越境学習とは?学習を高めるポイントや導入のメリットなどを徹底解説

越境学習とは?学習を高めるポイントや導入のメリットなどを徹底解説

企業の離職率を下げるためには、社員満足度を向上させる施策が欠かせません。しかし、「どのような施策を進めるべきなのか分からない」と、動き出せずにいる担当者の方も多いのではないでしょうか。

また、対策の1つとして『越境学習』に興味を持つ方もいるでしょう。そこで本記事では、越境学習の概要や求められる理由、導入するメリット、注意点などについて解説していきます。

目次

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    越境学習とは何なのか

    越境学習とは、従業員が企業・部署といった組織の枠を超えて新しい環境に移動し、知識・ノウハウを学ぶ活動のことです。例えば、所属する企業を一時的に離脱して、次のような環境へと越境します。

    ・同業種の外部企業

    ・他業種の外部企業

    ・各種自治体

    そうすることで、今までに経験したことがない環境に身を置くことになり、新たな知識・経験・コミュニケーションを得られるのが魅力といえます。また、さまざまな視点からビジネスを学ぶことによって、新しい行動のきっかけやアイデアの創出、働きがいも生まれてきます。


    越境学習は、経済産業省も推奨している社内満足度向上の施策です。離職率の高まりを危険視している方は、ぜひ越境学習の特徴を学んでみてください。

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    越境学習が求められている背景とは

    越境学習が求められるようになってきたのは、2020年より流行しはじめた新型コロナウイルスの影響があります。新型コロナウイルスのまん延に伴って働き方を変えることが余儀なくされた日本社会では、以下に示す4つの不安定要素が急激に高まりました。

    ・変動性(Volatility)

    ・不確実(Uncertainty)

    ・複雑性(Complexity)

    ・曖昧性(Ambiguity)

    これらは、頭文字をとって「VUCA」と呼ばれますが、「VUCA」の現代では今まで安定していたキャリアが不安定化したといえます。そのため、将来有望だった人材が企業を辞めて、別の会社に移るケースが増えてきているのです。

    参考として、厚生労働省が公開している「雇用動向調査結果の概況」の入職・離職の推移を確認してみましょう。

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    ※出典:厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況」(PDF)

    新型コロナウイルスがまん延した当初、一時的ではありますが入職・離職が低下しています。しかしその後、働き方が変化したことによって、再度入職・離職の推移が上昇していることが分かると思います。

    急激に働き方が変化する世の中に対応すべく、日本中のビジネスパーソンが今「仕事を変えよう」と考えているのです。そして現在、離職率が増加する課題を危惧して、新たに『越境学習』という活動が登場してきたわけです。


    『越境学習』は、社員の働きやすさや企業の新しい魅力を生み出します。不安定な世の中で社内満足度を向上させる施策として、多くの企業で越境学習の導入が始まっているのです。

    越境学習を導入するメリットとは

    多くの企業で導入が始まっている越境学習ですが、導入することでどのような効果がもたらされるのでしょうか。続いては、具体的なメリットを3つ挙げて解説していきましょう。

    メリット(1)離職や人材流出を防止できる

    越境学習には「従業員の働きやすさの確保」「選択肢の増加」の効果があり、従業員の離職や人材流出の歯止めとして効果があります。なぜなら、一般企業の多くが働きやすさや選択肢の少なさに関して悩みを抱えているからです。

    例えば、越境学習には「新しい環境で働ける」「チャレンジできる」といったメリットがあります。何度も繰り返される業務ルーティンだけでなく、自主性を活かした働き方をしてもらうことによって「この会社で働き続けるのが辛い」と感じにくくなるのです。


    また、越境学習によって働き方、一緒に働く人材が変わると、主な離職要因である「人間関係」に依存しすぎない働き方に転換できます。ストレスフリーな働き方を続けられるため、自然と離職率や人材流出の防止へとつながっていくでしょう。

    メリット(2)新たな知見・ノウハウを吸収できる

    越境学習は、企業内だけでは知ることができない新たな知見・ノウハウを吸収できる良い機会になります。具体的に越境学習先では、次のようなことを学べるのが特徴といえるでしょう。

    ・その職場での働き方やルール

    ・他業種の考え方や人との接し方

    ・お金が生まれる仕組みや手順

    1つの企業の考え方に依存するのではなく、広く深い知見やノウハウを学べば、それが従業員のスキルとして定着します。従業員の能力が高まれば、働きやすさ・社内満足度が向上するのはもちろん、企業の利益にもつながっていくでしょう。

    メリット(3)幹部候補生の育成に役立つ

    社内で幹部候補生を育てたいと考えているのであれば、越境学習は非常に役立つでしょう。越境学習は、異なる環境での知識・ノウハウだけでなく、経営に欠かせない以下のようなスキルを磨くことができるのも魅力です。

    ・仕事に対するタフさ

    ・素早い判断力

    ・状況に応じた柔軟性

    ・新たな発想力

    越境学習をきっかけに、有望な人材がより多くのスキルを身に付けていくのが特徴です。不安定化している世の中でビジネスを遂行していくためにも、幹部候補生の育成に役立てていくべきでしょう。

    越境学習を導入する際の注意点とは

    働き方が急激に変化している現代において、越境学習は社内満足度向上に役立つひとつの選択肢だといえます。しかし導入する際には、次の3点に注意しなければなりません。

    (1)導入前に目的を明確化する
    (2)強制参加させずに自発的な参加を促す
    (3)企業や従業員の負担を考慮する

    1つずつ解説していきましょう。

    注意点(1)導入前に目的を明確化する

    越境学習を導入する予定なのであれば、事前に「なぜ越境学習を実施するのか」という目的を明確化しておきましょう。

    越境学習は、従業員のスキルアップに欠かせない活動です。しかし、どんなスキルアップのために導入するのかを決めずに動いてしまうと、思うような効果を得られない恐れがあります。

    社内満足度が上がるどころか、従業員が何のために越境学習をしているのか理解できず、逆に社内満足度を下げてしまうかもしれません。企業・従業員がそれぞれ明確な目的のために動けるように、導入の目的を検討しなければならないのです。

    注意点(2)強制参加はさせずに自発的な参加を促す

    越境学習をスタートしたら、まずは参加者を募集します。このとき、経営層側で従業員を指名して強制的に参加させるのは避けた方が良いでしょう。それは、次のような危険性があるからです。

    ・強制参加をストレスに感じてしまう

    ・多くの従業員が求めている働き方ではない

    ・業務の負担が増えてしまう

    越境学習がスタートすると、働く場所や働き方、そしてライフスタイルが変化します。しかし、従業員すべてがその働き方を求めているわけではありません。なかには、今の働き方を好んでいる従業員もいるのです。


    また、結婚・子育て・介護などをしており、越境学習が負担になってしまう従業員もいます。無理に強制すると社内満足度が低下し、離職率が上がってしまうかもしれません。

    従業員の負担になってしまわないように、越境学習の募集は自発的な参加を促すように気を付けるべきでしょう。

    注意点(3)企業や従業員の負担を考慮する

    越境学習の導入が、企業や従業員に対してどれくらいの負担になるのかを可視化しておきましょう。越境学習には、次のようなリスクがあるからです。

    越境学習を行う人材の穴を別の人材が埋めなければならない

    ・一時的に企業が能力不足に陥るかもしれない

    例えば、有望な人材を越境学習に割り当てた場合、その人材が行っていた業務を穴埋めする人材が必要になります。しかし、社内リソースが不足していると、うまく穴埋めできず、他の従業員の負担になってしまうかもしれません。


    また、社内の戦力が一時的に抜けるため「その担当者しか対応できないこと」をカバーできなくなってしまう恐れもあります。

    場合によっては売上の低下や、他の従業員のストレス増加につながるケースもありますので、越境学習の導入における負担を無理なくカバーできるのかを事前に検討しておきましょう。

    越境学習の代表的な手法について

    越境学習の実施には、複数の手法が活用できます。代表的な手法を7つ挙げてみました。

    (1)社内で部署異動・グループ異動する
    (2)他企業に出向する
    (3)社会人大学院へ再入学する
    (4)副業を解禁する
    (5)海外留学・派遣する
    (6)NPOに参加してボランティアや社会貢献を行う
    (7)ワーケーションを導入する

    具体的な実施内容について、紹介していきましょう。

    (1)社内で部署異動・グループ異動する

    複数の部署・支店・グループがある企業であれば、社内で異動をすることで新たな知見・ノウハウを学ぶことができるでしょう。

    越境学習を低いハードルで実施できることはもちろん、費用負担も最小限に抑えられるのが魅力といえます。同じ企業内であっても、働き方や仕事内容が変化することによって新しい気づきがあるはずです。

    (2)他企業に出向する

    仕事でつながりのある企業があるのであれば、その企業と提携することによって越境学習を実施することもできるでしょう。

    社内では知ることができない新しい知見・ノウハウを学べることはもちろん、最終的には学んだことを所属企業に戻って反映できるのがポイントです。他企業へ出向するという形式にすれば、従業員が転職してしまうリスクも避けられるでしょう。

    (3)社会人大学院へ再入学する

    会社という環境では学べないような専門的な知識やノウハウが必要なのであれば、会社からの支援によって大学院への再編入を促してみるのも良いでしょう。

    特定の分野に特化した研究ができるため、高い知識力・技術力が身につくはずです。また、社会人大学には異業種のビジネスパーソンも集まりますので、学会や授業、研究を通じて、さらなる新しい知見を得られるかもしれません。

    (4)副業を解禁する

    普段の企業活動は変えずに越境学習を実施したいのであれば、副業を解禁してみるのも良いでしょう。

    従業員が自発的に副業をはじめることにより、お金を得る仕組みやビジネスへの姿勢を学ぶことができるでしょう。また、従業員の副収入が増えることから、離職率を下げる良いきっかけになるかもしれません。

    (5)海外留学・派遣する

    企業にグローバル化の志向がある、もしくは従業員にグローバル志向があるのであれば、海外留学や海外派遣を取り入れても良いでしょう。

    海外留学・派遣は文字通り直接的な越境学習です。言葉の壁、人種の壁を越えて新しい環境で学ぶことによって、従業員のスキルアップを基点として、企業のグローバル化としても役立つはずです。

    また、海外で働きたい従業員の意向を組んだ取り組みであるため、社内満足度を高めやすいというのも実施する魅力といえるでしょう。

    (6)NPOに参加してボランティアや社会貢献を行う

    社会奉仕や社会貢献といった活動に興味を持つ従業員がいるのであれば、NPOなどの団体に参加してボランティアや社会貢献の越境学習を実施してみても良いでしょう。

    ボランティアや社会貢献は自尊心を高めることにもなりますので、そういった意味合いのある越境学習は社内満足度を向上させやすい取り組みになるはずです。また、社会貢献には社外に向けたアピールの効果も期待できますので、従業員・企業ともに利益のある手法だといえるでしょう。

    (7)ワーケーションを導入する

    ワーケーションとは、「work(仕事)」と「vacation(休暇)」を組み合わせてできた造語で、旅行先の観光地やリゾート地など、休暇も楽しめる場所で仕事ができる点が魅力です。

    「職場に行って働く」という従来の考え方を大きく転換した新しい働き方ですが、まさに越境して普段と違う場所で働くことにより新たな発想が生まれ、イノベーションにつながる可能性も高まります。


    また、ワーケーションは「仕事と休暇を両立できる働き方」であり、新たな旅のスタイルとして政府も普及を進めています。場所を問わないため、日本国内の観光地やリゾート地だけでなく、場合によっては海外で働ける可能性もあるのです。

    企業がワーケーションを導入することで、有休消化率を高め、社員のストレス解消を図れるのも大きな特徴といえるでしょう。

    越境学習の効果を高めるためのポイント

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    越境学習を実施するのであれば、より効果の高い取り組みを考えることが重要です。ここでは、越境学習の効果を高めるポイントについて3つを挙げながら解説していきましょう。

    ポイント(1)振り返り・フィードバックの機会を用意する

    越境学習は機械的に実施するのではなく、定期的な振り返りやフィードバックを取り入れていきましょう。振り返りやフィードバックがスキルアップの品質を左右するのです。

    越境学習で実施した内容を従業員に理解・活用してもらうためには、学んだことを言語化して記憶に定着させることが欠かせません。なかには、学んだことを忘れて業務に適用できていない人材もいますので、次の方法で振り返りやフィードバックの機会を設けましょう。

    ・研修や報告会

    ・報告書の提出

    ・社内での発表会

    以上の方法で「学んだことを振り返る」ということを習慣化すれば、記憶の定着だけでなく新たな気づきや新たなアクションにもつながるはずです。

    ポイント(2)学んだことを社内共有する

    越境学習で学んだ知見やノウハウは、従業員1人にとどめず社内全体に共有するようにしましょう。

    新しい知見やノウハウは、当人だけでなく他の従業員にとっても有益な情報です。新しいことを学ぶことによって、企業全体のモチベーションアップや活動意欲の増加につながりますので、以下の方法で情報を共有しましょう。

    ・報告書の共有

    ・インタビューの実施

    また、情報共有した内容を業務に取り込んでいくことで企業利益につなげることも可能になるはずです。

    ポイント(3)越境学習者を呼び込む

    単に越境学習の希望者を送り出すのではなく、他企業の越境学習者を呼び込むことも社内に良い影響をもたらします。

    他企業の知見やノウハウを持つ人材を呼び込めば、人材を確保しながらも知見やノウハウを吸収できるというのも魅力です。また、呼び込んだ人材には次のことを行ってもらうと良いでしょう。

    ・他社との違いをフィードバックしてもらう

    ・社内研修会に参加してもらう

    「越境学習で送り出せる人材が不足している」とお悩みであれば、越境学習を逆手にとってみるのも良いかもしれません。

    ワーケーションならパーソルビジネスプロセスデザインへ

    本記事では、越境学習の概要や求められる理由、導入するメリット、注意点などについて解説してきました。越境学習の代表的な手法としても挙げていた「ワーケーション」ですが、私たちパーソルビジネスプロセスデザインではワーケーションサービスをご提供しています。

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