみ入社に至る点で異なります。
転職エージェントや求人広告を利用するよりも低コストで採用ができるほか、転職市場に出てこない優秀な人材にアプローチできるメリットがあります。
(3)その他の採用手法トレンド
小売業や外食業のように定期的に大量の人材を募集している業界では、リクルーティングに特化した動画プラットフォームに自己PR動画を投稿し、選考に活用する方法が採用されています。
また、社員と応募者がリラックスした雰囲気で交流する「ミートアップ」と呼ばれる採用方法もあります。ミートアップでは、オープンな雰囲気で社員と参加者の相互理解を深められるのが特徴です。単なる懇親会にとどまらず、ベンチャー企業のエンジニア採用においては勉強会の形式でミートアップが行われることもあるようです。
自社に合った採用手法を選ぶためのポイント3選
ここまで見てきたように採用手法は数多くありますので、どの方法を選ぶべきか迷ってしまうこともあるでしょう。トレンドになっている採用手法が必ずしも自社で効果的な方法とは限りません。
ここでは、自社に合った採用手法を選ぶために押さえておきたいポイントを3つご紹介します。
(1)複数の採用手法を組み合わせる
どの採用手法にもメリットとデメリットが存在します。企業の規模や自社が求める人材要件によっては、新しい採用手法に限らず従来型の採用手法が適している場合もあるでしょう。
また、ダイレクトリクルーティングに代表される応募者への個別アプローチは、人事担当者のスキルに結果が左右される側面もあります。盲目的に一つの採用手法に頼るのではなく、いくつかの採用手法を組み合わせて母集団形成をしていくのがベストといえます。
(2)自社の採用課題を把握する
以下のように、企業によって採用課題はさまざまです。
- 採用コストを減らしたい
- 工数を減らして採用担当者の負担を少なくしたい
- 自社のブランディングにより応募者数を増やしたい
- ターゲットを絞り、質の高い母集団を作りたい
自社の採用課題をしっかりと把握し、解決につながる採用手法を選ぶようにしましょう。
(3)自社の状況に応じて採用代行や採用コンサルティングを利用する
採用を成功させるためには、市場動向のチェックや自社での採用要件の棚卸しが必要不可欠です。
しかし、自社の採用における問題点を把握するためには人事担当者に高いスキルが要求されます。問題を発見できたとしてもリソースが足りず、なかなか実行に移せない場合もあるでしょう。そのような場合、採用代行や採用コンサルティングといった、プロの手を借りるのも有効な選択肢の一つです。
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