コールセンターの立ち上げを行っていく手順は?
では早速、コールセンターの立ち上げ手順を見ていきましょう。コールセンターを立ち上げるステップは、以下の5段階で構成されます。
- コールセンターを運営する目的の設定
- 現状の課題を把握
- 各種プロセスの設計
- 業務に必要なシステムの導入
- 人材の雇用と育成
それぞれ詳しく解説していきます。
STEP(1)コールセンターを運営する目的の設定
STEP(1)コールセンターを運営する目的の設定
まずは、「なぜコールセンターを立ち上げるのか」という目的や、コールセンターとしてのゴール(KGI)を設定していきます。
その理由として、目的が不明瞭な状態で運営を行うと、問題が発生した際にどのように改善していくべきかの道筋が立てられなくなるからです。
コールセンターの立ち上げ目的は企業によってさまざまです。例を挙げると、「売上や利益への貢献」「顧客満足度の向上」「VOC(お客様の声)の収集」などが考えられます。
自社の目的やゴールを明確化したうえで、それらを達成するために必要な準備を行いましょう。
STEP(2)現状の課題を把握
STEP(2)現状の課題を把握
コールセンターの目的やゴールを決めたら、次にやるべきは現状の課題把握です。
もともとコールセンターを運営しているのであれば、そちらのデータを参考にして課題をあぶり出すこともできます。
しかし、「コールセンターの運営自体が初めて」という場合には、最初に決めた目的やゴールを達成するうえで課題となりそうな項目を考えておくようにしましょう。
仮にコールセンターを設置していなくとも、企業には数多くの問い合わせがくるはずです。そういった問い合わせを参考に、自社の課題を明確化しておくのも良い方法といえます。
STEP(3)各種プロセスの設計
STEP(3)各種プロセスの設計
目指すべき目標やゴールを決め、現状の課題が把握できたら、次はコールセンターを運営するうえで必要な各種プロセスの設計に移ります。
考えるべき内容は多岐にわたりますが、以下の(1)から(5)の5点を重点的に設計していきます。
①業務プロセス
自社の目的やゴールを達成するために日々行っていく「業務の流れ」を考えます。業務プロセスを設計する際は、業務フローとしてできるだけわかりやすくするのがポイントです。
そうすることで、実際に顧客対応を行うオペレーターも安心して業務に臨むことができます。
➁マネジメント
業務プロセスを設計したら、次はそれらをマネジメントする方法を考える必要があります。日々の業務が適切に行われているか確認するため、各種KPIを設定しましょう。
企業によって設定するKPIの項目は異なってきます。そのため、対応件数や稼働率などの基礎的な項目以外は運営するなかで増やしていくのが良いでしょう。
③管理体制
業務プロセスやそれに対するマネジメント設計ができたら、次はどのような体制で管理していくかを定めます。具体的には、オペレーターや管理職の人数、管理職が行う業務の細かい内容などを決めていきます。
コールセンターで取り扱う商品・サービス、またはその規模によって、必要となる人員の数や業務内容が異なってくるため、自社の状況を踏まえたうえで決めなければなりません。
④システム
次に、日々の業務を円滑に進めるうえで必要なシステムを検討します。
コールセンターシステムには数多くの種類があり、ベンダーによっても機能に差があるため、自社の業務内容にあったシステムでなければ、業務効率の低下を引き起こす可能性があります。
現在ではカスタマイズ性に優れたシステムも多くありますので、比較検討を重ねたうえで自社の業務内容にあったものを選びましょう。
⑤人材
人材確保の方法や育成についても、方針を決めていきます。
コールセンターを長期的に運営していくためには、人材の確保・育成が必要不可欠です。そのため、「人材が不足している」「育成ができていない」といった状態に陥らないための体制づくりが求められます。
STEP(4)業務に必要なシステムの導入
STEP(4)業務に必要なシステムの導入
各種プロセスの設計が完了したら、コールセンターに必要なシステムを導入します。
コールセンターで必要となるシステムは、CTIやCRMなどの業務補助を行うものだけでなく、電話機などの備品も含まれます。
「必要な数の発注ができているか」「セキュリティ面に問題はないか」などを確認したうえで導入を進めましょう。
STEP(5)人材の雇用と育成
STEP(5)人材の雇用と育成
プロセス設計の際に定めた計画に沿って、オペレーターや管理者の雇用・教育を行います。業務研修の内容は事前にプロセス段階で考えたものを実施します。
座学だけでなくトークスクリプトなどを活用したOJTなども積極的に盛り込み、より実践的な研修内容にしていきましょう。この際、対話だけでなくシステム入力の練習も必要である点を忘れないようにするべきです。
コールセンターを立ち上げる際に掛かる費用は?
コールセンターを立ち上げる際に掛かる費用は、センターの規模や導入するシステムの種類によって異なります。初期に必要となるコストとして挙げられる項目は、以下の3つです。
- システムの初期導入費
- 採用費を含む人件費
- 維持管理費
それぞれ具体的に見ていきましょう。
(1)システムの初期導入費
(1)システムの初期導入費
コールセンターシステムにはさまざまなものがあり、そのなかでも立ち上げ時に導入が必須となってくるCTIシステムには、「オンプレミス型」と「クラウド型」という2つの種類が存在します。
●オンプレミス型
オンプレミス型のコールセンターシステムは、自社でサーバーや周辺機器を購入し、さらに運営・保守などのすべてを行います。コールセンターの規模によって必要とされるサーバーの性能が異なってくるため一概にはいえませんが、おおよそ数十万円~数百万円の初期費用が発生します。
後述するクラウド型のように月額制でライセンス利用料を支払わなくても良いため、中長期的に運営をするのであれば、ランニングコストを抑えられるというメリットがあります。
●クラウド型
クラウド型のコールセンターシステムは、サービス提供事業者が運営・保守しているクラウド上のサーバーを利用します。オンプレミス型との違いとして、サーバーなどの高額な周辺機器を自社で購入する必要がないため、システム導入にかかる初期費用が抑えられます。
しかし、クラウド型のコールセンターシステムは、利用にあたって専用のライセンスが必要です。ほとんどの場合、座席数分のライセンスが必要となるため、コールセンターの規模によっては、月々に発生する利用料が高くなる恐れがあります。そのため、ランニングコストを少しでも抑えられるよう、席数や追加オプションの有無などを慎重に検討したほうが良いでしょう。
(2)採用費を含む人件費
(2)採用費を含む人件費
コールセンターを運営するためには、オペレーターや管理者などの人材を採用・育成しなければなりません。
『コールセンター白書2022』によると、「採用時の時給額」を聞いたアンケートでは、平均値が1,335円となっています。
※出典:月刊コールセンタージャパン編集部/『コールセンター白書2022』/株式会社リックテレコム/東京/2022.10.31/P21
つまり、オペレーターを一人、フルタイムで雇用する場合は1,335円×8時間で10,680円になります。ここに交通費などの手当てや残業代などが追加で必要となるため、より多くの費用が発生すると考えて良いでしょう。
また、人材募集の情報を求人誌に掲載する場合、その内容によって数万円~百万円前後が掛かってきます。
オペレーターのスキルや正社員・契約者などの雇用形態によって賃金も変化しますので、コールセンターの規模を考慮したうえで、立ち上げ時の人員数を決めていくことが重要です。
(3)維持管理費
(3)維持管理費
コールセンターを立ち上げるうえで、維持管理費がどのくらい掛かるのか計算しておくことも重要です。
維持管理費には、オフィスの賃料・コールセンターシステムの使用料・システムのメンテナンス料・オフィス用品代・光熱費などがあります。
オフィスの賃料やコールセンターシステムの使用料などは、そこまで大きな変化が発生しづらい項目です。しかし、ほかの諸費用については月ごとまたは年単位で変動することも珍しくありません。
そのため、事前に維持管理費を想定しておき、その範囲内でやりくりする方法を考える必要があるでしょう。
コールセンターを立ち上げる際のポイント
コールセンターを立ち上げる際のポイント
次に、コールセンターを立ち上げる際に重要となるポイントを2つ挙げて解説します。
ポイント(1)予算に応じた規模の決定
ポイント(1)予算に応じた規模の決定
自社でコールセンターを立ち上げる際は、予算に応じた規模になるようにします。
前述したように、コールセンターの立ち上げにはさまざまな費用が掛かります。特にシステム関連はオプションによって次々にカスタマイズできてしまうため、「業務に必要のないオプションまでつけてしまった」というケースに陥りがちです。
コールセンターは大規模にすれば良いのではなく、たとえ小規模であっても、十分なスキルを持ったオペレーターによる顧客対応を実現できれば良いのです。
規模はあとからいくらでも拡大できるため、立ち上げ時は予算オーバーにならない範囲でスタートするようにしましょう。
ポイント(2)自社の業務に必要なシステムを導入する
ポイント(2)自社の業務に必要なシステムを導入する
コールセンターを運営するためには、コールセンターシステムの導入が必要不可欠です。
電話機とパソコンを連携させる『CTI』、自動音声での顧客対応が可能となる『IVR』、入電をオペレーターに自動分配する『ACD』など、その種類もさまざまです。
コールセンターシステムを取り扱っているベンダーと相談しながら、自社の業務に必要なものを選別して導入していくようにしましょう。
コールセンターを自社で立ち上げるメリット
コールセンターを自社で立ち上げるメリット
続いては、コールセンターを自社で立ち上げるメリットを3つ挙げて解説していきましょう。
メリット(1)運営のノウハウやナレッジが自社に蓄積される
メリット(1)運営のノウハウやナレッジが自社に蓄積される
自社でコールセンターを立ち上げることで、運営のノウハウやマニュアルなどのナレッジを蓄積することができます。
集まったデータをもとに業務改善を実施する際もスピーディーに対応できるため、問題解決にかかる期間が短くて済むことになります。
アウトソーシング企業に委託した場合、運営データは共有されますが、各種ノウハウやナレッジは共有されにくいものです。そのため、「より詳細な運営手法を知ることができる」という意味では大きなメリットだといえるでしょう。
メリット(2)社内での情報共有が迅速に行える
メリット(2)社内での情報共有が迅速に行える
コールセンターを自社で運営することで、顧客から寄せられた声を迅速に社内で共有できます。
VOCやコールリーズンといった「顧客からの声」は、新しい商材を検討する、または既存商品・サービスを改善するうえで重要なヒントになるのです。
メリット(3)スピード感のある顧客対応ができる
メリット(3)スピード感のある顧客対応ができる
コールセンター業務の全工程を自社で担っていれば、クレームなどのイレギュラー対応が必要となった際もスピード感を持って顧客対応ができます。
受託して顧客対応を行っているコールセンターの場合、イレギュラー案件が発生すると、その対応方法をクライアントにエスカレーションして相談するのが一般的です。しかしこのやり方だと、顧客への回答までに数日掛かることも多く、課題解決までに時間を要します。
自社運営の場合であれば、すべての決定権を自社が持っているため、顧客を待たせることなくスピード感のある対応が実現できます。迅速な対応は顧客満足度の向上にもつながることから、大きなメリットのひとつだといえるでしょう。
コールセンターを自社で立ち上げるデメリット
コールセンターを自社で立ち上げるデメリット
コールセンターを自社で立ち上げるのは、メリットばかりではありません。続いては、コールセンターを自社で立ち上げるデメリットを3つ挙げて解説していきましょう。
デメリット(1)各種コストが高くなる
デメリット(1)各種コストが高くなる
コールセンターを自社で立ち上げようとすると、先ほども取り上げたシステムの初期導入費・採用費を含む人件費・維持管理費など、さまざまなコストが掛かります。
運営するコールセンターの規模にもよりますが、特にシステムの導入費と人件費については、何もない状態からすべて揃えるとなると数百万円規模の莫大な金額となってしまうものです。
できるだけコストを抑えたいということであれば、業務の一部または全部をアウトソーサーに依頼するのもひとつの方法でしょう。
デメリット(2)応対品質にばらつきが出る
デメリット(2)応対品質にばらつきが出る
コールセンターを立ち上げたばかりの頃は、自社に運営のノウハウやナレッジがないため、応対品質にばらつきが発生しやすくなります。
応対品質のばらつきは顧客満足度を低下させる要因のひとつです。また、顧客満足度は企業イメージに直結することから、コールセンターの対応次第では、顧客が競合他社に流れてしまう恐れもあります。
デメリット(3)繁忙期・閑散期の対応が困難
デメリット(3)繁忙期・閑散期の対応が困難
コールセンターを自社運営していると、繁忙期や閑散期の対応が困難になるという問題点もあります。
コールセンターを自社で運営するとなると、対応するオペレーターを固定して配置する必要がありますが、「繫忙期には人手が足りなくなる」「閑散期には人手が多すぎる」など、人員のバランスを取るのが難しくなります。
特に閑散期は、入電が少ないにも関わらずオペレーターが多い状態となってしまいますので、人件費などのコストが余計に発生してしまうという大きなデメリットがあります。
コールセンターを立ち上げる際の注意点
コールセンターを立ち上げる際の注意点
コールセンターを立ち上げるメリットとデメリットを見てきましたが、いざコールセンターを立ち上げる際には、以下の4つの点に注意が必要です。
・初期費用などのコスト
・通信インフラの充実度
・品質を維持・管理できるか
・人材の確保および育成
それぞれ詳しく解説していきましょう。
注意点(1)初期費用などのコスト
注意点(1)初期費用などのコスト
前述したように、コールセンターの立ち上げには、システムの初期導入費・人件費・維持管理費など、さまざまなコストが必要となります。
そのため、立ち上げる予定の規模に対してコストが掛かりすぎていないかを注意しなければなりません。
予定より多くのコストが発生するようであれば、「規模を縮小する」「導入予定のシステムなどを再考する」「アウトソーサーに依頼する」など、コールセンターを立ち上げる目的と予算に則した計画を立てていくことが重要です。
中長期にわたって運営を続ける予定がある場合には、より運営に掛かるコストを計画的にコントロールすることが求められるでしょう。
注意点(2)通信インフラの充実度
注意点(2)通信インフラの充実度
電話やインターネットを活用して顧客対応を行うコールセンターでは、通信インフラの充実度が業務を遂行するうえで非常に重要です。
例えば、顧客から公式サイトに記載されている内容について問い合わせが入ったとします。その際、通信インフラが充実していないとサイトにアクセスするまでに時間が掛かってしまうため、保留時間が長くなります。
保留時間の超過は顧客にストレスを与える要因となりますので、顧客満足度の観点からみても良い対応とはいえません。
ネットだけでなく電話回線についても「入電が集中してつながらない」という状況にならないよう、速度や容量に余裕を持たせた通信インフラの整備が必要になります。
注意点(3)品質を維持・管理できるか
注意点(3)品質を維持・管理できるか
コールセンターを立ち上げる際は、品質を維持・管理できるかについても注意が必要です。
前半でも取りあげた『コールセンター白書2022』によると、「コールセンターの設立目的」について聞いたアンケートでは、83.4%(回答数n=205複数回答あり)が「顧客満足度の向上」と回答しています。
顧客満足度を向上させるためには、高品質なサービスを提供しなければなりません。そのためにも、品質が下がらないよう維持・管理していくことが求められます。
品質の維持・管理には、コールセンターシステムの活用やスキルを持った人材の確保が必要不可欠です。どのようなシステムや人材が自社に適しているのか、事前に考えておきましょう。
注意点(4)人材の確保および育成
注意点(4)人材の確保および育成
コールセンターを新規で立ち上げる場合、オペレーターや管理者などの人材を確保・育成する必要があります。
しかし、コールセンターの運営ノウハウがまったくない状態だと、人材の育成どころか確保すらできないという状況が発生しかねません。
そのため、「コールセンターの立ち上げに参画した経験のある人材を雇用する」「一部または全部の業務をアウトソーサーに委託する」など、人材の確保および育成ができる環境を整えていく必要があります。
コールセンターはオペレーターや管理者などの人員を大量に配置しなければ業務が成り立ちません。どうしても人材の確保が難しいという場合は、「コールセンターでの業務経験がある」という人材を紹介してくれる派遣会社などを活用しても良いでしょう。
コールセンターのアウトソーシングならパーソルビジネスプロセスデザインへ
コールセンター立ち上げのメリットやデメリット、注意点などを解説してきました。
前述した通り、コールセンターの立ち上げをすべて自社で進めていくのが難しい場合には、アウトソーシングの活用も検討してみましょう。ベストな委託先に任せられれば、質の高いコールセンター業務を実施しながらも、自社のリソースをコア業務に集中させることが可能になります。
また、もし既にコールセンターのアウトソーシング先をお探しであれば、ぜひパーソルビジネスプロセスデザインにお任せ下さい。パーソルビジネスプロセスデザインのコールセンターでは、日々の問い合わせ傾向から公開FAQを作成・公開し、ユーザーの自己解決率を上昇させることで顧客満足度の向上を実現しています。
さらに、パーソルグループならではの「人材ノウハウ」を通じて、豊富な研修をオペレーターに行い、高い応対品質を実現することが可能になっています。