健康診断の結果を保存する期間は最低5年!取り扱い方法やポイントをわかりやすく解説

健康診断の結果を保存する期間は最低5年!取り扱い方法やポイントをわかりやすく解説

企業は従業員に対して、労働安全衛生法の第66条に基づき健康診断を実施する義務があります。ただ、ご担当者のなかには、「健康診断後の結果はどれくらい保存すれば良いのだろう?」「紙とデータ、どちらで保存すれば良いのだろう?」と疑問をお持ちの方もいらっしゃるかも知れません。

そこで今回は、健康診断結果の保存期間を種類別にご紹介します。また、健康診断の結果を保存するまでの手順や、取り扱う際のポイント、健康診断に関わる法改正についても解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

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    健康診断の結果は会社でどれくらい保存すればいい?

    まずは、健康診断結果の保存期間について、一般健康診断特殊健康診断に分けて解説していきます。

    1-1. 一般健康診断:5年

    一般健康診断の保存期間は、労働基準法第109条において5年間と定められています。

    “(記録の保存)
    第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。”

    ※引用:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)

    さらに、労働安全衛生法第66条の3にも、事業者は従業員の健康診断の結果を記録するよう定められています。

    “(健康診断の結果の記録)
    第六十六条の三 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第六十六条第一項から第四項まで及び第五項ただし書並びに前条の規定による健康診断の結果を記録しておかなければならない。”

    ※引用:労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)

    5年間の保存が必要となる一般健康診断には、「雇入れ時の健康診断」と「定期健康診断」があり、次の11項目の検査が含まれています。

    1. 既往歴及び業務歴の調査
    2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
    3. 身長、体重、腹囲、視力及び張力の検査
    4. 胸部エックス線検査及び喀痰検査
    5. 血圧の測定
    6. 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
    7. 肝機能検査(GOT、GPT、γ‐GTP)
    8. 血中脂質検査
    9. 血糖検査
    10. 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
    11. 心電図検査

    ただし、定期健康診断においては、従業員の既往歴などを確認し、医師の判断で一部の項目が省略されることもあります。

    また、健康診断の結果で二次検査が必要となった場合、再検査を受けるかどうかは従業員に委ねられているため、検査結果の保存は義務付けられていません。しかし企業は従業員の健康管理を推進する必要があるため、再検査結果も保存するのが妥当だといえるでしょう。

    1-2. 特殊健康診断:5〜40年

    特殊健康診断は、“健康に有害な影響を及ぼすリスクのある業務”に従事する労働者を対象に実施されます。種類に応じて健康診断結果の保存期間は5〜40年と幅があり、具体的には次のとおりです。

    健康診断の一覧

    健康診断の種類 保存年数
    有機溶剤健康診断 5年
    鉛健康診断 5年
    四アルキル鉛健康診断 5年
    特定化学物質健康診断 5年(特別管理物質は30年)
    高気圧業務健康診断 5年
    電離放射線健康診断 30年
    除染等電離放射線健康診断 30年
    石綿健康診断 40年
    じん肺健康診断 7年

    事業者は自社の業務内容に応じて、必要な特殊健康診断と保存期間を確認しましょう。

    ※参考:厚生労働省 「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」

    健康診断の結果を保存するまでの3つの手順

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    それでは続いて、健康診断の結果が出てから保存するまでの、次の3つの手順について解説していきます。

    1. 従業員への通知
    2. 産業医と事後措置の実施
    3. 所轄監督署への報告

    手順(1)従業員への通知

    健康診断の結果が届いたら、受診した従業員全員に結果を通知する必要があります。健康診断では、医療機関によって異なりますが一般的に「A:異常なし」から「E:要治療」の5段階で判定されます。たとえすべての検査項目が「A:異常なし」であったとしても通知は必要です。

    もし健康状態に異常が発覚した従業員がいた場合、再検査を促すことや、必要であれば業務内容の改善に取り組んでいくことが必要になります。

    手順(2)産業医と事後措置の実施

    次に、産業医と事後措置を実施します。事後措置とは、健康を維持しながら勤務できるようになるための措置です。これまでの健康診断の結果だけでなく、ストレスチェック結果や月間労働時間を加味したうえで、診断結果に問題が見られた従業員に“措置”を講じます。

    措置というのは具体的に、次のようなことが行われます。

    • 健康に問題があると思われる従業員の特定
    • 産業医との面談による従業員のヒアリング
    • 安全衛生委員会での対応相談

    これらを行う際、「長時間での労働時間」などの労働環境のことや、「基準値以上の検査項目数」といったことの確認が必要になります。

    このような従業員のさまざまな情報を考慮して、「これまでと同じように働き続けて問題がないか」を産業医に判断してもらうことになります。問題を残したまま就業を続けると労働災害が起こるリスクがあるため、合理的な判断が求められます。

    そのうえで『健康上に問題がある』と見られた場合、産業医面談で「意見聴取」が実施されます。そして、安全衛生委員会でどのように対応するか方針が審議される、という流れです。

    その結果として「このまま通常通り勤務を続けて問題ないか」「配置転換や休業の必要があるか」を判断します。必要であれば残業時間に制限を設けたり、業務内容を調整したりすることもあるでしょう。

    診断結果や対象者の体調・労働状況によって措置内容は異なりますが、「通常勤務」「就業制限」「要休業」の3区分で検討するのが一般的です。なお、産業医に従業員の健康診断結果を提示し、措置について意見をもらうのは事業者の義務であるため、これらの対応は必須となります。

    産業医には保健指導を実施したり、健康上において問題のある従業員に通院を指示したりする義務はありません。しかし、通院した方が良いかアドバイスをもらえるケースもありますので、必要に応じて意見を求めると良いでしょう。

    手順(3)所轄監督署への報告

    従業員規模が50人以上である場合、所轄の監督署へ「定期健康診断結果報告書」の提出義務があります。報告書には、対象年、健康診断年月日、受診労働者数、所見人数、医師の指示人数などが含まれます。

    健康診断の結果を取り扱う際のポイント

    次に、健康診断結果を取り扱う際のポイントとして3点を挙げて解説します。

    ポイント(1)遅延なく結果を通知する

    労働安全衛生規則では、健康診断の結果は遅延なく通知するよう定められています。つまり、結果が届いたら素早く従業員に知らせることが重要です。病気を早期発見することで、早めの対処が可能になるからです。

    過去に、企業の健康診断の結果通知が遅いため病状が悪化し、そのことを理由に損害賠償を求めた裁判が行われ、慰謝料の支払いが命じられたケースがありました。結果が出てから通知までの期間については特に定めはありませんが、企業は従業員の健康を守るためにもできる限り早い対応が求められていると言えるでしょう。

    ポイント(2)保存方法は書面または電子データ

    健康診断の結果の保存方法は、紙でも電子データのどちらでも問題ありません。紙で保存する場合、原本でなくコピーでも可能です。

    以前は結果用紙に医師の押印が必要であったため、電子データとして保存するのは手間のかかる作業でした。しかし、2020年8月に労働安全衛生関係法が改正され、医師の押印が不要となったのです。その結果、健康診断の結果の電子化が進み保存作業が効率化されていきました。

    ポイント(3)派遣労働者の健康情報は派遣元事業者の責任

    派遣社員の健康診断の結果について、どのように扱えばいいか疑問に思う担当者もいらっしゃるでしょう。派遣社員の健康診断は、派遣元事業者の責任で実施するので、派遣先企業では実施や保管の義務がありません。派遣社員も正社員と同様に、雇入れ時と1年に1度の定期健康診断を実施します。また、深夜業で働く場合は、配置換えのタイミングと半年に1度の頻度で、健康診断が実施されます。

    ただし、特殊健康診断は通常、派遣先企業の義務となります。派遣元事業者は、派遣先企業から送付された結果を定められた期間、保存する必要があります。

    知っておきたい、健康診断に関する法改正

    次に、事業者として知っておきたい“健康診断に関する法改正”について、下記の2つの法律に関して解説していきます。

    • 労働安全衛生法令
    • 個人情報保護法

    4-1. 労働安全衛生法令

    2017年に「労働安全衛生規則」が改正され、健康診断の有所見者に関する医師への報告義務が記載されました。つまり、医師から従業員に関する情報提供を求められた場合、企業側は提供を拒否できなくなったのです。

    情報提供が必要な項目は、次のとおりです。

    • 労働者の作業環境
    • 労働時間
    • 作業態様
    • 作業負荷状況
    • 深夜業の回数や時間

    本改正は、過重労働による健康損失の防止やメンタルヘルス対策が急務となった背景から、医師や産業医が効果的に措置を行うために実施されました。本改正によって、医師は従業員の勤務状況などを詳しく把握し、改善に向けてより適切な意見を述べられるようになります。

    4-2. 個人情報保護法

    2015年に「個人情報保護法」が改正され、下記に引用しているとおり要配慮個人情報の定義が定められました。

    “この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。”

    ※引用:個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)

    健康診断は要配慮個人情報にあたるため、原則として本人の同意なしで取得ができません。これは、差別や偏見などにつながるリスクがあるとして、「慎重な取り扱いが必要な個人情報」として規定されています。

    ですから、健康診断の結果を取り扱う際には注意が必要です。診断結果へのアクセス権を限定し、個人情報を適切に管理しなければなりません

    健康診断支援サービスならパーソルビジネスプロセスデザインへ

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    前述したとおり、健康診断結果の保存期間は一般健康診断で5年、特殊健康診断では5〜40年です。紙だけでなくデータでも保存可能とされています。しかし、健康診断結果の報告データを作成する際は整形に手間がかかるため、担当者への負担が少なくありません。

    そこでぜひおすすめしたいのが、外部委託サービスの利用です。煩雑なデータ化や管理業務を委託できれば、担当者の負担が軽減しコア業務に専念しやすくなるでしょう。

    パーソルビジネスプロセスデザインは、健康診断の実施に伴う業務を代行する「健康診断支援サービス」や、健康診断のデータ化を支援する「Health Data Bank」を提供しています。ここで委託できる業務内容は、データ化や加工業務だけではありません。

    健康診断支援サービス」では、医療機関との契約や予約の日程調整、コース内容の決定など、コーディネート業務を委託いただけます。さらに、受診状況が可視化されるため、未受診の従業員に対してフォローも適切に行えるのが特徴です。

    また、医療機関ごとでバラバラになっている結果表を標準フォーマットにデータ化し、労働基準監督署に報告するデータ作成もお任せいただけます。さらに、必要であれば健康保険組合への補助金申請を支援することも可能です。

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    お客様のニーズに合わせたサービスをお届けいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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