ナレッジマネジメントのメリット・デメリット|成功事例とあわせて解説

ナレッジマネジメントのメリット・デメリット|成功事例とあわせて解説

「ヘルプデスク・コールセンター部署において、応対品質の向上や人材育成に課題を抱えている」「ナレッジマネジメントの導入を検討しているが、メリットがいまいちわからない」といった悩みや疑問を抱える企業もあることでしょう。

ナレッジマネジメントを適切に導入することで、業務の平準化による応対品質の向上や顧客満足度の向上、業務の効率化など、多くのメリットを享受できます。また、社内の知識共有を促進し、人材育成や定着率の改善にもつながるでしょう。

本記事では、ナレッジマネジメントの概要とそのメリット・デメリット、そして成功に導くためのポイントについて、詳しく解説します。ぜひ最後までお読みいただき、ナレッジマネジメント導入の判断材料としてください。

目次

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    1. ナレッジマネジメントとは?

    ナレッジマネジメントとは、社員個人が持つ知識や経験といった「ナレッジ」を全社で共有・活用する手法です。

    組織内で特定の知識へのアクセスが容易でない場合、その情報を探すために多大な時間が費やされることがあります。知識が特定の個人に偏在する「属人化」の問題が発生することも少なくありません。

    こうした課題に対処する手段として、ナレッジマネジメントが有効です。適切に実施できれば、業務の効率化や平準化が可能となり、組織全体のパフォーマンス向上につながります。

    2. ナレッジマネジメントを導入するメリット

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    ナレッジマネジメントの導入によって得られる主要なメリットは、以下の4つです。

    • 業務効率の改善につながる
    • 業務の平準化を促し顧客対応の質が担保できる
    • 新人の教育コストが削減できる
    • 社員の定着率が向上する

    ナレッジマネジメント導入の価値をより明確に理解するため、これらの詳細について見ていきましょう。

    2-1. 業務効率の改善につながる

    ナレッジマネジメントの導入は、業務効率の改善をもたらします。

    社内のすべてのナレッジを一か所に集約することで、社員は必要な情報に迅速かつ容易にアクセスできるようになります。また、情報が集約されることによって、情報を探したり確認したりする手間も、大幅に削減可能です。それにより問い合わせ件数が減少するため、社内ヘルプデスクの負担も軽減されるでしょう。

    たとえば、製品情報やトラブル対応ノウハウなどを集積し、即時に対応可能となるケースは、業務効率改善の典型的な例です。さらに、ナレッジマネジメントはスキルアップの機会も提供します。

    たとえば、オペレーターのナレッジやノウハウの共有は、全体的な対応スキルの向上につながるでしょう。具体的には、熟練オペレーターによる高品質な顧客対応マニュアルを共有することで、新人を含むほかのオペレーターの対応スキルが向上するのです。

    このように、ナレッジマネジメントは単なる情報共有の手法ではなく、組織全体の能力を高める戦略的な手段となり得ます。適切に実施することで、業務効率の向上のみに留まらず、サービス品質の改善や従業員の成長にも貢献するでしょう。

    2-2. 業務の平準化を促し顧客対応の質が担保できる

    ナレッジマネジメントの導入は、業務の平準化を促進し、顧客対応の質を一定水準に保つ効果があります。特定の人物に依存している業務や、その人がいないと質が低下してしまう業務がある組織にとって、とくに有効に働くでしょう。

    あらかじめ重要なナレッジを登録しておくことで、ほかの社員も必要なノウハウに簡単にアクセスできるようになります。これにより、特定の個人しか対応できなかった業務や、個人間で質に差が出やすかった業務でも、一定のクオリティを維持することが可能となるのです。

    とくに顧客対応の分野…たとえばヘルプデスク業務などでは、ナレッジマネジメントの効果が顕著です。応答マニュアルなどのナレッジ集を整備し、チームメンバー全員が容易にアクセスできる環境を整えることで、対応の迅速性と質の向上を図れます。

    結果として、チーム全体の対応レベルが均一化され、顧客満足度の向上につながるでしょう。

    2-3. 新人の教育コストが削減できる

    ナレッジマネジメントを導入することで、新人教育のコストを大幅に削減可能です。社内に蓄積された知識やノウハウを効果的に活用することで、従来の教育方法よりも効率的に新人を育成することが可能となるでしょう。

    具体的には、サービスやプロダクトに関する基本的な情報、業務プロセス、よくある質問とその回答などを体系的にナレッジベースに登録しておくことで、新人が自主的に学習できる環境を整えられます。

    それにより、オペレーターや先輩社員といった指導者が新人に直接指導する工数・時間を大幅に削減可能です。また、指導者は、より重要な業務にリソースを割けるようになるでしょう。

    2-4. 社員の定着率が向上する

    ナレッジマネジメントの導入は、社員の定着率向上にも大きく貢献します。集積されたさまざまなナレッジに容易にアクセスできることで、仕事の負担が軽減されるためです。

    たとえば、業務で行きづまった際に、ほかの社員がうまくいったノウハウなどを参照することで、問題解決への道筋が見えやすくなります。それにより、個人の負担が軽減され、ストレスの軽減にもつながります。

    とくに、新人オペレーターなどは早く会社に馴染むことが重要です。その点、ノウハウに触れ、早い段階で業務をある程度こなせるようになることで、会社に馴染みやすくなり、定着率の向上にもつながるでしょう。また短期間で業務をこなせるようになることで、新人社員が自信を持てたり、仕事への意欲が向上したりする効果も期待できます。

    ナレッジマネジメントを導入するデメリット

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    ナレッジマネジメントの導入には、メリットだけでなく、以下のようなデメリット・注意点も存在します。

    • 社員に浸透させる仕組みを設計するコストがかかる
    • ナレッジマネジメントを担当する人的リソースが必要
    • システム導入・構築に時間を要する

    各デメリットの詳細と対策を見ていきましょう。

    3-1. 社員に浸透させる仕組みを設計するコストがかかる

    ナレッジマネジメントを効果的に導入するには、単にシステムを実装するだけでなく、社員の積極的な参加を促す仕組みづくりが重要です。

    多くの場合、社員は日々の業務に追われており、新たなナレッジ共有の取り組みに時間を割くことが難しい状況にあります。また、ナレッジ共有に消極的な社員もいるため、全社的な浸透が進みにくくなることもあるでしょう。

    これらの課題を解決するためには、ナレッジ共有を促進する仕組みを慎重に設計する必要があります。たとえば、ナレッジ共有にインセンティブを付与したり、ナレッジ共有を評価制度に組み込んだりするなどの施策が考えられるでしょう。しかし、こうした制度の設計や運用には、相応のコストと時間がかかってしまうため、デメリットといえます。

    3-2. ナレッジマネジメントを担当する人的リソースが必要

    ナレッジマネジメントの導入には、必要となる人的リソースの問題もあります。

    まず、ナレッジマネジメントを効果的に実施するためには、専用ツールの活用が必要です。このツールのシステムを理解し、適切に管理できる人材を確保できなければ、円滑な運用は困難といえます。

    さらに、社内でナレッジの共有と活用を促進するためには、深い理解を持つ人間が、セミナーや情報発信を通じて社内にアピールしていく必要があるでしょう。

    加えて、ナレッジマネジメントのプロジェクト自体を管理する人員も必要です。

    プロジェクトの管理者が、導入後に実際に効果が出ているのか、そもそも利用状況はどのくらいかなどを検証しながらプロジェクトを運営していくことで、ナレッジマネジメントを円滑かつ効果的に運用していけます。

    このように、ナレッジマネジメントの導入には複数の役割を担う人材が必要となる点も、デメリットといえるでしょう。

    3-3. システム導入・構築に時間を要する

    ナレッジマネジメントを組織に導入する際、適切なツールの選定や環境整備に予想以上の時間がかかることがあります。

    組織のニーズに合致したツールを選ぶためには、さまざまな製品を比較検討しなければなりません。しかしそのためは複数の企業からの情報収集やデモ版の試用などが必要であり、相応の時間を要するでしょう。

    また、初期段階で登録すべきナレッジの選定も必要です。どの情報を優先的に共有するか、どのような形式で保存するかなど、事前に綿密な調査や検討をしなければなりません。こうした体制構築に多くの時間を要することもデメリットといえます。

    ナレッジマネジメントのメリットを引き出すポイント

    前提として、ナレッジマネジメントの効果を最大化するためには、KCS(Knowledge-Centered Service)の手法を採用することが重要です。

    KCSとは、有用な情報を特定し、整理し、共有し、そして継続的に改善していく一連の活動を指します。KCSは、単なる問題解決のツールではなく、より根本的な「問題解決のアプローチ」そのものとも捉えられるでしょう。

    こうしたKCSにより、問題解決の迅速化や顧客満足度の向上、従業員の成長促進に期待できます。ナレッジマネジメントを機能させるために有効なKCSの手法について、より具体的に見ていきましょう。

    4-1. ナレッジの見直しは再利用する際におこなう        

    ナレッジマネジメントを効果的に運用するうえでは、ナレッジの見直しをおこなう対象・タイミングが重要です。

    一般的に、全体のナレッジの中で再利用されるものは約20%程度に留まるといわれており、複数回利用されるナレッジはさらに少なくなる傾向があります。

    このような状況を踏まえると、すべてのナレッジを定期的に見直すことは、時間と労力の無駄となってしまう可能性が高いです。

    そこで、効率的なアプローチとして、ナレッジを再利用する際にその内容を見直す、という方法が推奨されます。この方法では、実際に活用されるナレッジのみを対象とし、必要に応じて修正や更新をおこないます。それにより、実用性の高いナレッジのみを最新の状態に保てて、見直しの労力を最小限に抑えられる点がメリットです。

    組織の知識資産を最適な状態に保ちつつ、管理コストを抑えるためには、ナレッジを再利用する際に見直しをおこなうようにしましょう。

    4-2. 未登録のナレッジは迅速に登録する

    ナレッジマネジメントを効果的に運用するためには、未登録のナレッジを下書きレベルでも良いので迅速に登録することが重要です。

    なぜこれが重要かというと、ナレッジの内容を完璧に仕上げたり、公開の承認を得たりする間にも、同じ問題が発生し解決されてしまう可能性があるためです。そうなると、ナレッジが公開された時点ではすでに問題が解決済みとなり、その効果が大幅に薄まってしまいます。

    そのため、未登録のナレッジはすぐに登録し、再利用する際に修正を加えていくようにする方法が、ナレッジを有効活用するうえで効果的です。また、ナレッジを有効活用できるだけでなく、ナレッジ管理者の負担を軽減できる、ナレッジの公開までの時間を短縮できる、といったメリットもあります。

    4-3. オペレーターのレベルに沿ってナレッジのマネジメント権限を付与する

    オペレーターのレベルに応じてナレッジのマネジメント権限を適切に付与することも、効果的なナレッジマネジメントを実現するうえで重要です。

    この手法では、以下のように、個人の経験や能力に基づいて段階的に権限を与えていきます。

    • 自分のナレッジのみ管理できる権限
    • 他人のナレッジを修正できる権限
    • チーム全体のナレッジ品質の管理や改善を担う権限

    このように権限を階層化することで、ナレッジ全体の品質を適切に保てるようになります。

    一方で、下位レベルの人物が無制限にナレッジを修正・公開できる状態は避けるべきです。そのような状況では、誤った情報や、質の低いナレッジが混入してしまうリスクが高まります。

    ナレッジマネジメントの成功事例

    実際の成功事例を学ぶことで、より具体的な導入イメージをつかめるはずです。
    各企業がどのようにしてナレッジの共有と活用を実現し、どのような効果を得たのかを詳しく見ていきましょう。

    5-1. コールセンターにおけるナレッジマネジメントの活用|株式会社再春館製薬

    株式会社再春館製薬のコールセンターでは、情報量の増加に伴い、資料検索の非効率性や情報の属人化といった課題に直面していました。

    そこで、同社は企業内検索エンジン「Neuron ES」を導入します。それにより、膨大な商品情報や研修資料を一元管理し、迅速に検索できるようにしました。結果として、回答の速さや質の改善に寄与しているようです。また、紙ベースの資料管理が不要となり、物理的なスペースの節約にもつながったとしています。

    加えて、システム管理者からも、「資料の登録に特別な手順が不要で、簡易な文書管理ルールを適用すれば文書管理ができるようになった」との評価がありました。同社はナレッジマネジメント導入の効果をさまざまな側面で実感しているようです。

    5-2. 95,000件のナレッジ管理とナレッジ基盤及び人事制度の構築|株式会社東京海上日動コミュニケーションズ

    株式会社東京海上日動コミュニケーションズは、保険加入者や代理店の問合せ対応を行うコンタクトセンターを運営しているだけでなく、CoEの役割も果たし、グループ全体のコンタクトセンター戦略を担う企業です。

    2018年に、「顧客満足度の向上」「生産性向上」「早期退職率抑制と雇用の安定化」「FAQの資産化」を目的にKCSを導入し、成功を収めました。

    同社は、顧客満足度の向上を優先事項とし、オペレータ個人に属人化しているナレッジを共有し、新人でも迅速に回答できるようにする必要がありました。一方で、実際は新人育成は難航しており、早期退職も少なくない状態でした。

    そこで、KCSを導入し、迅速に適切な回答を行えるナレッジ管理体制の構築を行いました。

    その結果、ACWは1/3に減少、一次解決率も90%に向上しました。また、KCSにより高品質なナレッジを管理する体制構築ができ、新人育成に寄与しているだけでなく、KCSに関する資格を人事制度に取り入れることで、オペレーターのモチベーション向上にもつながりました。

    このように、KCSを導入することで、業務品質の向上や効率化、人材育成の体制を構築することが可能となります。

    まとめ

    ナレッジマネジメントは、組織内の知識や経験を効果的に共有・活用する手法として、多くの企業で注目されています。導入によって、業務効率の改善や顧客対応の質の向上、新人教育コストの削減といった多様なメリットが期待できるでしょう。

    しかし、ナレッジマネジメントの導入には、社員への浸透や担当人材の確保、システム構築にかかる時間と費用といったデメリットも存在します。

    ナレッジマネジメントのメリットを最大限に引き出すためには、ナレッジの見直しは再利用する際におこなう、未登録のナレッジは迅速に登録するなどの適切なアプローチをとることが必要です。しかし、自社にノウハウがなく導入が難しい場合は、外部サービスの利用も考えておくと良いでしょう。

    パーソルビジネスプロセスデザインでは、コンタクトセンターのナレッジマネジメントに特化したKCSコンサルティングサービスを提供しています。ナレッジマネジメントを適切に導入・運用し、組織全体の知識共有と業務効率化を実現したい場合は、ぜひ一度パーソルビジネスプロセスデザインのサイトをご覧になってください。

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