【大学教授監修】メンタルヘルス対策は何をすれば良いのか?

【大学教授監修】メンタルヘルス対策は何をすれば良いのか?

近年、メンタルヘルス対策の重要性が高まっており、健康経営を推進するには欠かせません。メンタルヘルス不調者が増加すると、休職や離職、さらには業績悪化を招き、企業には大きなリスクが生じてしまいます。

ただ、メンタルヘルス対策といっても、具体的にはどのような取り組みを行えばよいのか分からず、思うように導入が進まない企業もあるでしょう。

本記事では、メンタルヘルス対策として何をすればよいか分からない方に向けて、定義必要性悪化の原因基本的対応について解説していきます。メンタルヘルス対策について正しく知ることで、不調の早期発見をして企業のパフォーマンス向上を目指しましょう。

この記事の監修



新井 卓二 先生

山野美容芸術短期大学 教授 
新井研究室 主宰
日本ヘルスケア協会 健康経営推進部会 副部会長
社会的健康戦略研究所 運営委員 特別研究員

目次

    もっと見る▼

    現代に必須な「メンタルヘルス」とは?

    「メンタルヘルス」とはよく耳にする言葉ですが、具体的にはどのような状態を指す言葉なのでしょうか。まずは、企業にとって必要なメンタルヘルス対策の定義や必要性について説明します。

    メンタルヘルスの定義

    メンタルヘルスとは、心の健康”を指す言葉です。職場のメンタルヘルス対策は、従業員の心の健康を守るための施策であるといえるでしょう。

    では、“心が健康な状態”とは、どのような状態を指すのでしょうか。
    世界保健機構(WHO)は、人間の健康な状態について次のように定義しています。

    「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。」

    ※引用:世界保健機関(WHO)憲章とは | 公益社団法人 日本WHO協会

    また、メンタルヘルス不調について、厚生労働省は以下のように定義しています。

    「精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むものをいう。」

    ※引用:厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」

    WHOと厚生労働省の定義からは、健康な状態とは病気であるかどうかに関わらず、生活の質が保たれた状態”であるといえるでしょう。そして、メンタルヘルス不調とは、うつ病や適応障害といった精神疾患が発症した状態だけではなく、業務上のストレスや職場の人間関係上の悩みなど、幅広い問題を含むものであることが分かります。

    つまり、職場のメンタルヘルスにおいては、精神疾患の発症を抑止するといった個人的な対策だけでは十分とはいえません。心の健康を保つため、職場環境や人間関係の改善などとあわせて組織的な対策を講じることが必要なのです。

    メンタルヘルス対策の必要性

    労働安全衛生調査によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は、61.4%(令和2年)であり、半数以上の事業所がストレスチェックや職場環境の改善などの対策に取り組んでいます。

    ※参照:令和2年度 労働安全衛生調査(実態調査)

    しかし、厚生労働省が定める第 13 次労働災害防止計画では、「メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上とする」という目標を掲げていますので、未だメンタルヘルス対策が十分な状態とはいえません。

    社会的にも導入が推奨されているメンタルヘルス対策ですが、具体的には企業にとってどのような必要性があるのでしょうか。2つほど挙げてみましょう。

    従業員の生産性を向上させるため

    こころの健康が損なわれると、仕事のパフォーマンスに影響したり、遅刻や欠勤が増えたりすることが起こりやすくなります。その結果、業務の質が低下してしまい、企業経営の安定性に影響を及ぼすこともあるでしょう。

    働きやすい環境を整えることは、メンタルヘルス不調を防止するだけではなく、従業員のモチベーションを高め、生産性を向上することにもつながります。経営者は、日ごろから従業員の立場に立って環境改善を意識して取り組むことが必要でしょう。

    リスクマネジメントのため

    メンタルヘルスが悪化すると、集中力や意欲が低下し、正確な判断が難しくなることがあります。ケアレスミス程度で済めばよいのですが、時には重大なミスにつながってしまうかもしれません。そうなると、お客様にも迷惑をかけてしまうこととなり、企業にとっては大きな損失となってしまうでしょう。

    メンタルヘルスが悪化する要因とは

    mental-health_body01.png

    メンタルヘルスが悪化すると、個人のみならず企業経営にもリスクが生じます。では、実際にはどのような要因がストレスとなり、メンタルヘルス不調が起こるのでしょうか。

    業務による心理的負荷の増大

    メンタルヘルスが悪化する原因として、業務による心理的負荷の増大が挙げられます。厚生労働省が行った令和2年の労働安全衛生調査では、「従業員が職業生活において感じているストレスの原因」について調査が行われました。その結果、「仕事の量」が42.5%、「仕事の失敗、責任の発生等」が35.0%、「仕事の質」が30.9%と、業務量の増大、業務に高い水準や責任を求められることがストレスの原因となっていることがうかがえます。

    ※参照:令和2年度 労働安全衛生調査(実態調査)

    自由に判断できず、多忙だけど上司や同僚からのサポートが少ない

    職場のメンタルヘルスが悪化する原因を説明した「仕事の要求度・コントールモデル」では、以下のような状態で最も高ストレス状態になるとされています。

    • ・業務量が多い
    • ・仕事の裁量権や自由度が低い
    • ・上司や同僚のサポートが少ない

    管理職は、部下のサポートや業務量の調整のみならず「どこまで仕事を任せるのか」ということまで考えておく必要があるでしょう。

    仕事外からの影響

    アメリカ国立労働安全機構が提唱する「NIOSH職業性ストレスモデル」では、仕事以外の要因が影響し、ストレス反応が生じるとされています。仕事以外の要因とは次の3つです。

    ※参照:東京都「NIOSHの職業性ストレスモデル」

    • ・個人の性格特性や性別などの「個人的要因」
    • ・家族関係が悪い、親の介護負担が大きいなどの「仕事以外の要因」
    • ・同僚や家族のサポートの有無を指す「緩衝要因」

    NIOSH職業性ストレスモデルからは、仕事上のストレスが軽度であっても、性格やプライベートの事情が影響して高ストレスとなる可能性があるといえるでしょう。また、周囲のサポートがストレスを緩和させる要因となるため、気軽に相談できる存在”が必要だといえます。

    メンタルヘルス対策の基本対応

    mental-health_body02.png

    従業員の精神的健康を守るためには、具体的にどのような対策をとればよいのでしょうか。基本の対応として行うべき4つのケアについて解説します。

    セルフケア

    個人が感じているストレスに対処し、軽減させることをセルフケアと呼びます。従業員に対しては教育や研修の機会を設けて、正しい対処法を身に付けられるよう努める必要があります。また、ストレスチェックを行って、自分自身の精神状態を知り、ストレスに気づく機会を作るような施策も有効でしょう。

    ラインによるケア

    ラインによるケアは、職場の管理監督者が部下に対して行うメンタルヘルスケアを指す言葉です。例えば、業務量や裁量の調整といった職場環境の改善や、従業員からの相談対応などが含まれます。日々従業員に接する者として、部下がメンタルヘルス不調に陥っていないかを観察し、気にかけることが重要です。

    事業場内産業保健スタッフ等によるケア

    事業場内産業保健スタッフ等によるケアとは、産業医や衛生管理者、保健師などの専門スタッフによるケアのことを指します。具体的には、セルフケアに関する研修の立案やメンタルヘルスに関する個人情報の取り扱い、社外の相談機関との橋渡しをするなどの専門的なケアです。
    また、セルフケアやラインによるケアが円滑に行われるよう、従業員や管理監督者のサポートも行います。

    事業場外資源によるケア

    事業場外資源によるケアとは、外部の医療機関のように専門的なメンタルヘルスサービスを活用したケアをいいます。上司との利害関係から社内での相談を望まない場合や、精神疾患を発症しており専門的治療が必要なケースでは、外部機関によるケアが必要となるでしょう。

    企業が取り組むべきメンタルヘルス対策

    企業がメンタルヘルスに取り組む際に重要なことは、「予防」という観点です。悪化を予防し、リスクを最小限に抑えることが必要でしょう。具体的には次の3つの予防が必要といえます。

    一次予防:不調にならないための予防

    一次予防とは、メンタルヘルスの悪化を防ぐための予防です。従業員が自分自身のストレスマネジメントを行ったり、管理監督者が職場環境を改善したりと、セルフケアとラインによるケアが中心となります。

    一次予防の方法として、大きな役割を担うのがストレスチェック制度です。労働安全衛生法では、従業員が50人以上の事業場において、ストレスチェックの実施が義務付けられています。従業員にストレスに関する質問紙に回答してもらい、高ストレスと判定されると産業医の面接指導を受けられます。管理監督者に対して職場環境の改善を求めることができますので、従業員のメンタルヘルスを守る対策といえるでしょう。

    また、従業員や管理監督者に対して、ストレスマネジメントやメンタルヘルスに関する研修を行い、基礎知識を学んでもらい意識を高めることも一次予防には必要です。

    二次予防:早期に発見し治療につなげる

    二次予防とは、メンタルヘルス不調を早期に発見し治療につなげるための対策をいいます。二次予防のためには、従業員が相談できる体制を整えておくことが不可欠です。従業員が自発的に相談しやすい窓口の設置や、希望すればストレスチェックが受けられるような仕組み作りが求められます。

    また、不調を疑う部下がいれば、すぐに産業保健スタッフに相談できるよう、相談窓口を明確にしておくような組織作りも必要でしょう。

    三次予防:不調により働けなくなった従業員のサポート

    三次予防とは、メンタルヘルスの不調により働けなくなった従業員の復職支援や、その後のフォローを指します。精神疾患を発症すると医療機関への紹介が必要となる場合がありますので、すぐに紹介できるよう連携体制を整えておく必要があるでしょう。

    メンタルヘルス対策ならパーソルビジネスプロセスデザインへ

    従業員のサポートが重要になるとはいえ、対面での相談に抵抗を感じる従業員の方は多くいるかと思います。そこで、私たちパーソルビジネスプロセスデザインでは、アバター”によって誰もが気軽に心理師にアクセスできる環境を提供しています。

    それが「KATAruru」というサービスです。
    「KATAruru」は、誰もが気軽にメンタルヘルス支援を受けられる環境を提供することを目指し、認知行動療法等を研究する東京大学の下山研究室とパーソルビジネスプロセスデザインにて共同研究を行い(2021年6月)実現した、『こころの健康アバター支援サービス』です。

    このサービスでは、相談者と心理師の双方がアバターを利用してオンライン上で心理相談をすることができます。プライバシーが保護された環境で、安心してどこからでも心理師に相談できるのが特徴です。

    経済産業省が主催している健康経営優良法人2022の健康経営度調査では、以下の2つの取り組みがメンタルヘルス対策として取り上げられています。

    • ① 50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施(認定要件の健診・検診等の活用・推進) 
    • ② メンタルヘルス不調者への対応に関する取り組み(具体的な健康保持・増進施策)

    ※参照:経済産業省「健康経営優良法人の申請について」

    詳細につきましては下記のページや、ダウンロード資料などをご覧ください。なにかご不明な点があれば、お気軽にご相談くださいませ。

    pwdbanner-wp-stress-management (3482)

    関連サービス

    KATAruru

    KATAruru

    従業員の方が気軽に心理師に相談できる、双方向アバターによるメンタルヘルス支援サービスです。

    このページをシェアする

    • Xシェアボタン
    • Facebookシェアボタン
    • Linkedinシェアボタン