エンジニアの採用が難しい「外的要因」は何なのか
まずは、エンジニアの採用が難しい外的要因について、4点を挙げて解説します。
1-1. そもそも市場にエンジニアが不足している
1-1. そもそも市場にエンジニアが不足している
厚生労働省が2022年11月に発表した「一般職業紹介状況」に関するデータでは、ITエンジニア(情報処理・通信技術者)の新規求人倍率は3.31倍でした。これは、全体の2.31倍よりも高い数字で、ITエンジニアは新規求人数に対して新規求職数が少ないことがわかります。
さらに、経済産業省の発表によると、2030年には最大で約79万人のエンジニアが不足すると予測されています。
※参考:経済産業省 「- IT 人材需給に関する調査 - 調査報告書」
IT人材の需要はますます高まると考えられますが、市場におけるエンジニア不足が発生していますので、今後はより多くの企業がエンジニア採用に苦戦するでしょう。
1-2. 優秀なエンジニアは囲い込まれている
1-2. 優秀なエンジニアは囲い込まれている
どの企業もエンジニア不足に陥っており、優秀なエンジニアは好待遇で囲い込まれています。そうすると、転職する動機が生まれず、企業がどれだけ募集をかけても応募が集まらない、という事態に陥ってしまうのです。
仮に、求めているエンジニアが転職活動を始めたとしても、好待遇の環境を整えられる大企業にばかり人材が集まり、環境を用意することが難しい中小企業は慢性的な人手不足になりがちです。
優秀なエンジニアを獲得するには、企業は応募されるのを待つだけでなく、後述する「リファラル採用」や「ダイレクトソーシング」など、積極的な採用活動に取り組んでいく必要があります。
1-3. 採用手段が多様化している
1-3. 採用手段が多様化している
エンジニア採用に限らず、現在は採用手段が多様化しています。求人メディアへの掲載だけでなく、自社ブログやSNSからの発信、社員からの紹介、スカウトなど、採用方法は増加しているのです。
複数の採用方法を利用している場合、採用担当者は目の前の業務に追われ「その方法が自社のエンジニア採用に適しているか」という効果測定まで手が回らないのが現状です。
求めているエンジニアの採用がうまくいかない場合、新しい採用手法を試すケースも見られますが、導入時には手間や工数が多くかかってしまいます。そして再び対応に追われ、どの手法で効果があるのかわからず次の方法を模索する……、というループに陥ってしまう担当者も少なくないのです。
1-4. エンジニアの働き方が多様化している
1-4. エンジニアの働き方が多様化している
フリーランスや副業など、エンジニアの働き方も多様化しています。
経験やスキルがあれば、エンジニアは割と独立しやすい職種です。就職していたとしても、副業でエンジニアの仕事を請け負えば年収アップも期待できますので、転職する必要性がなくなります。
そのような状況のなかで企業が希望するエンジニアを採用するには、フリーランスや副業を支援する体制を整えることも重要です。エンジニアを目指す人や転職を考えるエンジニア、そして既存の社員にとって、「副業OK」「独立後、仕事をもらえる」といった条件の会社は魅力的です。
しかし、実際はまだ「フリーランスとの契約や副業の許可まで対応できていない」という会社が多くあります。その場合、優秀なエンジニアを集められず、人手不足に陥ってしまうかもしれません。
エンジニアの採用が難しい「内的要因」は何なのか
続いて、エンジニアの採用が難しい内的要因について、3点を挙げて解説します。
外的要因は企業努力では変えにくい項目ですが、内的要因は適切な対策を打ち出せば希望するエンジニア採用につながりやすくなります。
2-1. ターゲットを絞り込めていない
2-1. ターゲットを絞り込めていない
「自社にはどのようなエンジニアが必要なのだろうか」とターゲットを絞り込めていない場合、採用は難しくなってしまいます。保有しているスキルや業務経験を明らかにし、募集要項に含めることが重要です。
社内でターゲットが絞り込めていない、または統一されていない場合、求職者に訴求すべきメッセージを決めることができません。
たとえば、プログラミング未経験者でも応募できるのか、それとも豊富な業務経験が必要なのか、求める人物像を明確化しておくことがポイントです。
2-2. 面接官が必要なスキルを見極められない
2-2. 面接官が必要なスキルを見極められない
人事部門の採用担当者が面接を実施している場合、エンジニアに関する知識やスキルがなく、自社に必要な人材かどうかを見極められないケースがあります。特に、規模が大きい会社では、人事部門とエンジニアの間に距離ができてしまうことで起こりやすい問題といえます。
履歴書や職務経歴書から正確にスキルを判断できず、自社が求めていない人材を通過させてしまうと、選考プロセスに無駄が生じてしまいます。
また、履歴書にエンジニア関連の資格が記載されていたとしても、自社の開発に必要な技術を保有しているとは限りません。さらに、資格を保有していたとしても実務でどれだけ役に立つのかは一概にいえません。
会社によって求められるスキルは異なりますので、採用担当者が自社の業務に必要となる技術を理解していなければミスマッチが起こってしまうでしょう。
2-3. 待遇面で折り合いがつかない
2-3. 待遇面で折り合いがつかない
優秀なエンジニアは市場価値が高く、それだけ高い給与水準が求められています。大手企業は賞与や福利厚生を含め好待遇で迎えられますが、中小企業の場合は高い給与水準とはいかず、採用が困難となっています。
また、エンジニア採用が初めての場合、市場や競合他社の給与水準を把握しておらず、自社独自の給与水準で求人を出してしまい「応募がまったくない」という状況に陥るケースも少なくありません。その場合には、市場を理解したうえで条件を変更することが重要です。
エンジニアの採用活動における失敗例
エンジニアの採用活動における失敗例
次に、エンジニアの採用活動で起こりがちな失敗例を2点ほど解説します。
失敗例(1)求人広告を出しても、応募者がほとんどいない
失敗例(1)求人広告を出しても、応募者がほとんどいない
「エンジニアの求人広告を出して1週間経ったが、応募者がほとんどいない」
採用担当の方々から、このような声を聞くことが多くあります。応募が来ない原因として、次の点が考えられます。
- ターゲットに刺さる内容になっていない
- エンジニアを迎える環境が自社になく、魅力が少ない
- エンジニアが求めている待遇を打ち出せていない
これらの場合、可能な限り雇用条件や自社環境を改善することが重要です。そのうえで、ターゲットが興味を持つような書き方にブラッシュアップできると良いでしょう。
また、エンジニアはどの企業も求めていますので、求人広告だけでは十分な採用活動ができない可能性があります。
求人広告を出して応募者を「待つ」のではなく、スカウトメッセージでエンジニアに声をかけるという「攻め」の姿勢も重要です。求人広告で集まらない場合は、「ダイレクトソーシング」ができるサイト等に登録すると良いでしょう。
失敗例(2)選考途中や内定通知後、辞退される
失敗例(2)選考途中や内定通知後、辞退される
「選考途中で、次の選考に進むのを辞退された」
「せっかく内定を出したのに、採用まで至らなかった」
このような課題を持つ企業様も多くいらっしゃいます。選考途中や内定通知後に辞退されてしまう原因として、次の点が考えられます。
- 複数の面接を受けていて、別の会社に決められてしまった
- 内定通知後のフォローがなく、不安を与えてしまった
- 社内関係者との連携が悪く、連絡が遅くなってしまった
- 情報開示が少なく、決め手を与えられなかった
ここで特に注意したいのが、選考後の連絡やフォローです。選考後、社内関係者に確認を取るのに時間が掛かり求職者の待ち時間が長くなってしまうと、応募していた他の会社に気持ちが移ってしまう可能性があります。
また、内定通知後のフォロー不足で不安を与え、辞退されるケースも見られます。「内定=入社」ではありませんので、入社手続きを終えるまでしっかりとコミュニケーションを取ることが重要です。
エンジニアの効果的な採用方法
それでは続いて、エンジニアの効果的な採用方法を5点挙げて解説します。
採用手法(1)求人広告
採用手法(1)求人広告
求人広告は、求人情報を専用サイトに掲載する採用方法です。利用者数が多く拡散力のあるサイトに掲載すれば、広く周知させることができます。
しかし、企業ブランドの知名度が低ければなかなか応募してもらえない点はデメリットといえます。そこで、出稿する際には「応募したくなる求人広告」を作成することが重要です。
▼応募したくなる求人広告を作成するコツ
- どのような人物に応募してもらいたいか、ターゲットを明確にする
- タイトルで簡潔に自社の魅力を伝える
- 事業内容やビジョンをしっかり記載し、入社意欲を高める
- 社内イベントや働き方など、企業カルチャーが伝わる内容を書く
- 社員やオフィスの様子がわかる明るい写真を掲載する
求人広告を読むだけで、どんな目標を持つ会社で、どんな人が働いているか、求職者が理解しやすい内容にすることが重要です。まずは求人広告をクリックしてもらうために、魅力的なタイトルと写真を選定しましょう。
採用手法(2)人材紹介
採用手法(2)人材紹介
人材紹介は「エージェント」とも呼ばれ、希望する人材の条件をピンポイントで伝えて紹介してもらうサービスです。
専門性の高いエンジニアや、即戦力のCTO(最高技術責任者)など、転職市場では出会いにくいハイクラスのエンジニアを採用したいときに利用すると良いでしょう。
人材紹介の多くは成功報酬型を採用しており、採用が決まった人材の年収に対して30〜40%を手数料として支払います。ですから、高年収である場合は支払う手数料が高額となってしまう点はデメリットのひとつといえます。
採用手法(3)ダイレクトソーシング
採用手法(3)ダイレクトソーシング
ダイレクトソーシングとは、専用サイトや専用のSNSからエンジニアに直接スカウトメッセージを送る採用方法です。
エンジニアに対して積極的にアプローチできるため、求める人材に近づきやすいのがメリットです。また、企業の知名度が低くてもアプローチの内容次第ではコミュニケーションを取りやすいのも特徴的です。
ただし、専用のSNSを使う場合にはスカウトするエンジニアが転職活動中かどうかの判断はできません。転職潜在層にアプローチすることになりますので、短期間での採用は難しいといえるでしょう。そのため、ダイレクトソーシングのみを実施するのではなく、求人広告など別の採用手法と合わせて利用するのが効果的です。
採用手法(4)リファラル採用
採用手法(4)リファラル採用
リファラル採用は、社員に人材を紹介してもらう採用手法です。学生時代の同級生や前職の同僚など、“自社に向いていそうなエンジニア”を紹介してもらい、会社は紹介者にインセンティブを提供する仕組みです。
内情を理解している社員からの紹介のため、企業カルチャーに合致するエンジニアと出会いやすいのがメリットといえます。一方、日々の仕事で忙しい社員にリファラル採用を説明して協力を仰ぐには工夫が必要です。
また、紹介で選考に進んだ候補者を面接段階で採用しなかった場合、紹介者と候補者の人間関係が悪くなってしまう恐れがあります。そのため、たとえ不採用でも何らかのインセンティブを与えるなど、社員が紹介しやすい仕組みを取り入れるようにしましょう。
採用手法(5)採用アウトソーシング
採用手法(5)採用アウトソーシング
エンジニアの採用活動を外部の会社にアウトソーシングするのも効果的な手段です。
前述したように、エンジニアの採用は難しく採用方法も多様化しています。採用担当者の業務負担は増えるばかりで、改善や内定者フォローにまで手が回らない状況の現場も多いでしょう。
そういった状況の際に、採用活動の一部または全部を外部委託できる「採用アウトソーシング」を利用すると、担当者の負担が軽減されて採用活動を効率化できるのです。
外部委託できる範囲としては、採用したい人物の要件定義から募集施策の改善、選考イベントの運営、求職者との連絡や書類送付など、ニーズに応じて様々な依頼をすることができます。
属人的になりがちな採用基準や評価基準の統一化も図れ、エンジニアの採用強化につながるはずです。
エンジニア採用を成功させるポイント
次に、エンジニア採用を成功させるポイントについて、6点ほど挙げて解説します。
ポイント(1)自社エンジニアにヒアリングする
ポイント(1)自社エンジニアにヒアリングする
そもそも自社がどのようなエンジニアを必要としているか、社内エンジニアにヒアリングすることが重要です。人事部門が主導で採用活動を実施している場合、現場で必要な人材とギャップが生まれてしまうケースが散見されるからです。
面接時には必ず同席を依頼して採用活動を進めていくと、求める人材を採用しやすくなるはずです。
人事部門でエンジニア経験がある担当者は少ないと考えられますので、自社エンジニアとしっかりコミュニケーションを取りながら採用活動を進めていきましょう。
ポイント(2)ターゲット像を明確にする
ポイント(2)ターゲット像を明確にする
求めるターゲット像を明確にすると、ミスマッチが起こりにくくなります。特に複数のエンジニア候補から採用する際には、「誰を選定すればいいか」という基準を統一できるので効果的です。
ターゲット像を決める際には、次の項目を含めておくと良いでしょう。
- 使用経験のあるプログラミング言語、ソフトウェア
- 過去に携わった開発環境
- コミュニケーション能力
- 性格や仕事の価値観
ポイント(3)使用言語や開発環境、待遇などの求人情報を充実させる
ポイント(3)使用言語や開発環境、待遇などの求人情報を充実させる
ターゲット像が決まったら、求人情報に反映させます。その際には、情報を充実させることが重要です。詳しく書くことによって、採用のミスマッチを減らすことができるのです。
使用言語や開発環境、待遇を記載する際には、次のように具体的に記載しましょう。
- ◯◯業界のソフトウェア開発経験1年以上
- Rubyを使った開発経験
- 年収800万円〜
- 平均残業時間 20時間/月
できるだけ抽象的な記載にせず、候補者が読んだときに「自分に当てはまる」と思ってもらえるよう、求人広告に詳細を記載するようにしましょう。
ポイント(4)求める条件を緩和する
ポイント(4)求める条件を緩和する
エンジニア採用に苦戦している場合、求める条件を緩和することも重要です。たとえば「即戦力とマネジメント能力のある、エンジニア経験5年以上の人材」を求めている場合、簡単には見つからない可能性が高いでしょう。
全ての条件を満たしている人物を探すのではなく、自社教育でスキルを伸ばせそうな「ポテンシャル採用」を検討するのもひとつの手段です。
企業カルチャーにフィットする人材であれば、スキルを高めながら理想の人材に成長していくことも期待できます。優秀なエンジニアの獲得が難しい採用市況を踏まえつつ、求める人材の要件を緩和すべきか定期的に検討していきましょう。
ポイント(5)採用スピードを上げる
ポイント(5)採用スピードを上げる
優秀なエンジニアを獲得するには、採用スピードを上げることも重要です。電話やメール連絡のスピードを高めつつ、丁寧な対応を心がけましょう。
選考途中や内定後の辞退を防ぐには、迅速で丁寧なレスポンスが効果的です。特に、内定通知後から入社までは、「入社前説明会」や「懇親会」などを開催して、内定者を放っておくことがないよう気をつけましょう。
多くの求職者は複数の企業に応募していますので、面接以外のコミュニケーションをこまめに取りながら安心して入社してもらうことが重要です。
ポイント(6)SNSで発信する
ポイント(6)SNSで発信する
SNSを使って社内の様子や企業理念を発信することで身近に感じてもらえ、採用につながりやすくなるケースもあります。
エンジニアの働き方や企業研修、キャリアやリモートワークの様子など、柔軟な勤務体系やユニークな福利厚生などを、写真を使いながら投稿すると効果的です。
投稿内容からオフィスの雰囲気や社員の人柄が伝わることで、「この環境で働いてみたい」と入社意欲の向上にもつながっていくはずです。
エンジニアの採用ならパーソルビジネスプロセスデザインへ
エンジニア採用が難しい理由は、市場にエンジニアが不足しているだけでなく、自社の採用方法にも課題があり求める人材を採用できなくなっているのかもしれません。しかし、増加する業務負荷のため、なかなか改善に踏み切れないという担当者の方もいらっしゃるでしょう。
そこで有効な採用方法が、「採用アウトソーシング」の活用です。採用業務をアウトソーシングすることで、担当者の方はコア業務に専念できるようになります。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、「中途採用支援サービス」を提供しています。パーソルグループの豊富な人材マーケットへの知見を活用し、採用が難しいエンジニア市場を分析します。そして、市場に適した採用手法を提案させていただきます。
ダイレクトメッセージの送信や応募受付、面接日程の調整といった事務作業だけでなく、採用プロセスの設計や求人広告の企画などコンサルティング面でもお任せいただけるのが特徴です。
エンジニア採用でお困りの場合には、ぜひパーソルビジネスプロセスデザインへお気軽にご相談ください。