採用広報の目的とは
採用広報とは、簡単に言えば採用にともなう広報活動のことです。ここでは、採用広報が担う役割や、採用活動において注目される理由について解説します。
採用広報の役割
採用広報とは、さまざまな媒体を通じて自社の情報を発信して企業理解を進め、求職者に自社を就転職先の候補として検討・応募してもらうための広報活動を指します。『入社後がイメージできる情報』を提供して志望度を高め、自社と求職者のマッチングを目指すことも重要な目的のひとつです。
かつては、採用広報の媒体は会社案内や採用サイト、採用イベントなどが主でした。しかしインターネットやスマートフォンの利用が一般的となった近年では、オウンドメディアやSNSなど、デジタルメディアの活用が急速に進んでいます。
採用広報が注目される理由
採用広報が注目されるようになった大きな理由には、“売り手市場”により採用活動が難化してきたことが挙げられます。
日本の人口は2008年より減少局面に入っており、生産年齢人口(15~64歳)も減少を続けています。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によると、2015年時点で7,728万人だった生産年齢人口は、2030年には6,875万人、2065年には4,529万人まで減少すると予想されているほどです。
※参考:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」
一方、有効求人倍率は、リーマンショック翌年の落ち込み以降、上昇を続けています。2020年~2021年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け一時的に下落したものの、2022年に入り回復の兆しを見せはじめました。今後も求職者の減少が見込まれるにもかかわらず人材の需要は続くとみられ、採用活動はさらなる難化をきわめると予想されます。
企業が人材を獲得できなければ、事業拡大はおろか事業継続も困難です。採用競争のなかで自社のニーズに合う優秀な人材を獲得するには、求職者に選ばれる会社でなければなりません。そこで、求職者の志望意欲を高められる採用広報に注目が集まるようになってきたのです。
また、前述のようにインターネットやSNSの利用が日常的になったことも広報活動のあり方に大きな変化をおよぼしています。なぜなら、求職者が収集できる情報量は各段に増え、企業選択のためにより深く透明性のある情報を求められるようになったからです。
さらに、企業としても発信方法の選択肢が増え、情報発信へのハードルが下がり、気軽な発信が可能になっています。このことから、従来とは異なるアプローチが今後ますます求められるようになるでしょう。
採用広報のメリットと効果
採用広報を行うことで、企業認知度の向上の他、ミスマッチの防止や潜在層へのリーチなど、さまざまなメリットが期待できます。4つほど挙げて解説してみましょう。
メリット(1)企業認知度が上がり興味を持ってもらえる
採用活動の課題のひとつに、企業認知度が低く十分な応募者を集められないことが挙げられます。特に、BtoB領域の企業や中小企業は、求職者に名前や事業内容を知られておらず、応募候補に挙がりにくいことが多いようです。
認知度が低い企業が採用広報に取り組めば、これまで自社の情報が届きにくかった層に対しても情報を届けられ、広く興味や関心を集められます。また、誰もが知る企業でも正しく事業内容を理解されていないケースもあるので、あらためて採用に関する情報発信を行うことは重要なのです。
メリット(2)入社後のミスマッチを防げる
採用広報によって自社についてのさまざまな情報が発信されることで、求職者の『正しい企業理解』が進み志望度が向上することが期待できます。
たとえば企業風土や実際の仕事風景などを発信すれば、求職者は入社後をイメージしやすくなります。ミスマッチによる早期離職も抑えられ、定着率の向上にもつながるでしょう。
メリット(3)潜在層にもリーチできる
採用広報は早期に求職者と接点を持てることも強みです。すでに自社に興味を持った人はもちろん、まだ就転職活動をはじめていない段階の潜在層への認知向上や、早期の関係構築も進められます。
業界情報の発信が、その企業に関心を持つきっかけになることも少なくありません。また、現時点では転職を検討していない人でも、転職を検討しはじめた際に『候補』として認知されることが期待できます。
メリット(4)採用活動の効率向上
メディアの閲覧数や応募者数などの情報を分析することで“採用ノウハウ”が蓄積され、採用活動の効率向上にもつながります。
また、採用広報の活用は、コスト面でも有利です。広報の手段にはSNSなどを活用できるので、広告出稿に比べるとコストがかかりません。また、採用支援サービスなど自社以外のリソースに頼らずに母集団を形成することもできるでしょう。
採用広報の手法
ここからは、実際に採用広報を実施する際の手法を紹介します。企業が求職者に対して発信するために用いるメディアは、大きく以下の3つに分けられます。
- オウンドメディア
- ペイドメディア
- アーンドメディア
これらの分類は、“トリプルメディア”と言われるマーケティングのフレームワークです。それぞれ適する発信内容が異なるため、目的に応じた手法を使い分けることが重要です。
オウンドメディア
自社が運営する採用サイトやオウンドメディアは、自由に継続的な情報発信が可能です。中長期的な集客に向き、自社ブランディングや潜在層の獲得効果も期待できます。
また、自社採用サイトやオウンドメディアは、多くの場合すでになんらかの関心を持つユーザーのアクセスが期待できます。社員の働き方やイベントの様子など、よりリアリティを感じられる情報の発信によって求職者の関心を高めていくと効果的です。
一方、企業認知度が低い場合は求職者の興味を引くことができないので、続いて紹介するペイドメディアやアーンドメディアなどから流入を図る必要があるでしょう。
ペイドメディア
ペイドメディアは、広告枠を購入し自社の情報を発信するものです。媒体には、テレビやラジオなどのCMや求人広告の出稿、Web広告などが挙げられます。
また、ペイドメディアは短期的な集客と認知度の拡大に有効な手法です。社名や採用を行っていることを広く知らせたい場合に最適でしょう。Web広告は、ある程度ターゲットを絞った配信も可能です。
ただ、広告は配信方法や配信内容などによってコストが大きくなるため、費用対効果をよく検討したうえで利用する必要があるでしょう。
アーンドメディア
アーンドメディアとは、信用獲得を目的とした第三者が運営するメディアです。口コミサイトやブログ以外に、シェアードメディアとも呼ばれるFacebookやInstagram、TwitterといったSNSなども含まれます。
アーンドメディアは、企業自身が情報発信や集客のために利用できます。広告費用をかけずとも、情報の拡散による広告効果も期待できるでしょう。幅広い層に発信できるので、自社に関心を持ってもらうためのきっかけづくりや、オウンドメディアへの流入を増やすためにも有効です。
また、SNSはコミュニケーションツールとしての活用も可能で、ユーザーが発信者と気軽にコンタクトを取れるというメリットもあります。SNSを通じたやり取りから、求職者の志望度が上がることも多くあります。
採用広報の進め方
採用広報は、情報発信する目的とターゲットを決め、ターゲットに向けた内容を発信するという流れで進めていきます。また、発信がターゲットに届き、アクションにつながっているか効果測定を行うことも大切です。ここでは、それぞれのステップについて解説していきます。
目的・ターゲットの設定
まず、自社が採用広報で解決したい「課題」と「情報発信の目的」、そして「ターゲット」を設定します。
そのうえで、情報発信先として想定するペルソナを設定します。キャリアやスキル、行動パターン、転職目的、働き方に対する希望など、自社が求めている人材に沿った、具体的な人物像を作成しましょう。
発信内容・発信方法の決定
設定したペルソナにとっての自社の魅力や、ペルソナが知りたいと考えられる情報について整理し、発信内容を決めます。
たとえば、情報収集の段階である人に向けた発信であれば、ペルソナの知りたい情報は「企業の事業内容」や「理念」などになるでしょう。一方、すでに会社に対し関心を持っていて応募検討の段階に入った人に対しては、働き方をイメージしやすい「社員の1日」などの発信が適しています。
次に、発信の目的や内容から、発信方法を決定します。ターゲットに届きやすい媒体を選択しましょう。複数の媒体を利用している場合には、媒体別に伝え方を変えることも効果的です。近年では、動画コンテンツの活用も進んでいますので、ぜひ検討してみてください。
KGI・KPIの設定
採用広報の効果が分かるようになるまでには、どうしても時間がかかります。現在の施策が効果的であるか、改善が必要なのかを確認するために、KGIとKPIを設定したうえで効果測定を行いましょう。
採用活動においてKGIに設定されるのは「採用人数」で、KPIに設定する目標には「内定承諾率」や「応募数」、「内定数」などが挙げられます。しかし、これらのKPIは長期的な数値になるうえ、採用広報としての直接的な効果を見ることは困難です。
広報による情報発信の効果を確認するためには、短期的な目標として「メディアのPV数」や「動画再生数」、「SNSのインプレション数」や「エンゲージメント数」などをKPIに設定すると良いでしょう。
企業が採用広報を行うときに意識しておくべき3つのポイント
採用広報は、単に伝えたい自社の情報を発信すれば良いわけではありません。採用活動を成功へと導くために、広報において意識しておきたい3つのポイントを紹介します。
ポイント(1)自社の魅力やビジョンを伝えられているか
採用広報を行うにあたり、自社ならではの魅力を伝えることは重要なポイントです。事業内容ややりがい、環境、人事制度などの観点から、他社と差別化できる魅力を整理しましょう。
また、採用広報を通じ、求人要項からは読み取りにくい社風や価値観を積極的に伝えることも大切です。社風や価値観への共感は、応募につながるだけでなく、入社後の活躍や定着にも大きく影響します。
近年では、企業の選択軸として仕事内容や待遇の魅力に加え、事業の社会的意義やビジョンなども重視されるようになっているので、これらも積極的に発信しましょう。潜在層に対してのアピールにも効果があるはずです。
ポイント(2)ターゲットの興味を引くコンテンツを発信できるか
採用広報の効果を期待するには、求める人材像に合わせたコンテンツを発信する必要があります。採用広報を進めていくうち、自社の求める人材像と応募者とのギャップが見られる場合には、ターゲットに届く発信ができていないかもしれません。あるいは、ペルソナ設定が現実に即していない可能性があります。
採用広報に関して設定したKPIが達成できていない場合も同様です。たとえば、「新規事業を手掛けて活躍したい」と考えて転職先を検討している求職者に、会社の福利厚生の充実を訴えても大きくは響きません。そのような求職者には、自社のキャリアプランやビジネスプランに関する一歩踏み込んだ情報発信が適切と言えます。
また、ターゲットに届くコンテンツを発信するには、効果測定のデータを確認しながら内容をブラッシュアップしていくことが必要です。採用ターゲットに近い社員から、魅力的に感じられる点をヒアリングするといった工夫も行っていきましょう。
ポイント(3)効果的な手法で伝えられているか
近年では、SNSを活用する採用広報が増えています。SNSは手軽に自社の情報を発信できますが、情報発信の目的や訴求内容によって、適した手法や媒体は異なります。
たとえば、自社が具体的に応募の検討段階に入っていれば、より詳細な情報を発信できるオウンドメディアやビジネス系SNSが向いています。ボリュームのあるコンテンツでも、最後まで読んでもらえるでしょう。しかし、認知段階であれば内容は刺さりにくく、途中で離脱されてしまう可能性が高まります。
自社の魅力の認知や最新情報の発信が目的であれば、幅広いユーザーが利用するTwitterやInstagramなどがターゲットに届きやすいでしょう。文字数も少なく、インパクトのある写真でこちらの意図を分かりやすく伝えられるうえ、隙間時間に確認しやすいのが魅力です。ただし、TwitterやInstagramで集客効果を期待するには、他の媒体手段に比べて継続的な情報発信が必要になるでしょう。
このような媒体特性の違いを踏まえたうえで、伝えたい情報に合わせた媒体を選択して情報発信していくことも重要です。
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採用広報は、自社の採用について広く知らせるだけでなく、自社の求める人材を効率よく採用するために欠かせないものです。
応募数が少ない、ミスマッチが生じているなど採用活動に苦戦しているのであれば、ぜひ採用広報に取り組んでください。また、自社にフィットする人物を探し出すうえで、外部のプロの手を借りることは有効な手段と言えるでしょう。
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