大量採用はなぜ行われるのか
そもそも大量採用とは、一度に多くの人材を採用する手法です。正社員採用はもちろん、アルバイトやパートを募集する際も大量採用が実施されるケースがあります。
企業が大量採用を実施する理由はケースバイケースであり、一概に「大量採用を実施している企業はこういった企業である」と断定することはできません。
ただ、一般的には下記を目的として大量採用が行われているといえるでしょう。
- 離職や欠員による人手不足の解消
- 事業拡大にともなう人材補充
- 会社の次世代を担う人材の育成
業界としては特に金融、IT、製造、建設などが大量採用を実施する傾向にあるといえます。実際、東洋経済新聞社が発行した『就職四季報2022年版』によると、2021年の新卒採用市場において『採用数ランキングトップ10』の企業は下記のとおりになっています。
1位 スギ薬局(850名)
2位 三菱電機(760名)
3位 富士通(750名)
4位 パナソニック(700名)
5位 大和ハウス工業(700名)
6位 富士ソフト(700名)
7位 東京海上日動火災保険(632名)
8位 ニトリグループ(550名)
9位 東海旅客鉄道(540名)
10位 システナ(534名)
『就職四季報2022年版』(東洋経済新聞社)より引用
コロナ禍で多くの企業が採用活動の中断および選考スケジュールの先送りを余儀なくされるなか、1位のスギ薬局にいたっては800名を超える新卒人材の採用に成功しています。なお、「採用人数が○名を超えると大量採用」という明確な基準はありません。人数そのものよりも、現在の企業規模に対してどのくらいの割合を新たに採用するかが重要です。
例えば、10名の採用目標人数を掲げるA社とB社があるとします。A社が総従業員数1,000名を超える企業、採用人数の10名は社員全体の1%であり、そこまで大きなインパクトはありません。一方で、B社が総従業員数10名の中小企業である場合、新たに10名を採用すると社員数は2倍に増えます。この場合、B社は大量採用を実施したといえるでしょう。
大量採用を実施する際には、どのような目的で人材を採用するのか、人件費や時間などの育成リソースを確保できるのか、などをあらかじめ検討する必要があるのです。
新卒を大量採用する背景
企業が新卒人材を大量採用する背景には、次のような理由が考えられます。
- 会社の急成長や事業拡大による人手不足
- 中長期計画に基づいた人材育成
業績好調などの理由で企業が事業拡大を計画する場合には、新たな人材が必要となります。社会人経験のない新卒人材は企業の文化や業務に適応しやすいため、成長企業の採用ターゲットになる傾向があるでしょう。
また、新卒から時間とコストをかけて育成した人材に「将来の重要なポストを任せたい」と考える企業も少なくありません。中長期的な視点に立って人材育成をする場合にも、新卒人材の大量採用は効果的なのです。
新卒を大量採用する3つのメリット
具体的に、新卒人材を大量採用すると大きく3つのメリットがありますが、それぞれ解説していきましょう。
メリット(1)適材適所の人員配置が可能になる
メリット(1)適材適所の人員配置が可能になる
学生を大量に採用すると、多様なスキルやバックグラウンドを持つ人材をさまざまなポジションに結びつけられます。ですから、新卒人材が個々のポテンシャルを最大限に発揮できるような適材適所の人員配置が可能になるのが大きなメリットといえるでしょう。
さらに、大量採用の場合には、現段階でスキルや経験が不足している学生であっても、入社後の成長を期待して採用することになります。採用後の研修や育成に十分なリソースを割けば中長期的に見て大きなリターンが期待できるのも、新卒を大量採用することのメリットなのです。
メリット(2)人員1名あたりの採用コストが抑えられる
メリット(2)人員1名あたりの採用コストが抑えられる
一度に大量の人員を採用すると、1名あたりの採用コストが抑えられるのもメリットです。そもそも企業の採用活動を行う際には、さまざまなコストが発生します。主な採用コストとしては次のようなものが挙げられるでしょう。
- 求人広告への掲載料
- 採用セミナーの会場費
- リファラル採用の紹介インセンティブ
- 各種資料の作成費
- 採用担当者の人件費
- 業務に係る通信費
どのような手法を用いて、どの程度の人員を採用するかによって、採用活動費用は数十万円〜数百万円まで大きく変動します。
仮に採用活動に掛かる費用総額が500万円の場合、採用人数が5名だとすると1名採用するのに100万円が必要な計算になります。一方、同じ費用で50名採用できれば、1名あたりの採用コストは10万円におさまるのです。
メリット(3)将来的な人材不足を回避できる
メリット(3)将来的な人材不足を回避できる
大量採用に早くから着手することで、長期的な視点に立った企業の人材確保が可能になります。
日本国内の少子高齢化と、それに伴う労働人口の減少は、回避不可能な長期トレンドといえます。採用マーケットでは新卒・中途ともに売り手(求職者)が優位な状況が続き、企業の採用活動は今後さらに困難を極めるはずです。
新卒人材を大量に採用することが成功すれば、若くて多種多様なバックグラウンドを持つ人員の確保につながります。また、キャリア形成の初期段階にある新卒人材は、自社の文化や価値観を学びながら、じっくりとスキルを習得できる存在でしょう。
自社の将来を担う新卒人材を大量採用できれば、将来的な人材不足を回避でき、企業の成長に寄与することになるはずです。
新卒を大量採用する2つのデメリット
新卒者の大量採用は企業に多くのメリットをもたらす一方で、デメリットも存在します。2つほど挙げて解説してみましょう。
デメリット(1)採用活動全体にかかるコストが増加する
デメリット(1)採用活動全体にかかるコストが増加する
大量採用を行うためには、当然ですが大規模な採用活動が必要です。それに伴い、広告費や人事部門の人件費、選考にかかる時間など、採用に関連するコストは増大してしまいます。
特に、大量の応募者から自社に適した人材を見つけ出すための“スクリーニング”は、膨大な時間と労力を要するプロセスでしょう。さらに、新卒人材を大量に採用した場合にはオリエンテーションや研修など、“入社後の人材育成”にも大きなコストが掛かってきます。
大量採用に臨む企業はこれらのコスト増加を加味したうえで、長期的な費用対効果を慎重に考慮していく必要があるでしょう。
デメリット(2)学生一人ひとりとの関係性が希薄化しやすい
デメリット(2)学生一人ひとりとの関係性が希薄化しやすい
新卒大量採用では一人ひとりの学生と深く関わる時間がなかなか確保できず、学生の個々の能力や特性を十分に理解するのが難しくなってしまいがちです。
内定者とのコミュニケーションロスは、適切な人材配置や育成計画の立案に悪影響をもたらします。さらに、学生との関係性が希薄になると、学生は「自分は大切に扱われていないのではないか」「このままこの会社に就職して大丈夫なのか」と不安が増幅してしまい、内定辞退につながってしまう危険性も高まります。
それらを避けるためにも、大量採用を行う企業は選考中や内定後の学生一人ひとりと深く関わるための時間を確保するようにしましょう。
中途を大量採用する背景
企業が中途人材を大量に採用している背景には、基本的には新卒の大量採用と同様の理由があります。つまり、企業が中途人材を大量採用する主な理由としては下記のようなものになります。
- 業務拡大による人手不足
- 新規事業立ち上げによる人手不足
なお、中途人材は新卒人材と異なり、これまでの職務を通じて専門的な知識や経験を備えているケースが少なくありません。そのような中途人材に焦点を当てて大量採用を実施する企業には、「採用後の育成コストをかけたくない」「すぐに結果を出せる即戦力人材を探している」などの意図があることも考えられます。
中途を大量採用する2つのメリット
では、中途人材を大量採用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは2つを挙げて解説していきましょう。
メリット(1)即戦力の人材を確保できる
メリット(1)即戦力の人材を確保できる
中途人材を大量採用する大きなメリットは、即戦力として活躍できる人材を確保できることです。
特に新規事業を始める際には、事業立ち上げの経験があり現場の業務で必要なスキルを兼ね備えた人材が求められます。大量採用は専門人材を一度に確保できるため、新規事業の成功にとって大きな近道といえるでしょう。
また、採用時には即戦力として期待できない人材であったとしても、大量採用により他の人材と一緒に教育や研修の時間を設けることができます。スキルの高い社員に混ざって育成することによって、将来的な戦力としての期待も高まるでしょう。
メリット(2)1名あたりの採用コストを引き下げられる
メリット(2)1名あたりの採用コストを引き下げられる
新卒の大量採用と同じく、中途人材の場合も大量採用するほど1名あたりの採用コストを引き下げることができます。
通常であれば、採用活動には多くのコストが必要です。できる限りコストを掛けずに大量の人材を採用できれば、事業における収支計画も立てやすくなるでしょう。
中途を大量採用する2つのデメリット
中途の大量採用でも、新卒の場合と同様にメリットとデメリットの両方が存在します。ここでは2つのデメリットを挙げて解説しましょう。
デメリット(1)「離職率が高い」「ブラック企業」などのイメージがつく恐れ
デメリット(1)「離職率が高い」「ブラック企業」などのイメージがつく恐れ
大量採用を行っている企業は、「人材の流動性が高い」「離職率が高い」というイメージを持たれやすくなる恐れがあります。それは、「即戦力になる人材を大量に採用している」という事実が、「戦力となる優秀な人材が社内に不足しているのではないか」という憶測を招いてしまうためです。
さらに、求職者によっては「人が不足しているのは、人材を消耗品のように酷使しているからではないか」「ブラック企業なのではないか」と誤解してしまう可能性もあります。自社の労働環境に対してネガティブなイメージが広がれば、求職者が応募を躊躇してしまうかもしれません。
実際のところ、労働条件の良いホワイト企業でも大量採用を実施するケースは珍しくありません。ですから、求職者にネガティブなイメージを与えないように、選考時には大量採用の目的や背景をしっかりと説明するなど工夫をしましょう。
デメリット(2)内定辞退や早期離職につながりやすい
デメリット(2)内定辞退や早期離職につながりやすい
新卒採用と同じく、中途採用でも一度に大量の人数を採用すると、一人ひとりの求職者と深く関わる時間が限られてしまいます。それぞれの求職者のニーズや期待を理解できなければ、内定辞退率が高まる原因となるため注意が必要です。
また、入社後も十分なフォローやサポートが行えない場合、中途社員が早期に離職する可能性もあります。大量採用を行う企業は、内定後や入社後のフォローまで見据えて採用計画を立てるようにしましょう。
新卒の大量採用を成功させる3つのポイント
新卒人材を大量採用する場合は、次のような3つのポイントを実践するようにしましょう。
ポイント(1)大手求人ナビサイトに登録する
ポイント(2)学内説明会や合同説明会に参加する
ポイント(3)採用アウトソーシングを利用する
それぞれ解説していきます。
ポイント(1)大手求人ナビサイトに登録する
ポイント(1)大手求人ナビサイトに登録する
就職活動中の学生は、大半が求人ナビサイトを利用しながら企業を探しています。多くの学生から目に留めてもらうためには、リクナビやマイナビなどの大手求人ナビサイトに求人情報を掲載するのが効果的です。
その他、求人ナビサイトには「理系学生」をターゲットとした求人や、「ベンチャー志向の学生」が多く利用する求人など、さまざまな種類があります。自社が求めるターゲットの属性に応じて、最適な求人ナビサイトを利用するようにしましょう。
ポイント(2)学内説明会や合同説明会に参加する
ポイント(2)学内説明会や合同説明会に参加する
大学内で実施される学内説明会は、採用担当者が学生に直接語りかける絶好の機会です。学生からの質問にも直接答えられるため、自社の経営ビジョンや具体的な働き方、新卒学生に求める資質などを具体的に伝えられるはずです。
また、合同説明会は大規模な会場に数十〜数百社が集まる一大イベントです。合同説明会への参加を皮切りに就活を始める学生も多いため、優秀な人材にいち早くアプローチできるチャンスといえるでしょう。
ポイント(3)採用アウトソーシングを利用する
ポイント(3)採用アウトソーシングを利用する
採用アウトソーシングとは、企業が自社の採用活動を外部の専門業者に委託することを指します。採用活動を外部のプロフェッショナル業者にアウトソーシングすれば、企業は本来のコア業務に多くの時間と労力を使えるようになります。
特に大量採用は多くの求職者とのやり取りが必要で、採用担当者の業務負担が大きいため、採用アウトソーシングを利用するメリットは非常に大きいといえます。実績豊富なアウトソーシングサービスの利用は、新卒の大量採用を成功させるうえで効果的でしょう。
中途の大量採用を成功させる3つのポイント
中途人材を大量採用する場合、知っておきたいポイントは次の3つです。
ポイント(1)求人ナビで母集団を形成する
ポイント(2)リストラ層と主婦層をターゲットに設定する
ポイント(3)採用アウトソーシングを利用する
それぞれ解説していきましょう。
ポイント(1)求人ナビで母集団を形成する
ポイント(1)求人ナビで母集団を形成する
中途人材をターゲットにする際は、24時間体制でアプローチできるよう求人ナビサイトを活用しましょう。紙媒体の求人情報誌を活用する場合、情報の掲載量に制限があるほか、ユーザーにとっての利便性も低下してしまいます。
中途人材は、現職を続けながら隙間時間や休日を使って転職活動をしているケースが一般的です。業務などで多忙なことも想定されるため、時間や場所が指定される説明会への参加もなかなか困難でしょう。ただ、インターネット上に公開された求人ナビであれば、いつでも空いた時間にチェックできますので、応募率も向上しやすくなるはずです。
ポイント(2)リストラ層と主婦層をターゲットに設定する
ポイント(2)リストラ層と主婦層をターゲットに設定する
中途採用で大量募集を行う場合、特に効果的な採用ターゲットは主婦層とリストラ社員層です。企業側の事情でリストラや早期退職勧奨が実施されることはありますが、社員としてはいち早く生活を安定させたいため再就職に対するモチベーションは高い傾向にあります。
自身の希望が完全に一致しなくても積極的に求人に応募する可能性が高く、採用人数に直結しやすくなります。もちろん、前職のリストラ理由や早期退職理由、求職者の性格などは注意深くチェックする必要がありますが、過去に社会人経験がある分だけ即戦力になりやすい点もメリットです。
主婦層についても「家計を安定させたい」「子どもの教育資金を貯めたい」など明確な目標があるケースが多く、長期就労を期待することができます。また、結婚や出産などを経験した女性であれば、社会復帰を目指して仕事への意欲が高い方も少なくありません。
これらのターゲット層に対してアプローチすることで、母集団の増加が狙えるでしょう。
ポイント(3)採用アウトソーシングを利用する
ポイント(3)採用アウトソーシングを利用する
中途人材の採用活動においても、採用アウトソーシングは効果的です。特に新卒一括採用とは異なり、中途の大量採用は求職者ごとに個別の選考スケジュール設定が欠かせません。
大量の応募者に対応しながら自社の求める候補者を見極めるためには、多くの時間と労力を必要とします。しかし、事務的な業務に忙殺されてしまうと「採用戦略の策定」や「KPIの見直し」など、採用活動のコア業務がおろそかになってしまいかねません。
支援実績が豊富な採用アウトソーシング業者に依頼することで、採用プロセスの効率化と最適化が可能になることを覚えておくと良いでしょう。
採用のアウトソーシングならパーソルビジネスプロセスデザインへ
本記事では、新卒採用と中途採用それぞれについて、大量採用の目的やメリット・デメリットなどをご紹介してきました。
人材不足が各企業で深刻化するなか、採用活動の品質向上は喫緊の課題となっています。自社にフィットする人物を探し出すうえで、外部のプロの手を借りることは有効な手段といえるでしょう。もし「採用」に関してなにかお困りごとがありましたら、私たちパーソルビジネスプロセスデザインへお任せください。
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