ポテンシャル採用とは
『ポテンシャル採用』とは、経験やスキルよりもポテンシャル、つまり素養や人柄などの潜在的な能力を重視した採用方法を指します。
「中途採用」は、現在のスキルや経験などが重視され、即戦力としての採用がおこなわれますが、ポテンシャル採用では、現時点での能力よりも将来的な可能性が重視されるのが特徴です。教育や研修によって、将来的に能力を発揮する見込みのある人材や企業文化に適合しそうな人材が採用されます。
ポテンシャル採用で求められる素質や基礎的な能力は企業ごとに異なり、「リーダーシップ」を重視するところもあれば、「論理的思考力」に重きを置くところもあるでしょう。
なお、「新卒採用」もポテンシャルを重視した採用のため、ポテンシャル採用ともいえますが、新卒採用とポテンシャル採用は明確に区別されます。新卒採用は卒業見込みの学生のみを対象とするため、それ以外の第二新卒、既卒、社会人経験者も対象とするポテンシャル採用とは性質が異なるのです。
なお、ポテンシャル採用の対象者は明確に定義されていないため、解釈は企業ごとに異なりますが、一般的には「第二新卒」「20代後半までの転職希望者」「既卒」が対象となります。
30代以上はキャリア採用として扱われることが少なくありませんが、企業によっては30代前半でもポテンシャル採用の対象とすることがあるようです。
ポテンシャル採用が注目される背景
ここからは、即戦力としては活躍が期待できないポテンシャル人材の採用がなぜ注目されているのか、その背景についてご紹介していきましょう。
背景(1)労働人口の減少により採用が難しくなってきている
背景(1)労働人口の減少により採用が難しくなってきている
少子高齢化に伴う労働人口の減少によって、企業間の人材の競争率が高くなり、求職者が優位の“売り手市場”が続いているため、年々人材の確保が難しくなってきています。特にスキルの高い人材は多くの企業から引く手あまたのため、給与などにおいて好条件を提示できる企業でないと採用が困難な傾向にあるでしょう。
このような状況に対して『ポテンシャル採用』は素質のある未経験者にアプローチをかけられますので、自社に必要な人材を確保しやすくなるのです。
背景(2)4割超がポテンシャルを重視して採用活動をしている
背景(2)4割超がポテンシャルを重視して採用活動をしている
ヒトクルの「採用担当者366人アンケート(2021年)」によると「経験よりも他の要素を重視して採用する」と回答した企業が全体の4割超えで最多でした。「経験者採用が難しいので未経験者を採用する」も加味すると、およそ8割が未経験者採用に前向きとなっています。
※引用:ヒトクル 「採用担当者366人アンケート(2021年)」
企業が重視するのは、将来的な実務能力に対するポテンシャルだけではありません。社風に合う人物かどうかも重要なポイントであり、ポテンシャルよりも社風への適合性が重視される傾向にあるようです。
※引用:ヒトクル 「採用担当者366人アンケート(2021年)」
ポテンシャル採用をする4つのメリット
ここからは、ポテンシャル採用をする4つのメリットについてご紹介していきましょう。
メリット(1)将来活躍できる優秀な人材を確保できる
メリット(1)将来活躍できる優秀な人材を確保できる
中途採用では、現時点での実務能力を重視するため、応募者の母数が限定的となってしまうものです。しかし、未経験者が対象となるポテンシャル採用では、その性質から採用の間口を広げられるため、今までは候補外であった第二新卒や海外大学の卒業者、他業種・他職種での業務経験のある人材にアプローチすることができます。
このような人材は中途とは異なった経験をしてきているため、今までの人材には無かった潜在的な能力を秘めている可能性があります。
今のスキルよりも将来的なポテンシャルを重視して採用をすることで、今まで獲得することができなかった優秀な人材を確保できる可能性があるのが『ポテンシャル採用』の強みなのです。
メリット(2)組織の若返りを図ることができる
メリット(2)組織の若返りを図ることができる
人材の潜在的な能力を評価するポテンシャル採用によって、若い人材の確保ができ、企業の高齢化を防ぐこともできます。
年齢とスキルの高さは概ね比例する傾向にありますが、スキル面ばかりを重要視して採用をすると、従業員の年齢が高齢化しやすくなります。また、高齢化した人材は、若手社員に比べて身体機能が低下しがちで生産性の低下や健康リスクの問題を抱えている場合もあるでしょう。
若手社員は、実務能力こそ乏しいものの高年齢の社員にはない活力やフレッシュさがあります。そのため、若い人材を多く採用することによって、目標達成に向けて意欲的かつ安定的な組織作りが見込めるのです。
キャリア採用に偏って中堅以上の人材ばかりを採用してしまうと、将来において会社を支える若手の幹部候補が不足してしまうリスクもあります。その点、ポテンシャル採用では、十分な数の幹部候補を採用することができるはずです。
メリット(3)従来とは異なる特徴を持った人材を採用できる
メリット(3)従来とは異なる特徴を持った人材を採用できる
特定の職務経験がある人材のみを採用とする中途採用では、良くも悪くも“類似性の高い人材”が集まりやすくなります。
しかし、未経験者も採用対象にできるポテンシャル採用では、異なるバックボーンをもった人材を多く採用することができます。採用の間口が広いため、多種多様な業界・職種でさまざまな経験をしてきた人材と巡り会えるのです。
従来とは異なるタイプの人材が増えれば、新たなアイデアが生まれやすくなったり、サービスを別の視点から捉えられるようになったりもしますので、事業やサービスの成長に繋がりやすくなるといえるでしょう。
メリット(4)新卒に比べて研修コストを削減できる
メリット(4)新卒に比べて研修コストを削減できる
ポテンシャル採用において、第二新卒を含む社会人経験者のみを採用すれば、新卒に比べて研修コストを削減することができます。社会人経験がある人材は、既にビジネスマナーや社会人としてのコミュニケーション能力を身につけているため、ビジネスにおける基本的なスキルの研修コストを削減することができるのです。
実務経験・スキルのある中途採用の人材とは異なりますので、業務に関して一定の育成期間は必要になります。ただ、新卒採用よりも育成コストは抑えられ、実務に関する研修に力を入れることができますので、業界未経験であっても早期から活躍をすることができるでしょう。
ポテンシャル採用における3つのデメリット
ポテンシャル採用における3つのデメリット
ポテンシャル採用には、メリットだけでなくデメリットもあります。ここからは、ポテンシャル採用における3つのデメリットについてご紹介します。
デメリット(1)経験者に比べて研修コストがかかる
デメリット(1)経験者に比べて研修コストがかかる
ポテンシャル採用によって採用される人材は、別の会社での業務経験があったとしても、採用された業界・職種・企業での業務については未経験です。
そのため、即戦力として活躍できる中途採用者に比べて業務面での研修が必要となりますので、研修コストはかかってしまいます。特に技術職や専門職ではその傾向が強いといわれています。
また、社会人経験のある採用者の場合、一定のビジネススキルがあるため、ビジネスマナーなどを基礎から教える新卒向けの研修プログラムを使い回しするわけにはいきません。そのため、新卒とは別で研修プログラムを作成しておく必要がある、というのもデメリットといえるでしょう。
デメリット(2)活躍するまでに時間がかかる
デメリット(2)活躍するまでに時間がかかる
社会人経験のある人材であっても、応募先の企業での業務に関しては未経験であり、初歩から実務面の研修や教育をおこなう必要があります。そのため、中途の人材に比べると、どうしても戦力として活躍するまでには時間を要してしまいます。
また、社会人経験のない“既卒”も対象とする場合には、ビジネスマナーや仕事の基本を教育する必要があるため、より多くの時間がかかるでしょう。
デメリット(3)ミスマッチによる早期退職の可能性がある
デメリット(3)ミスマッチによる早期退職の可能性がある
ポテンシャル採用で対象となる人材は、何らかの理由による退職経験のある場合が多いものです。これは退職に対する抵抗感の少なさとも捉えられ、実際の業務や社風への適性を感じなかった場合には、早期に離職してしまう恐れがあります。
未経験であることから、応募時の業務イメージと入社後の実態にギャップを感じやすく、経験者採用に比べてミスマッチを引き起こしやすい可能性もありますので、注意が必要です。
ポテンシャル採用を成功させるポイント
それでは続いて、ポテンシャル採用を成功させるコツについてご紹介していきましょう。
ポイント(1)自社が求めるポテンシャル人材を明確にしておく
ポイント(1)自社が求めるポテンシャル人材を明確にしておく
ポテンシャル採用を成功させるには、まず自社が求める『ポテンシャル』の基準を明確化しておくことが重要です。
- どのような可能性を秘めた人材が自社に必要なのか
- どのような素質があれば自社で活躍ができそうなのか
- 求職者に現時点で求める能力は何なのか
これらが明確でない場合、「面接官によって採用する人材にばらつきがでてしまう」といったリスクや、「採用活動が属人化してしまう」といったリスクがあります。
仮に属人化してしまうと、能力のある担当社員が抜けた際にそれまでと同等の人材を確保するのが困難になってしまったり、組織の統一感がなくなってしまったり、自社とはマッチしない人を採用してしまう、といったことになりかねません。
安定した人材確保を行なっていくためにも、まずは明確な基準を設けて、面接官による認識の差異を無くしていきましょう。
ポイント(2)応募者のキャリアプランを把握する
ポイント(2)応募者のキャリアプランを把握する
応募者のキャリアプランをしっかり把握したうえで採用することにより、企業と応募者のミスマッチを防ぐことができ、早期離職を起こしにくくすることができます。
面接時に将来やりたいことを深掘りし、自社と応募者が思い描くキャリアプランにずれが生じていないか、長期的に自社で活躍する見込みがあるのかを判断しましょう。
応募者が実現したいことと自社の方向性が一致しているほど、自社に合った人材を獲得しやすくなります。
ポイント(3)ポテンシャル採用にマッチした求人媒体を活用する
自社のターゲット人材にマッチした求人媒体や採用チャネルを活用することも、非常に重要です。
求人媒体や採用チャネルには多くの種類がありますが、それぞれ求職者層に違いがあります。『ポテンシャル人材』となる経験の浅い20代の若手層が集まりやすいものもあれば、経験や専門性に長けた人材が集まりやすいものもあるのです。
活用する求人媒体や採用チャネルの性質を事前に把握し、自社とマッチするものを活用しましょう。
ポイント(4)研修体制の構築
ポイント(4)研修体制の構築
研修体制を構築し入社後のフォロー体制を万全にしておくことによって、スピーディーな成長が見込めて早期離職も防ぎやすくなります。
未経験者であることを前提に、以下のような施策によって丁寧なフォローアップを実施しましょう。
- 業務の研修
- OJT
- メンター制度
- 面談
ポテンシャル採用の対象者は前職を短期間で離職していることもあるため、自身の「仕事の能力」や「仕事への適正」に不安を感じる人が多い傾向にあります。研修を充実させることで早い段階から成功体験を積めるようになるため、早期離職への対策としても効果的といえるでしょう。
応募者のポテンシャルを見極めるポイント
では次に、応募者のポテンシャルを見極めるポイントについてご紹介していきましょう。
ポイント(1)自社のカルチャーとマッチしているのかを確認する
ポイント(1)自社のカルチャーとマッチしているのかを確認する
前述したとおり、応募者の価値観を明確に汲み取らないまま採用してしまうと、入社後に自社のカルチャーと合わず早期退職されやすくなってしまいます。下記のように多角的な視点から質問をし、応募者の価値観や行動特性を見極めるようにしましょう。
- どのような考えで仕事をしてきたのですか?
- 何を成長だと捉えているのですか?
- 幼少期の性格について教えてください
価値観は幼いときに構築されることが多いため、幼少期の出来事について質問して「自社が求める資質を持ち合わせているのか」を確認するのも効果的です。
ポイント(2)仕事や自身の成長に対しての意欲を確認する
ポイント(2)仕事や自身の成長に対しての意欲を確認する
知識やスキルを問わない分、ポテンシャル採用では「成長意欲の高さ」や「仕事への熱意の大きさ」が重要になります。面接では以下のような質問もして、仕事や自分自身の成長に対する意欲がどの程度あるのかを確認しましょう。
- 当社の仕事内容の、どのようなところに興味をもっているのですか?
- 日頃から、自己学習はされていますか? 頻度はどの程度で、目的は何ですか?
- 仕事で壁にぶつかったとき、あなたはどうしますか?
「仕事への熱意」も、1つのポテンシャルとして捉えることができるはずです。
ポイント(3)入社後のキャリアビジョンを確認する
ポイント(3)入社後のキャリアビジョンを確認する
応募者の「入社後のキャリアビジョン」や、「入社後にどのような役職についていきたいのか」を確認しましょう。入社後の目標や磨きたいスキルが明確な人材ほど、採用のミスマッチが生じにくく、入社後の活躍や行動を予測しやすくなります。
1年後、5年後、10年後と、応募者が入社後に歩みたいキャリアを詳細にヒアリングするほど、その効果は高くなっていきます。
ポイント(4)ビジネスマナーを確認する
ポイント(4)ビジネスマナーを確認する
言葉遣い、服装、髪型、コミュニケーションの仕方などから、社会人として必要なビジネスマナーが十分に身についているのかを確認しましょう。振る舞いや身だしなみ、会話のやり取りなどを観察し、入社後に社外の人に失礼な対応をするリスクがないかを見極めることが重要です。
ただ、過度に厳格な評価をしては、貴重な人材を取りこぼしてしまう可能性があります。ビジネスマナーが不十分な場合には、「教育や研修によってカバーできそうかどうか」も考慮しましょう。
ポイント(5)転職理由や前職の退職理由を確認する
ポイント(5)転職理由や前職の退職理由を確認する
まずは退職理由を詳しくヒアリングし、仕事に取り組むスタンスや前職で不満を感じた出来事などを明確にしましょう。そのうえで、自社への転職理由を聞き、内容に妥当性や一貫性があるのかを見極めましょう。
職業選択に対する価値観を深掘りして「志向性」や「人柄」を掴むことによって、自社で長期的に活躍してもらえる人材かどうかを判断しやすくなります。
ポテンシャル採用を成功させるならパーソルビジネスプロセスデザインへ
ポテンシャル採用を成功させるならパーソルビジネスプロセスデザインへ
企業の人材不足を解消することや優秀な人材を採用していくためにも、ポテンシャル採用の導入を検討してみてください。ただ、「今までポテンシャル採用を行ったことがないので、軌道にのせることが不安だ」という企業様も少なくはないでしょう。
ポテンシャル採用を適切に行うための対策として、採用業務の代行サービスを依頼することも有効な選択肢の1つといえます。採用代行サービスに依頼してノンコア業務から手離れすることで採用担当者が採用の上流工程に関わることができるため、ポテンシャル採用をスムーズに推進するリソースの確保も可能になります。
これからポテンシャル採用を本格的に導入していきたいと考えている企業様は、ぜひ私たちパーソルビジネスプロセスデザインの『中途採用支援』を検討してみてください。
パーソルビジネスプロセスデザインは、総合人材会社であるパーソルグループの豊富な知識や経験を活かして、人事に関する課題を解決するサービスを展開しております。ぜひ、お気軽にご相談ください。