VOC(顧客の声)とは
VOCとはVoice Of Customerの略称で、直訳すると「顧客の声」です。具体的には、アンケート調査やネットリサーチ、お問い合わせセンターに寄せられるクレームなどから収集された「顧客の声」を指します。
VOCが重要視されている理由は、一定量の顧客の声を集めて分析し、傾向を知ることで商品の開発やサービスの改善、マーケティングに活用できるからです。このようにVOCをもとに商品やサービスの品質向上を目指すことを「VOC活動」と呼びます。
VOC活動における3つの課題
現在、VOC活動の重要性を認識して取り組んでいる企業は少なくありません。しかし、自社の商品や顧客対応サービスの改善に向けてVOC活動を推進しても、「コールセンターや専門システムで収集したVOCを活かせていない」という課題を抱える企業担当者もいます。
ここでは、VOC活動における課題を3つ挙げて解説します。
課題(1)適切なVOCが収集できていない
適切なVOCが収集できていない場合が多くありますが、その背景には「本当に必要な顧客の声を集められていない」という状況が考えられます。たとえば、「とにかくVOCをすべて寄せ集めている」という場合、適切なVOCは収集できません。こうした事態は、VOCの収集方法を十分に検討せずに「とりあえず収集した」ときに見られる問題です。
企業にとって必要なVOCを収集するには、綿密な事前計画が必須です。「いつ、どこで、どのように顧客と接触をして」「なにを質問するか」と、道筋を立てる必要があります。
たとえば、チャットを使って問い合わせる顧客が多い場合、チャットでの案内終了後にアンケートを実施すると効果が期待できます。会話の流れでアンケートに回答しやすいよう設計すれば、自然に評価を促せます。アンケート内容については、企業が知りたい内容を設定すれば、適切なVOCを収集できるようになるでしょう。
このように、顧客とのタッチポイントはどこか考え、顧客が負担なく回答できる方法を検討しましょう。
課題(2)量が多過ぎて情報管理や分析ができていない
VOC活動に取り組む企業のなかには「顧客の声の数が多過ぎて、管理や分析まで手が回らない」という課題を抱える担当者もいます。VOC活動の大まかな流れは「目標設定→収集→分析→改善」です。つまり、PDCAサイクルを回す必要があるのですが、途中でストップしてしまいアクションにつながらない状況であると考えられます。
VOC活動のPDCAサイクルがうまく回らない理由としては、「事前計画が不十分」「担当者が目の前の業務に追われリソースが足りない」といったケースが挙げられるでしょう。また、どれだけVOCの数を集めたとしても、適切に管理して分析をしなければ意味がありません。
そこで「VOCの数が1,000件まで集まったら分析を始める」「収集期間は1ヶ月間だけにする」など収集活動に区切りを設けて、次のステップに進むことが大切です。
課題(3)分析結果をもとに改善できていない
VOCをサービスの改善やマーケティングにまで反映できていない、という課題がある企業も少なくありません。顧客の声はあくまで次につなげるための「ヒント」であり、具体的にどのように改善や開発をしていくかは企業次第です。施策を立てて実行に移さなければ、VOC活動が無意味になってしまうのです。
VOCから考えられる具体的な施策としては、例として以下のようなものが挙げられます。
- 商品AよりもBに対する要望が多いから、Bを改良して広告を再出稿しよう
- 若い世代の反応が良いからSNSキャンペーンを開始しよう
このように、施策を実行に移したら“どれくらい効果があったか”も測定する必要があります。売れ行きの仮説を立て、効果を検証しましょう。
SNSをはじめインターネットが発達した現代では、企業とユーザーの距離が近くなりましたので、VOCを反映した商品の開発や改善がより重要になります。検証を繰り返し、顧客が本当に求める商品やサービスの開発に向けてVOCを活用しましょう。
VOC活動に取り組むメリット
次に、企業がVOC活動に取り組むメリットについて、3点を挙げて解説します。
メリット(1)顧客満足度が向上する
VOCを収集して商品やサービスに反映させると、顧客満足度が向上するという大きなメリットがあります。顧客からのクレームが多い場合には、早期解決に向けて取り組めるようになるでしょう。
また、特定の商品に対して要望が多く集まっている場合、優先順位をつけて改善に取り組むことができます。素早く適切に対応できるようになるので、顧客満足度の向上につながるでしょう。
さらに、VOC活動を徹底して行うことで顧客との信頼関係が強化され、LTV向上も期待できます。LTVとはLife Time Valueの略で、「顧客生涯価値」という訳になり、一人の顧客が生涯を通して企業にもたらす価値を表す指標です。
LTVが向上すれば、企業は新規顧客の獲得にリソースを多く割く必要がなくなります。新規顧客の獲得コストはリピートの維持と比較して大きい傾向にあるため、LTVは企業の持続的成長に重要な指標と言えるのです。
ですから、VOC活動を企業のマーケティングの中心に据えて、顧客満足度やLTVの向上を目指し定期的に取り組むとよいでしょう。
メリット(2)商品やサービスの改善に役立つ
VOCには、企業が今後どのような商品を開発すべきか、またはどのような点を改善すべきか、参考になるヒントが詰まっています。VOC活動で顧客の声を適切に収集して分析すれば、次の方向性を決めやすくなるでしょう。
特に最近では、D2Cと呼ばれるビジネスモデルに注目が集まっています。D2CとはDirect to Customerの略称で、「製造者が消費者に対してダイレクトに取引を行う」ビジネスモデルを指します。
従来の販売方法は、製造者と顧客の間に販売代理店や小売店など、いくつもの中間業者の介入がありました。しかしD2Cビジネスモデルでは、製造者がすべての工程を自社内で完結するため、直接顧客に商品を届けられます。必然的に顧客との距離が近くなるので、商品の感想や使い心地といった声を拾いやすいというメリットがあります。
具体的には、購入後の顧客にアンケートを送ったり、インタビューを行ったりすることで、商品開発にVOCを反映しやすくなるでしょう。
逆に、顧客の声をしっかりと聞かずに商品を開発してしまうと、企業が作りたい商品だけが市場に出回ってしまうことになります。それでは必然的に上手くいくことはなく、売上減少を引き起こしてしまいますので、「顧客の声に真摯に向き合う姿勢」は重要だといえるでしょう。
メリット(3)コールセンタースタッフの応対品質が均一化される
VOCは商品開発だけでなく、コールセンターの応対品質の改善にも利用できます。コールセンターが抱える課題として、「ベテランと新人スタッフの対応に差がある」という点が挙げられます。応対品質に差が生まれてしまうのは、ベテランと新人スタッフでは経験や知識に大きな違いがあるからです。
そこで解決策として、VOC活動で顧客からの問い合わせ内容やクレームを収集し、「よくある質問集」を作成している企業が多くいます。通話中でもアクセスしやすいよう質問集を設置すれば、誰でも同じような対応ができるようになるわけです。
これまでは点在していたVOCを一箇所に集めて管理し、定期的に質問集を更新することで、スムーズな顧客対応が実現するでしょう。
VOCの収集方法
では次に、VOCの収集方法について3点を挙げて解説します。
方法(1)コールセンターやお問い合わせ窓口サービス
コールセンターやお問い合わせ窓口サービスは、顧客の声を直接的に収集できる部署と言えます。VOC活動を進めやすいので、設置している企業は積極的に活用しましょう。
顧客の声を聞きながら会話するコールセンターでは、相手が話す内容だけでなく声のトーンやニュアンスも細かく知ることができます。顧客は喜んでいるか、それとも不満に感じているか、感情を把握できますので質の高いVOCが収集できるでしょう。
また、すべての通話音声を録音してテキスト化すれば、分析もしやすくなります。システムを導入して定期的に録音内容を管理することで、顧客満足度の向上を図れるはずです。
方法(2)アンケート調査
ハガキやウェブ上のアンケートフォームを使った調査も、VOC活動ではよく使われます。商品やサービスに対する顧客の満足度や、生活様式を把握するのにおすすめです。
具体的なアンケート調査として、ウェブ上でアンケートフォームを配布して回収する「ウェブ調査」や、顧客の自宅にアンケート用紙を送付して回収する「郵送調査」が挙げられます。
「郵送調査」は幅広い世代が対象となり得ますが、回答率が低いのがデメリットです。一方、「ウェブ調査」はネット環境さえあれば回答できますので、回答が集まりやすいでしょう。
アンケート調査はVOCの効果的な収集方法ですが、積極的に意見を伝えようとする人の声しか拾えません。ですから、前述した「コールセンターの声」や後述する「SNS」を使ったリサーチも組み合わせると良いでしょう。
方法(3)SNS
SNSを使ったVOC収集方法もおすすめです。SNSには顧客の率直な声が集まりやすいので、企業にとって有益な情報を集められます。
会社名や商品名などをSNSで“エゴサーチ”してどのように評価されているか調べる方法や、テキストマイニングツールを使った調査方法もあります。
テキストマイニングツールとは、大量のテキストから特定の情報を抽出するツールです。SNS上のクチコミから自社の商品に関する評判を検索しやすく、顧客の多様な声を収集することができます。
VOC活動に取り組む手順とポイント
続いて、VOC活動に取り組む4つの手順と、それぞれのポイントについて解説します。
- 手順(1)目的を明確に定める
- 手順(2)社内体制を整備する
- 手順(3)システムやサービスを導入する
- 手順(4)運用を開始する
手順(1)目的を明確に定める
VOC活動を推進するにあたり、目的を明確にする必要があります。VOC活動でなにを達成したいか明確でなければ、たとえVOC活動を進めてもコストや労力がかかるだけです。
目的がはっきりすれば、仮説を立てやすくなります。仮説を立てると欲しいデータの種類が明確になり、どのような方法をとれば良いか見当をつけやすくなります。その結果として、収集に必要となるコストや時間を圧縮できるでしょう。
手順(2)社内体制を整備する
VOC活動を実施するための社内体制を整備することも大切です。担当部署やスタッフを明確にし、分析したデータをどの部署に提供するかも決めておくと良いでしょう。
そのために、手順(1)で決めた「目的」を社内で周知し、体制作りの協力を仰ぐことが重要です。
手順(3)システムやサービスを導入する
コールセンターシステムやCRM(顧客関係管理)ツールなどを利用すると、VOCの収集や管理、分析が実行しやすくなります。コールセンターで集めた顧客の意見をCRMツールに直接入力できるようシステムを連携させれば、管理の利便性も高まります。また、システムを導入することで多くのVOCを管理しやすくなるでしょう。
大量のVOC分析から抽出できた改善ポイントを反映できれば、顧客の離脱防止にも役立つはずです。
手順(4)運用を開始する
運用を開始したら、VOCを蓄積して分析します。そして、担当部門へフィードバックし、顧客満足度を高めていきます。部門間で連携してVOC活動に取り組むことができれば、LTVの向上も期待できるでしょう。
運用段階では、改善後に売上アップや離脱率の低下などなんらかの効果が表れたかを確認することが重要です。そのような結果を測定することで、VOC活動の具体的な効果を判断できるでしょう。
VOCを活用するならパーソルビジネスプロセスデザインへ
VOC活動は顧客満足度の向上に欠かせません。顧客の声に寄り添った商品やサービスを提供することで、企業は持続的成長を遂げられるからです。しかし、自社の努力だけでは十分なVOC活動を実施できないというケースもあるでしょう。
そこでぜひご利用いただきたいのが、パーソルビジネスプロセスデザインが提供する「コールセンターサービス」です。当サービスでは、お問い合わせ窓口や相談窓口をご提供するだけでなく、VOCを収集して分析まで行っています。
たとえば、顧客の声をCRMツールに記録して集約し、優先順位の高い改善点を抽出することが可能です。その結果、応対品質の向上や顧客満足度アップにも貢献できるのです。
詳しくは下記のサービス概要をご確認いただき、何かご不明な点があれば、ぜひお気軽にご相談ください。