健康診断で二次検査が必要になった場合の費用は?従業員への対応や受診勧奨の方法などを徹底解説

健康診断で二次検査が必要になった場合の費用は?従業員への対応や受診勧奨の方法などを徹底解説

健康診断では、異常が見つかった時に「二次検査」が必要な場合があります。会社としては、この二次検査の受診を促して疾患の早期発見を目指すことが求められるでしょう。

しかし、二次検査を受けたがらない従業員も多く「どのように勧奨すれば良いのだろうか……」と頭を悩ませている担当者の方も多いのではないでしょうか。また、従業員の中からも「費用が掛かるので受けたくない」という声があり、「どこまで費用を負担すれば良いのか」と迷うこともあるかも知れません。

二次検査の費用を会社が負担する義務はありませんが、負担することで従業員の受診率を高められる可能性があります。そして、制度を活用すれば、検査項目によっては無料になる場合があるのです。

そこで本記事では、健康診断の二次検査が必要なケースや費用負担を減らす制度について解説していきます。費用面だけでなく、二次検査の受診を勧奨する際のポイントについても説明していますので、ぜひ参考にしてください。

目次

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    健康診断の二次検査とは何か

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    まずは健康診断の二次検査から見ていきましょう。そもそも健康診断の二次検査とは、健康診断において「健康状態に何らかの異常や問題がみられた場合に受ける検査」です。

    健康診断は、疾病の予防と早期発見を目的としています。そのため、異常が見つかったからといってすぐに「病気である」ということではなく、さらに詳しい検査が必要になります。その際に行うのが二次検査なのです。

    1. 「要再検査」「要精密検査」の判定は二次検査が必要

    二次検査が求められるのは、健康診断結果で「要再検査」「要精密検査」と判定された場合です。受診する医療機関によっても異なりますが、以下のような区分で判定されることが多いでしょう。

    A:異常なし
    B:軽度異常
    C:要再検査・生活改善
    D:要精密検査・治療
    E:治療中

    ※参考:日本人間ドック学会「判定区分2023年度版」(PDF)

    この区分において二次検査が必要なのは「C:要再検査・生活改善」と「D:要精密検査・治療」です。「C:要再検査・生活改善」は、検査でみられた数値が正しいかを調べるために再検査を行う必要がある、という判定です。健康診断でみられた数値は、一時的に上昇しただけの可能性があるからです。

    例えば、血糖値の検査では、検査前の食事や運動の影響で高値となってしまうことがあります。再検査を行うことで、外的要因を除いた結果から疾患の有無を判断することができます。結果には、「3ヵ月後に再検査」「1年は要経過観察」というように、具体的な指示が記載されているケースが多いでしょう。

    「D:要精密検査・治療」は、何らかの異常を認める所見がみられるため、さらに詳しい検査を行う必要がある、という判定です。詳しい検査を行い、どういった病気が影響しているのかを調べます。早急な治療が必要なケースもあるため、可能な限り受診を勧めなければならない状態といえるでしょう。

    「A:異常なし」「B:軽度異常」であれば、ほぼ健康な状態といえます。「B:軽度異常」は、やや高い数値だが異常とされる範囲ではないという場合に判定される区分です。また、「E:治療中」はすでに治療を受けているため、二次検査を勧める必要はないといえます。

    2. 二次検査が必要なのは生活習慣病に関する項目が多い

    厚生労働省から発表されている、異常所見がみられた割合を示す「有所見率」のデータを項目別にみると、割合が高い上位5項目は以下の通りです。(令和3年度数値)

    1位:血中脂質(コレステロール、中性脂肪)
    2位:血圧
    3位:肝機能
    4位:血糖(血糖値、HbA1c)
    5位:心電図

    ※参考:厚生労働省「健康診断有所見者の推移」(PDF)

    血中脂質や血圧、肝機能、血糖値といった生活習慣病にかかわる項目において、有所見率が高いことが特徴です。高血圧の場合には脳卒中のリスクがありますし、血糖値が高い場合は糖尿病やすい臓がんにかかる可能性があります。

    つまり、二次検査が必要なのは「生活習慣病」に関する項目が多いということが分かります。

    健康診断の二次検査は会社の義務になるのか?


    生活習慣病に関する項目が多い二次検査ですが、受診させることは会社として義務にはあたりません。法律の規定でも、“健康診断の結果によって受診を勧奨することが適当である”とされていますが、罰則規定はないのです。そのため、明確な義務にあたらないといえるでしょう。

    ただ、もし従業員に二次検査の指示が出ているのにもかかわらず二次検査を受けないまま放置していると、安全配慮義務違反に該当する可能性があります。「安全配慮義務」とは、会社が従業員の安全を守るために、就業上で必要となる措置や配慮を講じる義務のことです。

    安全配慮義務違反に該当するかどうかは、「予見可能性」と「回避可能性」の2つのポイントから判断されます。健康管理に関する事項を当てはめると、以下のように考えられるでしょう。

    • 予見可能性……従業員の健康を損なう事態が予測できたか
    • 回避可能性……従業員の健康を損なう事態を回避するための手段がなかったのか

    二次検査を受診しないまま放置してしまうと、健康を損なうことは容易に想像できることです。また、そもそも受診勧奨や受診の周知などの対策を講じていれば、病気の発症は回避できたことでしょう。

    そのため、会社に義務はないといっても、何もしないということは安全配慮義務違反となる可能性があります。ですから、できるだけ受診勧奨を行うことが望ましいといえるのです。

    健康診断で二次検査の指示が出たらどう対応すべきか

    健康診断で二次検査の指示が出た場合、安全配慮義務を果たしながら従業員の健康を守るためにはどう対応すれば良いのでしょうか。

    二次検査の指示が出たら、速やかな受診を勧奨する必要があります。受診勧奨には、下記の3つの対応を意識すると良いでしょう。

    対応(1)勧奨方法についてのオペレーションを明確にする

    「従業員にどのような形で勧奨するのか」という社内のオペレーションを明確にしておくと、未受診の従業員への通知漏れを防ぐことができます。社内のイントラネットや社内報に載せる、お知らせを送るなど、「どのような形で、誰が、どのタイミングで、本人に連絡するのか」をあらかじめ決めておきましょう。

    また、社内に保健師がいる場合には、適宜連携し従業員個人に連絡して保健指導を行ってもらうことも有効です。

    特に重要になるのは、受診勧奨を促す時期です。一般的に、健康診断から時間が経つと受診につながりにくい傾向があります。受診時期と受診行動促進要因に着目したアンケート調査によれば、医療機関で人間ドックを受診した人の90.9%が、「健康診断後3カ月以内」に受診していたことがわかっています。

    ですから、健康診断後は「3ヵ月以内」を目安に受診を勧奨し、二次検査につなげていくことが重要でしょう。

    ※参考:人間ドック Vol.37 2022年「受診行動につながる精検受診勧奨方法の検討―精検受診時期と受診行動促進要因に着目したアンケート調査―」(PDF)

    対応(2)社内研修で健康管理の必要性を伝える

    「健康管理の必要性」を伝える内容を社内研修に盛り込むことも有効です。伝える際には、階層別に伝えていくと良いでしょう。

    例えば、健康に対する心配が少ない20代の従業員に対しては、「若年層でもかかるリスクのある疾患」「20代のうちに検査しておくと良い項目」などの内容を説明します。一方でリーダー研修の場合には、「部署メンバーの健康管理方法」などについて伝えると良いでしょう。

    いずれにしても、全階層に向けると抽象的になりますので、その階層・年齢層にあった健康管理の必要性を具体的に伝えることが理想的といえます。

    対応(3)健康管理について相談できる体制を作る

    二次検査の受診率向上のためには、健康について相談できる体制作りも重要です。「産業衛生学雑誌」による1,000人以上の規模の会社を対象とした調査では、受診につながる要因として以下の2つが示されています。

    • 健康上の相談をできる人がいる
    • 定期的な受診経験がある(かかりつけ医がある)

    この2つの要因からは、「個別」に「専門的な」勧奨ができる存在が受診率の向上につながるものと考えられます。会社において、この2つの役割を担うのは保健師をはじめとした産業保健スタッフだといえます。

    産業保健スタッフに相談できることが従業員に周知されていない場合は、健康診断時の案内に載せたり、社内報で周知したりすると良いでしょう。

    ※参考:産業衛生学雑誌「健診結果に基づく事業場労働者の医療機関受診につながる要因」(PDF)

    健康診断の二次検査の費用は誰がどのくらい負担するのか

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    前述した通り、二次検査を行う義務は法的には明確に規定されていませんが、会社によっては二次検査の費用を負担する制度を設けていることがあります。では、二次検査の費用は、どの範囲まで負担する義務があるのでしょうか。

    1. 二次検査費用を負担する義務はない

    繰り返しになりますが、会社には二次検査を行う義務はありませんので、原則的に費用を負担する義務は課せられていません。

    二次検査のうち、どの範囲の検査まで負担するかは会社側の判断に委ねられているのです。(特殊健康診断で二次検査が義務付けられている場合は除く)

    2. 基本的には従業員の健康保険適用や自費により受診する

    会社に費用負担の義務はありませんので、基本的には従業員が自分の健康保険を利用するか、自費で検査を行うことになります。

    二次検査で行われる検査項目のうち、3割負担時の費用の目安は以下の通りです。検査の結果、他の検査や薬の処方を受けた場合には、下記の費用に追加されることがあります。

    • 血液検査:2,500円~3,000円
    • 尿検査:1,000円~1,500円
    • MRI:5,000~20,000円(撮影する部位により異なる)
    • CT:6,000円~13,000円(撮影する部位により異なる)
    • 超音波検査:1,000~3,000円
    • 胃カメラ(胃内視鏡)検査:4,000円
    • 大腸カメラ(大腸内視鏡)検査:5,000~10,000円

    二次検査の費用負担を軽減するためには

    会社側に費用負担の義務がないからといって、二次検査の費用を従業員に負担してもらうのは、受診率の低下につながることがあります。従業員からすると、いくら健康を気遣う目的であっても費用負担をするのは抵抗感が生まれやすいでしょう。

    ですから、二次検査の費用を会社が負担することで受診率はアップする可能性が高まります。費用負担に関しては、労災保険の給付制度である「二次健康診断等給付」を活用することがおすすめです。

    二次健康診断等給付とは、定期健康診断をはじめとした一次健康診断で異常所見がみられた従業員に対して、費用を負担する制度です。二次健康診断(二次検査)と特定保健指導を、無料で年に1回まで受診することができます。

    ただし、この健診は脳血管や心臓の状態に異常がみられるかどうかを検査したり、予防を図ったりする目的で行われます。脳血管や心臓以外の部位に関する異常は対象外となりますので、注意が必要です。具体的な条件については、次の項で説明します。

    1. 二次健康診断等給付の条件

    二次健康診断等給付の給付には、以下の条件を満たす必要があります。

    条件(1)一次健康診断において、下記の4つの検査項目のすべてで異常所見がみられること

    • 血圧検査
    • 血中脂質検査
    • 血糖検査
    • 腹囲の検査またはBMIの測定

    条件(2)脳・心臓疾患の症状を有していないこと

    条件(3)労災保険の特別加入者でないこと

    「条件(1)」に関しては、4つすべての検査項目で異常が認められなくても、産業医が職場環境を考慮して異常所見を認めたとき、条件を満たす場合があります。

    「条件(3)」にある「労災保険の特別加入」とは、労働者以外の自営業者や事業主、特定業務に就く人を対象とした制度です。海外に派遣されている従業員も加入できるため、二次健康診断等給付を申請する時には、加入状況を調べておくと良いでしょう。

    2. 給付対象となる二次健康診断と特定保健指導の内容

    二次健康診断等給付の対象となる検査項目や特定保健指導の内容としては、以下の通りです。ただし、厚生労働省が指定する医療機関で受けた場合に限られますので、注意が必要でしょう。

    【二次健康診断】

    • 空腹時血中脂質検査
    • 空腹時血糖値検査
    • HbA1c検査(一次健康診断で実施していない場合のみ)
    • 負荷心電図検査または胸部超音波検査(心エコー検査)のいずれか一方の検査警部超音波検査(頸部エコー検査)微量アルブミン尿検査(一次健康診断において尿蛋白検査の所見が疑陽性または弱陽性の場合のみ)

    【特定保健指導】

    • 栄養指導(食習慣の改善や摂取カロリーのコントロールについて)
    • 運動指導(必要な運動量や運動方法について)
    • 生活指導(飲酒・喫煙・睡眠などの生活習慣について)

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    本記事では、健康診断の二次検査が必要になった場合の費用や受診勧奨について説明してきました。もし健康診断実施に伴って受診勧奨をしたい場合には、わたしたちパーソルビジネスプロセスデザインへお任せください。

    パーソルビジネスプロセスデザインの「受診勧奨プログラムなら、全厚生労働省の「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」に示されている、「二次健康診断の受診勧奨」を代わりに遂行させていただきます。

    生活習慣と関連のある血液検査の結果に対して受診勧奨を実施し、早期に治療開始・生活習慣の見直しを行うことで、将来的な医療費増大や企業における生産性低下などを防ぐことができるはずです。

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