ヘルプデスクとは
まずは、そもそも「ヘルプデスクとは何なのか」を説明しましょう。ヘルプデスクとは、IT関連の技術的な問い合わせに対応する業務をいい、大きく社外向けと社内向けに分類されます。
▼ヘルプデスクの分類
社外向けヘルプデスク | 顧客からの問い合わせ対応 例:自社製品の使い方の説明、製品故障時の緊急対応 |
社内向けヘルプデスク | 社員からの問い合わせ対応 例:社内システムの使い方の説明、システム障害発生時の緊急対応 |
テクノロジーや業務が複雑化している近年では『何でも屋』化している側面もあり、ヘルプデスクでも“クレーム対応”に追われるなど問い合わせ内容は多岐に渡っています。
そのため、限られた人的リソースだけで対応するのは難しくなっており、業務負荷を削減する方法を考えていかなければならないのが現状です。このような背景から、「ヘルプデスク業務をDX化したい」「ヘルプデスクへの問い合わせを減らしたい」と考える企業が増えてきているのです。
ヘルプデスクへの問い合わせにおける課題
一般的にヘルプデスク業務を担うオペレーターの離職率は高いことで知られていますが、その原因としてヘルプデスク業務に以下のような課題があることが挙げられます。
- 問い合わせ件数が多い
- 幅広い知識が求められる
- 問い合わせ対応の進捗状況が把握しにくい
- ヘルプデスク業務が属人化する
ここでは、これらの『ヘルプデスクの問い合わせにおける課題』について解説していきます。
課題(1)問い合わせ件数が多い
課題(1)問い合わせ件数が多い
近年、ヘルプデスクへの問い合わせ件数は増加傾向にあります。主な原因として、IT機器の普及は加速化する一方で、商品やサービスに関する情報提供が遅れていることや、ユーザーの悩みを解決するためのFAQの公開が追い付いていないことが挙げられます。
また、コロナ禍によってテレワークに移行したことで、業務に関する質問を上司や同僚に気軽に質問することがしにくくなりました。そういった背景もあり、ヘルプデスクへの問い合わせ件数が増えてしまっていると考えられます。
課題(2)幅広い知識が求められる
課題(2)幅広い知識が求められる
IT機器の普及やテクノロジーの進化によってヘルプデスクへの問い合わせの内容は多様化しており、オペレーターは幅広い知識を身につけなければならなくなりました。知識を身につけたとしても全ての問い合わせに対応するのは難しく、内容次第では他部署に対応をお願いする場合も出てきてしまいます。
さらに、難易度の高い質問になると適切な回答に導くまで時間が掛かってしまい、ユーザーを待たせてしまうために大きなプレッシャーを感じるオペレーターも少なくないでしょう。
課題(3)問い合わせ対応の進捗状況が把握しにくい
課題(3)問い合わせ対応の進捗状況が把握しにくい
テクノロジーの進化によって、ヘルプデスクの問い合わせチャネルも多様化してきました。電話やメール、Webサイト以外にも、各種コミュニケーションツールやSNSから問い合わせが入ってくる場合もあります。
また、特定のユーザーから複数のチャネルを使用して問い合わせが入る場合もあります。例えば、「SNS経由で問い合わせをしてきたけれども、既読が付くLINE経由で改めて問い合わせを頂く」といったケースです。このような場合、問い合わせの一元管理をして進捗状況を把握しておかなければ、対応の状況が分からずに混乱してしまう恐れもあります。
課題(4)業務が属人化する
課題(4)業務が属人化する
ヘルプデスク業務は、オペレーターの知識の差によって応対品質にバラつきが生じやすいものです。応対品質や問題を解決するまでの時間に差が出てしまうと、「スキルの高い担当者に相談したい」といった要望が発生してしまいます。
ですから、オペレーターによって顧客満足度が変わってしまうと「スキルの高いオペレーターに業務が集中する」というような問題が出てきてしまいかねません。しかし、各オペレーターがどのようなスキルを持っていて、どのように対応しているのかは“ブラックボックス化”しやすく、業務が属人化して平準化ができないという問題も生じやすいのです。
ヘルプデスクへの問い合わせを削減する方法
ここまでヘルプデスクへの問い合わせの課題について解説してきましたが、続いてオペレーターの負担を軽減するためにできることとして以下の項目を挙げてみます。
- FAQを公開する
- FAQのユーザビリティを見直す
- チャットボットを導入する
- 問い合わせ内容を一元管理する
- サポート範囲を明確にする
- 窓口を外部に委託してしまう
これらの「問い合わせを削減する方法」について、解説していきましょう。
方法(1)FAQを公開する
方法(1)FAQを公開する
FAQは「Frequently Asked Questions」の略ですが、「よくある質問」と呼ばれることが多いです。企業サイトやサービスサイトなどでFAQコンテンツを所持していない場合、FAQを作成して公開することによって、ヘルプデスクへの問い合わせ件数を減らせるでしょう。
昨今ではユーザーもFAQを探す動きをすることが多いため、ユーザーが知りたい情報にアクセスできるようにFAQを公開しておけば自己解決してもらいやすくなります。そのため、問い合わせ画面の目立つところに、FAQコンテンツにアクセスできるリンクを張るなどして自己解決を促すようにしましょう。
方法(2)FAQのユーザビリティを見直す
方法(2)FAQのユーザビリティを見直す
既にFAQを公開している場合は、FAQコンテンツのユーザビリティ、つまり使いやすさを見直してみましょう。FAQを公開していたとしても「知りたい情報がFAQのどこにあるのか分からない」といった理由でヘルプデスクに問い合わせてきてしまう人も多いためです。
「知りたい情報にアクセスしやすいFAQ」にアップデートしていくことで、自己解決率が上がり、ヘルプデスクへの問い合わせ件数を減らすことができます。FAQのユーザビリティを上げる施策として、例えば「検索ボックスを配置する」ことや「質問頻度の高い順に並べる」「最も多い質問は目立つようにする」などが挙げられます。
方法(3)チャットボットを導入する
方法(3)チャットボットを導入する
ヘルプデスクへの問い合わせに自動で回答できる『チャットボット』を導入すれば、問い合わせ件数を削減することができます。
チャットボットを活用する際には、”想定される質問内容”と”質問に対する回答”を事前に準備しておくことが必須です。そのため、同じ内容の質問が多い場合にはチャットボットで負担を減らすことができます。
その一方で、問い合わせ内容が幅広く多岐に渡る場合や、複雑な問い合わせが多い場合には有人のチャット対応がおすすめといえるでしょう。登録されていない質問や複雑な質問はチャットボットで回答を示すことができず、ユーザーの満足度を下げてしまう要因になるからです。
ヘルプデスク業務の負担を軽減するためにチャットボットを導入したいと考えている場合は、問い合わせ内容に応じて「チャットボット」と「有人チャット対応」のどちらが良いかを判断しましょう。
チャットボットと有人チャット対応について詳細が知りたい場合には、別途コラムをご用意していますので、こちらをご覧ください。
方法(4)問い合わせ管理ツールを導入する
方法(4)問い合わせ管理ツールを導入する
問い合わせ対応の進捗状況を把握するために、「問い合わせ管理ツール」を導入しましょう。問い合わせ管理ツールを導入すれば、様々なチャネルからの問い合わせを一元管理することができます。さらに、ツール上から問い合わせの回答を送ることができるため、各チャネルのアカウントにログインするといった操作の手間も省略することが可能です。
くわえて、「未対応」「対応中」「解決済み」といった問い合わせのステータス管理も容易にできるため、対応漏れや重複対応といったトラブルを回避することにもつながります。
方法(5)サポート範囲を明確にする
方法(5)サポート範囲を明確にする
対応範囲が幅広くなったヘルプデスクの場合には、サポート範囲を明確に定めて周知させるだけでもオペレーターの業務負担を軽減することができます。
ヘルプデスクで「対応できること」「対応できないこと」の範囲を明確に決め、明示したうえで周知しましょう。問い合わせをする際にサポート範囲が確認できるような状態になると、範囲外の問い合わせが減少することにつながります。
方法(6)窓口を外部に委託してしまう
方法(6)窓口を外部に委託してしまう
ここまでは内製で対応しているヘルプデスクの問い合わせを削減する方法でしたが、それぞれの対策をしてもリソース不足に陥ってしまう場合には、外部への委託を検討してみても良いかもしれません。
専門性の高い内容の問い合わせ対応は社内で行う必要があるかもしれませんが、問い合わせの多いものやマニュアルを見ながらでも回答できるような問い合わせであれば、アウトソーシング業者に任せることも可能です。
当然ながらコストはかかりますが、内製の担当者は自身のコア業務に専念することができますので、リターンとしては大きなものになるでしょう。費用対効果を考えたうえで検討してみても良いのではないでしょうか。
問い合わせを削減する「FAQ」作成のポイント
問い合わせを削減する「FAQ」作成のポイント
ここまで何度か書いてきたとおり、ヘルプデスクへの問い合わせ件数削減のカギを握るのは「FAQ」です。以下のような『FAQ作成のコツ』を押さえて作ることで、オペレーターの業務負担を軽減するFAQにすることができます。
- 理解しやすく表現する
- 優先順位の高いものから作成する
- FAQの検索性を重視する
- FAQを定期的に更新する
それぞれのポイントについて解説していきましょう。
ポイント(1)理解しやすく表現する
ポイント(1)理解しやすく表現する
FAQでの自己解決率を上げるためにも、ユーザーが理解しやすい表現を心がけましょう。例えば、「専門用語には必ず注釈を入れる」などを心がけると、相手の知識レベルに関係なく理解されやすくなります。
また、テキストだけで構成するのではなく画像を多用して分かりやすくしたり、必要に応じて動画を活用したりするなど、ユーザーが理解しやすい表現を考えましょう。そうしてFAQを作成していくことで、自己解決されやすくなります。
ポイント(2)優先順位の高いものから作成する
ポイント(2)優先順位の高いものから作成する
FAQコンテンツを作成する場合は、ユーザーから頻繁に寄せられる問い合わせから作成していきましょう。問い合わせの内容、種類や件数、対応時間などといったデータを可視化して、どの質問の回答を公開すればオペレーターの業務負担が軽減できそうかを考えていくのです。
業務負担の軽減効果が高く見込めそうなFAQから順に作成していくことで、オペレーターをコア業務に集中できるようにしていくことが重要なポイントです。
ポイント(3)検索性を重視する
ポイント(3)検索性を重視する
FAQを作成する際は『検索性』を重視することが重要です。FAQがあってもユーザーが欲しい情報にすぐにアクセスできなければ、「使い勝手が悪い」と判断されてFAQの利用頻度が下がってしまうからです。
ですから、自然文での検索機能やサジェスト機能が付いているFAQシステムを導入するなど、検索性を重視したうえでFAQを構築していきましょう。
ポイント(4)定期的にFAQを更新する
ポイント(4)定期的にFAQを更新する
FAQに掲載するコンテンツは、定期的に更新しましょう。掲載するFAQコンテンツのなかには古くなってしまった情報や、重複している情報があるかもしれません。
古くなった情報を提供していたために、その情報を参考にしても自己解決することができなければ、FAQの信用力が落ちてしまいます。ユーザーに自社製品や自社サービスのファンになってもらうためにも、ユーザーが求めている情報を提供し続けなければなりません。
そのためにも、FAQコンテンツは定期的にチェックして、最新の情報に更新していくようにしましょう。
ヘルプデスクの問い合わせを減らすならパーソルビジネスプロセスデザインへ
ヘルプデスクの問い合わせを減らすならパーソルビジネスプロセスデザインへ
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