ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)とは?
ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)は、企業が直接求職者にアプローチをかけ、採用に結び付ける手法です。従来の採用手法のように、求職者の応募から始まる「待ち」ではなく、「攻め」の戦略といわれます。
ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)が流行し始めた背景には、労働市場の変化が挙げられます。少子高齢化に伴い生産人口が減るにつれて、ポテンシャルの高い優秀な人材や即戦力となる人材を見つけることが難しくなりました。優秀な人材と接触する機会をこれまで以上に増やすために、ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)が用いられるようになっています。
また、現代ではWEBでの情報収集が常識となり、求職者と企業のコミュニケーションが容易になったことも要因として挙げられます。さまざまなITツールを駆使することで効率的なマッチングが可能となっているのです。
ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)の種類
ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)には、主に以下の3種類の手法があります。
- スカウト機能のある求人サービスを利用する
- SNSでメッセージを送信する
- 勉強会やイベントなどの交流会を通じてコンタクトする
主流なのは求人サービスの「スカウト機能」を使う方法です。企業側が応募者の公開しているプロフィールを確認し、自社の求める要件に合致する場合には直接メールを送ります。既に転職を検討している層に対して、ダイレクトにアプローチできるのが特徴です。
SNSを利用する場合は、SNSで発信している内容に基づいて応募者個人の価値観やスキル、人柄を把握したうえでアプローチができます。企業理念と価値観が合致する場合には、転職を考えていなかった人材でも採用できる可能性があるでしょう。
勉強会やイベントなどの交流会を通じて採用を進める方法は「ミートアップ」とも呼ばれます。接触するのは転職を検討している人ばかりではないため、すぐに採用につながる可能性は低くなっています。しかしながら、企業の文化や働き方を知ったうえで入社に至るため、ミスマッチが起こりにくいのが特徴といえます。
従来の採用手法との比較
従来の採用手法との違いを比較してみると、主に以下のような点が挙げられます。
求人広告・就職サイト | 人材紹介会社 | ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング) | |
---|---|---|---|
コスト | 月額料金が必要 | 成功報酬として年収の3〜4割を支払う | 少なく済むケースがほとんど |
工数 | 母集団形成以降、採用までの工程は自社で行うため、ある程度の手間はかかる | コンサルタントにある程度任せられるため、手間は少ない | 一人一人個別のアプローチをするため手間はかかる |
母集団の質 | 不特定多数の求職者から応募があるため、良い人材とすぐにマッチングできない可能性がある | 自社の求める人材像に合う人物を紹介してもらえるが、ミスマッチが起こることもある | 自社の求める人材像に合わせてターゲットを絞れる |
ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)にかかる費用は?
SNSや交流会を通じてアプローチする場合には、コストがほとんどかかりません。無料で良質な人材が確保できる可能性もあるでしょう。
スカウト機能がついた求人サービスには、主に2つの料金体系があります。
- 自由にスカウトメールが送れる人材データベースの利用料を数ヶ月から1年で支払う料金体系
- 応募や内定、入社などの成果に応じて支払いが発生する料金体系
人材データベースを利用する場合には、採用の人数に関わらず一定の料金で利用でき、数十万〜500万程度で利用できます。一方、成果連動型の場合には、一人当たりの料金が職種や勤務地に応じて定められているケースが多くなっているのが特徴です。
ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)のメリット・デメリット
ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)にはメリットとデメリットの両方があります。よく理解したうえで、自社の採用戦略と照らし合わせながら導入するかどうかを決めましょう。
ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)を導入するメリット
ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)を導入するメリットは大きく分けて2つあります。
企業が求める人材へダイレクトにアプローチできる
自社で設定した「求める人材像」に合う人物をピンポイントで探せるのが最大のメリットです。転職に対して潜在的なニーズがある人物に対してもアプローチができるため、優秀な人材を見つけられる可能性が高くなります。
年収や知名度以外に自社の魅力を幅広くアピールできるため、一般的に人材の獲得競争において不利とされる中小企業やベンチャー企業でも使いやすいのが特徴です。
また、オンラインでの接触を図るのが基本となるため、海外の人材を採用することにも長けています。
具体的には、特に市場価値が高く応募や採用難易度の高い業種において、ダイレクトソーシングはその威力を発揮します。エンジニア採用の例で言えば、従来の求人広告やジョブサイトではアプローチが困難であった優秀なエンジニアに対して、直接的にターゲットにすることが可能になります。コードやプロジェクトの詳細、技術的な課題など、エンジニアが興味を持つ具体的なトピックに焦点を当てることで関心を引きつけ、積極的な採用活動ができるのです。
(2)採用コストを抑えて人材の獲得ができる
他の採用手法と比べても比較的コストを抑えられるのもメリットといえます。
「マイナビ中途採用状況調査2022」によると、人材紹介に費やした採用費の実績は年間で316.4万円であるのに対し、ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)に費やした費用の実績は年間145.8万円と約半分となっています。ただ、あくまで平均値のため、SNSや勉強会などで集客した場合には、費用がかからないケースもあるでしょう。
※<参考>マイナビ中途採用状況調査2022(PDF)
採用コストを抑えられる理由は、中間業者やエージェントを介さずに採用活動を行うためです。求人媒体には直接掲載費用を投じる必要がありますが、人材紹介企業に支払う手数料がないため、採用コストが低減します。特にエンジニアなどの高額な手数料が発生するような業種などについては、大幅な経費節約が期待できるでしょう。
また、特定の求職者に対して直接アプローチをするため、アクセス数や応募数などのデータをリアルタイムに把握し、効果的な採用活動へと修正することが可能になります。そのため、必要対効果の高い採用活動を進めることができ、効果的なパフォーマンス指向の採用活動を実現することができます。
ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)を導入するデメリット
続いて、ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)のデメリットを4つご紹介します。
(1)採用業務の負担が増加する
ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)では応募者に対して個別のアプローチをするため、工数が多くなります。ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)のような「個別採用」だけではなく、従来型の「マス型採用」を併用している企業も多いため、送信対象の選定やスカウトメールの作成、メールの返信などの業務が増えることにより、採用担当者の業務負担が増えるのがデメリットといえます。
ただ、このデメリットについては、スカウト代行サービスを活用することで解決が可能です。ダイレクトソーシングを外注するメリットは、採用担当者の方の工数を使わずに応募数を増加できることや、ダイレクトソーシングの知見がある企業へ外注することで、取り組みそのものの効果が高くなることが期待できることです。
(2)即効性は期待できない
転職のニーズの高い求職者だけでなく、一般に「潜在層」と呼ばれる、現在の職場や状況に満足しているが、将来的なキャリアに興味がある人々にもアプローチを行います。そのため、すぐに採用成果が得られるわけではありません。
ダイレクトソーシングでは、まず関心を持っている人材とのコミュニケーションを築き、関心を高めながら採用フローに進むことが求められます。そのため、アプローチから採用までには時間がかかることが多く、即効性を期待することは難しいです。
ダイレクトソーシングでは、候補者との関係を育みながら、長期的な関わりを築いていくことで、将来的に採用の成果を得やすくなります。採用フローに時間をかける分、より適切な人材を採用する可能性が高まるのです。
(3)一定以上のノウハウやスキルが必要
ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)を成功させるためには、応募者に対してどのようなアプローチをすれば効果が高いのか、といったノウハウが必要とされます。また、採用担当者と求職者が直接コンタクトを取るため、選考参加につなげられるかは採用担当者の力量に左右される可能性が高いでしょう。アプローチした相手がまだ転職を考えていない場合には、「自社で働く動機付け」をしっかりと伝えるスキルが求められます。
(4)大量採用には不向き
ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)は一対一でアプローチする採用手法です。そのため、大量の採用を行う場合には、リソースや時間の制約があるため不向きと言えます。
大量採用では、多くの応募者に効率的かつ迅速に対応する必要がありますが、ダイレクトソーシングでは個々の応募者とのコミュニケーションに時間をかける必要があり、多くの候補者との丁寧な対話を保つことが難しいです。
そのため、大量採用を必要とする場合には、効率的なプロセスを確立するために、他の採用手法や採用エージェンシーとの組み合わせが検討されることがあります。例えば、ダイレクトソーシングと併せて、選考フェアやオンラインプラットフォームを活用したセルフスクリーニングなどの手法を組み合わせることで、大量の候補者をスムーズに選考することが可能です。
ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)を導入する場合の注意点
次に、ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)を効果的に実施するために、押さえておきたい注意点について解説していきます。
企業の訴求ポイントを発信しないと効果が薄くなる
ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)においては、自社の魅力を効果的に発信することが重要です。
応募意欲が低い人でも採用につなげるためには、役員や部門の責任者のような、「熱意を持って業務内容や会社のビジョンを伝えられる人物」が採用活動に加わると心強いでしょう。
採用工程数の増加は覚悟しておく
ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)は他の採用手法と比べて、ある程度の人的コストを割かなければ成果に結びつきません。あらかじめ工程数が増加することを見込んで、「抱えている業務を整理する」「アウトソーシングサービスを活用する」といった対策を検討しておきましょう。
効果測定を忘れない
一般的に、ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)は期待通りの結果が出るまでに時間がかかる方法です。ノウハウが確立されるまでは、施策の実行と検証、改善を繰り返す必要があります。
ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)を導入したほうが良い企業とは?
それでは、ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)を導入したほうが良い企業とはどんな企業なのでしょうか。2つほど挙げて見ていきましょう。
専門性の高い職種を募集している企業
専門性が高く優秀な人材はどの企業も手放したくないため、高待遇を受けているケースが多く、転職市場に出てきにくい傾向があります。
ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)は、転職サイトに登録していない人材であってもSNSや交流会などを通じて接触することが可能です。
従来型の採用方法で結果が出なかった企業
これまで導入した採用手法で思うような結果が出せなかった企業にとっても、ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)は最適です。
就職サイト経由での募集は、母集団の質が低くなる可能性があります。また、人材紹介会社経由で採用する場合には、自社の要望や人材要件が担当者にうまく伝わらず、ミスマッチが起きる可能性もあるでしょう。
ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)は、自社で採用を完結させる手法のため、このようなズレが生じる可能性は低くなるといえます。
ダイレクトソーシング(ダイレクトリクルーティング)ならパーソルビジネスプロセスデザインへ
わたしたちパーソルビジネスプロセスデザインは「ダイレクトソーシング」を「第三者を介さずに、直接候補者へアプローチできる攻めの採用手法」という意味で使っています。
弊社では、『ダイレクトソーシング支援』として、貴社で利用中のダイレクトソーシングデータベースでの実務を、幅広く支援させていただいております。
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