「DX(デジタルトランスフォーメーション)」とは?
DXとは「Digital Transformation」の略称です。なぜDXと表記されるのかというと、「Trans」には「Cross」の意味が含まれ、英語圏ではCrossが「X」と略されることに由来しているためです。
経済産業省では、DXを以下のように定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
引用:経済産業省「デジタル・トランスフォーメーション」DXとは何か? IT化とはどこが違うのか?
上記から、環境の変化に対応しつつ競争上の優位性を確立してDXを実現するには、人と組織の双方にとって最適かつ成長できる業務プロセスが必要だと考えられます。そしてそのプロセスを整える作業が「ビジネスプロセスデザイン」です。
では、日本の企業はどの程度DXを実現できているのかを確認していきましょう。
日本のDX推進の現状
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「IPA DX動向2024」によれば、「全社戦略に基づいて全社的にDXを推進している」と回答した企業の割合が、2023年度にはアメリカ(2022年度)を上回っていることがわかります。
また、DXを進めている企業の割合は、2023年度で73.7%となっています。2021年度の55.8%と比較すると、着実にDXへの取り組みが進んでいる状況といえるでしょう。
以上のことを踏まえると、多くの企業が他社との差別化におけるDXの重要性を認識し始めていると考えられます。
大企業と中小企業における進展の差
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「IPA DX動向2024」の上図によれば、1,001人以上の大企業の96.6%がDXを進めている一方で、従業員が100人以下の小規模企業は44.7%にとどまっていることがわかります。
中小企業においては、DX推進にあたってのリーダーシップを備えた人材が不足しており、取り組む体制が十分に整っていないと思われます。一方の大企業においては、積極的にDXを進めているものの、実際に目立った成果を上げている企業は限られている状況です。
以上のことから、日本におけるDXは進んではいるものの、本格的な段階にはまだいたっていないと考えられます。しかし、企業規模に関係なく、DX推進の重要性は無視できません。
現在、多くの企業や組織が、さまざまな先端テクノロジーを駆使して業務改善に取り組んでいます。しかし、現実は「AIなどの先端テクノロジーを導入すれば業務が改善される」という誤解により、計画どおりの成果を得られていない企業および組織も少なくありません。
わたしたちパーソルビジネスプロセスデザインは、皆さまとともに「業務をどのようにテクノロジーに置き換えていくのか」「どのように人とテクノロジーを共存させ実装するのか」という課題に向き合い、生産性向上のプロフェッショナルとして業務変革を進めていきます。
DXと「IT化」の違い
DXを進めるにあたっては、しばしば「IT化」と勘違いされることがあります。
「IT化」とは、デジタルテクノロジーの進化にともない、アナログな作業をデジタル化し、業務プロセスなどを変更することなく業務効率化を図ることです。一方DXとは、ビジネスや組織における体制自体を変革することを指します。
したがって、DXは「新たな価値創出」が本質的な目的であるのに対し、IT化はDXを果たすための手段の一つであることが大きな違いといえるでしょう。
DXがビジネスに重要である3つの理由
ビジネスにおいてなぜDXが重要なのか、具体的な理由としては、以下の3つが挙げられます。
- 競争優位性の確立
- 業務効率化とコスト削減
- 新たな価値提供と顧客体験の向上
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
競争優位性の確立
デジタル技術を活用することで、社内で個別に管理していたデータの一元管理や、より広範囲な顧客情報の収集などが可能になります。
これらを実現できれば、より迅速な意思決定や市場変化への柔軟な対応ができるようになり、他社との差別化も図ることが可能です。
また、先端技術の活用によって既存業務を効率化する場合、ノウハウの習得にもつながります。その結果、新たなビジネスモデルの構築や提供するサービスのアップデートなどにも活用できるでしょう。
業務効率化とコスト削減
デジタル技術を駆使すれば、現在の顧客ニーズに即した新しい商品やサービスを効率的に生み出しやすくなり、顧客満足度の向上にもつながります。
例えば、インターネットが普及したことで、店舗ではなくWebサイトで商品を購入するケースが増えました。また近年では、サブスクリプション型によるサービスの提供も珍しくありません。
消費者の購買行動や関心が変化しても、最新のノウハウを取り入れていれば常に新しいニーズに対応できるでしょう。そのためにも、DXを推進し、従来の体制をアップデートしていくことが大切といえます。
データやシステムを活用しDXを進めることで、アナログな作業や非効率的なプロセスを削減することができます。その結果、業務の生産性および精度が向上するだけではなく、人件費の削減にもつながるため、リソースの最適化を図ることが可能です。
また、既存の業務プロセスを見直すことで、ヒューマンエラーの防止も期待できます。
新たな価値提供と顧客体験の向上
DX推進のための4つのステップ
実際にDXに取り組むには、何から始めれば良いのでしょうか。ここでは、DXを進める際の手順を解説します。
ただし、最適なDXの進め方は企業によって異なります。ここで紹介する方法はあくまでも参考程度にお考えください。
STEP1.課題の可視化と目的設定
DXに取り組む際には、まず自社の現状や課題を可視化することから始めましょう。何が課題なのかを明確にし、自社の弱みや強みを客観的に理解することが可能です。また、情報資産や既存のシステム、人材の能力や適性など「ヒトやモノ」すべてを全面的に把握することも重要です。
自社の状況や課題を可視化できたら、DXの目的やビジョンを明確にします。DXの目的を定めることで、DXの方向性を定められるほか、社内での共通認識化をスムーズにすることが可能です。
ただし、現場主体で目的を設定してしまうと、経営的よりも目先の課題にとらわれる可能性がある点に注意してください。目的の設定においては、経営層のコミットメントも不可欠です。
STEP2.人材の育成・確保と組織改革
現状の可視化と目標の設定ができたら、データを活用できる適切な人材の確保および育成により、組織改革を実施します。
しかし、DXはここ数年で一気に注目されるようになったため、人材の需要に対して供給が追い付いていない状況です。そのため、既存組織で対応できるか、既存社員をDX人材に育成できるか、または社外パートナーへ依頼するべきかといったことも検討する必要があるでしょう。
DXを着実に進めるには、DX推進に適した組織体制の構築も重要な要素です。経営層のコミットだけでなく、十分な社内理解や各部署の強力関係が必要になります。
STEP3.デジタル化による業務効率化
人材確保と組織改革の次は、実際にデジタル化による業務効率化を行ないます。具体的には、新たな業務システムやツールを導入し、アナログで行なっていた作業をデジタル化します。
ただし、デジタル化の際には、コストの増加や機能の重複といったリスクも考慮しなければなりません。そのため、ツールやシステムを導入する際は、目先の業務だけでなく、各部署の業務や自社の成長にまで視野を広げることが大切です。
デジタル化は、長期的な視点で進めることで組織全体の業務最適化や生産性の向上につながります。
STEP4.結果の分析・活用
デジタル化によって業務効率化を実施したあとは、その成果をしっかりと測定・分析し、ビジネスに活用することが重要です。
例えば、収集したデータからは、どの施策やプロセスが成功しているのか、または何が課題なのかといったことを明確に読み取れます。これらのデータを参考に、ビジネスチャンスを見つけることも期待できるでしょう。
データを分析する際には、目標やKPI(重要業績評価指数)と照らし合わせ、進捗状況や改善ポイントを特定します。分析結果をもとに新たな課題を洗い出し、さらなる改善や追加施策を計画することで、DX推進のサイクルを回していくことが大切です。
DXの導入に成功した3つのお客様事例
ここでは、パーソルビジネスプロセスデザインによるDX導入支援の成功事例を紹介します。こちらの事例を参考に、自社の強みや課題などを今一度再確認してみましょう。
【某通信企業様】AI Chatbotで、ユーザーの問い合わせを大幅に削減
某通信企業様では、ユーザーからのシステム関連の問い合わせが各部門のIT管理者に集中していることが課題でした。この課題を解決するために実施したのが、AI Chatbot「Alli」の導入支援です。
Alliは、ユーザーが抱えるシステム関連の疑問や問題に自動で対応し、迅速かつ的確なサポートを提供します。導入後、IT管理者が対応していた月間約150~180時間分の問い合わせ対応が削減され、効率化を実現しました。
これにより、IT管理者はコア業務に集中できるようになり、企業全体の生産性向上にも寄与しています。またAlliの活用は、問い合わせ対応の効率化だけでなく、ユーザー満足度の向上にも貢献しています。
事例:通信系保守事業会社様
【某コールセンター様】SaaS製品の機能検証で、社内ポータルサイト導入支援
某コールセンター様では、Google Workspaceとの親和性が高いSaaS製品を活用し、社内ポータルサイトを導入するプロジェクトを実施しました。
もともと別のサービスを使用してイントラネットを作成・運用していましたが、Google Workspaceとの連携性の低さ、更新作業の属人化などが課題でした。
本プロジェクトでは、お客様と伴走型でSaaS製品の機能検証を行ない、ポータルサイト導入の最適な形を検討しました。その結果、Google Workspaceとのスムーズな連携が可能となり、属人化を解消した効率的な運用体制を構築できたのです。
さらに、全社リリースに向けてトレーニングを実施し、社員全体でのスムーズな移行を支援しました。これにより、情報共有の精度向上と業務効率化が実現しました。
事例:Google Workspace ワンストップサービス
【某キャリア様】24時間365日でサポート体制を構築で、ヘルプデスクのサテライト化を実現
某キャリア様では、24時間365日対応可能なサポート体制を構築することで、Google WorkspaceやMicrosoft 365に関する問い合わせに迅速かつ的確に対応する仕組みを実現しました。
GoogleやMicrosoftのサポートデスクを展開する際、体制の維持管理やサービス品質の確保が課題となっていました。これを解決するために、Google WorkspaceやMicrosoft 365の知見を有するメンバーを1ヵ所に集約し、ヘルプデスクのサテライト化を導入したのです。
これにより、専門性の高い対応が可能となり、顧客満足度の向上と効率的な運営を両立することができました。
事例:Google Workspace ワンストップサービス
まとめ
DXに取り組むことで、競争優位性の確立や業務効率化およびコスト削減、リソースの最適化、新たな価値提供と顧客体験の向上など多くのメリットが期待できます。
DXを進めるにあたって「業務効率化の方法がわからない」「DX人材育成のノウハウやリソースがない」といったお悩みがある際は、パーソルビジネスプロセスデザインのDXソリューションをご活用ください。