メンタルヘルス不調の従業員と面談する際の注意点とは?メンタルヘルスケアの適切な対応を徹底解説

メンタルヘルス不調の従業員と面談する際の注意点とは?メンタルヘルスケアの適切な対応を徹底解説

メンタルヘルスの不調というと、うつ病をはじめとした精神疾患をイメージする方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、不安や意欲の低下などストレスによって引き起こされる広い範囲の心身の変化を指すものです。

そのため、誰もがメンタルヘルス不調に陥る恐れがあるといえます。ただ、安易な対応や対応の遅れは重症化に繋がってしまう可能性があるため、ポイントを押さえた速やかな対応が必要になるのです。

そこで本記事では、メンタルヘルス対策として管理職が面談を行う際に押さえておきたい注意点を解説します。また、メンタルヘルス不調の兆候は専門家ではない人には捉えづらいものです。そのため、メンタルヘルス不調を見逃さないために必要な視点についても解説していきます。

目次

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    メンタルヘルスの不調社員が出てしまう背景

    厚生労働省の調査では、「仕事に関するストレス」のうち主要な要因として以下の4つが上位を占めています。

    • 仕事の量(43.2%)
    • 仕事の質(33.6%)
    • 仕事の失敗、責任の発生など(33.7%)
    • 対人関係(25.7%)

    ※参考:厚生労働省「令和3年度労働安全衛生調査」

    この結果を見ると、業務量の多さだけでなく「質の高さ」や「責任の多さ」など、多岐に渡る要因がストレスになることが分かります。また、職場の人間関係で悩んでしまい、心理的な負担になっている人も多いといえるでしょう。

    ここからは、これら4つの要因について詳しく解説していきます。

    ストレス要因(1)仕事の量

    ストレスの要因として最も高い割合なのが、「仕事の量」です。繁忙期などで一時的に業務量が増えるのではなく「慢性的な業務過多」になってしまうと、心身の疲弊を招いて不調を引き起こす原因となります。

    業務過多により懸念されるのが“長時間労働”です。生活経済学会の論文によると、正社員を対象とした調査では、男性では4時間以上、女性では2時間以上の残業がメンタルヘルス不調を引き起こしやすくなったことが分かりました。

    ※参考:生活経済学研究「正規労働者のメンタルヘルスに影響を与える職場の要因」(PDF)

    会社としては、業務のバランスや労働時間数を把握し、過重労働になっていないかをチェックすることが必要だといえるでしょう。

    ストレス要因(2)仕事の質

    業務量だけでなく、「仕事の質」も多くの人がストレスを感じる要因の1つです。仕事の質によるストレスというのは、「仕事中は業務のことを常に考える必要がある」「専門知識や技術が求められる」といった、精神的な負担が大きい状態になってしまうものです。

    単純な業務量だけでなく、従業員がどれほど精神的負担を感じているかを捉えることが重要だといえるでしょう。

    ストレス要因(3)仕事の失敗、責任の発生など

    仕事での失敗は避けて通れないものですが、その際に過度な叱責を受けたり、理不尽な怒られ方をしたりすると失敗が怖くなってしまいます。そうした「失敗への恐怖」や「不安」が強くなり、積極的な行動が出来なくなる場合もあるでしょう。

    また、仕事で感じる「責任」も重要なストレス要因です。求められる責任が重いほどストレスフルな状態に陥りやすいといえます。

    職業性ストレスを説明した「仕事の要求度・コントロールモデル」では、業務の量と質、人間関係、責任の重さなどから構成される要求度が高いにもかかわらず、裁量権がない状態が最もストレスが高いとされています。

    ※参考:厚生労働省「要求度-コントロールモデル」

    「責任が発生するのに、自分で決められる範囲は限られている」という状態であると、強いストレスを引き起こしやすいため、注意が必要でしょう。

    ストレス要因(4)対人関係

    職場の対人関係上の問題も、働く人を悩ませるストレスの1つです。厚生労働省の「安全衛生調査」によれば、対人関係を負担に感じるのは、男性22.6%、女性29.1%と、女性の方が負担に感じている傾向がみられます。

    ※参考:厚生労働省「令和3年度労働安全衛生調査」(PDF)

    また、上司との関係で何らかのハラスメントを受けるなど被害が生じるケースもあるでしょう。同じく厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」では、過去3年間にパワハラを受けた人が31.4%、セクハラが10.2%と、数字を見てもハラスメントが珍しくないことが分かります。

    ※参考:厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」(PDF)

    対人関係の問題は、業務に直接的に関係しないことも多く、従業員としても相談しづらい場合が多いでしょう。普段から管理職と部下が話しやすい関係性を作り、社内外の相談窓口を活用するように勧めていくことが求められます。

    面談で押さえておきたいメンタルヘルス不調のサイン

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    では、実際にメンタルヘルス不調に陥った従業員の面談を行う場合、どのような点に気を付ければ良いのでしょうか。

    面談する際に把握したいメンタルヘルスの不調については「感情・認知面」「行動面」「身体面」の3つに分けて考えていく必要があります。次からは、それぞれの面からどういったサインが見られるかを解説していきます。

    感情・認知面でのメンタルヘルス不調のサイン

    ストレス状態が続くと、さまざまな感情や考え方の変化を引き起こします。サインの例を挙げて、それぞれ見ていきましょう。

    3-1. イライラや不安が強くなる

    ストレス反応として生じやすいのがイライラや不安感です。これは、ストレスに対抗するために自律神経の1つである交感神経が過剰になり、感情をコントロールする脳内のバランスが変化するためです。

    「きつい言動が増える」というように外部に表現される場合もあれば、「過度に自分を責める」というように自分に向けられる場合もあります。自分に向けられる場合は、憂うつ感が高まり意欲が低下することもありますので、注意が必要でしょう。

    また、「人前でうまく話せなくなった」「発作が起きて電車に乗れない」といった様子がみられる場合は、過度な不安が生じている可能性があります。何らかの精神疾患を発症している可能性もありますので、医療機関への受診を勧める必要があるでしょう。

    3-2. ネガティブな考え方にとらわれてしまう

    ストレスにより気分の落ち込みが続くと、考え方がネガティブになってしまうこともあります。「自分はダメな人間だ」「自分のせいで周りに迷惑をかけている」などと、実際の出来事よりも悲観的に捉えてしまうことが増えてしまいますので、注意が必要です。

    行動面でのメンタルヘルス不調のサイン

    4-1. 遅刻や欠勤が増える

    「意欲の低下」や「外出への億劫さ」が出てくると、遅刻や欠勤が増えることがあります。また、表情が乏しくなり、口数が減るといった変化もみられます。

    大切なのは、こういった変化が起きている理由を探ることです。「電車に乗ると動悸が強いために何度も下車している」など、強い不安が背景にうかがわれる場合はパニック障害の可能性もあります。また、「夜眠れずに起床が難しい」という場合は不眠症に陥っている可能性も考えられます。

    ただ、理由を話すことに抵抗を感じる従業員も少なくありません。「あなたのことを心配している」という態度で話を聞いてあげることが安心感に繋がるでしょう。

    4-2. 飲酒や喫煙量が増える

    「お酒の量が増えている」「タバコの量が増えた」といった変化も、ストレスが過度になっている兆候です。

    飲酒や喫煙といった嗜好に基づく行動は、一時的にはストレスを軽減してくれるものです。しかし、長期的になると耐性ができて少量では満足できなくなり、依存症に陥ってしまう可能性もあります。また、健康リスクの観点からも、過度な摂取はストレス対処として有効とはいえません。

    「タバコを吸わないと落ち着かないことがあるか」「寝酒をしないと眠れない状態ではないか」といったポイントを押さえておくと良いでしょう。

    身体面でのメンタルヘルス不調のサイン

    ストレスは心の反応だけではなく、身体にも影響を及ぼします。頭痛、胃痛などの特定の部位に影響を与える場合や、緊張状態により眠れなくなるということが多くあります。

    5-1. 頭痛やめまい、胃痛などの身体の不調が増える

    身体の不調として多いのが、頭痛やめまい、吐き気、胃痛などの症状です。
    その他にも、喉が詰まった感覚や、不安の強さに伴う動悸もみられます。心理面に比べても割と自覚されやすいため、これらの症状がないかを把握しておくと良いでしょう。

    5-2. 眠れなくなる

    不眠の症状もストレスに対する症状としてよくみられるものです。不眠はうつ病との関連が強い症状とされており、注意が必要だといえます。アメリカ国立衛生研究所の研究によれば、不眠がみられる人は、そうでない人よりも約2倍のうつ病発症のリスクがあることが分かっています。

    ※参考:Chang PP et al.(1997)「Insomnia in young men and subsequent depression. The Johns Hopkins Precurors Study.」

    睡眠時間が十分に取れているか、不眠が慢性化していないかといったポイントを把握することが重要です。

    メンタルヘルス不調の従業員と面談をする際の注意点

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    では、メンタルヘルス不調の従業員と面談する姿勢として、どのようなポイントに注意すれば良いのでしょうか。ここでは、3つの注意点を挙げて解説していきます。

    注意点(1)共感的な態度と冷静さを使い分ける

    メンタルヘルスの不調が疑われる従業員には、共感的な態度をもって傾聴するようにしましょう。上司と部下という関係性では、ついつい「指導しないといけない」との思いが強くなりがちです。そのため、教育的な態度で接してしまうことが少なくないでしょう。

    しかし、教育的な態度ではなくて、従業員の身になったつもりで傾聴していく態度が必要なのです。従業員が「自分の伝えたいことを分かってもらえた」「こんなことを話してもいいんだ」と思うことができれば、安心感を持って相談できるはずです。

    一方で、メンタルヘルス不調に陥っている時には、健康な状態よりも判断力が低下していることが少なくありません。「一刻も早く辞めたい」「チームから外してほしい」などといった切迫感をもって訴えられると、極端な判断をしてしまいかねません。

    何らかの不調が疑われる場合には、重要な決定はできるだけ慎重になる方が良いでしょう。部下の一方的な思いを鵜呑みにせず、「冷静に諭す」という関わりも時には必要になってきます。

    注意点(2)個人情報に配慮する

    面談時には、従業員の個人情報に配慮することが欠かせません。心の不調や内面的な悩みは、同僚にはあまり知られたくないものだからです。

    周囲に知られてしまう可能性を考えて、人目につかない場所で話を聞いたり、秘密は厳守されることをきちんと伝えたりする、といった配慮が必要でしょう。

    また、面談の内容により不当に評価されるのではないかと心配する従業員もなかにはいます。面談内容によって評価に響くことはない、ということや、伝えてほしくない事項は伝えない約束をするなど、安心して話せる環境づくりを行いましょう。

    注意点(3)産業保健スタッフや社外の専門家の判断をあおぐ

    面談をしていても、どのような対処が適しているか分からない場合は、抱え込まず専門家の指示をあおぐことも1つの方法です。

    従業員が訴える不調が一時的な反応なのか、何らかの精神疾患の症状なのかは、判断が難しいものです。その従業員に主治医がいれば、現在の状態についてどのように説明されているのかを尋ねてみると良いでしょう。判断がつかない場合には、社内の産業保健スタッフに適切な対処を相談しましょう。

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