KPIとKGIは何が違う?
KPIの解説に入る前に、KPIとセットでよく耳にする言葉として、『KGI』があります。
本項ではまず、KPIとKGIの関連性、違いなどについて解説していきます。
KGIとは
KPIとセットでよく耳にするKGIは、「Key Goal Indicator:重要目標達成指標」の略称です。KPIは、日々の運営が適切であるかを測る指標であることに対し、KGIは「最終ゴール」を指します。つまり、KPIは「過程」であり、KGIは「ゴール」なのです。
ひとつ例を挙げてみましょう。
例)自社センターで下記のミッションを掲げている
「リピートしてくれる顧客を増やしたい」
- KGI……顧客のリピート率を10%上げる
- KPI……半期後までに一次解決率を平均5%上げる
(ユーザーの利便性を向上させて定着を図る)
この構造を見てわかるように、KPIはあくまで“過程”であり、最終目標にはなりません。これがKGIとの違いになります。
KGI→KPIへとブレイクダウンしていく
KPIを測定する最大の目的は、KGIを達成することにあります。
前述した通り、そもそもKPIはKGIを達成するための「過程」ですので、KPIとKGIが関連づけられていなければ役割を果たすことができません。
ですから、KPIを設定するときは、
- センターを設置した目的は何なのか
- センター全体のゴールは何なのか
を踏まえてKGIを設定し、そこから逆算してKPIを決めていきましょう。
コールセンターの代表的なKPI指標とは?
KPIとは、目標達成までの過程をモニタリングする指標のことですから、当然ながらコールセンター以外にも広く一般に使われています。ただ、本項では「コールセンターにおけるKPI」に絞って解説をしていきます。
コールセンターにおけるKPIは、「効率よく運営ができているか」「業務フローにボトルネックが生じていないか」など、センター全体のミッション達成のためにコールログから数値指標を取得していきます。
ではKPIとして設定すべき代表的な数値指標を、4つに分類して解説していきましょう。
KPIの種類は大きく4つに分類できる
コールセンターのKPIは、大きく「品質」「効率」「売上」「人材」の4つに分けることができます。
KPIと聞くと、「品質」に関する数値がイメージされがちですが、売上や人材に関する指標もあわせて測定することが重要です。
※本記事では問い合わせチャネルを「電話」で定義しているため、電話以外のチャネルを活用している場合は、そちらに置き換えてご覧ください。
「品質」に関する指標
「品質」に関するKPIは、以下のような指標を測定します。
応答率 | 入電数/応答数 架かってきた電話のうち、応答できた電話率 |
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放棄呼 | 入電数/放棄数 架かってきた電話のうち、応答できずに電話が終了した率 |
一次解決率 | 最初に問い合わせを受けた電話で解決ができた比率 |
サービスレベル(SL) | 架かってきた電話のうち、規定時間内に応答できた率 20秒以内に90%応答できた場合、90/20と表現される |
ミス率 | 全処理件数に対して、ミスをした比率 |
エスカレーション率 | オペレーターだけでは問い合わせを解決できず、SVや担当部署にエスカレーションした比率 |
ミステリーコール調査結果 | 覆面調査(ミステリーコール)を行い、オペレーター間もしくは競合他社と比較した結果 |
モニタリングスコア | オペレーターの応対品質を測るモニタリング項目に対して評価した結果 |
NPS (Net Promoter Score) | 顧客の満足度合いを測る指標 Ex.あなたはこの窓口で受けた応対を、友人や同僚に勧める可能性はどれくらいありますか? |
「効率」に関する指標
「効率」に関するKPIは、以下のような指標を測定します。
平均通話時間(ATT) | Average Talk Time 応対を開始してから終了するまでの平均時間(保留時間は除く) |
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平均後処理時間(ACW) | Average After Call Work 応対が終了し、その後のシステム入力等の処理に要した時間の平均 |
平均処理時間 (AHT) | Average Handling Time 応対開始から後処理までの時間の合計 |
平均応答速度 (ASA) | Average Speed of Answer 電話が架かってきてから応答するまでの平均時間 |
CPH | Call Per Hour オペレーター1人が1時間あたりに対応したコール数 |
「売上」に関する指標
「売上」に関するKPIは、以下のような指標を測定します。
成約率 | セールス関連のアウトバウンド(架電)において、入会や商品の申し込みに成功した比率 |
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解約阻止率 | サブスクリプションサービス等の継続サービスにおいて、解約の申し出を阻止できた比率 |
アップセル率 /クロスセル率 | 申し込みを受けた、利用を継続しているサービス・商品に加えてアップセルやクロスセルに成功した比率 |
「人材」に関する指標
「人材」に関するKPIは、以下のような指標を測定します。
稼働率 | (通話時間+後処理時間+その他時間)/ 実働時間 研修等を除く、顧客の対応にあたる時間 |
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退職率 | 退職者数/在籍者数 在籍するオペレーター数に対する退職者数の比率 |
欠勤率 | 予定していたシフト配置に対する欠勤の比率 |
占有率 | (通話+保留+後処理)/(通話+保留+後処理+待機) 個客の対応にあたる時間のうち、通話+保留+後処理をしていた時間の割合 |
各数値を取得するには、ツールの導入が効果的
KPIの数値指標は、センターの管理者によって目視で確認される場合が多いでしょう。しかし、全オペレーターが「センターのミッション達成」という共通目標に向かっていくためには、誰もがいつでも最新の数値を取得できることが理想といえます。
そのような環境をつくるためには、人の力だけでは限界がありますのでツールの導入が効果的です。本項では、ツールを活用した各数値指標の取り方について、例を挙げながらご紹介していきます。
「品質」に関するKPIは日々の応対記録から取得し、難しい場合には外注する
「品質」にかかわる数値指標の一部は、日々の応対記録やメールから取得することができますが、通常の運営を行っていては取得が難しいものがあります。
例えば、顧客の満足度合いを測る指標の「NPS」は、『顧客満足度調査』などを行わなければ数値を取ることは難しいでしょう。日々の問い合わせ対応に加えて、窓口で満足度調査を行うことは大きな負担であり、現実的な調査方法とはいえません。
もし自社で測定することが難しい場合には、調査専門のアウトソーシングベンダーを活用するなどして、正しい数値を取得することが望ましいでしょう。
「効率」に関するKPIはメールやテレフォニーシステムから取得する
「効率」に関するKPI指標は、「品質」のKPI指標と同じく、日々の応対記録やメール、テレフォニーシステムから取得することができます。
効率関連の指標は「日によってばらつきが生じる」ことを認識しなければなりません。
例えば、テレビCM等メディアの露出があったときには、架かってくる電話の数も増加しますので一時的に処理時間が増えるケースがあります。
そのため、特定の期間を切り取るのではなく、全体を考慮して判断することができるように、常に数値が取得できるような環境であることが望ましいでしょう。
「売上」に関するKPIは販売管理システムから取得する
「売上」に関するKPI指標は、販売管理システムから数値を取得することができます。
売上関連の指標は必ずしも毎日取得する必要はありませんが、アウトバウンド業務を行うコールセンターは売上をミッションに掲げることが多いため、欠かすことのできない項目といえます。隔週もしくは毎月など、定期的に数値を取得することを意識しましょう。
「人材」に関するKPIはWFMから取得する
「人材」に関するKPI指標はWFM(Work Force Management)システムから数値を取得することができます。
コールセンターにおいて、シフト調整や離職など「人材にまつわる悩み」は大きなものでしょう。また、季節要因によっても業務量に大きな変動が生じることも多々あるものです。
WFMシステムから取得したデータを活用することで、人材や業務量にまつわる悩みは解消できる場合があります。日々の数値指標から「効率的な人員配置」を導き出して、実現できる範囲のKPIを設定しましょう。
取得した数値を活用するには
ここまでKPI指標の取得方法について解説してきましたが、計測したKPI指標は「日々の運営を改善するための重要なデータ」になりますので、積極的に活用しましょう。
ただし、KPIの指標は集めるだけでは改善へとつながりません。
各指標を集めたら、KPI同士のつながりを確認するなど内容を整理し、全体を把握することで改善施策の立案へとつながっていくものです。本項では、その「KPI同士のつながり」と「注意点」について解説していきます。
KPI同士のつながりを意識する
KPIの各指標は、一見独立しあった数値に見えますが、実は関連性があるものも多くあります。『応答率』を例に、指標同士のつながりを見てみましょう。
- 応答率を上げるためには、応答数を増やす必要がある
- 応答数を増やすためには、処理時間を短くする必要がある(稼働人数を変更しない場合)
- 処理時間を短くするためには、「通話時間」「保留時間」「後処理時間」を短くして、1件あたりの対応時間を短くする必要がある
このように、各指標は関連して改善することが可能です。
数値の改善に着手するときは、ただ悪い数値だけに目を向けて改善しようとするのではなく、どこの指標がボトルネックになっているのかを見極めるようにしましょう。
コントロールできない指標もある
1つ注意点として、KPIの各指標のなかには、「日々の運営ではコントロールができない指標」もあります。
KPIの数値が前回の測定時より悪化している場合には、どうにかして改善しようと考えてしまいがちです。ただ、コールセンター側では数値の改善が難しい指標があることも認識しておきましょう。
コールセンター側では改善が難しい代表的な例として、「入電数」や「放棄時間」が挙げられます。先ほども説明したように、テレビCMなどの外部要因によって入電数が同時間帯に集中したり、放棄時間が長めになってしまったりすることは起こりえます。
このような事象をコールセンター側では改善することは困難です。あくまで突発的な事象として記録するだけにとどめておき、「外部要因が無いのに同様の事象が続いてしまった」という場合に改善に着手するようにしましょう。
また、”改善することは可能だが、必ずしも数値を改善することが良いとはいえない指標”として『通話時間』が挙げられます。通話時間を無理やりにでも短くすることは可能ですが、あまりに不自然に短くすると顧客からの不信感につながりかねません。
このような場合には、通話時間を短くしようとするのではなく、「適切な通話時間はどれくらいなのか」という基準を決めて定めておきましょう。
トレードオフとなるKPIを理解する
もう1つ注意点として、各KPIのつながりの中にトレードオフの関係性となる指標があることを理解しておきましょう。
KPIは全体的に高い水準を保っていることが望ましいですが、両立しえない指標もあるのです。こちらも「応答率」を例に見てみましょう。
- 応答率を上げるために、応答数を増やす必要がある
- 応答数を増やすためにオペレーターを増員し、応答数は増加したがコストも上昇した
- 応答数を増やすために後処理の上限時間を定め、応答数は増加したがミスも増えた
このように、1つの数値を改善しようとすると、どこかの数値が悪化してしまいます。このようなトレードオフの関係性である指標は、どちらも高い数値を維持するといったことはありえません。
こういった場合は、どちらか一方を集中的に改善するのではなく、バランスを見ながら目標数値を設定するようにしましょう。
KPIの見直し・改善はパーソルビジネスプロセスデザインへ
コールセンターにおけるKPIについて解説してきましたが、ご覧いただいたようにKPIはセンターのミッションを達成するために欠かせない重要な項目です。まずはKGIを設定したうえで、測定すべきKPIを設定し、利益向上を目指していきましょう。
KPI数値の改善を行いたい場合には、ぜひパーソルビジネスプロセスデザインをご検討ください。
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