健康診断結果報告書は提出の義務がある
企業には健康診断結果報告書を作成し、提出する義務があります。労働安全衛生規則の第52条には「健康診断結果報告」について、次のように記載されています。
常時五十人以上の労働者を使用する事業者は、第四十四条又は第四十五条の健康診断(定期のものに限る。)を行つたときは、遅滞なく、定期健康診断結果報告書(様式第六号)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
※引用:e-Gov「労働安全衛生規則」
定期健康診断を実施した場合、報告書の作成が必要となるためあらかじめ準備しておくことが必要です。従業員数の規模が大きい企業では、作成する報告書の枚数も多くなりますので、書き方や提出方法をしっかりと確認しておきましょう。
1-1. 提出が義務付けられている健康診断結果報告書の種類
1-1. 提出が義務付けられている健康診断結果報告書の種類
報告書の提出が義務付けられている健康診断は13種類あり、次のとおりです。
健康診断の種類 | 結果報告書の名称 |
---|---|
1. 定期健康診断 (50人以上の労働者を使用している事業場) | 定期健康診断結果報告書 |
2. 特定業務従事者健康診断 (50人以上の労働者を使用している事業場) | 定期健康診断結果報告書 |
3. 歯科医師による健康診断 (50人以上の労働者を使用している事業場) | 有害な業務に係る歯科健康診断結果報告書様式 |
4. 有機溶剤等健康診断 | 有機溶剤等健康診断結果報告書 |
5. 鉛健康診断 | 鉛健康診断結果報告書 |
6. 四アルキル鉛健康診断 | 四アルキル鉛健康診断結果報告書 |
7. 特定化学物質健康診断 | 特定化学物質健康診断結果報告書 |
8. 高気圧業務健康診断 | 高気圧業務健康診断結果報告書 |
9. 電離放射線健康診断 | 電離放射線健康診断結果報告書 |
10. 石綿健康診断 | 石綿健康診断結果報告書 |
11. 除染電離健康診断 | 除染等電離放射線健康診断結果報告書 |
12. じん肺健康診断 | じん肺健康管理実施状況報告 |
13. 指導勧奨による特殊健康診断 | 指導勧奨による特殊健康診断結果報告書 |
実施する健康診断の種類によって必要となる報告書が異なります。また、必要となる部数も報告書によって異なりますので、注意しましょう。「じん肺健康管理実施状況報告」は3部、その他は2部準備する必要があります。
1-2. 提出義務の条件
1-2. 提出義務の条件
結果報告書の提出が義務になるのかどうかは、従業員数によって異なります。
定期健康診断や特定業務従事者健康診断、歯科医師による健康診断は、50人以上の労働者を常に使用している事業者に限られます。しかし、「じん肺健康診断」については、その年度中にじん肺健康診断を実施していなくても報告義務がありますので注意が必要です。
1-3. ⻭科医師による健康診断の実施報告義務
1-3. ⻭科医師による健康診断の実施報告義務
歯科医師による健康診断の実施報告義務については、2022年10月に下記のような法改正がありました。
時期 | 内容 |
---|---|
2022年9月末まで(法改正前) | ・定期健康診断結果報告書を使用 ・常時50人以上の労働者を使用する事業者は提出義務がある |
2022年10月1日以降(法改正後) | ・有害な業務に係る歯科健康診断結果報告書様式を使用 ・労働者数にかかわらず提出義務がある |
2022年10月以降、歯科医師による健康診断を実施した企業は、従業員数にかかわらず「新しい仕様の報告書」を提出するようにしましょう。
定期健康診断結果報告書を提出しないと罰則はあるのか?
もし定期健康診断結果報告書を所轄の労働基準監督署に提出しない場合、罰則はあるのでしょうか。
結論をいうと、罰則に関しては法律で言及されていません。しかし、遅滞なく提出しなければならないため、実施後1〜3ヶ月以内には提出するのが望ましいでしょう。
一方で、そもそも健康診断を実施しなければ50万円以下の罰金が科されますので、怠らないよう気をつけなければなりません。
定期健康診断結果報告書の書き方と記入例
定期健康診断結果報告書の書き方と記入例
次に、定期健康診断結果報告書の「書き方」と「記入例」を10個の項目に分けて解説していきます。
定期健康診断結果報告書を作成するには、厚生労働省が配布しているテンプレートを利用しましょう。下記よりダウンロードすることができます。
記入例(1)対象年
まずは、「①対象年」を記入します。左端の「元号」に令和の「9」を入れるのを忘れないようにしましょう。そして、健康診断を実施した年を記入します。
記入例(2)健診年月日
次に、「②健診年月日」です。ある一定期間で健康診断が行われた場合、報告日に一番近い健診年月日を記入します。
1年を通して実施し、まとめて報告したい場合には、左側の「( 月~ 月分)」に記載しましょう。その横の「(報告 回目)」は、本報告書が報告年度において何度目の提出であるかについて記載します。
もし4月から5月にかけて健康診断を実施し、今回が3回目の報告なら、以下のようになります。
(4月~5月分)(報告3回目) |
記入例(3)事業場の名称
「③事業場の名称」には企業名だけでなく、以下のように店舗や支店、工場もあればその旨も記載しましょう。
株式会社◯◯ ××支店 |
記入例(4)事業場の所在地
「④事業場の所在地」には本社ではなく、健康診断を実施した事業場の住所を記入します。
記入例(5)健康診断実施機関の名称と所在地
「⑤健康診断実施機関の名称と所在地」はそれぞれ記入し、所在地が複数ある場合には別紙を使用しましょう。
記入例(6)在籍/受診労働者数
「⑥在籍/受診労働者数」には、パートやアルバイトも含めた労働者数を記入します。
記入例(7)労働安全衛生規則第13条第1項第3号に掲げる業務に従事する労働者数
「⑦労働安全衛生規則第13条第1項第3号に掲げる業務に従事する労働者数」では、以下の表を参考に、該当の業務に携わる人数を記載していきます。
イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ 異常気圧下における業務
ヘ さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
ト 重量物の取扱い等重激な業務
チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ 坑内における業務
ヌ 深夜業を含む業務
ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
カ その他厚生労働大臣が定める業務
※出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」(PDF)
記入例(8)所見のあった者の人数
「⑧所見のあった者の人数」には有所見者数の合計ではなく、すべての検診項目のどれかが有所見であった場合の実人数を記入します(他覚所見や歯科検診をのぞきます)。
記入例(9)医師の指示人数
「⑨医師の指示人数」は、「⑧所見のあった者の人数」のなかで、医師が「要治療」「要精密検査」と判定したなど、生活指導や保健指導を必要とすると指示した人数を入力します。
ただし、医師が「再検査」を指示する場合は、「⑨医師の指示人数」に入れません。
記入例(10)産業医の氏名・所在地・事業者職氏名
「⑩産業医の氏名・所在地・事業者職氏名」には、それぞれ氏名と所在地を記入しましょう。
電子申請または用紙での定期健康診断結果報告書の提出方法
定期健康診断結果報告書の提出方法は、電子申請または用紙を利用します。ここでは、それぞれの方法について解説します。
提出方法(1)「e-Gov電子申請」を利用する
提出方法(1)「e-Gov電子申請」を利用する
定期健康診断結果報告書の提出は、政府が提供する「e-Gov電子申請」で手続きをすることができます。
24時間いつでもオンラインで申請でき、役所の窓口が閉まっている時間帯でも利用することができます。また、マイページで申請状況をすぐに確認できて便利です。
利用方法について、下記に記載しておきます。
<利用の流れ>
- e-Gov電子申請アプリケーションをインストールし、アカウント登録する
- マイページから該当の報告書を選択し、書類を添付する
- 提出ボタンをクリックすると、提出が完了する
- 手続き状況は、マイページから確認可能
提出方法(2)労働基準監督署に用紙で提出する
提出方法(2)労働基準監督署に用紙で提出する
厚生労働省のサイトにある「各種健康診断結果報告書」からフォーマットを印刷して必要事項を手書きで記入することで、労働基準監督署に直接提出する方法もあります。
また、おなじく厚生労働省が提供している「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」を使用することもできます。これは、手書き入力の必要がなく、以下のように画面上で操作することができます。
※出典:厚生労働省「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」
完成したら保存し、必要部数を印刷すれば完了です。手書きで入力するよりも効率的に作成できますので、提出までの時間を短縮することができるでしょう。
定期健康診断結果報告書を効率的に作成するポイント
それでは続いて、定期健康診断結果報告書を効率的に作成するポイントを、3つ挙げて解説していきます。
ポイント(1)事業場情報を適切に管理する
ポイント(1)事業場情報を適切に管理する
「労働保険番号」「会社の名称」「所在地」「事業の種類」などは頻繁に利用しますが、滅多に変わることがありません。スプレッドシートなどにリスト化して保存し、アクセスしやすいように管理しておけば、検索する時間を短縮できるでしょう。
ポイント(2)予約段階で健診機関や実施日を記載する
ポイント(2)予約段階で健診機関や実施日を記載する
医療機関に健康診断を予約した段階で「健診機関」や「実施日」などをあらかじめ記入しておけば、スムーズに提出できるようになります。健診後に発生する集計作業に集中できるよう、事前に記載できるものは済ませてしまいましょう。
ポイント(3)データ管理を徹底する
ポイント(3)データ管理を徹底する
健康診断の結果をしっかりとデータ管理することで、報告書作成が効率的に進みます。データ化することで作業者の業務負担が減り、従業員に素早いアプローチができるのがメリットといえるでしょう。
定期健康診断結果報告書の作成や提出を含む管理業務ならパーソルビジネスプロセスデザインへ
定期健康診断結果報告書を作成する際、見本を参考に記入することでミスを減らすことができます。あらかじめ把握しておくことで効率的に作業できますので、ぜひこの記事で説明した「書き方」を参考に、定期健康診断結果報告書の作成や提出を進めましょう。
ただ、定期健康診断結果報告書の作成や、健康診断の実施には多くのリソースが必要になってしまいます。しかし、健康診断の管理業務をアウトソースすることで担当者の負担を軽くすることができます。多くの作業から解放され、コア業務に集中できるようになるでしょう。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、健康診断の管理業務をトータルサポートしています。定期健康診断結果報告書の作成だけでなく、医療機関の予約代行や精算代行まで行っているのが特徴です。
お客様のニーズに合わせて作業内容をカスタマイズすることもできますので、健康診断の実施で自社のリソース不足にお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。