コールセンターにおけるIVRとは何か?
コールセンターにおけるIVRとは何か?
IVR(Interactive Voice Response)とは、「自動音声応答装置」とも呼ばれる、コールセンター運営に欠かすことのできないシステムのひとつです。
現在、活用されているIVRは、コールセンターシステムの中枢ともいえる「CTIシステム」にオプションのひとつとして提供されているケースが多いでしょう。
1-1. IVRシステムの導入状況
1-1. IVRシステムの導入状況
では、そのIVRシステムの導入状況は具体的にどうなっているのでしょうか。
『コールセンター白書2022』によると、すでに導入されているソリューションについて聞いたアンケートでは、回答165件のうち63%のコールセンターが「IVRを導入している」と答えています。
さらに、「今後導入予定のITソリューション」を質問したアンケートでは、5.5%のコールセンターがIVRの導入を検討しており、前年の4.1%を上回る結果となりました。
※出典:月刊コールセンタージャパン編集部/『コールセンター白書2022』/株式会社リックテレコム/東京/2022.10.31/P86~87
IVRシステムがコールセンター業界で導入されるようになったのは1990年代といわれています。すでに定着したシステムにもかかわらず、今後の導入を前向きに検討しているコールセンターも増えていることからも、IVRがいかに重要なシステムなのかが分かるはずです。
1-2. IVRの種類
1-2. IVRの種類
続いてIVRの種類についてです。IVRは大別すると「オンプレミス型IVR」「クラウド型IVR」「ビジュアルIVR」の3種類があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。詳しく見ていきましょう。
(1)オンプレミス型IVR
オンプレミス型IVRは、自社内にCTIシステムを構築し、運用・保守などをすべて自社で行う仕組みです。
オンプレミス型IVRには、「システムの構築に時間が掛かる」「サーバーなどの機器を購入する必要があるため初期コストが割高になる」「システムの導入に時間が掛かる」といった課題があります。
とはいえ、すべてのシステムを自社で運用・保守できることから、「自社の状況に応じたカスタマイズが容易にできる」というメリットがあります。それ以外にも、サーバーなど設備投資の関係で初期費用が割高になりやすいものの、月額費が必要となる「ライセンス契約」を結ばなくて良いことから、「長期的に運用する際のランニングコストが少なくて済む」というメリットもあります。
(2)クラウド型IVR
クラウド型IVRは、サービス提供事業者が保有するクラウド上のサーバーを間借りする仕組みです。
クラウド型はオンプレミス型のように、自社でサーバーを購入する必要がありません。そのため、システム導入にかかる初期費用を抑えられるだけでなく、サーバーを設置するスペースの確保も不要です。また、システム導入までの期間が数週間程度と短いことから、「すぐにIVRを活用したい」という際に適しています。
一方で、サービス提供事業者のサーバーを間借りしているという関係上、運用・保守をすべて自社内でおこなうオンプレミス型と比べ、カスタマイズ性に乏しいのが欠点でしょう。
さらに、クラウド型IVRは月額制のライセンス契約が主流となっており、そのほとんどが「座席数×ライセンス数」という形態を取っています。このことから、長期運用する際に必要となるランニングコストが割高になりがちなのも難点です。
(3)ビジュアルIVR
通常のIVRが音声によってアナウンスを実施するのに対して、スマートフォンやパソコンの画面上に視覚的なメニューを表示させる仕組みなのがビジュアルIVRです。
一般的なIVRの場合、顧客は音声ガイダンスの流れに沿ってボタンを押す必要があります。しかし、「音声がうまく聞き取れない」「内容が煩雑でわかりにくい」などの理由から、目的の操作ができないケースも多く発生します。
その点ビジュアルIVRは、顧客が自分自身のタイミングで目的の操作を行えるため、一方的な音声によるアナウンスと比べて、より分かりやすく快適に案内を受けることができます。
ただし、スマートフォンやパソコンの操作に不慣れな顧客も多いため上手く機能しないケースがあるなど、初期費用・ランニングコストともにクラウド型IVRより高額になりやすいといった課題もあります。
1-3. IVRとVRUの相違点
1-3. IVRとVRUの相違点
IVRと混同されがちなものとしてVRU(Voice response unit)があります。VRUは「音声応答装置」のことであり、IVRと酷似しているものの厳密には違います。
IVRとVRUの違いを簡単に説明すると、以下のとおりです。
●IVR「自動音声応答装置」
顧客の問い合わせに応じて、適切な窓口・担当者へ自動で誘導するシステム
●VRU「音声応答装置」
顧客の情報を保管・管理し、運用していくためのシステム
まとめると、IVRは顧客を音声または視覚で誘導するもの、VRUは顧客情報の管理を行うもの、とそれぞれ区別することができます。
コールセンターにおけるIVRの仕組みとは
コールセンターにおけるIVRの仕組みとは
コールセンターにおけるIVRの基本的な仕組みは、顧客からの問い合わせに対してシステムが自動音声で案内を開始するというものです。
例を挙げると、コールセンターへ問い合わせした際に流れる「〇〇の場合は1を、〇〇の場合は2を……」といった自動音声はIVRによるものです。
顧客は音声ガイダンスの内容に従って電話機を操作することで、目的の窓口またはオペレーターと通話できるようになります。また、簡易的な問い合わせについては、オペレーターに繋ぐことなく自動音声が解決してくれるケースもあるでしょう。
さらに、顧客を各窓口・オペレーターへ誘導する以外にも、業務時間外であることを知らせる「時間外アナウンス」、折り返し対応の予約を受け付ける「折り返しアナウンス」など、コールセンターのさまざまな場面で活用されています。
なぜコールセンターにIVRを導入するのか
では、なぜコールセンターにIVRを導入するのでしょうか。コールセンターにIVRを導入する大きな理由として挙げられるのが、「業務効率の改善」です。
コールセンターには毎日のようにさまざまな問い合わせが舞い込みます。顧客の課題を迅速かつ適切に解消するためには、課題解決に最適な窓口または最適なオペレーターによる対応が必要不可欠です。
しかし、「どのような課題について問い合わせがくるのか」を事前に予想するのはとても困難です。そのため、これまでのコールセンターでは、顧客の課題を解決できる窓口や専門オペレーターではなく、知識に乏しい他の窓口の担当者が受電するケースも多くありました。
このような状態に陥ると、課題の解決に掛かる時間が超過してしまったり、別窓口やオペレーターへの転送が発生しやすくなって「たらい回し」と呼ばれてしまったり、クレームも増えてしまいます。
そういった理由から、事前に大まかな問い合わせ内容を把握できる仕組みであるIVRが注目されるようになっていったのです。
IVRを活用した適切な窓口やオペレーターへの誘導は、「応対時間の短縮」や「転送回数の減少」などに繋がり、結果として業務効率の改善に寄与しました。
業務効率の改善だけでなく、スムーズな対応による課題解決は顧客の感じるストレスを最小限に抑えられるため、顧客満足度向上の効果も期待できるのです。
IVRをコールセンターに導入するメリット
IVRをコールセンターに導入するメリット
ここまでも触れてきましたが、改めてIVRをコールセンターに導入するメリットにはどのようなものがあるでしょうか。具体的に5つを挙げて見ていきましょう。
メリット(1)応答率の改善と一次解決率の向上
メリット(1)応答率の改善と一次解決率の向上
IVRが入電時の一次対応を行ってくれるため、入電が集中する時間帯であっても応答率の低下を防ぐことができます。慢性的な応答率の低さが課題となっているコールセンターであれば、IVRの導入によって数値的な改善が見られるはずです。
ただし、対応できなかった入電については、折り返しの架電が必要となります。折り返し対応にはかなりの時間や労力が必要となりますので、効率的な運営を考えるのであれば、可能な限りすべての入電に対応できる体制づくりに努めていくことが重要です。
また、IVRが顧客の問い合わせ内容から適切な窓口やオペレーターへ繋げてくれるため、一度の対応で解決できる件数、つまり一次解決率の向上も期待できます。
メリット(2)オペレーターの業務負担を軽減
メリット(2)オペレーターの業務負担を軽減
これまでオペレーターが直接対応しなければならなかった問い合わせも、IVRの自動音声によって解決できるケースが増えていきます。
その他にも、公式サイトのFAQやチャットボットの利用を促すなど、オペレーターに掛かる業務負担を軽減させるのに効果的です。
メリット(3)人的リソースの効率化とコスト削減
メリット(3)人的リソースの効率化とコスト削減
コールセンターが抱える問題のひとつに“人員不足”があります。しかし、IVRを導入することにより、最低限の人的リソースで各窓口を効率的に運営することができます。
また、適切な人員での運営が可能となれば、そこで発生する人件費などのコスト削減にも繋がります。
問い合わせが多い時はオペレーターを、少ない時はIVRをメインにするといったように、入電状況に応じた臨機応変な対応ができるのも魅力のひとつでしょう。
メリット(4)24時間対応の実現
メリット(4)24時間対応の実現
IVRを活用することにより、24時間・365日の対応が可能になります。
前述したように、簡単な問い合わせや申し込みに関してはIVRが自動音声のみで完結してくれます。人による対応が難しい夜中や早朝でもコールセンターとしての活動が行えますので、顧客の取りこぼしによる機会損失を防ぐことができるでしょう。
メリット(5)OJTなど研修への活用
メリット(5)OJTなど研修への活用
IVRの活用法としてコールセンターでよく用いられているものに「スキルベースルーティング」があります。
スキルベースルーティングとは、オペレーターのスキルに応じて対応窓口の数や入電数を操作することをいいます。
例えば、入社したばかりの新人オペレーターは電話対応に慣れるところからはじめる必要があります。そのため、できるだけ簡単な問い合わせ対応からスタートするのが適切でしょう。
IVRを用いたスキルベースルーティングを活用することで、窓口数や入電数をしぼり、無理のない範囲から実務をはじめることができます。新人研修時のOJTなど、人材教育の面で大きな効果を発揮しているのです。
IVRをコールセンターに導入するデメリット
では、IVRをコールセンターに導入するデメリットはあるのでしょうか。具体的に2つを挙げて見ていきましょう。
デメリット(1)顧客にストレスを与える恐れがある
デメリット(1)顧客にストレスを与える恐れがある
IVRの導入は、顧客にストレスを与える恐れがあります。顧客のなかには、最初からオペレーターと会話したいと考えている方もいますし、何度もボタンを押すのが煩わしいと感じる方もいるでしょう。
IVRは便利である反面、このように顧客がストレスを感じる原因となる可能性があるのです。
さらに、長時間待たせてしまったり、IVRの質問内容が分かりづらかったりするなどの要素が重なってしまうと、いつの間にか大クレームに発展してしまう、という恐れもあるため注意が必要です。
デメリット(2)自動音声の内容が煩雑になりやすい
デメリット(2)自動音声の内容が煩雑になりやすい
1つ目にも近いですが、自動音声の選択肢が多い、質問内容が複雑すぎるなどの問題があるIVRだと、操作が煩雑になってしまい、顧客が途中で離脱する原因となります。
謎解きのように複雑な操作をしなければオペレーターと話せない状態は、顧客の課題解決を第一の目的とするコールセンターとして健全な運営ではありません。
IVRを導入する際には、できるだけ分かりやすく端的に内容をまとめることが重要になります。
IVRを導入する際の注意点
それでは最後に、IVRを導入する際の注意点を2つ挙げて解説していきましょう。
注意点(1)自社に適したIVRの種類を選ぶ
注意点(1)自社に適したIVRの種類を選ぶ
IVRには「オンプレミス型IVR」「クラウド型IVR」「ビジュアルIVR」の3種類があることはすでにご紹介しました。
これら3種類のIVRには、初期費用やランニングコストなどの“支出面”、保守点検・カスタマイズ性などの“運用面”、運用開始までの“期間面”にそれぞれ違いがあります。
ひとつ例をあげると、オンプレミス型IVRは自社でサーバーを購入しなければならないため、初期費用として数百万円規模のコストが必要です。一方でクラウド型IVRは、サービス提供事業者のサーバーを間借りする形式を取るため、初期費用が格段に抑えられます。しかし、ライセンスの継続課金が必要となるケースが多いことから、長期的にみればランニングコストによる支出が大きくなりがちです。
このようにIVRの種類によってメリット・デメリットのポイントは異なってきますので、自社の業務内容に適した形態の製品であるかを注意深く検討していく必要があります。
注意点(2)定期的に内容を見直す
注意点(2)定期的に内容を見直す
IVRは一度導入して終わりではなく、定期的に自動音声の内容を見直し、情報が新しい状態となっているかを確認しなければなりません。
「商品やサービスがリニューアルされた」「“お客様の声”として改善の要望があがった」など、IVRの内容を見直すべきタイミングは数多くあります。
音声の内容に不備がないか注意したうえで、顧客の利便性を第一とした運用が求められるのです。
コールセンターのアウトソーシングならパーソルビジネスプロセスデザインへ
IVRの導入について説明してきましたが、コールセンター業務は、商品知識はもちろんのこと、コミュニケーション力や問題解決などの幅広い能力が求められます。そのため、効率的なコールセンター運営のためにも、オペレーターの育成は必要不可欠といえるでしょう。
「そうはいっても、育成する時間もノウハウも無い」という場合には、アウトソーシングの活用も検討してみましょう。ベストな委託先に任せられれば、質の高いコールセンター業務を実施しながらも、自社のリソースをコア業務に集中させることが可能になります。
また、もしコールセンターのアウトソーシング先を具体的にお探しであれば、ぜひパーソルビジネスプロセスデザインにお任せ下さい。
パーソルビジネスプロセスデザインのコールセンターでは、日々の問い合わせ傾向から公開FAQを作成・公開し、ユーザーの自己解決率を上昇させることで顧客満足度の向上を実現しています。
さらに、パーソルグループならではの「人材ノウハウ」を通じて、豊富な研修をオペレーターに行い、高い応対品質を実現することが可能になっています。