内定者研修とは?
内定者研修とは?
内定者研修とは、内定後の新入社員に対して、入社前に実施する研修です。特に新卒採用で内定した学生を対象とし、人間関係の構築や企業概要などを理解してもらうために実施されます。
1-1. 内定者研修は違法になる?
1-1. 内定者研修は違法になる?
内定者研修は、会社側が参加を命令・義務付けたうえで給料の支払いがない場合には違法とされる可能性があります。
というのも、「会社からの指示」で時間や場所を拘束されますので、“労働時間”と見なされた場合には給料を支払わなければなりません。
例えば、内定者研修を「任意参加」と伝えつつ、参加せざるを得ない場合なども「会社からの指示」と考えられ、労働時間と認められる場合があります。
労働時間として認められた場合には給料を支払わなければ違法になりますので、内定者研修の実施方法には注意が必要なのです。
内定者研修の3つの目的
そもそも内定者研修は、主に以下の3つの目的で実施されます。
- 内定者の不安や悩みの解消
- 即戦力として活躍してもらうためのスキルアップ
- 内定辞退を防止する
内定者研修は、不安を解消して社会人生活の準備を進めるために行われるのが特徴です。それぞれの目的について詳しく解説していきましょう。
目的(1)内定者の不安や悩みの解消
目的(1)内定者の不安や悩みの解消
内定者研修の大きな目的の1つに、内定者の不安解消があります。漠然とした不安や悩みを内定者研修で解消できれば、内定者も安心して入社することができるでしょう。
特に、新卒で初めて社会人として働く場合、「この会社で本当に良かったのか」「本当にここでやっていけるのか」と不安になる人が大半を占めます。
内定者研修では、内定者同士でコミュニケーションを取ることを目的としたプログラムもあり、仲間を知るきっかけができます。どのような人と一緒に働くかイメージができますので、不安解消につながりやすいといえるでしょう。
目的(2)即戦力として活躍してもらうためのスキルアップ
目的(2)即戦力として活躍してもらうためのスキルアップ
入社後、即戦力になってもらうことを目的とした内定者研修もあります。
内定者研修で必要なビジネススキルなどを身につけることで、一刻も早く即戦力として活躍できるようにします。また、早い段階でスキルアップができますので、内定者の自信に繋げることも可能でしょう。
スキルアップの研修には、OAスキルやビジネスマナーのほか、スタートアップの企業では実務体験が行われているケースもあります。内定者期間に土台が作られますので、受け入れる社員側の負担を軽減するという意味でも効果的です。
目的(3)内定辞退を防止する
目的(3)内定辞退を防止する
近年、複数社から内定をもらったり、就職に対する悩みや不安を抱えたりした結果、内定を辞退するケースが増加しています。実際、「就職みらい研究所」の調査では、23年卒の内定辞退率は65.8%と高い水準で推移しています。
※参考:就職みらい研究所(リクルート) 「就職プロセス調査(2023年卒)2023年3月度(卒業時点)内定状況」
そのため、企業側から内定者にアプローチを行い、積極的にコミュニケーションを取ることが重要といえます。
採用にも時間やコストが掛かりますので、内定者の内定辞退や早期退職は避けたいところです。転職や第二新卒採用が簡単にできてしまうからこそ、優秀な人材を逃さないために内定の段階からサポートをすることが重要なのです。
内定者研修の3つのゴール
内定者研修のゴールは目的によって違います。そのため、企業ごとに目的とゴールを明確にしておくことが必要です。また、内定者研修を複数回実施する場合には、開催時期に応じたゴールの設定も重要になるでしょう。
続いては、そんな内定者研修の3つのゴールについて解説していきます。
ゴール(1)基本的な社会人マナーやスキルの習得
ゴール(1)基本的な社会人マナーやスキルの習得
内定者を即戦力にしたい場合、研修のゴールは「基本的な社会人マナーやスキルの習得」です。社会人マナーや文書・OAスキルなどの基礎力を習得すると、内定者が入社後により良いスタートができ、早い段階から活躍できる可能性があります。
内定者研修でスキル習得をゴールとする場合は、いつまでにどのレベルのスキルが必要なのかを明確にしたうえでプログラムを作成しましょう。また、部署によって必要なスキルも異なりますので、配属ごとに研修の内容を設計しても良いでしょう。
部署ごとに求めるレベルの基礎スキルが身につけば、内定者が自信をつけて社会人生活をスタートできるはずです。
ゴール(2)学生から社会人へのマインドの切り替え
ゴール(2)学生から社会人へのマインドの切り替え
内定者期間は、社会人への準備段階です。内定者研修で学生と社会人の違いを理解し、“自立して働くためのマインド”へ切り替えてもらいましょう。社会人へのマインドを構築することで、入社後の業務にあたるスピードが変わってきます。
社会人マインドの切り替えにあたり、理想のビジネスパーソン像を想像してもらうと、働くことへのモチベーションも上がります。
また、学生気分のまま社会人になると、内定者も受け入れた社員側も負担に感じてしまうことが増加するかもしれません。入社後にお互いがモチベーションを保って業務を行うためにも、内定者研修時に社会人のマインドを形成するというのは重要なポイントになるでしょう。
ゴール(3)チームワーク・人間関係の構築
ゴール(3)チームワーク・人間関係の構築
内定者の不安解消や内定辞退の防止が目的の場合、「チームワーク・人間関係の構築」が研修のゴールになりやすいでしょう。横のつながりができれば、相談などもしやすくなるからです。
チームワークや人間関係の構築では、どれだけ同期や先輩社員とコミュニケーションを取れるかが重要でしょう。例えば、フリータイムを少し多く設けたり、チームで話し合いながら進めるレクリエーションを行ったりすると活発に交流がしやすいはずです。
同じ所属場所に交流できる人がいるだけでも、内定者の不安や心配が解消できるきっかけになるでしょう。
内定者研修の内容としてやるべきこと
内定者研修で行うべき内容としては、主に下記の5つが挙げられます。
- 会社説明およびレクリエーション
- ビジネスマナーの習得
- 社会人になるためのマインドセット
- OAスキルの強化
- 伝える力の向上
自社が内定者研修を実施する目的と擦り合わせながら、プログラムを構成していきましょう。それぞれ解説していきます。
(1)会社説明およびレクリエーション
(1)会社説明およびレクリエーション
複数回に分けて内定者研修を実施する際は、会社説明やレクリエーションで内定者の緊張をほぐします。また、レクリエーションを実施することで、内定者同士のつながりができ、不安を払拭してもらうことができます。
内定者同士のつながりは内定辞退の防止にもなりますので、内定者研修の初回に実施すると良いでしょう。
(2)ビジネスマナーの習得
(2)ビジネスマナーの習得
社会人になるにあたって、ビジネスマナーは必須です。内定者の段階でビジネスマナーを習得することによって、入社後からビジネスパーソンとして信頼度を高めてもらうことができます。
ビジネスマナーは、「他者からどのように思われるか」が重要であり、あいさつや言葉遣い、身だしなみなどが含まれます。正しい敬語や電話の取り方、名刺の渡し方などを習得し、誰と接しても信頼してもらえるビジネスパーソンになってもらう必要があるでしょう。
(3)社会人になるためのマインドセット
(3)社会人になるためのマインドセット
内定者研修を実施している多くの企業が、社会人になるためのマインドセットを重視しています。なぜなら、内定者は、社会人の常識や心構えなどのマインドをまったく知らない状態だからです。
社会人として最低限必要なマインドセットには、責任感や自身の行動が組織に与える影響力、キャリアの考え方などがあります。
とはいえ、座学で「社会人のマインド」について話を聞いているだけでは、内定者も想像がつきにくいかもしれません。しっかりと考えてもらうために、グループディスカッションを行いながらマインドセットを定着させていくと良いでしょう。
(4)OAスキルの強化
(4)OAスキルの強化
OAスキルは仕事の効率に非常に大きな差が出るものです。そのため、入社前までに基本的なOAスキルは身につけさせる必要があるでしょう。
例えば、データの整理で利用するExcelやプレゼンで必須になるPowerPointは、“社会人の土台”といっても過言ではありません。内定者の期間で基本的な操作ができるようになるだけでも、入社後に依頼できる仕事の幅が広がってきますので、即戦力として活躍できるかもしれません。
また、近年ではスマホの普及によりブラインドタッチが苦手な人が多い傾向にあります。タイピングのスピード・正確性は業務効率に大きく影響しますので、練習しておいてもらうと良いでしょう。
インターネットには、ゲーム感覚でできるタイピング練習のサイトなどもありますので、目標を作って取り組ませても良いかもしれません。
(5)伝える力の向上
(5)伝える力の向上
仕事ができる人は、限られた時間で相手に物事を伝えるのが上手です。内定者の期間中に少しでも文書作成やプレゼン力をつけさせておくと、入社後の信頼獲得につながる可能性があるでしょう。
とはいえ、大学では「レポート課題」や「卒業論文」で長文に慣れてしまっているとか、コロナ禍の影響でプレゼン経験が少ない、というのも現状です。
ですから、内定者研修で文書作成やプレゼンの基本を習得してもらい、土台を作ってあげましょう。
内定者研修における給料は支払いが必要なのか?
内定者研修は基本的に任意参加で労働時間にはなりませんので、給料や残業代の支払いは不要です。しかし、内定者全員に参加させたい場合や業務経験をしてほしい場合には、労働時間と判断されて給料を支払う必要があります。
任意参加としながらも以下のような状況の場合には「会社指示」と判断され、給料の支払いが必要になります。
- すべての内定者が参加している状況
- 内定者研修の事前課題がある
- 場所や時間が定められている
- 重要度の高い業務内容の詳細が伝えられる
- 実際に業務を経験する
ですから、入社前の内定者研修を全員に向けて実施したい場合には、給料の支払いを必ず行うようにしましょう。
内定者研修の効果を高める4つのポイント
それでは次に、内定者研修の効果を高めるための4つのポイントについて1つずつ解説していきます。
ポイント(1)内定者のスキルや特性を把握する
ポイント(1)内定者のスキルや特性を把握する
内定者研修を実施する際は、まず内定者の特徴やスキルなどの状態をしっかりと把握しましょう。そうすることで、研修の目的を明確に定められます。
●内定者のスキルを把握する
内定者研修を効果的に実施するために、内定者の現状のスキルや、得意・不得意を把握することが重要です。それぞれの内定者の強みや弱みを知ることができますので、個別に合った研修スタイルを実施することができます。
企業によって求めるスキルは異なりますが、一般的に以下のスキルを必要とする企業が多いでしょう。
- ビジネスマナー
- マインドセット
- OAスキル
- コミュニケーションスキル
- ロジカルシンキング
特に、マインドセットとビジネスマナーは、内定者研修時に必須項目にしている企業が多い傾向にあります。
OAスキルやロジカルシンキングは、新人の即戦力化を狙った企業に人気です。とはいえ、内定者に合わせて適切なサポートを行うことで不安解消にもつながりますので、企業側の目線だけで研修を進めないようにしましょう。
●内定者の特性を把握する
内定者の特性は、面接だけでは把握し難いでしょう。しかし、内定者の苦手な部分やキャリア志向などを把握できれば、研修プログラムを作りやすくなります。
ですから、まずは内定者と積極的に交流して「どのような特性があるか」や「得意・不得意があるか」を知りましょう。また、内定者とコミュニケーションを取ると、配属先や担当させる社員の選定にも役立つはずです。
ポイント(2)研修の目的・ゴールを明確にする
ポイント(2)研修の目的・ゴールを明確にする
内定者の現状を理解できたら、研修の目的とゴールを設定しましょう。
内定者研修の目的・ゴールによって、研修のプログラムが大きく変わる可能性があります。
例えば、研修目的を「社会人の自覚を持つ」、ゴールを「自身が企業に与える影響力を理解したうえで、理想のビジネスパーソン像が確定している状態」とします。この場合、研修内容は『マインドセット』になるでしょう。
研修の目的とゴールが決まらなければ大まかな研修内容を確定できませんので、明確に設定することが重要になります。
ポイント(3)現場の声を反映した内定者研修を実施する
ポイント(3)現場の声を反映した内定者研修を実施する
内定者研修の内容が確定したら、現場の声が落とし込まれているかも確認しましょう。
研修を実施するのはOJT担当者や先輩社員であり、プログラムを作った人ではないことがほとんどです。普段から新人育成を担当している社員が「“新人に習得してほしいスキル”が研修プログラムに反映されているか」を確認しましょう。
特に、現場で必要なスキルに関してはリアルな声がなければ研修に反映できませんので、事前の確認が必須といえます。
ポイント(4)内定者研修のスケジュールを決める
ポイント(4)内定者研修のスケジュールを決める
内定者研修の概要ができたら、スケジュールを確定させます。内定をもらっていても、学業との兼ね合いや住んでいる地域によっては頻繁に研修に参加することが厳しい人もいるでしょう。そのため、スケジュールはなるべく早く確定させて、内定者に知らせることが重要です。
内定者研修の日程発表がギリギリになってしまうと、本来参加したかった人ができなくなる可能性もあります。社内だけでなく、内定者に向けての連絡においてもスピード感が重要です。
また、基本的に研修は内定式後〜入社前の期間に実施されていますが、企業によって時期は異なります。内定者インターンやアルバイトを実施している場合は、内定後すぐに実務経験を積む企業もあるかもしれません。自社にとって最適なタイミングで内定者研修を実施しましょう。
ただ、これから内定者研修を実施予定の企業にとっては、最初から完璧な研修を行おうとするのは難しく感じるかもしれません。効果を十分に発揮したいと考えている場合には、採用支援のサービスを利用するのも良いでしょう。
採用支援サービスならパーソルビジネスプロセスデザインへ
新卒の採用を行うには、さまざまなタスクが必要になります。内定者研修もその1つですが、実施方法を間違えると違法になる恐れがあり、正しい実施方法を理解しておかなければなりません。
リソース的に人事部だけで実施することが難しい場合には、新卒採用代行サービスを検討しても良いかもしれません。その際には、ぜひ私たちパーソルビジネスプロセスデザイン株式会社にお任せください。
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