チャットボットとは
そもそも『チャットボット(chatbot)』とは何なのかというと、「チャット」と「ボット」を組み合わせた言葉です。チャット(chat)は「会話」、ボット(bot)は「ロボット」を意味しますので、ユーザーとの会話のなかでロボットを用いて自動的に会話を行うということになります。
例えば、企業サイトのFAQページや社内ヘルプデスクサイト上で質問を書き込んだらリアルタイムで回答が得られた、という経験はないでしょうか。こうした、リアルタイムで双方向コミュニケーションを可能にしているプログラムが、総じて『チャットボット』と呼ばれています。
では、なぜ『チャットボット』が広がってきたかというと、現在の社会環境も影響しています。日本は少子高齢化が進行しており、総務省のデータによれば「生産年齢」の人口は1995年をピークに減少をたどっています。2025年には1995年よりも約1600万人が減少するといわれていますが、一方で65歳以上の非生産人口は約1800万人も増えてきているのです。
※参考:総務省 「我が国の人口推移」
「企業に対して電話での問い合わせを行う人のうち40%以上が高齢者である」というデータもありますので、問い合わせを行う人口の増加は今後さらに加速するといえます。しかし、問い合わせに対応するスタッフの人数は減少しているわけですから、企業にはますますの“生産性向上”が求められていくのです。
チャットボットのなかにはAIが搭載されているものもあり、過去のデータを参照して自動的に最適な応答をすることも可能です。AI搭載のチャットボットはコストが高い傾向にありますが、より高い顧客満足度の獲得が期待できるのです。
FAQシステムとは
一方、FAQシステムは、エンドユーザーからの「よくある質問」と解決策を大量に集めて整理されたものを指します。ちなみにFAQは「Frequently Asked Questions」の略であり、日本語で表すなら「よくある質問」になります。
システムの流れとしては、ユーザーが自分の疑問に近い質問を探し、記載された答えを見て疑問を解消していくのが基本的な使われ方でしょう。
たとえば、企業のお客様窓口やコールセンターなどに、顧客からよく寄せられるお問い合わせを記事化して、FAQページに公開したとします。すると、その後、別の顧客が同じような疑問を抱いたときに、そのFAQページ内を参照して答えにたどり着きます。そうすることで、カスタマーサポートセンターへお問い合わせをすることなく課題を解決できるのです。
同様にカスタマーサポート担当者もキーワードやジャンルを指定したり、一つずつFAQを見たりして、目的としているFAQを見つけていきます。そうして、的確な回答をサポートすることができるというわけです。
FAQの管理をする、つまりFAQページを作成する取り組みを繰り返すことで、顧客にとってはお問い合わせをする手間や回答を待つ時間の省略になりますので、顧客満足度の向上につながっていきます。
また、FAQページで解決できる課題が増えるほど、カスタマーサポートセンターへのお問い合わせの減少にもつながります。
FAQページを作成して顧客に活用してもらうことで、カスタマーサポート担当のスタッフは複雑なお問い合わせ対応など「本来注力すべき業務」に集中できるようになるのです。
チャットボットとFAQページの違い
チャットボットとFAQページでは、ここまで説明してきたように「ユーザーが疑問を解決するまでのプロセス」が異なりますが、そのほかにも次のような違いがあります。
- 回答スピード
- Q&Aの数
- 一度に表示できる情報量
- 取得可能なユーザー情報
では、一つずつ確認してみましょう。
違い(1)回答スピード
違い(1)回答スピード
チャットボットのほうがFAQページよりも回答スピードが速く、ユーザーがより効率的に疑問を解決しやすい傾向にあります。
チャットボットの回答スピードが早いのは、ユーザーと一対一で行う会話から「何を求めているのか」を予測し、適切な回答を表示しているからです。
FAQページの場合、ユーザー自身が『よくある質問』の中から目的のQ&Aを探さなければならず、効率的とはいえません。そのため、考えられる疑問をジャンル分けしてページ内にまとめておくなどの工夫が求められるでしょう。
違い(2)Q&Aの数
違い(2)Q&Aの数
Q&Aの数については、目安としてチャットボットであれば300件以下、FAQページであれば300件以上の取り扱いが向いています。
「チャットボットのほうがユーザー目線で回答を用意できるから、多くの質問を扱えるのでは?」と思うかもしれませんが、Q&Aの数が多すぎると、ユーザーが目的とする回答を表示させるまでに時間がかかってしまいます。
そのため、ユーザーは何度もチャットボットと会話しなければならず、効率的とはいえないのです。
違い(3)一度に表示できる情報量
違い(3)一度に表示できる情報量
チャットボットはWebページの画面の端に設置されることが多いため、回答を表示できる面積が小さくなります。一度に表示できる情報量が少なく、複雑な解説が必要な回答には適さない場合があるでしょう。
一方、FAQシステムは専用ページを設けてQ&Aを記載していくため、画面全体で詳細を説明することができます。チャットボットの場合は回答が文章のみとなるケースも多くありますが、FAQページであれば表やグラフ、写真などを活用した視覚的な表現が可能です。
違い(4)取得可能なユーザー情報
違い(4)取得可能なユーザー情報
チャットボットとFAQページでは、取得可能なユーザー情報が異なります。チャットボットはユーザーが複数回にわたって自身の疑問を入力するため、必然的に多くのユーザー情報を収集できるでしょう。
しかし、FAQページの場合は検索に使われたキーワードしか集められず、チャットボットほどの情報量を取得できないことが特徴です。とはいえ、「よく使われているキーワード」を把握できるため、サービスの品質向上には繋げられるでしょう。
FAQチャットボット導入にあたって気をつけたいポイント
FAQチャットボット導入にあたって気をつけたいポイント
FAQチャットボットとはよくある質問として登録された内容を、チャットボットで簡単に検索できるようになったツールのことです。
FAQに対応したチャットボットの導入にあたっては、次の5つのポイントを押さえておきましょう。
- 導入の目的
- 導入方法
- 予算
- 設置場所
- 制作期間
では、それぞれについて解説していきます。
ポイント(1)導入の目的
ポイント(1)導入の目的
チャットボットは「流行っているから入れてみる」などと無計画に導入しても意味がありません。なぜ自社に導入するのか、といった目的を明確にしましょう。
チャットボットを導入している多くの企業は、カスタマーサービスにおける業務効率化を目指して、人的なコストを削減するための手段としてチャットボットを活用しています。
自社への問い合わせを増やしたいのか、それとも減らしたいのか、といった方向性によってチャットボットの活用方法も異なってきますので、まずは『目的を明確に把握する』ことが欠かせません。
ポイント(2)導入方法
ポイント(2)導入方法
FAQチャットボットの導入方法は、「自社開発する」方法と「ツールを活用する」方法の2通りです。詳しくは後ほど解説しますが、自社開発の場合にはWeb制作におけるスキルが必要です。ただし、シンプルな機能であれば低コストで開発できるでしょう。
また、ツールを活用する場合は簡単に設置できる反面、適したサービスをしっかりと選ぶ必要があります。
ポイント(3)予算
ポイント(3)予算
FAQチャットボットの導入にあたって、どのくらいの予算をかけられるかを検討しましょう。
初期費用に加えて毎月のコストが発生するため、「自社が求めているサービス」とそれを実現するための「費用」が、当初の予算とマッチするのかを考える必要があります。
ツールによって費用は異なりますが、高ければ高いほど良いとは限りませんので、自社の目的に合ったサービスを見極めるようにしましょう。
ポイント(4)設置場所
ポイント(4)設置場所
FAQチャットボットの設置場所は企業によってさまざまであり、代表的な例として自社サイトやECサイトなどが挙げられます。
自社でどういったサービスを展開していきたいのか、カスタマーサービスを強化したいサービスは何なのかを考え、その目的に合った設置場所を決めていきましょう。
ポイント(5)制作期間
ポイント(5)制作期間
「自社開発」と「ツール活用」のそれぞれで必要な制作期間は異なりますが、一般的に自社開発のほうが制作期間は長くなる傾向にあります。それは、開発者のスキルを確認したり、必要に応じてスキルアップの期間を設けたりしなければならないからです。
いずれにしても、制作に必要な期間を算出して費用対効果の高い方法で導入していくと良いかもしれません。
FAQチャットボットの作り方と作成時のポイント
前述してきたように、FAQチャットボットを作る方法には「自社で開発する」方法と「ツールを使う」方法の2種類があります。ここでは、それぞれにおけるチャットボットの作り方を紹介します。
5-1. 自社でシステムを開発する
5-1. 自社でシステムを開発する
自社でチャットボットを開発する場合、次のような流れで行うのが一般的です。
- プラットフォームの決定
- 開発ツールの決定
- シナリオ・フローの作成
- プログラムの作成
- プログラムの確認
- テスト運用・課題改善
- 本番運用
まずは、チャットボットを導入したいプラットフォームを決めましょう。無料でアカウントを取得できるLINEやSlackなど、多くのユーザーが利用しているサービスを選ぶと、ユーザーに利用してもらいやすくなります。
次に開発ツールを選びます。特定のプラットフォームにおける開発に向いているAPIや、複数のプラットフォーム上で展開できるボット開発フレームワークを使った方法があります。
開発ツールが決定したら、FAQとなるシナリオやフローの作成を行い、それをもとにプログラミングを組んでいきましょう。シナリオを作成する際には、ユーザーが抱えている問題を想定して、「どのような質問を行うのか」「最適な回答は何なのか」を考える必要があります。
プログラムが完成したら、テスト運用から問題点を探して改善を行い、実装して本番運用に進む、というのが基本的な流れです。
自社開発はプログラムの知識が必要なうえ、制作期間が長くなる可能性が高いことが特徴でした。外部委託せずにコストカットできることが強みとはいえ、トラブルの発生時に多くのコストが必要になる場合があるため、特徴を理解したうえで制作方法を選ぶようにしましょう。
5-2. FAQの作成ツールを使う
5-2. FAQの作成ツールを使う
続いて「作成ツール」を活用してFAQチャットボットを作成する場合には、次のような手順で行っていきます。
- ツールの種類を選択
- シナリオの作成・設定
- 動作確認・本番運用
まずは、次の3つの中からツールの種類を選びましょう。
- プログラム型:ユーザーが入力・選択するキーワードに合った回答を表示する
- 機械学習型:ユーザーが入力したキーワードに対し、AIの学習機能で最適な回答を表示する
- 複合型:プログラム型と機械学習型を組み合わせたFAQツール
一般的に、プログラム型よりもAIが搭載された機械学習型のほうがコストは高い傾向にあります。どの種類にするか方向性が決められたら、事前に用意しておいた予想される質問と回答についてシナリオを作成して、ツールに設定していきます。
正しく動作していることが確認できたら、運用開始となります。最終確認をする際は、シナリオ制作に関わっていない第三者にも協力してもらい、回答の精度を体験してもらうと良いかもしれません。
FAQチャットボット導入後の注意点
チャットボットは導入したら終わりではなく、運用中も効果検証を繰り返し、改善していく必要があります。
主に見るべきポイントとしては、次の4つが挙げられます。
- ページのボタンや入力フォームが適切か
- 質問に対する選択肢は適切か
- チャットの途中で離脱された原因は何か
- 正しい回答がユーザーに共有できているか
ユーザーにとって良質なカスタマーサービスを提供し、顧客満足度を高めていくためにも、運用結果の分析を行って定期的にアップデートすることは欠かせません。
チャット対応の品質を上げるならパーソルビジネスプロセスデザインへ
チャットボットを導入したあとも、『応対品質の向上』は重要になります。導入しっぱなしにするのではなく、ぜひ応対品質を高めていきながら顧客満足度を向上させてください。
チャットボットの場合は無人での対応になりますが、オペレーターにチャット対応をしてもらう「有人対応」という手段もございます。
もしチャット有人対応の品質を上げたいとお考えなら、パーソルビジネスプロセスデザインへお任せください。パーソルビジネスプロセスデザインでは、有人チャット自動品質評価システム『AQchat』を取り扱っております。
『AQchat』は、オペレーターの有人チャット対応内容を自動で品質評価を行い、さまざまなモニタリングレポートを出力できる有人チャット自動品質評価システムです。HDI(ヘルプデスク協会)の『格付け調査』でも用いられるサポート基準をおさえた評価基準を採用していますので、統一された基準による自動品質評価が可能です。
オペレーターへの納得感あるフィードバックにより、応対品質を向上させることができますし、ひいては顧客満足度の向上にも寄与していきます。
サービスの詳細につきましては、下記「関連サービス」ページをご確認のうえ、お気軽にお問い合わせください。