中途採用における母集団形成の重要性
人手不足が深刻な中途採用においても、新卒採用同様に母集団形成が重要となります。
2023年5月の有効求人倍率は1.31倍と、依然として人手不足が続いているのが昨今の採用情勢です。
中途採用では学内説明会などをおこなう機会などがなく、大々的な求人活動をするわけでもありません。加えて、自社に求める人物像に合致し、なおかつ即戦力となる人材を効率よく集める必要があります。
そのため、新卒採用よりも求職者を集めることが難航しやすい傾向にあるのです。
そこで役立つのが「母集団形成」です。
母集団形成により、自社の理想とする人物像にマッチする求職者を集めやすくなります。自社の理想とする人物像にマッチする求職者を、適切な人数集めることは、採用を成功に導くために欠かせません。
中途採用の課題
中途採用においては、以下のような課題がよく見受けられます。
課題(1)応募が集まらない
課題(2)求める人物像と応募人材がマッチしない
課題(3)内定を辞退される
課題(4)採用した人材が定着しない
課題(1)応募が集まらない
課題(1)応募が集まらない
即戦力を求める中途採用では、条件が多くなってしまい、そもそも応募が集まらないという課題が生じがちです。
育成に重点を置く新卒採用とは違い、中途採用では即戦力となる人材を求める傾向にあります。スキルや経験、資格などを重視するあまり、採用条件が厳しくなってしまうことも少なくありません。結果、その要件を満たす応募者が集まりづらくなってしまうのです。
市場にいる求職者と、自社の求める人物像とのギャップが大きくなるほど、その傾向は顕著になるでしょう。
課題(2)求める人物像と応募人材がマッチしない
課題(2)求める人物像と応募人材がマッチしない
中途採用では、自社の求めている人物像と応募してくる人材の条件がマッチしづらいことも課題です。
即戦力となる人材や、ピンポイントの条件を満たす人材を欲することの多い中途採用においては、自社が求めている人物像にマッチする人材がなかなか集まりません。
自社にマッチしない、条件を満たさない人材を採用してしまうと、今度は別の問題が生じます。育成や指導の機会が増えることで現場への負担を余計に増やしてしまったり、早期離職をされてしまいすぐに採用活動を再開しなければならなくなったりするのです。
妥協せず条件を遵守すると人が集まらず、条件を緩めると時間や手間、お金の面で大きなコストが発生してしまう……などは、中途採用でよく見られる課題です。
課題(3)内定を辞退される
課題(3)内定を辞退される
中途採用は、新卒採用よりも内定辞退が多い傾向にあります。
内定辞退というと新卒採用の話題を取り上げられることも多いですが、実際は中途採用における内定辞退も珍しくありません。
要因としては、競合他社とのバッティングや入社条件のミスマッチなどが挙げられます。
また、前の職場から引き止められ、内定をもらったものの転職を思い留まってしまうケースもあるようです。
課題(4)採用した人材が定着しない
課題(4)採用した人材が定着しない
入社にまで至っても、その後採用人材がなかなか定着しないことも、中途採用の課題です。
早期離職の原因も、以下のように多岐にわたります。
- 能力が自社とマッチする人材ではなく、まったく活躍ができなかった
- 入社後に条件面への不満が大きくなった
- 人間関係に悩みを抱えたなど
とくに、「想定と異なり、必要なスキル・能力を有していなかった」というのは、即戦力を求めて求人をおこなうことの多い中途採用ではよくあるケースです。
中途採用における母集団形成のメリット
ここまで解説してきた課題の解決に役立つのが「母集団形成」です。
具体的には、以下のようなメリットが得られます。
メリット(1)計画的な採用が叶う
メリット(2)自社にマッチする人材を集められる
メリット(3)採用成功率が上がる
メリット(4)採用人材の定着率が上がる
それぞれの詳細について解説します。
メリット(1)計画的な採用が叶う
メリット(1)計画的な採用が叶う
母集団形成をおこなうことで、新卒採用と比較し短期決戦である中途採用でも、計画的な採用活動を実現できます。
母集団形成によって採用の進捗状況が把握しやすくなり、ターゲットとなり得る人材を効率的に集められるのです。
ターゲットを明確にし、採用したい人物像、人数から母集団形成をおこなえば、的を絞った採用活動ができるようになります。そのため、無駄な時間やコストの削減も可能です。
短期勝負となる中途採用においても、うまく母集団形成を実施できれば、採用がスムーズに進みやすくなります。
メリット(2)自社にマッチする人材を集められる
メリット(2)自社にマッチする人材を集められる
新卒採用よりも条件が厳しくなりがちな中途採用においても、母集団形成をおこなうことで、自社にマッチする人材を集めやすくなります。
中途採用では即戦力を求めて求人をおこなうことが多く、スキルや経験など採用条件がピンポイントになりがちです。
そうした状況下でも、自社の事業内容や理念、求人に対して興味や関心を持つ母集団を形成することで、自社にマッチする人材を探しやすくなります。
また、母集団をデータで管理し属性の分析などをおこなえば、採用後に活躍できる人材の傾向や特徴などを掴みやすくなり、次回以降にも活かせるでしょう。
メリット(3)採用成功率が上がる
メリット(3)採用成功率が上がる
母集団形成では、採用の成功率も上がります。
母集団形成をもとに計画を立てれば、自ずとフェーズごとの採用活動の内容やターゲット像、ターゲット数が定まっていきます。それにより、自社に興味を持つ人材に対してピンポイントでアプローチができるようになり、効率よく集められるようになるのです。
自社の経営理念や事業に理解を持つ人材を集められれば、採用の成功率を高められます。また、両者の条件が合致する採用となるため、入社後には長期的な定着にも期待できるでしょう。
中途採用は、何らかの採用ニーズが発生した際におこなうことが多いため、短期間で候補者を決めなければならないことも少なくありません。そうした際に、必要な人材を迅速に採用できるようになるのは、大きな利点です。
メリット(4)採用人材の定着率が上がる
メリット(4)採用人材の定着率が上がる
効果的な母集団形成をおこなうことで、自社にマッチする人材の採用につながり、定着率も上がります。
母集団形成をおこなえば、自社の理念や事業内容に理解の深い、自社にマッチする人材の応募を促すことも可能です。応募段階においては、自社の社風に合わない人材や、求めるスキル・経験にマッチしない人材をスクリーニングする役目も果たします。
数だけをむやみに集める募集では、ミスマッチによる辞退・離職が少なくありません。
その点、感度の高い母集団を形成することで、採用におけるミスマッチを防げ、定着率のアップが望めます。
中途採用における母集団形成の方法
中途採用における母集団形成の方法
中途採用で母集団形成をおこなう際の方法として、以下の6つをご紹介します。
- 人材紹介会社
- 求人媒体
- ダイレクトリクルーティング
- リファラル採用
- ハローワーク
- SNS
1. 人材紹介会社
中途採用の母集団形成においては、人材紹介会社の利用が有効です。
専門性の高い担当者が、企業の採用要件に合致する人材を探してくれるため、自社にマッチする母集団の形成ができます。
人材紹介会社の料金体系は、成功報酬型であることが多いです。成功報酬型では、実際に採用できたときのみに費用が発生するため、余計なコストが生じません。
なお、人材紹介会社を選ぶ際には注意が必要です。得意とする業種や職種はそれぞれ人材紹介会社ごとに異なるため、自社に適しているかを慎重に検討するようにしましょう。
2. 求人媒体
求人サイトや求人情報誌といった求人媒体を利用することでも、母集団形成をおこなえます。
求人媒体を利用すれば、多くの求職者の目に留まる確率が高まります。採用ターゲットとなり得る人物がよく利用するであろう求人媒体を選択することで、効率的な母集団形成ができるでしょう。
Web上の求人サイトなら求職者情報も充実していることが多く、絞り込みなども可能です。また、登録型の求人サイトには、転職意欲の高い人材が多く集まっています。
求人サイトを使いこなすことで、効率的かつ質の高い母集団形成が叶うでしょう。
3. ダイレクトリクルーティング
中途採用の母集団形成においては、ダイレクトリクルーティングも有効です。
ダイレクトリクルーティングとは、その名のとおり企業が求職者に直接アプローチする採用手法を指します。
中途採用では、欲しい人材の条件がピンポイントに定まっていることが多いです。そのため、ただ待っていても、条件の合致する人材からの応募はなかなか集まりません。
しかし、多くの人材データベースの中から、自社が理想としている人材に直接アプローチすることで、効率的かつ効果的な母集団形成ができます。
即戦力となる人物を少人数採用したい場合に最適な方法であるため、中途採用の母集団形成と相性が良いです。
4. リファラル採用
リファラル採用も、中途採用の母集団形成に有効な手法です。
リファラル採用とは、「縁故採用」のことです。既存社員や元社員といった自社と関わりのある人物から、親せきや友人、知人などを紹介してもらいます。
自社と求職者の両方をよく知る人物からの紹介であるため、自社にマッチする人材の母集団形成をおこなえるのが特徴です。選考もスムーズに進みやすく、採用の確率も高まります。
リファラルで紹介される人材は、もともと転職意欲がないケースも少なくありません。そのため、優秀でありながらも転職市場には出ていない層と巡り会えるのは、リファラル採用ならではのメリットといえるでしょう。
5. ハローワーク
ハローワークを利用することで、無料で母集団の形成ができます。
ハローワークとは、厚生労働省が運営している職業安定所です。求人情報を無料で掲載できるので、コストをかけられない企業におすすめといえます。
ハローワークには、転職意識の高い人物しか来ないため、母集団の形成にも有用です。求人掲載期間の延長もできるので、母集団が足りないときにコストレスで応募の間口を広げられます。特定の要件を満たすことで、助成金の活用もできるようです。
6. SNS
X(旧Twitter)やInstagram、LINEなどのSNSを利用し、母集団を形成する方法もあります。
昨今では、幅広い層がSNSを利用するため、SNSを通じて効率的に母集団形成をしていくことも重要です。
SNSでの母集団形成の方法には、以下のようなものがあります。
- 自社のアカウントを開設し大々的に採用活動をおこなう
- SNS上で求人や採用イベントの告知をおこなう
- 採用ターゲットとなり得る人物に直接コミュニケーションを取る
多くの人が利用するSNSでうまく求職者の関心を惹きつけられれば、効率的な母集団形成が叶います。また、自社の知名度向上も見込めるでしょう。
YouTubeで公式チャンネルを開設しターゲットに役立つ情報を配信する方法もあります。
SNSごとにユーザー特性が異なるので、自社やターゲットに適したSNSの選択をすることが大事です。
中途採用の母集団形成において重要なポイント
多くの方法を使っても、やり方を間違えば母集団形成はうまくいきません。
中途採用の母集団形成は、以下のポイントに基づきおこなうことが重要です。
- ペルソナの定期的な見直し
- 募集要項の明確化
- ターゲットに合わせた採用手段の策定
- 魅力的かつ明瞭な求人原稿の作成
- 定期的な分析と見直し
- 応募者との接点
適切なペルソナ設定や募集要項の具体性を意識することで、効果的・効率的な母集団形成が叶います。
1. ペルソナの定期的な見直し
中途採用においては、ペルソナを定期的に見直すことが大事です。
自社が理想としている人物像をペルソナとして設定し、そのペルソナをもとに母集団形成・採用活動をおこなっていきましょう。
ペルソナとは、実在しそうな人物像を架空で具体的に設定し、ターゲットを定めることです。ペルソナの設定は具体的であればあるほど、採用の成功につながります。
ペルソナは、採用活動をおこなっていく中で都度微調整していくことも重要です。応募者と接点を持つ中で、想定していた人物像とズレが生じてくることがよくあります。最初に設定したペルソナに固執せず、定期的に見直しながら母集団形成をおこなっていきましょう。
2. 募集要項の明確化
採用ニーズが限定的な中途採用では、募集要項を明確にすることが大切です。
先述のとおり、中途採用においては「育成」よりも「即戦力」がキーポイントとなります。
採用後に即戦力として活躍してもらえる人材を獲得するためには、求人をおこなう際、求めているスキルや経験、資格などの募集要件を具体的かつ明確に設定することが重要です。
募集要件を具体化・明確化することで、より採用につながる母集団の形成ができ、採用後にも活躍してもらいやすくなるでしょう。
スキルや経験のほか、採用後の待遇や条件などを明確にすることも大事です。それにより自社の理念や事業内容に理解の深い母集団形成も叶い、採用後のミスマッチも防ぎやすくなります。
3. ターゲットに合わせた採用手段の策定
母集団形成と採用の手段については、採用ターゲットに合わせたものを選択することが非常に重要です。
たとえば、採用ターゲットがSNSを利用しない人物像であったとします。その場合、どれほど精力的にSNSで採用活動をおこなっても、効率的・効果的な母集団の形成はできません。
求人媒体にも「総合型」「特化型」と種類があります。それぞれ以下のように使い分けることが大切です。
- 総合型:とにかく多くの人の目に留まるようにしたい場合に使う
- 特化型:特定のスキルや経験を持つ人物に絞っていきたい場合に使う
採用ターゲットをしっかりと定めた上で、その人物に最も適した手段をとるようにしましょう。
4. 魅力的かつ明瞭な求人原稿の作成
4. 魅力的かつ明瞭な求人原稿の作成
中途採用においては、求職者にとって分かりやすく、魅力的に感じる求人原稿の作成も重要です。
情報量が少なくエビデンスのない求人原稿は、求職者が不安を感じ、応募が集まりづらくなってしまいます。そのため、給与や待遇、業務内容、応募資格、雇用条件などは、数字も用いて具体的かつ分かりやすく伝えることが大切です。
採用ターゲットのニーズや魅力的に感じる要素なども汲んだ上で、求人内容、メッセージを作成していきましょう。また、文字のみで構成するのではなく、写真などを使って視覚に訴える工夫も大切です。
母集団の数を増やすためには、応募条件を「必須条件」と「歓迎条件」に分けることも有効でしょう。
5. 定期的な分析と見直し
中途採用の採用活動をおこなう中でも、定期的に分析と見直しをおこない、ブラッシュアップしていくことが大切です。
定期的な分析と見直しをおこなうことで、母集団形成の精度向上が望めます。以下のようなデータを詳細に分析し、その後の採用活動に活かしていくことが大切です。
- どの方法、媒体からの応募者が多かったか
- どの方法、媒体からの応募が、多く採用に至ったか
- 母集団から取りこぼしてしまった人材はいなかったかなど
自社の採用に関するデータだけでなく、転職市場の動向や、その時々の求職者の傾向なども情報として集め、しっかりと分析しましょう。
中途採用は基本的に短期決戦であり、一度人材を確保できてもいつかは採用活動を再開しなければなりません。人材が必要となった際にすぐ採用できるよう、長期的な視野を持ち、データ分析・見直しを確実におこなっていくことが重要です。
6. 応募者との接点
応募者と積極的に関わりを持ち、自社の魅力をしっかりアピールすることも、母集団形成において必要です。
具体的には、以下のような手段で応募者との接点を増やしていきましょう。
- 会社説明会を開く
- オンラインでの質問会を開く
- 定期的な連絡を試みるなど
応募者の反応を見て、連絡頻度や内容は適切かといった確認・見直しをしていくことで、アプローチの精度を高められます。
また、応募者への対応の質も重要です。せっかく採用ターゲットに沿った母集団の形成ができても、その後の対応で取りこぼしてしまっては、投じたコストが無駄になってしまいます。
自社に興味を持ってくれる候補者には、手間を惜しまず丁寧な対応を心がけましょう。応募に対するサンクスメールや、質問があった際の迅速な返信などが有効です。
応募者は志望先の会社に対して不安を感じることも少なくないため、「この会社は一人ひとりの候補者を大切にしてくれる」「このまま選考に進んでも大丈夫」という安心感を与える対応が必要不可欠です。
中途採用における母集団形成の課題
中途人材の獲得を目指して母集団形成していくにあたって、次のような課題にぶつかることが多々あります。
- 母集団の数がなかなか確保できない
- 母集団の質が低くミスマッチである
課題の原因を理解し、適切な対策を講じていくことが、採用活動を成功に導く上で重要です。
1. 母集団の数がなかなか確保できない
中途採用においては採用ニーズが限定的であるため、母集団の数を確保するのが難航します。
とくに知名度の高くない中小企業やスタートアップ企業、ニッチな業界、そもそも人気のあまりない業種・職種などでは、その傾向が顕著です。
また、中途採用では即戦力を求めることが多いため、新卒採用よりもスキルや経験といった採用条件が厳しくなる傾向にあります。そのため、その条件に該当する母集団を形成することが難しくなるのです。
中途採用の母集団形成では、採用ブランディングや採用条件によって、企業ごとに確保できる数に大きな差が生じるでしょう。
2. 母集団の質が低くミスマッチである
中途採用においては、母集団の「質」に関しても、新卒採用以上に課題を抱えやすいです。
欠員を補助する目的や、スキル・経験を重視する傾向にある中途採用では、自社が求める条件が多くなりがちです。しかし、条件を絞りすぎると採用できないため、採用活動の過程で条件が緩くなり、採用ターゲットにブレが生じていくことが多々あります。そもそものペルソナ設定に誤りがあるケースもあるでしょう。
仮に候補者の数を集められたとしても、それが自社の求める、自社にマッチする採用ターゲットでいなければ、採用の成功にはつながりません。
自社とマッチ率の低い人材を採用しても、早期離職につながりやすい、即戦力として役に立たない、などの課題が生じます。余計な手間やコストがかかってしまう点も問題です。
母集団形成では自社の求めるスキルや経験といった条件面にフィットする「質」の高い人材の確保が必要ですが、それに苦戦を強いられる企業が少なくないようです。
中途採用における課題を解決するには
中途採用における課題を解決するには
上記のような課題を解決するには、以下のポイントを意識して母集団形成をしていきましょう。
- 母集団形成の手法を複数組み合わせる
- 母集団形成の時点で数より質にこだわる
どのような要領でおこなっていくと良いのか、解説します。
1. 母集団形成の手法を複数組み合わせる
中途採用の母集団形成では手法を1つに絞らず、チャネルを複数組み合わせることが大事です。
自社に適した母集団形成の手法を選択することが重要なのは、新卒採用の母集団形成と同様です。しかし、複数のチャネルを組み合わせることの重要性は、新卒採用に比べてより高くなります。先述のとおり、採用対象となる母数がそもそも少ないためです。
求人情報やその内容、また自社の事業内容などがしっかりと認知されなければ、そもそも母集団は形成できません。そのため、複数のチャネルからアプローチし、まずは認知度や理解度を高めていきます。
その上で、採用ターゲットに沿ったチャネルをいくつか試み、あらゆる角度からの獲得を狙っていきましょう。
認知度を高めるためには、オンラインとオフラインの組み合わせも有効です。
たとえば、SNSと求人広告、企業説明会の両方からアプローチしていくことで、より多くのターゲットに自社の存在を知ってもらえます。
2. 母集団形成の時点で数より質にこだわる
母集団形成の時点から質にこだわって候補者を集めていくと、効率的な採用活動ができます。
母集団の数を集められたとしても、その質がよくなければ、採用プロセスに余計な時間や手間、コストがかかってしまうだけで、成功にはつながりません。
採用ターゲット・ペルソナ設定をしっかりと明確にした上で、母集団を形成する時点から、そのターゲットに絞って集めていくことが重要です。
短期決戦が1つのキーとなる中途採用においては、とくに数よりも質にこだわった母集団形成が大切といえます。
質にこだわり形成することで、効率的な採用活動となり、また成功確率も高まるでしょう。
母集団形成を用いた中途採用事例
最後に、母集団形成によって中途採用を成功させた事例をご紹介します。
自社でも実践できる部分があるはずですので、参考にしてみてください。
1. イオン株式会社
イオン株式会社では、以前まで各店舗で採用活動をおこなっていました。しかし、その方法では店舗側の業務負荷が大きく、応募者に対してタイムリーな対応もできていませんでした。
そこで、グループ各社をもまたぐ採用活動の一元化に着手します。グループとして母集団を多く持つことによって、バリエーションに富んだ人材を、本人の希望も踏まえ各社・各店舗に振り分けるなど、柔軟性高く配置できるようになりました。
イオン株式会社は、自社のリソースだけで採用活動の変革を成し遂げたわけではありません。母集団形成の仕方や媒体選定なども含め、パーソルビジネスプロセスデザインの知見やリソースを活用しながら採用活動の見直しに取り組んできました。
2018年5月にトライアルを開始し、数値を用いて効果を測定した結果、目標数値を上回る成果がありました。2018年11月には合計100店舗で取り組みを始め、採用人数が180%向上、その後最大420まで参画店舗が増加しました。今後もグループ全体への拡大を目標に、積極的に展開していく意向を示しています。
※参考:
PERSOL(パーソル)グループ「従業員58万名を誇るイオンが挑む、グループ一体での採用活動の革新とは?」2. 日向市役所
宮崎県北東部に位置する日向市では、「企業誘致」や「移住施策」などを進めていた中で、日向市を知らない方向けの効果的な情報発信の方法を模索していました。そこで、パーソルビジネスプロセスデザインからの提案を機に、3年がかりでワーケーションに着手します。
日向市を知らない方にいきなり「うちに移住しませんか?」と声をかけても当然芳しい反応は得られません。そのため、ワ―ケーションで実際に滞在してもらい観光もしてもらう、という方法で、まずは日向市を「いいね」と思ってもらうように工夫を施しました。
試行錯誤の末、2020年6月より本格的にワーケーションをスタートします。結果として、おおよそ80社、延べ1,100名もの人々に足を運んでもらえ、日向市の知名度向上も果たしました。
最近では、県外の企業がシェアオフィスに登記する事例も出てきているなど、ワーケーションの取り組みは依然として順調のようです。
※参考:
PERSOL(パーソル)グループ『「企業誘致」「移住施策」の更なる推進へ“ワーケーション”に着手。延べ1,100名の方が訪れ、満足度は95%に!』まとめ
中途採用の応募が集まらない、ミスマッチな人材ばかりが集まる、といった課題の解決には、母集団形成が役立ちます。しっかりと計画立てて母集団形成をおこなっていくことで、計画的な採用や自社にマッチした人材の採用、定着率の向上が期待できます。
母集団形成を実施する方法は多くありますが、やみくもに試すことよりも、各方法をどういう目的で誰に対して使っていくかが重要です。ターゲット像に合致したものを複数組み合わせ活用していきましょう。
「数」と「質」の両面を意識して母集団形成をしていくことで、思うような成果が得られるはずです。本記事を参考に、ぜひ実践してみてください。