ナレッジマネジメントとは?
『ナレッジマネジメント』という言葉に使われている「ナレッジ」という単語には、データやノウハウ、知識などの意味が含まれています。ではまず、そんな『ナレッジマネジメント』の意味について確認していきましょう。
1-1. ナレッジマネジメントは、個人のナレッジを組織で共有すること
ナレッジマネジメントとは、個人が持っているナレッジを組織で共有していくことです。それにより、組織の生産性を向上させたり、新規事業を開発したりすることに繋がっていきます。
そんなナレッジマネジメントの主な目的としては、次の3つが挙げられます。
- 業務の質や効率性の向上
- カスタマーサポートの充実
- 新入・転入社員などの人材育成
顧客対応の質やスピードを高めるためには、業務の生産性を高め、優秀な人材を育てる必要があります。業務を行うなかで得た知識を活用する方法として、ナレッジマネジメントの取り組みが行われているのです。
1-2. ナレッジマネジメントでは、暗黙知を形式知にしていく
1-2. ナレッジマネジメントでは、暗黙知を形式知にしていく
ナレッジマネジメントの考え方として、暗黙知を形式知にしていくことが求められます。
『暗黙知』とは、属人的な知識やスキルであり、社員や関係者のそれぞれが持っている専門性を指します。これらは個人の業務経験を通して得るものであり、企業が何らかの対策をしない限り組織全体に共有されず、暗黙知のままになるわけです。
一方、『形式知』とは、言語や数字、図表などで可視化された知識を指します。ナレッジマネジメントでノウハウを共有するためには、言語や数字、図表でデータを管理することが欠かせません。
ナレッジマネジメントでは、この暗黙知を形式知に変換し、そのうえで関係者が必要な形式知に素早くアクセスできるように管理する必要があるのです。
なぜナレッジマネジメントが必要なのか
なぜナレッジマネジメントが必要なのか
日本ではナレッジマネジメントの取り組みが広まっていますが、その理由として『知識経済化』が挙げられます。
これまで、企業の経営資源といえば「ヒト・モノ・カネ」が一般的でしたが、昨今においては知識などの無形資産の価値が高まっており、経済の基盤となりつつあります。
それにより、暗黙知を継承していくのみでは企業の長期的な存続は難しく、企業内の『ナレッジ』を最大限に活用していくことが求められるようになったのです。
現在では、暗黙知を形式知に変換するための人工知能や外部サービスなども増えてきており、企業の形式知を増やす取り組みが積極的に行われています。
※「ナレッジマネジメント」について詳細を知りたい方は下記のコラムも併せてご参照ください
ナレッジマネジメントのメリット
ナレッジマネジメントの概要や必要性を説明して来ましたが、そもそもナレッジマネジメントにはメリットがあります。主なメリットとしては、次の3つが挙げられます。
- 効率的な人材育成が可能
- 業務の効率化・生産性の向上
- 最新の顧客ニーズを把握
一つずつ確認してみましょう。
メリット(1)効率的な人材育成が可能
メリット(1)効率的な人材育成が可能
ナレッジマネジメントにより、社内の優秀な社員が持っているノウハウを組織全体に共有できるため、効率的な人材育成が可能になります。
例えば、営業成績の良い社員の日頃行っている取り組みや営業スキルなどの暗黙知を形式知に変換して社内に共有することで、会社全体の売上アップが期待できるでしょう。
また、新人研修にもナレッジを活用できるため、もともと研修にかかっていた時間を大幅に短縮できることも強みといえます。
メリット(2)業務の効率化・生産性の向上
メリット(2)業務の効率化・生産性の向上
ナレッジマネジメントにより、業務の属人化を防いで平準化を目指すことができます。
業務が属人化してしまうことで、ある社員が休むと業務効率が落ちるとか、業務が停止するなどといったリスクが発生してしまいます。そこでナレッジを誰でも活用できるようにしておくことで、急な場面でも他の社員が対応できるようになるのです。
また、社内でナレッジを共有することにより部門同士の連携も強まるため、会社全体の生産性向上も期待することができます。
メリット(3)最新の顧客ニーズを把握
メリット(3)最新の顧客ニーズを把握
ナレッジマネジメントでは顧客情報の共有も行えるため、最新の顧客ニーズを各部署で把握することができます。
そのため、過去の事例を分析して共通点を発見できますので、顧客ニーズに合わせた商品やサービスの開発にも繋げられるでしょう。
ナレッジマネジメントのデメリット
では逆に、ナレッジマネジメントのデメリットを見てみましょう。挙げられるのは次の2つです。
- 社員がシステムを利用するかは別問題
- 導入には費用と時間が必要
それぞれ解説しますので、対処法と合わせて確認してみてください。
デメリット(1)社員がシステムを利用するかは別問題
デメリット(1)社員がシステムを利用するかは別問題
せっかくナレッジを蓄積させていても、社員にとって欲しい情報がなかったり、情報を見つけにくかったりすることが原因で、利用してもらえない場合もあります。
必要な情報に素早くアクセスできる環境を整えるためには、ナレッジツールの導入や外部コンサルによるナレッジ管理を検討してみることも方法の一つです。
また、情報が古い場合もあるため、定期的にアップデートして最新のナレッジを共有することも欠かせません。
デメリット(2)導入には費用と時間が必要
デメリット(2)導入には費用と時間が必要
ナレッジを持っている社員が多いほど、そのための管理には時間が必要になります。また、システムを導入する場合には、その分の費用も当然ながら発生します。
ナレッジマネジメントに取り組む際は、各社員が持つナレッジを集めるだけでなく、誰でも使える知識として体系化する必要がありますので、かなりの労力が求められるでしょう。
導入を検討してからすぐに導入できるものではないため、ある程度の期間を想定しておいたほうが良いかもしれません。
ナレッジマネジメントの手法は大きく分けて4つ
ナレッジマネジメントを導入する前に、どういった手法で知識を管理していくべきかを考える必要があります。次の4つの手法から、自社にとって適切なものを選びましょう。
- 経営資本・戦略策定型
- ベストプラクティス共有型
- 顧客知識共有型
- 専門知識型
では、一つずつ解説していきます。
手法(1)経営資本・戦略策定型
手法(1)経営資本・戦略策定型
経営資本・戦略策定型とは、組織における知識を多角的に分析して、経営に活用していく方法です。専用のシステムを使い、組織の内側と外側から分析することが多くなっています。
この手法のメリットは、自社や競合他社それぞれの事例を分析するため、結果に基づいた判断を行えることです。
業務におけるプロセスをすべて分析し、自社において必要な改善点を戦略的に策定します。また、業務プロセスを新たに構築したい場合にも活用できるでしょう。
手法(2)ベストプラクティス共有型
手法(2)ベストプラクティス共有型
ベストプラクティス共有型とは、社内で優秀な人材のナレッジを形式知に変換し、組織に共有する方法です。これにより、優秀な人材の思考や行動をデータベース化できるため、組織における社員全員のスキルアップが期待できます。
業務の属人化を防ぎ、優秀な人材を増やしていきたい場合や、新人教育に活用したい場合などに効果的でしょう。
手法(3)顧客知識共有型
手法(3)顧客知識共有型
顧客知識共有型とは、業務におけるノウハウのほか、業務のプロセスや顧客対応に関するナレッジについても形式知化を行っていく方法です。これにより、顧客トラブルの発生時などにおける迅速な対応が可能になるでしょう。
顧客を第一に優先する考え方であるため、より最適でスムーズな回答を提供したい、顧客満足度を高めたい、という場合に役立てられます。
手法(4)専門知識型
手法(4)専門知識型
専門知識型とは、組織内におけるナレッジをネットワークの活用によって形式知化する方法です。具体的には、組織内のためのFAQを作成するようなイメージです。
活用する場所としては、ヘルプデスクやシステム部門など、組織の内部・外部を問わず問い合わせの多い部署において生産性向上の効果が期待できます。
ナレッジマネジメントのコンサルは何をするのか
ここまでナレッジマネジメントの概要を説明してきましたが、ここからはそんなナレッジマネジメントをコンサルティング会社に依頼した場合の業務内容について紹介していきます。
コンサルティング会社がサポートできる代表的な業務は、次の通りです。
- 優れた知識や技術の組織全体への共有
- シニア人材を活用した若手への知識共有
- 知識のブラッシュアップと創造
それぞれ解説していきますので、「ナレッジマネジメントを導入したいが、システムを構築する時間的な余裕がない」「導入に関するノウハウを持っていない」という場合には、導入を検討してみると良いかも知れません。
6-1. 優れた知識や技術の組織全体への共有
6-1. 優れた知識や技術の組織全体への共有
組織内に優れた知識やスキルを持っている社員がいたとしても、共有できる形式知にすることが難しい場合があります。例えば、言語化が苦手な職人気質なタイプや、ナレッジを独占して自分の成績に繋げたいタイプの人材などです。
こういったハイパフォーマーの持つノウハウを組織内で共有するために、暗黙知を形式知に変換するサポートをコンサルティング会社に依頼できるのです。
6-2. シニア人材を活用した若手への知識共有
6-2. シニア人材を活用した若手への知識共有
長期間自社で業務に取り組んできたシニア人材は、優れた知識やスキルを持っているほか、経験則から豊富なノウハウを持っていることが多くあります。
これらの有用なノウハウを経験の少ない若手に継承していくことは、会社の長期的な存続に向けた第一歩となります。
また、人と人の繋がりが課題解決へと導いてくれることもあり、そのような面においてもシニア人材の暗黙知が有効です。社内における知識を後継者に伝えていくという目的においても、ナレッジコンサルを活用するメリットは大きいでしょう。
6-3. 知識のブラッシュアップと創造
6-3. 知識のブラッシュアップと創造
ナレッジマネジメントでは、既に社内の人材が持っている知識をブラッシュアップしてデータベース化することに加え、新たな知識を創造することが重要になります。
そのため、ただ知識をまとめるだけでなく、ナレッジを強化していくために『学び続けられる組織』の形成が欠かせません。
ナレッジマネジメントのコンサルティング会社からは、このような知識のブラッシュアップおよび創造に取り組んでいく基盤を作るためのサポートが受けられます。
新しいナレッジマネジメントの方法論「KCS」
新しいナレッジマネジメントの方法論「KCS」
ここまでナレッジマネジメントについて説明してきましたが、新しいナレッジマネジメントの方法論である『KCS』についてもご紹介しましょう。
KCSとは「Knowledge Center Service」の略で、米国の非営利団体であるConsortium for Service Innovationにより1992年から研究され,策定・管理されているものです。日本では2015年にHDI-Japanを介してその内容や方法論などが日本に知られ、それから徐々に注目を集めるようになっていきました。
KCSでは顧客からの問い合わせに対してオペレーターが保有する知識で回答するのではなく、顧客の問い合わせ内容を必ずFAQで検索して「回答が登録されているかどうか」を確認します。そして、問い合わせ内容が登録されている場合には、回答内容を確認して回答します。
このように、オペレーターが毎回FAQを検索し確認する目的としては下記のようなものがあります。
- 顧客からの問い合わせ内容がFAQに登録されているかを確認する
- オペレーターが覚えている知識が正しいか確認する
- 回答する内容に情報の抜け漏れがないか確認する
- 回答内容の情報に、新たに追加されたり修正されたりした情報がないかを確認する
- 回答内容に修正や追加した方が良い情報がないかを確認する
FAQに登録されていない問い合わせ内容があれば、オペレーターがFAQにすぐに「下書き」としてコンテンツを登録し、回答を作成する担当者がすぐに回答を作成してFAQを公開します。
このように、KCSでは文字通りナレッジを中心に置いてユーザーに対応していくことで満足度を高めていきます。
ナレッジマネジメントのコンサルティングならパーソルビジネスプロセスデザインへ
もし貴社でナレッジマネジメントを実施したいとお考えでしたら、ぜひパーソルビジネスプロセスデザインにご相談ください。
前述したナレッジマネジメント手法の『KCS』ですが、パーソルビジネスプロセスデザインではこのKCSをいち早く取り入れています。新人教育の時間を削減するなどの効果を出しているだけでなく、2018年10月には国内初の認定(KCSアワード)を取得するなど、国内におけるKCSの先進活用企業として業界をリードしています。
KCSについて改めて知りたいという方のために、『安定運用に効果的!「KCS」を徹底解説』というホワイトペーパーをご用意しています。このホワイトペーパーでは、「ナレッジ管理としてKCSを導入するための基本的なポイントを理解すること」を目的として、KCSの運用導線、実践のポイント、メリットをまとめています。
KCSに触れたことがない方でも、本書一冊でKCSの基本を押さえることが可能ですので、ナレッジマネジメントのコンサルティングに興味がある方は、ぜひご一読くださいませ。