ブレジャーとは?観光庁の取り組みやワーケーションとの違いなどを詳しく解説

ブレジャーとは?観光庁の取り組みやワーケーションとの違いなどを詳しく解説

企業において社内満足度を向上させるためには、従業員に寄り添った施策を実施することが必要不可欠です。しかし、具体的にどのような施策で社内満足度が向上するのかと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

また、施策の1つとしてよく耳にする『ブレジャー』に興味がある人もいるかもしれません。そこで本記事では、ブレジャーの概要やワーケーションとの違い、官公庁の取り組み、導入メリット・デメリットなどについて詳しく解説していきます。

目次

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    ブレジャーとは?

    ブレジャーとは、宿泊して業務に取り組む「出張」と一緒に、「余暇」も楽しんでもらう施策のことです。ブレジャー(Buleisure)は、ビジネス(Business)とレジャー(Leisure)を組み合わせた造語であり、働き方改革の一環として、2021年3月に国土交通省から発表されました。

    ※参考:国土交通省観光庁「ワーケーション&ブレジャー」


    出張と一緒に余暇を楽しんでもらうことによって従業員のリフレッシュにつながることはもちろん、個人の移動コストを節約できるのも魅力です。掛かる経費をそのままに、従業員のプライベートにもプラスの効果をもたらせることから、日本企業での導入も進んでいます。

    ブレジャーが必要になった理由

    ブレジャーの考えが登場した理由としては、日本独自の労働環境の問題が影響しています。下記に、厚生労働省が公開している「令和4年就労条件総合調査の概況」の有給取得率の表を抜粋しました。

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    ※出典:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査の概況」

    上表からも分かるように、労働者1人当たりの有給付与日数に対して、平均取得率が5〜6割と割り当ててある日数の半分程度しか取得できていない状況です。有給休暇を取得できない理由としては、次のものが挙げられます。

    • 同調圧力の強い国民性により、まわりが取っていないと取りづらい
    • 年功序列に伴い、上司や先輩が取っていないと取得しにくい 

    特に日本企業は、同調圧力や年功序列の意識が強く、まわりの目を気にして有給休暇を取得しづらいのが特徴です。その結果、従業員はストレスをため込んでしまうだけでなく、プライベートを充実させることができないのです。

    ですから、有給取得率を高めたいのであれば、企業が自ら対策を講じていく必要があるといえます。そこで、休暇の取得に役立つ「ブレジャー」という制度を設けることにより業務への影響をなくしつつ、従業員のリフレッシュや有給取得率の向上に役立てられるのです。

    ブレジャーとワーケーションの違い

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    先ほどご紹介した国土交通省のサイトにも「ワーケーション&ブレジャー」とありましたが、ブレジャーに似た社内満足度向上の施策に『ワーケーション』というものがあります。

    ワーケーション(Workcation)とは、従業員が帰省や旅行といった休暇を楽しみながら、空き時間に業務参加してもらう取り組みのことです。仕事(Work)・休暇(Vacation)から作られた造語であり、仕事とプライベートを両立しながら働いてもらうことができます。

    企業合宿や地域交流などのように業務中心の活動を実施できるのも、ワーケーションの特徴といえるでしょう。


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    ※出典:国土交通省観光庁「ワーケーション&ブレジャー企業向けパンフレット」(PDF)

    大枠は似ているブレジャーとワーケーションですが、導入する際には大きく2つの違いがあることを理解しておくことが重要です。

    違い(1)行き先の決定

    ブレジャーとワーケーションは、行き先の決め方に大きな違いがあります。具体的な違いを表に整理しました。

    ブレジャー ワーケーション(休暇型の場合)
    行き先の自由度 出張に合わせて休暇を取るため自由度が低い 自由に場所を選んで仕事するため自由度が高い
    行き先の決定権 なし あり



    ブレジャーの場合、メインが仕事、サブがプライベートであるため、行き先を決めることや自由に移動することは基本的にできません。

    一方、ワーケーションでは、メインがプライベートなので自由に場所を選べるのはもちろん、行き先を途中で変更して柔軟にプライベートを楽しめるのが特徴です。

    従業員の性格や会社の業務スタイルによって、ブレジャーとワーケーションの効果は変化していくと覚えておきましょう。

    違い(2)仕事のメリハリ

    ブレジャーとワーケーションは、仕事のメリハリにも違いがあります。具体的な違いを表で整理しました。

    ブレジャー ワーケーション(休暇型の場合)
    家族との過ごしやすさ 出張がメインであるため過ごしにくい 休暇がメインであるため過ごしやすい
    業務・プライベートのメリハリ 業務期間・休暇期間を分けやすい 時間単位で業務・休暇を切り替えられる



    ブレジャーは“出張”という名目があるため、家族旅行といった目的で利用しづらいのが特徴です。もし家族旅行を兼ねる場合には、出張業務中は別行動が必要になるでしょう。

    対してワーケーションは、休暇を中心として出かけるため家族と自由に行動できるのが特徴です。家族と別行動する数時間だけ仕事をする、というように時間単位で業務とプライベートを組み合わせることができます。

    ブレジャー推進に向けた観光庁の取り組み

    ブレジャーは、主に国(観光庁)や自治体によって推進されている施策ですが、具体的な取り組みとしては下記の3つがあります。

    • (1)働き方改革に伴うビジネスの多様化
    • (2)旅行需要の平準化ストテキスト
    • (3)地域活性化・地方創生キスト

    それぞれの取り組みを詳しく見ていきましょう。

    取り組み(1)働き方改革に伴うビジネスの多様化

    ブレジャーは、現代の働き方と相性の良い取り組みです。

    少子高齢化に伴う労働人口の減少や技術発展に伴い、2019年に「働き方改革」が施行されました。従来は当たり前だったオフィスに集まって働く「一極集中型」から、自宅やカフェといった好きな場所で働く「分散型」の働き方へと変化したのです。

    そして観光庁は、「働き方改革」に伴って働く自由度の高さを活かせる『ブレジャー』を導入しました。仕事のついでに旅行や観光を楽しめるブレジャーを組み込むことによって、現代のニーズに合う働き方を実現できるようになったのです。

    取り組み(2)旅行需要の平準化

    観光庁が推進するブレジャーには、旅行需要を平準化する効果があります。日本では、休みが同じ時期にまとまっており、旅行需要に偏りができているからです。

    例えば、会社員が旅行するタイミングといえば、夏期休暇や年末年始、ゴールデンウィークなどが代表的でしょう。日本中の人々が同じ時期に旅行するため、観光業界には売上の波ができています。また、混雑などを危惧して二の足を踏んでしまった人たちも多くいるでしょう。

    一方でブレジャーのような余暇を考慮した働き方を実現できれば、無理にピーク時に合わせて旅行をする必要がなくなるのです。好きなタイミングで余暇を取得しやすくなるのはもちろん、ピーク時の物価高騰を回避できるのがブレジャー推進の魅力といえるでしょう。

    取り組み(3)地域活性化や地方創生

    ブレジャーは、単に従業員の満足度向上に役立つだけでなく、従業員が滞在する地域の活性化や地方創生としての効果もあります。その地域への滞在期間が延びる分だけ観光業や飲食業を利用する人々が増え、地域の収入も増えていくからです。

    現在の日本では、都心への一極集中化が進んでおり、地方の経済活動が衰退の一途をたどっています。地方へUターンする人が急激に増えることも難しいでしょう。地方の経済活動を活性化させたいのであれば、多くの人々が動きやすい環境を作らなければならないのです。

    その点、働きながらも旅行や観光を楽しめるブレジャーは、地方部の衰退問題にストップをかけるひとつのきっかけとなるはずです。

    ブレジャーを導入する3つのメリット

    ブレジャーを導入することには、企業そして従業員にとって複数のメリットがあります。なかでも重要なメリットを3つ挙げて見ていきましょう。

    メリット(1)離職率の抑制

    ブレジャーを導入して従業員が休暇を取りやすくなれば、日本企業の問題である離職率の増加を抑制することにつながります。

    厚生労働省が公開している「離職者の性・年齢別の離職理由」の統計データでも、離職理由のトップとしては「労働条件(賃金以外)が良くなかったから」という回答になっています。


    ※参考:厚生労働省「離職者の性・年齢別の離職理由」(PDF)

    ここで回答者が示している「労働条件(賃金以外)」とは、働きやすさや有給の取得しやすさのことですので、ライフワークバランスの偏りによって離職率が増加しやすい傾向にあると分かります。つまり、最も多い離職理由を解決してくれるブレジャーを導入すれば、離職率を抑制できるのです。

    メリット(2)有給休暇取得の促進

    ブレジャーを導入すれば、従業員の有給休暇の取得率を増やせるのもメリットです。

    業務の“ついで”という考え方で余暇を楽しめますので、有給休暇を取得するハードルを大幅に下げられるのです。また、ブレジャーを利用することによって「オトクに旅行できる」ことを認知してもらえば、有給休暇を取得すること自体にも魅力を感じてもらえるでしょう。

    有給休暇の取得率が上がれば、従業員の満足度も向上して企業としても有給休暇取得率を対外的にPRすることができます。求人情報のアピールポイントとしても役立ちますので、新たな人材確保としての効果も期待できるでしょう。

    メリット(3)業務効率の向上

    ブレジャーの導入によって、ストレスの溜まりにくい会社環境を構築できれば、企業全体の業務効率が向上することにもつながっていきます。

    業務効率には、従業員のスキルや経験だけでなく「メンタル」が大きく影響します。「ストレスが溜まる環境で働いている」「休みが取れない会社で働いている」といった状態が続けば、少しずつ従業員のメンタルが蝕まれてモチベーションも低下していきます。自然と従業員の働く意欲が奪われていきますので、売上向上の機会も失われてしまうのです。

    一方、休みを取得しやすい環境を作ってあげれば、従業員はリフレッシュして働きやすくなるでしょう。結果として、モチベーションを維持・向上することができ、業務効率の向上へとつながっていくのです。

    ブレジャーを導入する3つのデメリット

    企業や従業員の双方にメリットのあるブレジャーですが、導入にはデメリットもあります。ブレジャーのメリット・デメリットを詳しく理解したうえで導入を検討するためにも、これから3つ挙げるデメリットはよく確認しておいてください。

    デメリット(1)勤怠管理が難しくなる

    ブレジャーを導入すると、従業員の働いている時間や、余暇を楽しむ時間の線引きが難しくなるのがデメリットといえます。

    例えば、従業員からブレジャー中に「大幅な残業が必要になった」と申告されたとしても、それを明確に判断できない恐れがあります。働きやすさを享受できるブレジャーですが、導入には勤怠管理システムやルール整備のコストが掛かることは理解しておきましょう。

    デメリット(2)費用負担が曖昧になりがち

    ブレジャー中は、出張費用と余暇費用がそれぞれ発生するため、どこまでが企業負担になるのか曖昧になりがちです。

    出張費用として認めるもの、認めないものを決めておかなければ、従業員とのトラブルに発展してしまうかもしれません。お互いが納得できる費用負担とするために、ルール決めや費用負担の周知を徹底しておく必要があるでしょう。

    デメリット(3)労災の線引きが難しい

    他にもブレジャー中に問題となりやすいのが、仕事中のケガや事故に対する労災判定です。

    仕事と余暇の線引きが曖昧であるため「本当に業務中のケガなのか」「休暇中の事故ではないのか」などを判断することができません。場合によっては、業務と関係のないケガや事故まで申告されてしまう恐れもあるでしょう。

    企業が従業員を疑ってしまうような状況を避けるためにも、法律の範囲を理解したうえで連絡の取り決めや線引きをルール化しておくと良いでしょう。

    ブレジャーの導入事例

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    社内満足度の向上に役立つブレジャーは、世界の約6割の企業が実施している取り組みです。ただし、日本においてはまだ浸透し始めたばかりの考え方であり、まだ活用している企業数は多くありません。

    そこで、ここでは以下の3つの企業の事例を取り上げてみます。

    • (1)日本航空株式会社

    • (2)ユニリーバ・ジャパン
    • (3)日本マイクロソフト株式会社

    それぞれ詳しく見ていきましょう。

    事例(1)日本航空株式会社

    航空会社大手の「日本航空株式会社」では、間接部門における有給休暇の取得率が伸び悩んでいる時期がありました。そこで、仕事と休暇を組み合わせることで、長期休暇に対する抵抗感や復帰後の業務量増加に対する不安感を軽減できるのではないかと考え、制度を導入したそうです。

    具体的には、2017年にワーケーションを、2019年にブレジャーの制度を導入しています。すでに170件もの実績があり、時間と場所にとらわれない柔軟性のある働き方を実現しているようです。導入したことによって、現在は以下のような効果が得られるようになったといいます。

    • 有給休暇の取得率向上
    • 従業員のモチベーションアップ
    • ストレスの軽減

    事例(2)ユニリーバ・ジャパン

    「ユニリーバ・ジャパン」は2016年から働く時間と場所を従業員が自由に選べるための「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」と呼ばれる制度を導入しています。この制度により、ブレジャーを成功させています。

    制度の実施率は2021年時点でほぼ100%と、社内全体に新しい働き方が浸透していることが分かります。また、「WAA」により、下記のようなさまざまな効果が得られるようになったようです。

    • 仕事に対する認識の変化
    • ストレス軽減
    • 仕事への意欲アップ

    いずれにおいても企業と従業員の双方に良い影響を与える効果ばかりです。これもまた、ブレジャー導入の成功事例といえるでしょう。

    事例(3)日本マイクロソフト株式会社

    「日本マイクロソフト株式会社」は、働き方として日常と区別することなく、いつでもどこでも仕事ができる体制を整えていきました。企業の体制自体が、ワーケーションやブレジャーが取りやすい環境になっていたのです。

    また、日本マイクロソフト株式会社は、クラウドベースのコミュニケーションツールやコラボレーションプラットフォームを提供しているため、社内でも当然ながら活用されています。それにより、時間や場所を問わず、チーム間のコミュニケーションと生産性の維持が可能になっているようです。

    日本マイクロソフトの場合、その豊富なテクノロジーを利用して「ブレジャー」を実現し、従業員が仕事とプライベートの両方において充実した経験を持つことを促進している例が見られました。これにより、従業員の満足度の向上と、仕事のパフォーマンスの向上を実現しているようです。

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    本記事では、ブレジャーの概要や、ワーケーションとの違い、観光庁の取り組み、導入メリット・デメリットなどについて解説してきました。対比の対象としても挙げていた「ワーケーション」ですが、私たちパーソルビジネスプロセスデザインではワーケーションサービスをご提供しています。

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    ワーキングスペースやネット環境も充実していて業務にもスムーズに取り組めるため、チームビルディングやエンゲージメントの向上にも期待ができます。

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