会社として取り組むべきメンタルヘルスケア対策とは?職場での導入事例などを徹底解説

会社として取り組むべきメンタルヘルスケア対策とは?職場での導入事例などを徹底解説

メンタルヘルス対策は従業員にとってより良い労働環境を整えるために欠かせません。厚生労働省による令和3年度の調査では、50人以上の事業所においてメンタルヘルス対策を実施している割合は94.4%と非常に高くなっています。

しかし、対策をしなかったことで具体的に起こりうる経営上のリスクや、従業員のケアを実施する際にどのようなポイントに配慮すべきか分からない担当者も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、メンタルヘルス不調によって生じる悪影響メンタルヘルス対策の職場での導入事例メンタルヘルス対策を実施する際に注意したいポイントなどについて解説していきます。

目次

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    メンタルヘルスとは?

    そもそもメンタルヘルスとは、“心の健康”を指す言葉です。精神が健康に保たれることで、仕事に対する意欲を絶やすことなく、いきいきと働けるようになるものです。

    ですから、心の健康が損なわれた状態を“メンタルヘルス不調”と呼びます。メンタルヘルス不調は、うつ病などの精神疾患にかかっている状態だけを指す言葉ではありません。何らかのストレスや問題を抱えていて気分が落ち込んでいる人も含まれます。

    会社としては従業員がメンタルヘルス不調を起こさないようにさまざまな施策を考え、社内で実行できるよう整えていくことが求められています。

    会社としてメンタルヘルス対策に取り組むメリットは?

    現代ではその必要性が広く叫ばれているメンタルヘルス対策ですが、具体的には会社にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。3つの観点から説明していきます。

    メリット(1)休職・離職率の低下

    メンタルヘルス対策に取り組むことで、従業員の休職や離職を防ぐ効果が見込まれます。メンタルヘルス不調により退職に至ってしまう割合は正社員で27%であり、がんや難病で退職する割合よりも高いことが分かっています。

    また、うつ病をはじめとする精神疾患で考慮しなければならないのが“再発リスク”です。メンタルヘルス不調で休職した従業員のうち、再発してしまった事業所の割合は32.4%となっており、「3分の1が再発を繰り返す」ということがいえるわけです。

    メンタルヘルス不調により一度休職すると、再発を繰り返してしまい離職に至るというケースが一定数みられます。高齢化による人材不足が懸念されるなか、貴重な人材が働けなくなるのは企業にとって大きな痛手です。メンタルヘルス対策に取り組んで、従業員の休職や離職を防ぐ動きをしていくべきでしょう。

    メリット(2)生産性低下の抑止

    メンタルヘルス不調の原因を明らかにし、職場改善に繋げることで生産性の低下を抑止することができます。心の健康が損なわれた状態では、意欲や集中力が低下し、従業員のパフォーマンスも低下してしまう可能性があります。

    職場環境の改善を行うためには、さまざまなコストが発生しますので、どうしても消極的になってしまうことも多いでしょう。しかし、東京大学大学院の教授らによる研究でも、職場環境改善にかかるコストよりもメンタルヘルスの予防対策をするほうが約2〜3倍のメリットが得られることが示されています。

    メンタルヘルス対策は、生産性低下を防ぐという守りの側面だけでなく、生産性向上に繋がる“攻めの施策”の側面もあるのです。

    メリット(3)重大なミスの防止

    メンタルヘルス対策には、「従業員の重大なミスを未然に防ぐ」といったリスクマネジメントの側面もあります。メンタルヘルス不調に陥った状態では、集中力や判断力が低下し、健康な状態では起こりえないミスが生じる可能性があります。

    被害が少ない小さなミスであれば問題ありませんが、他社に損害を与えてしまうような重大なミスであれば、会社としての責任を問われかねません。会社を守るための1つの施策としても、メンタルヘルス対策が求められているのです。

    会社内でメンタルヘルス不調になる原因

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    では、働くうえでメンタルヘルス不調に陥ってしまう原因はどのような点にあるのでしょうか。職業性ストレスに関するメカニズムをモデル化した『NIOSHモデル』では、職場のストレスをはじめとして4つの要因が急性の反応や症状を引き起こすとされています。

    では、NIOSHモデルで挙げられている4つの要因について詳しく解説してみましょう。

    要因(1)職場のストレス

    仕事そのものや仕事の環境、人間関係など、職場内で生じるストレス要因が1つ目に挙げられます。NIOSHモデルでは、職場のストレスとして以下の9つの要因が例示されており、これらの複数の要因が複合して生じるといえるでしょう。

    職場環境 / 役割上の葛藤、不明確さ / 人間関係、対人責任性 / 仕事のコントロール / 仕事の量的負荷と変動性 / 仕事の将来性不安 / 仕事の要求に対する認識 / 不充分な技術活用 / 交代制勤務

    要因(2)プライベートのストレス

    メンタルヘルス不調を生じさせるのは、職場内のストレスだけではありません。育児や介護、家庭内での不和、死別などプライベートで起こるストレスも疾患の発症に影響してしまいます。

    会社としては、従業員の置かれている個別の事情を可能な限り把握し、しっかりと相談できるシステムを整えておく必要があるでしょう。

    要因(3)個人の性格や特性

    年齢や性格、結婚しているかどうかなどの要素もストレスの程度に影響します。例えば、競争心や野心が強く仕事に熱心な性格の人は、ストレスとの関連が深いとされています。特に、血圧や脈拍が上昇しやすく、循環器系の疾患が発症しやすいのです。

    NIOSHモデルでは、性格の他にも以下の6つの要因が挙げられています。ストレスが強く出やすいと考えられる従業員に対しては、個別にフォローしていくことが求められるでしょう。

    年齢、性別 / 結婚生活の状況 / 雇用保証期間 / 職種(肩書)/ 性格 / 自己評価(自尊心)

    要因(4)周囲のサポート不足

    同僚や上司など、周囲からのサポートが無い状況もストレスの要因となってしまいます。

    同僚や上司からのサポートは、職場のストレスを緩和させるものです。従業員が気軽にコミュニケーションを取れ、小さな悩みでも上司や同僚に話せる環境がストレスを軽減させますので、サポートができる環境を整えるべきでしょう。

    会社内でメンタルヘルス不調者が出てしまったら

    では、実際にメンタルヘルス不調者が出てしまったら、会社としてどのように対処すればよいのでしょうか。ここでは、3つの対処について解説します。

    対処(1)産業医による面談を行う

    メンタルヘルス不調者が出た場合や、何らかの不調であることが疑われる場合は、産業医面談を実施しましょう。産業医に業務の遂行が可能かどうかの判断をあおぎ、環境改善や休職などの対処方針を考えてもらうのです。

    ただ、産業医面談は会社側から勧める義務はありますが、強制力はありません。従業員のなかには「評価が下がってしまうのではないか」という懸念から、面談に対して消極的になってしまうことも少なくないでしょう。面談勧奨のタイミングを見定めて、評価が下がることもなければ秘密も守られることをしっかりと説明してあげることが重要です。

    対処(2)医療機関への受診を勧める

    産業医から就労継続が難しいと判断された場合には、医療機関への受診を勧めます。産業医は「働けるかどうか」を判断する役割であるため、当然ながら治療や診断のためには医療機関への受診が必要になってきます。

    治療には、多くの場合「薬物療法」が用いられます。しかし、効果が表れるまでには時間がかかることもあるため、重症化してしまう前に治療を開始することが望ましいでしょう。

    対処(3)休職から復職までのフォローを行う

    従業員が休職期間に入ったら、安心して休養に専念してもらえるよう、必要な情報を提供していくことも重要です。例えば、休職に関する会社内のルールや休職中の連絡方法、傷病手当金といったサポート制度など、具体的な情報を伝えてあげるのです。

    主治医や産業医から「復職可能」という判断がなされれば、従業員がスムーズに復帰できるような体制を整えておきましょう。勤務時間や出勤体制といった就業上の配慮や、復帰先の職場を従業員の希望や特性にあわせて決定していくことも必要になります。

    会社が取り組むべきメンタルヘルス対策の5つのステップ

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    メンタルヘルス不調者が出てしまった場合やその予防として「メンタルヘルス対策」を進めていくわけですが、その際には以下のような5つの視点から対応を考えていくことが重要になっていきます。

    • メンタルヘルス推進体制づくり……心の健康計画策定、取り組み内容の周知
    • セルフケア……従業員自身が不調に気づけるよう意識を啓発する
    • ラインケア……管理職が従業員の不調に気づけるよう研修機会を設ける
    • 事業場内産業保健スタッフによるケア……産業医や産業保健スタッフとの連携
    • 事業場外資源によるケア……医療機関やリワーク機関との連携

    ここでは、これらの5つのステップについて詳しく解説していきます。

    ステップ(1)メンタルヘルス対策推進体制づくり

    メンタルヘルス対策を行うためには、方針を明確にし、具体的な実行策を決定する必要があります。また、メンタルヘルス不調者の判定を誰が行うのか、どの委員会で話し合うのかなど、「決定権」について話し合うことも不可欠です。

    方針が決定したら、従業員に対して周知を行っていきます。会社としてメンタルヘルス対策をどのように位置づけて何を行うのかをまとめ、理解を促していくことが重要になります。

    ステップ(2)セルフケア

    セルフケアとは、従業員自身が行うメンタルヘルスケアです。

    会社としては、従業員が自分自身でメンタルへルス不調の兆候に気付いて早期に対処できるよう、啓発的な活動を行っていきます。

    具体的には、年1回のストレスチェックや疲労度のチェックなどを行い、自分の健康状態を知る機会を増やしていくと良いでしょう。また、セルフケアに関するマニュアルやWebマガジンなどの発行によってメンタルケアの知識に触れる機会を増やすことも有効な方法といえます。

    ステップ(3)ラインケア

    ラインケアとは、管理職をはじめとする管理監督者が行うメンタルヘルスケアをいいます。従業員のメンタルヘルス不調の兆候に気づいて対応を行ったり、不調の原因となる環境を改善したりすることが主なラインケアの方法です。

    会社としては、管理職に対してメンタルケアや傾聴に関する研修を行い、従業員の不調に気付けるようサポートします。また、「メンター制度」を導入して、相談先を管理職以外にも分散するような仕組みを整えている会社もみられます。

    ※「ラインケア」について詳細を知りたい方は下記のコラムも併せてご参照ください

    ステップ(4)事業場内産業保健スタッフによるケア

    事業場内産業保健スタッフとは、産業医や保健師、公認心理師などの専門スタッフを指します。専門スタッフによる相談や職場の巡回、復職可否の判断などを行っていきます。

    従業員にとって、専門のスタッフに相談するのは「ハードルが高いな」と感じられることが少なくありません。そのため、産業医の巡回相談を月1回は実施するなど、専門のスタッフを身近に感じてもらえるような体制を整えておくことが重要になるでしょう。

    ステップ(5)事業場外資源によるケア

    事業場外資源とは、精神科や心療内科などの医療機関、相談窓口などメンタルケアに活用できる社外の資源を指します。従業員が休職に至った場合には、医療機関の主治医やリワーク施設と連携し、病状の回復度を判断していく必要があります。

    また、外部講師に依頼して研修を行ったり、電話相談窓口を委託して設置したりすることも、メンタルヘルス不調を未然に防ぐために有効だといえるでしょう。

    社内でメンタルヘルス対策を行う企業の取り組み事例

    メンタルヘルス対策を推進している企業では、どのような取り組みがなされているのでしょうか。ここでは、2つの事例を挙げて解説します。

    事例(1)ヤフー株式会社:「1on1」でメンタルヘルス不調を早期に発見

    国内のIT大手であるヤフー株式会社には、「1on1」という、上司と部下が1対1で面談を行う制度があります。この「1on1」により、業務のなかでは相談できない小さな悩みを気軽に相談できる時間が生まれ、上司が不調のサインを早期に掴むことに役立っています。

    「1on1」や「生活リズム表」など、個人に合わせたきめ細やかな対応を行うことで、メンタルヘルス不調を未然に防ぎ、再休職を防いでいるのがヤフー株式会社の特徴でしょう。

    事例(2)オムロンソーシアルソリューションズ株式会社

    オムロンソーシアルソリューションズ株式会社では、「時間外労働が月40時間超」「部署配属後3か月」などの条件に該当した従業員に『疲労度チェック』を行っています。その結果、健康リスクが高いと判断された従業員には必ず面談を行い、健康状態に加えて勤務環境を詳しく把握しているようです。

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