面接官トレーニングが必要な理由
2020年に求職者2,200人以上を対象に実施された『人事のミカタ』の調査によると、面接後の辞退理由として3割近くが「面接官の行動や態度が悪かった」と回答していました。
※参考:辞退の心理 [2020年版] コロナ禍、求職者2200人のホンネを調査!選考・内定辞退を減らすには?|人事のミカタ
面接官について、具体的には次のような声があがっています。
- 法律上、聞いてはいけない質問があった
- 面接中に説教された
- パワハラやセクハラがあった
このような理由による辞退は、適切な面接官トレーニングを実施していれば防止できたかもしれません。面接官としてのスキルや知識不足が、不快感をもたらす発言や態度につながったと考えられます。
面接官の不適切な言動がネットで拡散されると、企業の風評被害が起こるリスクがあります。そのような事態を防ぐため、企業は面接官トレーニングを定期的に実施し、面接官の質を向上させることが重要です。
面接官トレーニングの目的
面接官トレーニングの目的は、自社に合う求職者を見つける力を付けるだけではありません。面接官は自社の魅力を伝え、求職者の隠れた特徴を引き出す力が求められているのです。
ここでは、目的を3つ取り上げて具体的に解説していきます。
目的(1)自社の魅力を求職者に伝える力を付ける
目的(1)自社の魅力を求職者に伝える力を付ける
面接官トレーニングを通して、自社の魅力を求職者に伝える力を身に付けることが重要です。しっかりと魅力が伝わると、入社へのモチベーションが高まるからです。
面接では企業が求職者を判断するだけでなく、求職者も「どのような企業だろうか」と慎重に選定しています。複数の企業に同時に応募している人も多く、優秀な人材は選考途中で別の企業に獲得されてしまう可能性もあるでしょう。
入社意欲を高めるためにも、求職者にとって有益な情報を提供して良い印象を与える必要があります。具体的には、会社の特徴や大切にしている理念、活躍している社員のエピソード、面接官自身が入社した理由などを伝えていくと、魅力づけができるはずです。
また、面接で自社の魅力を伝える際には、プラスの部分だけでなく、あえてマイナス部分も伝えることが重要です。
「繁忙期は残業時間が増えることも多くなってしまいますが、問題ないですか?」など、選考段階から懸念ポイントを伝えておくと効果的です。「正直に話してもらえた」と感じてもらえるでしょう。
目的(2)自社に合う求職者を見極める力を付ける
目的(2)自社に合う求職者を見極める力を付ける
求職者がどれだけ優秀な人材であったとしても、自社に合うかどうかは別問題です。そのため、自社の経営方針やカルチャーにフィットするかどうか、面接中に見極める力をトレーニングで身に付ける必要があります。
そのために、求職者のスキルや経歴だけでなく、価値観や性格、考え方など“人となり”に触れられる質問を面接ですることが重要です。
たとえば単独で黙々と働くのが向いている人の場合、集団行動や協力が重要視される職場で長く働くのは難しいと考えられます。そこで面接では「どのような働き方をしたいか」を求職者に質問して確かめる必要があるでしょう。
面接官はトレーニングを通じて、求職者を総合的に判断するスキルを身に付けることが重要なのです。
目的(3)求職者の「見えにくい特徴」を引き出せるようになる
目的(3)求職者の「見えにくい特徴」を引き出せるようになる
上記の「自社に合う求職者か」を見極めるには、求職者の「見えにくい特徴」を引き出せるようになる必要があります。見えにくい特徴には、求職者の価値観や性格、考え方が含まれます。
経験の少ない面接官は、求職者の履歴書から読み取れる情報や、口頭のコミュニケーションだけで合否を判断してしまいがちです。しかし、それは「見えやすい特徴」であり、面接で見抜くべき見えにくい特徴ではありません。
特に中途採用では即戦力が求められる傾向が強く、スキルや経歴を重視した選考が進められます。もちろんスキルや経歴も重要ですが、求職者の姿勢や目線、態度からも見極めることが必要です。そこにも求職者の特徴が隠されているからです。
たとえば、目線はおどおどしておらず面接官を向いているか、質問に対する回答スピードに迷いがないかなどが含まれます。また、声が小さくなるタイミングや、声のうわずりは、自信のないトピックを話しているときに起こることがあります。
このように、質問に対する回答以外にも細かな動作などから“人となり”を知ることができるため、面接官トレーニングで見極めるためのポイントを学ぶことが重要です。ただし、主観的な判断にならないよう、他の面接官とも意見をすり合わせるようにしましょう。
面接官トレーニングを実施するメリット
では、面接官トレーニングを実施するメリットについて2点を挙げて解説しましょう。
メリット(1)採用基準を統一できる
メリット(1)採用基準を統一できる
面接官トレーニングを実施すると、採用基準が統一され適切な人材を採用しやすくなるメリットがあります。
採用基準が属人的である場合、面接官の主観的な判断に委ねられ、評価にバラツキが生じやすくなります。そこで、面接官トレーニングを受けることにより、採用基準を統一することができるのです。
トレーニングでは、自社がどのような人物を求めているのかを言語化して、面接官同士で統一する重要性やその方法を学びます。そして、面接に訪れた求職者が「理想とする人材であるか」といった評価方法もトレーニングで学んでいきます。
たとえば、A~Eなどアルファベットによる評価では、「基準を大きく上回るならS」「Aが4つ以上で合格」「Eが1つでもある人は不合格」など、目安を決めて共有することで、評価のバラツキを防止できるでしょう。
以上のように、トレーニングを通じて採用基準や評価方法を統一することにより、自社で活躍する人材獲得につながるのです。
メリット(2)企業イメージが向上する
メリット(2)企業イメージが向上する
トレーニングで面接官として必要なスキルや知識を身に付ければ、企業の魅力を伝える力が向上し、企業イメージが向上することに繋がるのもメリットです。面接官は企業の顔として認識されますので、求職者に好印象を与えることができます。
仮に採用に至らなかった場合でも、好印象を残すことができれば口コミで伝わっていく可能性があります。ですから、面接官は自分自身も求職者から評価される立場にあると認識し、面接スキルをトレーニングで伸ばす必要があるのです。
面接官トレーニングで習得できるスキル
それでは続いて、面接官トレーニングで習得できるスキルを3つ挙げて解説しましょう。
4-1. 質問力
4-1. 質問力
面接官トレーニングでは、必ずと言っていいほど質問力を鍛える必要があります。オープンクエスチョンを求職者に投げかけ、自社にふさわしい人材であるか見極めることが重要だからです。
面接前に次のような質問を準備することで、採用力の強化につながるでしょう。
▼面接で使える質問例
入社意欲を見極める質問例 | - 同業他社ではなく、当社にエントリーいただいた理由や動機を教えていただけますか? - 当社へエントリーした決め手は何でしたか? - 入社後、どのようなキャリアを目指したいか目標はありますか? - 当社の◯◯事業について、どのような意見をお持ちか教えていただけますか? |
仕事の適性を確かめる質問例 | - 当社と同じような◯◯の業務経験はお持ちですか? - ◯◯事業で活かせる専門的スキルはありますか? - 当社では、〇〇がつらいこともありますが、どのように気持ちを切り替えられそうですか? - もしお客様から〇〇というクレームをいただいた場合、どのように改善提案をしますか? |
見えにくい特徴を引き出す質問例 | - ご自身の強みを教えていただけますか?その強みを、当社の仕事にどのように活かせますか? - ご家族やご友人は、あなたのことを、どのような性格だと思っていますか? - どのような管理方法なら、ご自身のベストパフォーマンスを引き出せると思いますか? - 働くうえで、自身のモチベーションを高められるものは何ですか? |
面接官トレーニングを通じて、これらの質問の順番を含めた『面接の組み立て方』を決めておくべきです。
まずは「今日はどんな交通手段で来られましたか?」と軽い質問から聞き、求職者の緊張をほぐす会話をしながら、上記のような踏み込んだ質問に入っていくなど、質問の順番を統一しておきましょう。
4-2. 傾聴力
4-2. 傾聴力
面接官トレーニングでは傾聴力も磨いていく必要があります。傾聴力は、求職者の内面を引き出すのに役立つスキルだからです。面接中に発揮することで、求職者は安心して本音を伝えやすくなります。
傾聴力が無く、相手の話をさえぎったり高圧的な態度で話を聞こうとしたりすると、求職者は意見を伝えづらく情報を集めにくくなってしまうでしょう。
傾聴では、「そのような素晴らしい経験をされてきたのですね」と相手の話を肯定的に聞くことを大切にします。そのうえで、「その時はなぜそう考えたのですか? ぜひ教えてください」と掘り下げていくと、相手の本質を見極めやすくなります。
「あなたに興味があります」という姿勢で話を聞くと、相手から情報を引き出しやすくなりますので、面接官トレーニングでしっかりと傾聴力を身に付けるようにしましょう。
4-3. 表現力
4-3. 表現力
面接官トレーニングでは、表現力を身に付けることも重要です。ここで言う表現力とは、わかりやすく自社の魅力を伝える力や、固定観念を持たずにフラットな意見を伝える力です。
具体的には、自社の特徴や力を入れている事業、課題などについて、求職者にシンプルな言葉で伝えられるスキルを身に付けましょう。
また、「女性社員は◯◯すべきだ」「転職回数が多いのは好ましくない」「◯◯大学出身なので優秀なはずだ」など、先入観のある発言をしてしまうと「偏見に基づいた発言があった」と求職者に認識されてしまい、悪い印象を与えかねません。
このような事態を避けるためにも、面接官トレーニングで表現力を磨く必要があるのです。
面接官トレーニングで習得すべき知識
続いて、面接官トレーニングで習得すべき知識について、3つ挙げて解説します。
5-1. 面接の流れ
5-1. 面接の流れ
面接官トレーニングでは面接の流れを理解しましょう。「アイスブレイク→自己紹介→志望動機→双方による質問→クロージング」といった流れを把握し、滞りなく面接を進めていく必要があります。
面接の流れを念頭におきながら「相手を見極める質問」を投げかけるようにしましょう。
5-2. ビジネスマナー
5-2. ビジネスマナー
面接に来る求職者だけでなく、面接官もトレーニングで『ビジネスマナー』を見直す必要があります。実際に、求職者が面接を辞退した理由として「面接官が携帯電話を見ていた」「面接官の身だしなみが良くなかった」「他の候補者と間違われた」といった信じがたい声もあがっているのです。
ですから、『清潔感のある服装』や『面接での常識』について今一度、見つめ直すことが重要です。スーツで面接するならシャツにアイロンをかけ、靴の汚れを落として髪型を整えましょう。面談中は相手の目を見て誠実に対応し、相手を理解しようと努める姿勢も重要です。
「企業側も求職者に評価されている」という視点を忘れず、面接官も今一度ビジネスマナーをトレーニングしましょう。
5-3. NG質問
5-3. NG質問
面接中に控えるべきNG質問やハラスメントについても、面接官トレーニングで学ぶ必要があります。多様性が尊重される現代では、採用活動中のハラスメントにつながる言動はネットやSNSで炎上しやすくなっているからです。
面接官トレーニングで「男女雇用機会均等法」の基本や、厚生労働省が示している「公正な採用選考の基本」を学び、選考で配慮すべき項目を把握しておきましょう。
※参考:厚生労働省「公正な採用選考の基本」
具体的に、次のような項目はNG質問と考えられ、就職差別と捉えられる恐れがありますので注意が必要です。
▼NG質問例
- 本籍はどこですか?
- 特定の宗教を信仰していますか?
- 結婚や出産のご予定はありますか?
このような質問はコンプライアンスに引っかかりますので、面接官はトレーニングを通じてNG質問例を把握しておきましょう。
面接官のトレーニング方法
次に、面接官のトレーニング方法を3つ挙げて解説します。
方法(1)集合型研修
方法(1)集合型研修
集合型研修は、採用コンサルタントなどの専門家による“座学”が主体となったものです。転職市場のトレンド、面接官の役割やマナー、履歴書や職務経歴書の読み方、採用基準の決め方、評価方法、注意点などについて学びます。
基礎知識を座学で学習しながら、次に解説する『ロールプレイング』も併せて実施していきます。
方法(2)ロールプレイング
方法(2)ロールプレイング
面接のロールプレイングでは、実践を通して即戦力のあるノウハウを身に付けられます。
面接官として求職者を見極めるための質問や傾聴など、実践研修をすることで効率的にスキルを習得できるのがメリットです。さらに、求職者として面接を体験すれば「効果的な面接は何か」を把握しやすくなります。
また、ロールプレイングを録画しておくと『面接時の課題』を客観的に把握でき、改善に向けて対策を打つことができます。面接官ごとの属人的な対応やバラツキも解消できますので、採用品質の安定につながるでしょう。
方法(3)オンライン面接のトレーニング
方法(3)オンライン面接のトレーニング
コロナ禍でオンライン面接が必要となるケースが増え、企業は対応に迫られています。オンライン面接に対応したトレーニングを実施することで、高まるニーズに応えられるようになるでしょう。
オンライン面接は従来の対面方式とは異なり、お互いの距離感があり雰囲気が掴みにくい点があります。細かな表情の変化や仕草がビデオ越しではわかりにくく、慣れないうちは見極めが難しくなってしまうものです。
そこで、アイスブレイクで雑談を長めに取ることにより相手の緊張をほぐして距離感を縮めたり、リアクションを比較的大きくしたりすることで相手の表情や仕草を引き出したりすることができます。
さらに、不快感を与えないようなカメラの角度の設定位置を知ることも重要です。カメラを目線より低い位置で設定すると、見下してしまうような目線になりますので、目線と同じ高さで調節するようにしましょう。
以上のように、面接官トレーニングではオンラインならではの工夫も学んでいくものです。
面接官トレーニングならパーソルビジネスプロセスデザインへ
求職者の見えにくい特徴を引き出し、自社に合う人材を採用するためにも、面接官トレーニングは必須です。面接官トレーニングを実施することで、これまで属人的だった面接方法は統一され、採用力が強化されるでしょう。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、「採用面接官トレーニング」をご提供しています。「フルカスタマイズ版」「ライト版」の2種類のコンテンツをご用意しており、ニーズに合わせて受講いただくことが可能です。
求職者を見極めるスキルだけでなく、自社の魅力を伝えるトークの実践も支援しており、習得したスキルを実際の面接でもすぐに活かすことができます。また、現在の主流であるオンライン面接にも対応していますので面接官として必要なスキル習得に向け的確なトレーニングを実施可能です。
面接官トレーニングの導入をご検討の場合には、ぜひお気軽にパーソルビジネスプロセスデザインまでお問い合わせくださいませ。