採用における歩留まりとは?
まずはイメージしやすいよう、製造業における歩留まりで説明しましょう。製造業の経験者ならわかると思いますが、工場で作られた製品は出荷前に基準を満たした合格品と欠陥品に分けられます。
そこで、例えば50個分の原材料を投入して合格品が何個あったかを示したものが「歩留まり」です。そして、それを100個分に計算し直してパーセンテージで示したものが「歩留まり率」です。ちなみに、この製造工程における歩留まりは、IoTや最新設備の導入、社員の意識変革によって改善することができます。
では、採用における「歩留まり」「歩留まり率」とは何かというと「各選考における合格者数」「各選考における合格率」ということになります。
例えば、エントリーシートが300通ほど提出されてきたとして、うち150名の学生を通過させた場合、歩留まりは150です。そして100通分に換算すると歩留まり率は50%となります。ちなみに、これは後述しますが、採用における歩留まりについても、サービスや最新ツールの導入、担当者の意識変革によって改善することができます。
歩留まりの計算式や平均値
続いては、採用における歩留まりについて、その計算式や平均値についてご紹介します。
2-1. 歩留まりの計算式
2-1. 歩留まりの計算式
先ほども簡単に説明しましたが、採用における歩留まり率の公式を記すと下記の通りです。
通過した人数÷選考した人数×100
例えば一次選考において77人の面接を実施して、33人の通過者を出した場合、その歩留まり率は下記の計算式となります
33÷77×100
33÷77=0.43(小数点第2位まで四捨五入)
0.43×100=43
結果として、歩留まり率は43%ということになります。
しかし、仮に33人の合格者のうち3人が二次選考を離脱もしくは辞退をした場合、実質通過者は30人となりますので、以下の通り計算をし直します。
30÷77=0.39(小数点第2位まで四捨五入)
0.39×100=39
これにより、歩留まり率は43%から39%に下方修正されます。これを『歩留まりの低下』といいます。
2-2. 歩留まりの平均値
2-2. 歩留まりの平均値
選考過程には「エントリーシート」「一次面接」「二次面接」「最終面接(役員面接)」があるのが一般的ですが、各選考における歩留まり率は、以下のような数値が平均値と言われています。
エントリーシート(ES) | 約50% |
一次面接 | 約30% |
二次面接 | 30~40% |
最終面接(役員面接) | 約50% |
例えば「39%」という数値があったとして、この数値がESによる書類選考での歩留まり率であった場合は、絞り込みすぎになります。ただ、この数値が一次面接なら通過させすぎ、二次面接であれば適正値ということになるわけです。
このように、採用活動を客観的に振り返って評価できる指標となりますので、歩留まり率はできるかぎりチェックするようにしましょう。
これまでの採用活動実績から平均歩留まり率を割り出して、各選考においてその歩留まり率を基にして通過者数を決めている企業は、少なくないはずです。しかし、歩留まりを意識して計画どおりに採用活動を展開したいという企業側の思惑とは裏腹に、通過者が想定外に離脱してしまい、頭を抱えている人事担当者も多いのではないでしょうか。
そこで続いては、歩留まり率の低下が起こる理由について掘り下げてみたいと思います。
歩留まり率の低下が起こる4つの理由
なぜ歩留まり率の低下は起きるのでしょうか。求職者の離脱や辞退が起きてしまう大きな理由を4つほど挙げながら解説していきます。
理由(1)他社よりも内定が遅かったから
理由(1)他社よりも内定が遅かったから
転職活動や就職活動をしたことがある人は、おそらく全員が「複数社を同時進行で受けている」はずです。そうしたときに、先に他社から内定が出た場合には、そこで決めてしまうということも考えられるわけです。
特に、中途採用の場合には転職を急いでいるケースが往々にしてあります。すでに所属する会社に退社願を出していたり、失業手当の期間が終わってしまいそうだったり、収入がなくなってしまうことを理由に、一日も早く決めたいと思っているかも知れないわけです。
そのため、他社よりも内定を出すのが遅れてしまうと、先に他社に決めてしまうことがあるのです。ですから、企業としては選考フローの短縮や簡素化を図っていく必要があるでしょう。
理由(2)求人の内容と面接での内容が異なったから
理由(2)求人の内容と面接での内容が異なったから
求職者が求人記事を見て応募をしてきた際に、実際に面接をして「改めて確認をしてみたら内容に違いがあった」となると、懸念を感じられてしまうことになります。場合によっては「辞めておこう」と辞退につながりやすくもなってしまうでしょう。
企業としては、事前に面接官にも求人内容などの情報をシェアしておき、伝える情報に違いが出ないよう注意しなければなりません。
特に辞退につながりやすい項目としては、仕事内容や勤務時間、 給与条件などの「労働条件」に関連するものが大きく影響するでしょう。
理由(3)感覚的に“社風が合わない”と判断される
理由(3)感覚的に“社風が合わない”と判断される
たとえば、面接で自社に来ていただき面接官と話をした時に、「思っていた雰囲気と違う」「面接官の言動や態度が気になった」といって辞退されるケースも多くあります。
また、インターネット上の口コミサイトなどを閲覧して、ネガティブな書き込みなどに反応し、「なんだか合わなそう」と判断して辞退するケースも近年では増えてきています。
口コミについては「悪い口コミを書かれないよう、良い会社づくりをしましょう」としかいえませんが、面接官の言動や態度については予防することが可能です。面接官の人選は慎重に行い、そのうえで面接官向けの研修やトレーニングを実施しておくと良いでしょう。
理由(4)周囲から反対されて辞退されてしまう
理由(4)周囲から反対されて辞退されてしまう
新卒などでは多くありますが、やはり名の通った大企業へ就職を希望する学生が多いため、どうしても知名度の低い中小企業やベンチャー企業の場合には、親をはじめ周囲から反対されてしまいがちです。
会社のブランドや知名度などは担当者レベルで対策できるものではありませんので、ある程度は仕方がないですが、知名度以外のところでしっかりと訴求できるよう、発信するメッセージを尖らせていく必要があるでしょう。
歩留まり率が低下しやすい項目とは
では次に、歩留まり率が低下しやすい項目は何なのかを見ていきましょう。一般的に低下が大きい項目としては、次の3つが挙げられます。
- 書類選考〜一次選考希望率
- 一次選考希望率〜選考実施率
- 面接実施〜内定率
では、それぞれの項目について具体的に確認していきましょう。
4-1. 書類選考~一次選考希望率
4-1. 書類選考~一次選考希望率
「転職」というのは昔よりも活発になっており、転職サービスも充実しています。そのため、企業への応募も気軽に行う求職者が増えてきています。ですから、求職者のなかには実際に選考試験の案内や面接の案内を受け取ってから「受けるかどうか」を判断する人もいますので、当然ながら辞退者も増えてしまいます。
このフェーズでの歩留まり率を向上させるには、選考フローを簡素化することなどが効果的でしょう。例えば会社説明会を実施した日にそのまま選考試験を行うなど、応募者の負担を軽減してあげると良いかもしれません。
4-2. 一次選考希望率~選考実施率
4-2. 一次選考希望率~選考実施率
一次選考に入ってくるフェーズでは、面接の予定を組んでも辞退されてしまったり、いわゆる「ドタキャン」をされてしまったりすることが出てきます。
それまではメールやWEBベースで話が進んでいたところに、「実際に会社に来てください」という話になりますので、そこでハードルの高さが一気に上がることもあるのでしょう。他社で内定が出ていたりすると、さらに辞退者が多くなることになるわけです。
この点についても、企業側の選考フローを迅速なものにすることで、ある程度の歩留まり率の低下は防げると考えられます。
4-3. 面接実施~内定率
4-3. 面接実施~内定率
このフェーズでは、面接を実施しているのに辞退されてしまうわけですから、より「働くイメージ」を持ってもらわなければ難しいといえるでしょう。面接のなかで、他社よりも魅力を感じてもらえなかったり、面接で耳にした情報が希望の条件と合わなかったりする場合でも同じことが起こるはずです。
また、面接時の面接官の対応や会社の雰囲気を実際に目の当たりにして判断することも数多くあるはずです。採用担当者は当然のことながら、面接官にも『面接におけるマナー』を周知し、歩留まりの低下に協力してもらうようにしましょう。
採用活動の歩留まり率低下を改善する方法
歩留まりが低下してしまう項目を紹介してきましたが、採用活動をしていると歩留まりが低下してしまうのは防ぎようがありません。しかし、少しでも良い採用につなげていくためにも、可能な限り歩留まりの低下は改善するべきです。
そこで、ここでは「歩留まり率の低下を改善するための方法」についてご紹介していきます。
方法(1)スピーディーに連絡し、迅速に日程調整をする
方法(1)スピーディーに連絡し、迅速に日程調整をする
電話やメールでいただいた問い合わせに対しては、速やかに返信するようにしましょう。企業からの連絡が遅いと、応募者としては不安な気持ちになってしまいます。
また、面接や説明会などの日程調整に時間がかかってしまうと、他社の選考が先に進んでしまう可能性もありますし、時間が経つことで入社意欲が減少してしまう可能性もあります。
いずれにしても、応募者への対応はできるだけスピーディーに行なうことを徹底しましょう。
方法(2)全体的に選考期間を短縮する
方法(2)全体的に選考期間を短縮する
1つ目の「連絡をスピーディーにする」にも関連しますが、全体の選考期間が長くなってしまうと、他社の内定が先に出てしまう可能性があります。そのため、できるだけ選考期間を短くしていく工夫が必要になります。
応募者の人生がかかっていますので、時間をかけて丁寧に選考することも悪いわけでは決してありませんが、時間を掛けたからといって必ずしも『良い採用』につながるわけではありません。
連絡をスピーディーにするだけでなく、選考過程の様々なフローをブラッシュアップして効率化を図ることで、歩留まり率の低下につなげていきましょう。
例えば、面接を3回しているところを2回にすることはできないでしょうか。これまでの常識を疑いながらも、改善できる部分を探していきましょう。なお、一般的な選考期間としては、新卒採用で1ヶ月以内、中途採用で2〜3週間以内とされています。
方法(3)「自社の魅力」の伝え方を、よく考える
方法(3)「自社の魅力」の伝え方を、よく考える
あなたの会社の魅力はなんでしょうか?
給与が他と比べて高いとか、福利厚生が充実している、といったわかりやすい優位性だけでなく、「仕事のやりがい」や「職場の雰囲気」など、どんな会社でも他社にはない独自の魅力があるはずです。
そうした魅力を上手く言語化して応募者に伝えなければ、他社と比較された際に選んでもらえる確率は低下してしまいます。自社の魅力を改めて明確にし、言語化したうえで、採用サイトや求人広告などで「それをどう伝えるか」と考えていきましょう。
また、説明会での説明や、日程調整の際のやり取り、面接時の対応においても、自社の魅力が応募者にしっかり伝わるよう工夫を凝らしましょう。それが、最終的には歩留まり率低下を改善することにつながっていくのです。
方法(4)入社意欲を高める『動機付け』を丁寧に行なう
方法(4)入社意欲を高める『動機付け』を丁寧に行なう
採用活動のなかで選考が進んでいくにつれ、応募者の入社意欲を高めるための『動機付け』を丁寧に行なう、というのも歩留まり率の低下を改善する方法として効果的です。
入社意欲を高めるための動機付けとしては、下記のようなものが挙げられます。
- 入社することで習得できる知識やスキルの説明
- 担当してもらう仕事の範囲
- 入社後のキャリアアップや評価の仕組み
- 入社した後の仕事への裁量の有無
- 働きやすい環境についての説明
いずれにしても、入社前の段階から応募者がリアルに「入社後のイメージ」を持てるよう動機付けすることで、「この会社に入りたい」「この環境で頑張ってみたい」と思ってもらうことが大切です。
他にも、先輩社員との座談会などを行なって直接会話をしてもらうことも効果的でしょう。そうしたことによって、他社と比較された際に自社が優位になりやすくなるはずです。
方法(5)面接官にトレーニングを実施する
方法(5)面接官にトレーニングを実施する
いくら魅力を伝えても、いくら動機づけを行っても、最後の最後で面接官の対応が悪かったら台無しです。
応募者と直接関わる人事担当者および面接官は、言ってみれば『会社の顔』です。その面接官の態度や話し方、雰囲気はそのまま“会社のイメージ”に直結し、応募者の入社意欲や動機付けにも大きく影響するのです。
ですから、面接官に対して適切なトレーニングを実施しましょう。企業は応募者を採用する立場であると同時に、応募者から選ばれる立場でもあるのです。そのことをしっかりと自覚したうえで、応募者に選ばれるためにどう対応しなければいけないのか、どうしたら安心感や良い印象を与えられるのかを磨かなければなりません。
普段の対応や言葉遣い、服装などの見た目も含め、トレーニングで周知徹底しておくと、歩留まり率低下の改善にも効果があるでしょう。
採用のアウトソーシングサービスならパーソルビジネスプロセスデザインへ
採用のアウトソーシングサービスならパーソルビジネスプロセスデザインへ
本記事では、採用における歩留まりとは何なのか、歩留まり率がなぜ低下するのか、そして歩留まり率の低下を改善する方法についてご紹介してきました。
人材不足が各企業で深刻化するなか、採用活動の品質向上は喫緊の課題となっています。自社にフィットする人物を探し出すうえで、外部のプロの手を借りることは有効な手段といえるでしょう。もし「採用」に関してなにかお困りごとがありましたら、私たちパーソルビジネスプロセスデザインへお任せ下さい。
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