健康診断の実施により助成金や補助金はもらえるのか
健康診断の実施により、助成金や補助金はもらえるのでしょうか。まずは助成金申請に共通する要件について解説しましょう。
代表的な助成金として、健康診断制度を設けて離職率の低下を達成できれば支給される「人材確保等支援助成金」があります。これは、条件を満たせば57万円の助成を受けられ、健康診断にかかるコストを削減することができます。
また、国が支給する助成金だけでなく、民間団体で補助金制度を設けているところもあります。例として一般財団法人あんしん財団や、一般財団法人東京都トラック協会などが挙げられるでしょう。
いずれの助成金制度も、法律に定められた範囲の健康診断にかかる費用は支給されないという傾向があります。では、どこまでが法律に定められた範囲なのでしょうか。次に解説していきます。
1. 法定内の健康診断
1. 法定内の健康診断
法律で義務付けられている健康診断には、以下のものがあります。
- 雇い入れ時の健康診断
- 定期健康診断
- 特定業務従事者の健康診断
- 海外派遣労働者の健康診断
- 給食従業員の検便
上記の一般健康診断で行われる法定項目は、助成金支給の対象外となるケースが多いでしょう。法定項目には、下記のような検査項目が含まれます。
【健康診断の法定項目(定期健康診断の場合)】
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査および喀痰検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
- 心電図検査
2. 法定外の健康診断
法定項目以外の項目としては、オプション検査や人間ドックの検査項目が該当します。特に人間ドックには、超音波検査や胃内視鏡検査など法定項目にはない検査項目が含まれます。
会社が費用を負担する義務はありませんが、検査にかかる費用を負担していると助成金の対象になることがあるでしょう。
廃止されている助成金制度があるので注意が必要
2023年9月現在、健康診断制度を拡充することで助成金を得られる公的な制度のうち、廃止されているものがあります。
健康診断に関する助成金制度として、キャリアアップ助成金(諸手当制度等共通化コース)がありました。キャリアアップ助成金とは、パート従業員や派遣社員などの非正規雇用労働者のキャリアアップを支援するための助成金です。
この助成金は、非正規雇用労働者に対して正社員と共通の健康診断制度を設けた場合に助成金が支給されていました。しかし、令和4年4月1日以降は廃止されていますので、キャリアアップ助成金の申請を考えていた方は注意が必要でしょう。
健康診断に活用できる助成金
健康診断に活用できる助成金には、どのような種類があるのでしょうか。詳しく解説します。
1. 人材確保等支援助成金
まず1つ目として「人材確保等助成金」について解説します。
「人材確保等支援助成金」とは、労働環境の向上を図る事業主や事業協同組合などに対して、厚生労働省が支給する助成金です。魅力ある雇用創出を図ることによって、人材の確保・定着を目指すものになっています。
サービス業や建設業をはじめ、多くの業種では人材不足が顕著になっています。「人材を募集しても集まらない、定着しない」といった企業の雇用創出に向け、設備・機器の導入や体制づくりなどの取り組みを支援する制度の一つです。
これまで「人材確保等支援助成金」を申請するにあたっては、生産性要件(企業の生産性が向上しているかを評価する指標)を理解しておく必要がありました。しかし、2023年3月31日までで「生産性要件」は廃止となり、代わりに「賃金引き上げに関する要件」が適用されることとなっています。
また、「人材確保等支援助成金」には、2023年8月現在、9つのコースがあります。代表的な1つ目のコースを簡単に紹介しますと、『雇用管理制度助成コース』というものがあります。
これは、雇用管理制度を導入・実施し、従業員の離職率の低下に取り組む事業主に対して助成をしており、離職率の目標値を達成した際に助成金として57万円が支払われています。主な要件としては、「雇用管理制度の導入」や「離職率目標の達成」が挙げられています。(2022(令和4)年4月1日以降、整備計画の新規受付を休止中)
2. あんしん財団の補助金
健康診断に活用できる助成金の2つ目として、「民間団体の補助金」があります。
具体的に、民間団体から支給される補助金として「一般財団法人あんしん財団」が運営する定期健康診断補助金や人間ドック補助金制度があります。ただし、あんしん財団に加入する必要があり、加入できるのは中小企業もしくは個人事業主に限られています。
各制度で支給される額は、従業員1人あたり以下の金額となっています。
- 「定期健康診断補助金制度」:1名につき2,000円まで
- 「人間ドック補助金制度」:1名につき6,000円まで
上記の「定期健康診断補助制度」において助成金の対象となるのは、法定項目を全て実施した場合に限られ、オプション検査は含まれないので注意が必要です。なお、定期健康診断補助制度は、2024年3月31日の受診分をもって終了される予定です。
また、「人間ドック補助金制度」においては、国内の医療機関で受診した以下の検査が支給対象となっています。
- 人間ドックと認める検査
- 脳ドック
- PET健診
- 生活習慣病健診に加え付加健診を実施した検査
肺や心臓、大腸などの特定部位に対する人間ドックは対象とはなりませんので、こちらも注意が必要です。
助成金を受給するまでの流れと注意点
健康診断に関する助成金を受給するには、どういったステップを踏む必要があるのでしょうか。上記で紹介した「人材確保等支援助成金」の助成金申請の流れと注意点を解説します。
1. 人材確保等支援助成金
1. 人材確保等支援助成金
人材確保等支援助成金の申請の流れとして、以下の4つのステップがあります。
(1)雇用管理制度整備計画の提出
(2)計画に基づく雇用管理制度の導入
(3)雇用管理制度の実施
(4)目標達成助成の支給申請
それぞれのステップについて解説していきましょう。
ステップ(1)雇用管理制度整備計画の提出
ステップ(1)雇用管理制度整備計画の提出
助成金申請にあたっては、まず「雇用管理制度整備計画」という計画書を提出しなければなりません。提出先としては、管轄の都道府県の労働局であり、申請には以下の書類が必要となります。
【書式に沿って作成する書類】
- 人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)雇用管理制度整備計画書
- 導入する健康づくり制度の概要票
- 雇用管理制度対象労働者名簿
- 事業所確認票
【事業主が準備する書類】
- 労働協約または就業規則(変更後の案も含む)
- 計画時の離職率算出期間の雇用保険一般被保険者の離職理由等が分かる書類:離職証明書など
- 健康診断を実施したことを証明する書類の写し:医療機関から発行された領収書など
- 対象労働者の労働条件通知書または雇用契約書:雇用契約書など
- 申請する事業所が社会保険の適用事業所であることが分かる書類:社会保険料納入証明書など
- その他管轄労働局長が必要と認める書類
これらの必要書類が1つでも不足していると審査を受けられません。必要書類は複数あるため、添付漏れがないように注意しましょう。
ステップ(2)計画に基づく雇用管理制度の導入と実施
ステップ(2)計画に基づく雇用管理制度の導入と実施
計画書を申請して労働局の認可が下りたら、「健康づくり制度」を導入します。この制度に関しては、全ての通常の労働者を対象とする必要があります。特定の業務に就く従業員に限定した制度では認められませんので、注意が必要でしょう。
導入にあたっては、労働協約もしくは就業規則に制度を明記することが求められます。しっかりと明記して、全ての従業員に周知している状態にしておきましょう。
ステップ(3)目標達成助成の支給申請
ステップ(3)目標達成助成の支給申請
計画書に設定した期間が終了し、目標にしていた離職率が達成されれば、目標達成助成の支給申請を行います。
離職率を達成したかどうかの判断は、計画期間終了後12カ月間が算定期間となっています。この算定期間内に目標に達していれば、管轄の労働局に申請書を提出します。
注意点:提出期限や計画期間には余裕をもっておく
整備計画を立てるにあたって、ステップ③にもあったように「計画期間」を設定する必要があります。計画期間は3カ月以上1年以内としたうえで、目標とする「計画時離職率」を算出し、記載します。審査が完了するまでは書類の再提出はできないため、記載漏れや離職率の計算間違いがないよう注意しましょう。
提出期限は、計画開始日の1か月前の日の前日までとなっています。たとえば、10月1日から計画を開始する場合、8月31日までに申請しなければなりません。計画開始日の6ヵ月前から提出できますので、余裕をもって申請書類を作成しましょう。
2. あんしん財団の補助金
2. あんしん財団の補助金
あんしん財団の補助金は、受診日の翌日から起算して180日以内に必要書類を記入して提出します。そして、審査を受けて承認されると補助金を受け取ることができます。申請時に必要な書類は以下の3つです。
- 補助金申請書
- 領収書の写し
- 受診者名、受診日、受診の内容が確認できる書類の写し(個人結果票の表紙、請求明細書など)
助成金申請の流れとしては、まず「あんしん財団」の公式サイトで助成金の詳細や適用条件を確認します。申請には、健康診断の計画や予算、過去の実施状況などの詳細を記載した書類が必要になりますので準備しましょう。
書類が準備できたら、あんしん財団へ正式に申請を行います。財団側は、申請書類の内容を審査して補助の可否を決定します。そうして審査に通った場合に、指定された方法で補助金が交付される流れになります。
注意点:フォローアップの計画も申請書類に記載しておく
申請の締め切り日はしっかりと確認し、適切な期間内に申請を行うようにしましょう。また、申請書類に不備や誤りがあると審査に通らない可能性が高まってしまいます。内容を正確に、詳しく記載するようにしましょう。
いずれの助成金においても、審査では健康診断の実施予算がどのように組まれているかが重要視されます。そのため、予算の詳細や使途を明確にすることで審査の際の評価は上がります。さらに、健康診断だけでなく、「診断結果に基づいたフォローアップの計画」も申請書類に記載しておくと、より高い評価を受けることができるはずです。
助成金の申請は外部委託も可能
健康診断の助成金を受給するには、ここまで説明してきたように煩雑なプロセスを経る必要があります。必要となる書類や支給条件も複雑なため、「なかなか手が回らない」という担当者の方も多いのではないでしょうか。
実は、助成金の申請は外部に委託することも可能です。ここでは、外部委託することのメリットや注意点について解説していきましょう。
1. 助成金の申請を外部委託するメリット
1. 助成金の申請を外部委託するメリット
多くの委託業者には専門家が在籍しています。そのため、最新の助成金情報や申請手続き、成功させるノウハウを保持しているのです。外部委託をすると、その知識や経験を活用することになりますので、申請の成功確率は格段に上がるでしょう。
また、申請手続きには時間が掛かることが多く、自社で行った場合にはその分だけ業務が停滞してしまう恐れがあります。外部委託することにより、そういったリスクが排除され手間を省くことができるはずです。
さらに、政策の変更によって制度に変わることもあるため、外部委託していると柔軟に対応することができます。変化に迅速に対応して、企業の助成金取得のチャンスを高めてくれるでしょう。
2. 助成金の申請を外部委託する際の注意点
外部委託をする際には、信頼性がありしっかりとした実績を持つ業者を選ぶことが非常に重要になります。実績の情報や口コミ、専門性などをしっかりとチェックするようにしましょう。
また、業務を進めるうえで委託先との連携は欠かせません。定期的なミーティングや連絡を取り合うことで進捗や方針の確認を行うことになりますから、コミュニケーションがスムーズに図れるかどうかも重要なポイントです。
さらに、外部委託には費用が掛かりますので、取得できる助成金と委託費用のバランスを考慮して費用対効果をしっかりと見極めることも必要です。くわえて、委託する際には業者との間で適切な秘密保持契約を結ぶことを忘れないようにしましょう。
助成金申請の外部委託は、適切な業者との連携することで大きなメリットを享受することができます。しかし、その際には前述したような注意点を頭に置いたうえで効果的な申請サポートを受けるようにしましょう。
健康診断支援サービスならパーソルビジネスプロセスデザインへ
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