健康診断は企業の義務!対象者・種類・項目・費用を押さえよう

健康診断は企業の義務!対象者・種類・項目・費用を押さえよう

企業や組織には、従業員の心身の健康を守る義務があります。
その一環として行われるのが、健康診断です。

企業や組織は、従業員の勤務状態や業務内容にあわせて適切な健康診断を行わなくてはなりません。しかし、「健康診断を行うタイミングはいつ?」「検査項目がわからない」と悩まれる経営者や総務担当者は多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では健康診断義務を果たすために必要な知識をまとめました。
ぜひ、従業員管理にお役立てください。

目次

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    健康診断の受診は企業の義務

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    企業や組織は、従業員に健康診断を受診させなくてはなりません。
    労働安全衛生法第44条では、企業や組織はそこで働く従業員に健康診断を実施しなくてはならないと定められています。
    従業員の健康管理は、経営者側が果たさなくてはならない義務といえるでしょう。

    企業や組織は健全な運営を行う必要があり、健康診断はその健全な運営を支える従業員の健康を守るために必須なのです。必ず実施するようにしましょう。

    実施しない場合は罰金や懲役も発生

    前述したように、健康診断は法律上において果たすべき義務です。
    そのため、企業や組織が従業員に健康診断を受診させなかった場合には、50万円以下の罰金が科されます。
    また、健康診断を実施した場合でも、その情報が漏洩してしまった場合は、罰金刑だけでなく6か月以下の懲役を科される可能性もあります。

    罰金や懲役を科されてしまった場合、企業や組織のブランドイメージ低下にもつながってしまうため、避けなければなりません。

    健康診断を拒否された場合

    なんらかの理由で従業員が健康診断を拒否する場合も考えられますが、拒否した従業員に法的な罰則はありません。
    一方で、労働安全衛生法においては、健康診断を受診させなかった企業や組織を罰することになっています。
    しかし、就業規則に健康診断の受診の必要があることや拒否した場合の処分について明記しておけば、企業や組織による懲戒処分を行うことができます。
    なんらかの事情があって健康診断の受診を拒否する従業員がいる場合には、日時・場所の調整ができることを伝えましょう。また、健康診断の受診拒否は、就業規則に明記されているために懲戒の対象になってしまうことを事前に従業員へ周知しておくことも有効です。

    健康診断実施義務の対象となる従業員の範囲

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    健康診断の対象になるのは、正社員だけではありません。雇用区分ではなく、労働時間や条件により対象者が決定します。
    そのため、健康診断を受けなくてはならない従業員の条件をしっかりと理解しておく必要があります。

    ここでは、対象となる従業員の条件や、健康診断の対象に関するよくある疑問について解説していきます。

    正社員・パート・アルバイトに対する実施義務

    健康診断を受診しなくてはならない従業員は、以下の通りです。

    【健康診断の実施義務が発生する条件】

    • 常時使用する労働者
    • 契約期間が1年以上の労働者
    • 上記の条件を満たした労働者で週の労働時間が正社員の4分の3以上 
    • 上記の条件を満たさない場合でも週の労働時間が正社員の2分の1以上(努力義務)

    これを見てお分かりの通り、アルバイトやパートであっても労働時間などの条件を満たしていれば健康診断を受診させる必要があります。健康診断を実施する従業員をリストアップする際は、雇用形態ではなく労働時間をチェックしましょう。

    派遣社員や従業員の家族の実施義務

    企業や組織では、正社員やパート・アルバイトだけでなく、派遣社員を活用しているところもあります。そういった環境では「健康診断の実施義務は、派遣先と派遣元のどちらになるのか」といった疑問もよく耳にします。

    このような場合、労働契約をどちらと結んでいるかで判断します。
    派遣社員が労働契約を直接結んでいるのは、派遣元の企業や組織です。そのため、派遣社員の健康診断は派遣元が実施することになります。
    下請けとなるパートナー企業や派遣社員のように「自社に所属していないけれども自社で業務を行っている従業員」がいる場合には、労働契約をどこと結んでいるかを確認しましょう。

    従業員の家族や配偶者が健康診断の対象になるのかどうか疑問を抱いている方もいらっしゃいますが、従業員の家族や配偶者は自社と直接労働契約を結んでいるわけではありません。そのため、健康診断の実施義務からは対象外となります。

    実施しなくてはならない健康診断の種類

    「健康診断」とひとくちにいっても、大きく分けて2種類あります。2種類のどちらも従業員の健康を守るのが目的ですが、実施するタイミングや内容が違います。健康診断を正しく実施するには、種類ごとの違いも押さえなくてはなりません。
    続いては、実施すべき健康診断の種類について解説していきましょう。

    一般健康診断

    「一般健康診断」は、すべての企業や組織が対象になる健康診断です。
    健康診断義務の条件を満たす従業員全員が受診するものであり、下記のようにタイミングが決められています。

    【一般健康診断のタイミング】

    • 雇入れ時 
    • 年1回の定期健康診断
    • 特定業務従事者の健康診断
    • 海外派遣労働者の健康診断
    • 給食従業員の検便

    このうち多くの企業や組織で行われているのが、雇入れ時と年1回の定期健康診断です。定期健康診断では、40~75歳の場合に生活習慣病予防を目的とした「特定健診」も受診しなくてはなりません。
    健康診断を実施する際は、受診条件となる労働時間だけでなく、健診の種類にかかわる年齢にも注意しましょう。

    ちなみに「特定健診」は、「特定業務従事者の健康診断」と勘違いされやすいのですが異なるものです。
    「特定業務従事者の健康診断」は、深夜業務などに従事する従業員に6か月ごとに行わなくてはならない健診です。用語が似ているため、混同しないよう気をつけてください。

    このように、同じ一般健康診断とされているものでも、年齢や労働条件により実施内容がやや異なります。健康診断を実施する際には、「誰が」「どのような」健康診断を受けるべきなのかを確認しておきましょう。

    特殊健康診断

    「特殊健康診断」は、法律で定められた有害業務に従事する従業員の受診が義務付けられている健康診断です。
    法で定められた有害業務には、以下のものが該当します。

    【特殊健康診断の対象となる有害業務】

    • 高気圧業務
    • 放射線業務
    • 特定化学物質業務
    • 石綿業務 鉛業務
    • 四アルキル鉛業務 
    • 有機溶剤業務 粉じん作業

    特殊健康診断は、有害業務による心身の影響をいち早く察知するために行われます。そのため、業務ごとに検査内容が違うのが特徴といえるでしょう。

    特殊健康診断の実施は、労働基準監督署が厳しく指導しているポイントのひとつです。特殊健康診断を正しく実施しているかどうかも、労働基準監督署の指導の対象になります。該当する場合には、内容などに間違いがないかどうか細心の注意を払って実施してください。

    健康診断の必要項目

    続いては、健康診断の必要項目について解説していきます。
    同じ種類の健康診断であっても、行うタイミングによって必要な検査内容は変わってきます。

    ここでは、雇入れ時と定期健診の検査内容と、有機溶剤に従事する従業員が受ける検査内容について紹介していきます。
    検査項目の違いに注目しながらご覧ください。

    雇入れ時の一般健康診断

    雇入れ時に行う一般健康診断では、以下の検査を行います。

    【雇入れ時の検査項目】

    • 既往歴および業務歴の調査
    • 自覚症状および他覚症状の有無の検査
    • 身長・体重・腹囲・視力および聴力の検査 
    • 胸部エックス線検査 血圧測定
    • 貧血検査 肝機能検査 
    • 血中脂質検査 血糖検査
    • 尿検査
    • 心電図検査

    以上、全部で11項目あります。
    企業や組織は、従業員を雇用する際にこれらの検査を行う必要があります。

    定期健康診断

    年に1回行われる定期健診でも、11項目の検査を行わなければなりません。

    【定期健康診断の検査項目】

    • 既往歴および業務歴の調査
    • 自覚症状および他覚症状の有無の検査
    • 身長・体重・腹囲・視力および聴力の検査
    • 胸部エックス線検査
    • 血圧測定 貧血検査
    • 肝機能検査
    • 血中脂質検査
    • 血糖検査
    • 尿検査
    • 心電図検査

    雇入れ時の検査項目と比べるとわかりますが、定期健康診断では「胸部エックス線検査」となっているところが、「胸部エックス線検査および喀痰検査」と変わります。また、定期健康診断については、それぞれの基準に基づいて『医師が必要でないと認めるときは省略することができる』ようです。定期健康診断を行う際には、それぞれの違いに留意しましょう。

    特殊健康診断の一例

    特殊健康診断では、業務によって受けるべき検査項目が異なります。例として、有機溶剤業務に従事する従業員が受けるものを挙げてみましょう。

    【有機溶剤業務に従事する際の検査項目】

    • 業務歴の調査
    • 有機溶剤による健康障害の既往歴の調査
    • 有機溶剤による自覚症状および他覚症状の既往歴の調査
    • 有機溶剤による自覚症状および他覚症状と通常認められる症状の有無
    • 尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査にかかわる既往の検査結果の調査
    • 尿中たんぱくの有無の検査
    • 肝機能検査
    • 貧血検査 
    • 眼底検査

    このように、業務ごとに全く検査項目が異なりますので、有害業務に従事する従業員がいる場合には「どの検査を受けるべきなのか」をあらかじめ調べておかなくてはなりません。特殊健康診断は、労働基準監督署も特に厳しく監視していますので、間違いのないようにしましょう。

    健康診断の費用は企業や組織が負担する

    健康診断の費用については、どの健康診断について企業や組織が負担することになっています。
    法律により健診を受けさせることが、企業や組織の義務として定められているためです。
    ただし、従業員の希望により人間ドックやオプション健診を行う場合には、法律で定められた健康診断にかかる費用分のみ企業や組織が負担し、差額については従業員が支払うことになっています。

    健康診断は種類に関係なく、医療保険が使えない自由診療です。医療機関や健診機関がそれぞれ検査料金を設定しているため、施設ごとにかかる費用が違います。健診を依頼する際には、検査にかかる費用についても確認しましょう。

    健康診断実施後に注意すべきポイント

    企業や組織の義務である健康診断は、実施さえしておけばよいというものではありません。「健診結果の保管」など、検査実施後にも注意すべきポイントがいくつかあります。ここでは、検査実施後のポイントについて解説していきます。

    健康診断結果の保管義務

    健康診断の結果については、保管義務があります。具体的には、検査結果の個人票作成から5年間、保管しておかなければなりません。また、検査結果の保管には従業員本人の承諾が必要です。そのため、就業規則の中に「健康診断の受診」と「診断結果の保管」に関する内容を含めておき、従業員にあらかじめ周知しておくことで確認の手間を軽減することができるでしょう。
    雇入れ時についても、健康診断に関する旨を口頭で伝えつつ、雇用契約書に記載しておくとよいかもしれません。

    また、派遣社員の場合には、派遣元企業や組織が健診の実施と管理を行います。そして、健診結果を従業員の同意なしに派遣先へ渡すことは禁止されています。派遣社員の健診結果が必要な場合には、派遣元会社だけでなく派遣社員本人の許可を取ることも忘れないようにしましょう。

    健康診断結果の報告義務

    常に50人以上の従業員を雇用する企業や組織は、所轄の労働基準監督署に健康診断結果を報告する義務があります。この報告を守らないと罰則の対象となりますので、注意が必要です。

    従業員が50人未満の場合には報告する義務はありませんが、健康診断実施の義務はなくなりません。健康診断の条件に当てはまる従業員がいる場合には必ず実施するようにしましょう。健康診断実施義務と報告義務を混同しないようにしてください。

    まとめ

    健康診断がいかに企業や組織の健全な運営に欠かせないかがお分かりいただけたかと思います。
    一方で、関連する業務を適切に進めていかなければならず、負担になってしまっている企業も多いことでしょう。

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