コールリーズンとは何か
そもそもコールリーズンとは、前述した通り「顧客がコールセンターに問い合わせしてきた理由」に該当する部分です。
例を挙げると、「料金の未払いがないか確認したい」「掃除機が動かなくなった」「通販で購入した靴のサイズを交換したい」など、その種類は多岐にわたります。
上記のように一般的な問い合わせの他にも、「注文した商品が間違っていた」「案内された内容が違っている」「購入した商品が壊れていた」などの、いわゆる“イレギュラー対応”が必要なものもコールリーズンに含まれます。
1-1. コールリーズン分析とは?
1-1. コールリーズン分析とは?
「コールリーズン分析」は、コールリーズンをカテゴリーごとに分け、それぞれの種類や問い合わせ件数を把握するために用いられる手法です。
問い合わせの傾向を掴むことで、「オペレーター向けのFAQやマニュアルに落とし込める」「公式サイトのQ&Aに記載できる」など、コールセンターの業務効率の向上につながります。
また、業務効率の向上だけでなく、事前に問い合わせ件数が多い内容について対策しておくことで、顧客対応が迅速かつ的確に行えることから、応対品質や顧客満足度の向上も期待できます。
しかし、コールセンターの現場におけるコールリーズン分析の実施状況はあまり良くありません。
『コールセンター白書2022』によると、「コールリーズン分析の実施状況」について聞いたアンケートの結果では、46%(回答数n=173)が「集計している」と回答したのに対し、残りの54%は「意識はしているが集計まではしていない(43%)」「特に意識したことはない(11%)」と回答しています。
※出典:月刊コールセンタージャパン編集部/『コールセンター白書2022』/株式会社リックテレコム/東京/2022.10.31/P104
この結果からも、多くのコールセンターでコールリーズン分析の重要性が理解されていない現状が垣間見えます。
コールリーズン分析はコールセンターの運営をより適切にするうえで必要不可欠な要素です。今後、各コールセンターがどのように対応していくのか、推移が気になるポイントのひとつといえます。
1-2. コールリーズンとVOCの違い
1-2. コールリーズンとVOCの違い
コールリーズンと混同されがちなのがVOC(Voice of Customer)です。ともに“顧客の声”である点は共通しているものの、厳密には異なる概念になっています。
前述したように、コールリーズンは顧客がコールセンターへ問い合わせてくる内容のことです。一方でVOCは、顧客の持つ意見や要望を指します。
つまり、コールリーズンは「顧客が抱えている課題」、VOCは「顧客の内心的な感情」と、それぞれ言い換えることが可能です。
コールリーズン分析は、「業務効率の改善」や「応対品質の向上」を期待して行われますが、VOCの分析は、「顧客ニーズの把握」や「商品・サービスの品質向上」などを目的として実施されるわけです。
以上のことからも、コールリーズンとVOCはそれぞれ意味や目的が異なった概念だといえるでしょう。
コールセンターにおけるコールリーズン分析が重要である理由
コールリーズン分析がコールセンターにおいて重要とされる理由は、以下の5つです。
- VOCの分析に活用できるから
- 優先すべき施策が決定できるから
- 異常値の有無を検出できるから
- オペレーターのスキルの確認または見直しが可能だから
- セルフサービスの導入に向けた検討材料になるから
それぞれどのような内容なのか、詳しく解説していきます。
理由(1)VOCの分析に活用できるから
理由(1)VOCの分析に活用できるから
顧客のニーズを理解するにあたって、VOCはとても重要です。そのVOCを分析する際の第一ステップとして、コールリーズンの分析が必要となるのです。
顧客が問い合わせてきた内容(コールリーズン)を詳しく分析することで、「どのような商品・サービスを求めているのか」「企業に対しての印象はどうか」など、VOCを分析するだけでは分からない、より深いニーズを把握することができます。
理由(2)優先すべき施策が決定できるから
理由(2)優先すべき施策が決定できるから
コールセンターには数えきれないほど多くの問い合わせが入ります。そのため、すべての問い合わせに対して完璧な対応を行うのは非常に難しいことです。
しかし、コールリーズン分析によって問い合わせの多い内容を把握することで、優先的に取り組むべき問題やその対応方法が見えてくるのです。
ただし、クレームなどのイレギュラー対応が必要なコールリーズンに関しては、他の案件より優先度が高くなる点には注意が必要でしょう。
理由(3)異常値の有無を検出できるから
理由(3)異常値の有無を検出できるから
コールセンターには、電話対応時の平均時間を示すAHT(平均処理時間)という指標があります。
コールリーズンごとにAHTを計測することで、対応時間の超過を示す異常値をすぐに検出でき、改善に向けた取り組みを迅速に行えます。
注意すべき点として、新人オペレーターとベテランオペレーターではAHTに大きな差があります。そのため、全体の数値だけでなく「どのオペレーターの対応時間が超過しているのか」を個別に確認することが必要です。
理由(4)オペレーターのスキルの確認または見直しが可能だから
理由(4)オペレーターのスキルの確認または見直しが可能だから
コールリーズンを分析することで、「オペレーターのスキルが問い合わせ内容に対して不足している」「オペレーターのスキルが適切ではない」などの課題が見えてきます。
オペレーターのスキルとコールリーズンが合致していないと、顧客から高い評価を得られないだけでなく、対応時間の超過などを引き起こし、業務効率を低下させる要因となります。
オペレーターのスキル面に課題があると確認できたら、研修などを通じて適切なスキルの習得を実施するといった対策が取れるため、コールリーズンの分析はとても重要なのです。
理由(5)セルフサービスの導入に向けた検討材料になるから
理由(5)セルフサービスの導入に向けた検討材料になるから
コールリーズン分析をしていると、オペレーターによる有人対応が不要なコールリーズンが判明するケースがあります。
そのようなコールリーズンが見つかった場合は、「公式サイトのQ&Aに記載する」「AIチャットボットを導入する」など、顧客が単独で課題解決を行う『セルフサービス』の導入を検討するタイミングです。
有人で行っていた対応を無人化することで、オペレーターに掛かる負担を軽減でき、かつ他の業務に人員を配置することも可能になるのです。
コールリーズンを分析する際に注意すべきポイント
コールリーズンを分析する際に注意すべきポイント
コールリーズン分析が重要である理由を解説してきましたが、一方で注意点もあります。次は、コールリーズンを分析する際に注意すべきポイントを3つ挙げて説明していきましょう。
ポイント(1)優先順位を決める必要がある
ポイント(1)優先順位を決める必要がある
コールリーズンを分析する時は、取り組むべき優先順位を決める必要があります。その際によく用いられているのが「パレート図」です。
パレート図とは、イタリアの経済学者であるヴィルフレート・パレートが提唱した「上位の20%が全体の80%を占める」という法則に則ったグラフのことです。
コールリーズンを数の多いものから順に並べた棒グラフを作成し、それらを足して100%になるよう折れ線グラフで累積の割合を導き出します。そうすると、上位20%のコールリーズンが問い合わせ全体の80%を占めていることが分かるはずです。
以上のことから、上位20%のコールリーズンへの対応を優先することで、問い合わせ全体の80%をカバーできる計算になります。
このように、優先すべきコールリーズンを順位付けしていくことで、早急に取り組むべき課題が見えてくるのです。
ポイント(2)顧客の視点で考える
ポイント(2)顧客の視点で考える
コールリーズンを分析する際は、企業視点ではなく顧客の視点に立って考える必要があります。
例えば、家電メーカーのコールセンターに「パソコンが動かなくなった」という問い合わせが来たとします。これはつまり、故障時における操作方法や改善策の確認です。
顧客の視点に立って考えると、パソコンが急に動かなくなった状況は緊急性が高い問題です。しかし企業側の視点に立つと、故障に関する問い合わせはあくまでアフターサービスの一種であり、そこから利益が発生することはありません。そのため、問題の緊急性を低く見てしまうケースがあるのです。
このように、企業と顧客それぞれの視点からみる問題の緊急性に差が生じると、コールリーズン分析をいくら行ったところで、顧客が満足する対応はできません。
コールリーズン分析をする際は「顧客が置かれている状況」を考えたうえで、問い合わせ内容を精査する必要があります。
ポイント(3)データの取りこぼしに注意する
ポイント(3)データの取りこぼしに注意する
コールリーズン分析には、正確なコールリーズンの集計が必要です。
しかし、コールリーズンを収集する際に用いるシステムに記録を残す際、「間違った内容を入力してしまう」または「入力自体を忘れてしまう」といったケースがまれに発生します。
例を挙げると、オペレーターは数多くの電話対応を忙しくこなしながら、対応中または対応後のちょっとした空き時間に顧客とのやり取りを履歴に残します。そのため、本来はAとすべきコールリーズンを、誤ってBと入力するケースが発生するのです。
このような入力の間違いや漏れが多発すると、正確なコールリーズン分析が難しくなってしまいます。そのため、履歴入力後のチェックを徹底することが重要になってきます。
コールリーズンを収集する方法
コールリーズンを収集する方法
コールリーズンを収集する方法としてよく用いられているのが、CMSやCRMなどのコールセンターシステムによる集計です。
CMS(Call Management System)は、コールセンターの運用にともなって発生する、各種品質や効率などのデータを集計し、それらを管理・保存するシステムのことです。このCMSのなかには、事前に登録しておいたコールリーズンを分類化し電話機と連動させられるCWC(Call Work Code)も含まれています。
各オペレーターは顧客対応の最中または終話後などの後処理時に、CWCによって分類されたコードを選択するだけで、コールリーズンをデータとして残すことができます。
ほかにも、CRM(Customer Relationship Management)と呼ばれる顧客管理システムを用いた方法でも、顧客対応時の履歴としてコールリーズンを記入することで集計が可能です。
このように、コールセンターシステムにはCMSやCRMなど数多くの種類があるため、自社で活用しているシステムの種類を理解したうえでコールリーズンを収集するようにしましょう。
コールリーズン分析結果の有効な活用方法とは
コールリーズン分析結果の有効な活用方法とは
それでは最後に、コールリーズンの分析結果を有効に活用する方法について、4つを挙げて解説していきましょう。
活用方法(1)IVRの適正化
活用方法(1)IVRの適正化
コールリーズン分析で問い合わせが多いと判明した内容についてIVR(自動音声応答装置)の設定を適正化することで、一次解決率の向上や応対時間の短縮につながります。
IVRの内容がコールリーズンにそぐわないものだと、顧客の課題解決にかかる時間が超過しやすくなり、顧客満足度の低下にもつながってしまいます。
自動音声の内容を定期的に見直しながら、コールリーズン分析の結果が反映されたIVRを構築するようにしましょう。
活用方法(2)FAQやトークスクリプトの改善
活用方法(2)FAQやトークスクリプトの改善
コールリーズン分析によって特定のコールリーズンが高い割合を示すということは、多くの顧客が同じ課題を持っている状態です。
そのため、「顧客が疑問を抱きやすい課題」が把握できたら、オペレーター向けのFAQやトークスクリプトの改善を実施します。
これにより、応対時間の短縮や誤まった案内の防止など、業務効率化とミス発生のリスク軽減を同時に実現することができるのです。
活用方法(3)自社商品やサービスの品質向上
活用方法(3)自社商品やサービスの品質向上
コールリーズン分析によって得られたデータを、自社商品やサービスの品質向上に活用できます。
VOCの分析によってある程度のニーズを把握することはできますが、顧客がその感情を抱くきっかけとなった根本的な原因が不明なままだと、具体的に商品・サービスをどう改善したら良いのか分かりません。
ですから、自社商品やサービスの品質を向上させるためには、VOC+コールリーズン分析の結果を活用することが重要になります。
また、コールリーズン分析の結果をコールセンター内でのみ保有してしまい、商品開発部などの他部署と共有できていないケースが見受けられます。定期的にミーティングを開くなど、部署間の連携が上手く取れるような仕組み作りもあわせて行うようにしましょう。
活用方法(4)研修内容の見直し
活用方法(4)研修内容の見直し
コールリーズン分析の結果をもとに、オペレーターや管理者向けの研修内容を見直します。
問い合わせ件数が多いコールリーズンを重点的に学ぶことにより、応対品質の向上が期待できるはずです。
研修内容の見直しをする際は、「情報が最新になっているか」「研修の期間は適切か」「担当者によって教え方にばらつきがないか」などの項目に気を付けていくと良いでしょう。
コールセンターのアウトソーシングならパーソルビジネスプロセスデザインへ
コールリーズン分析の重要性や注意点、さらには活用方法まで解説してきました。
そもそもコールセンター業務は、コールリーズン分析だけでなく、商品知識やコミュニケーション力、問題解決力など、幅広い能力が求められます。ですから、効率的なコールセンター運営のためにも、オペレーターの育成は必要不可欠といえるでしょう。
コールセンター業務を自社ですべて進めていくのが難しい場合には、アウトソーシングの活用も検討してみましょう。ベストな委託先に任せられれば、質の高いコールセンター業務を実施しながらも、自社のリソースをコア業務に集中させることが可能になります。
また、もしコールセンターのアウトソーシング先をお探しであれば、ぜひパーソルビジネスプロセスデザインにお任せ下さい。パーソルビジネスプロセスデザインのコールセンターでは、日々の問い合わせ傾向から公開FAQを作成・公開し、ユーザーの自己解決率を上昇させることで顧客満足度の向上を実現しています。
さらに、パーソルグループならではの「人材ノウハウ」を通じて、豊富な研修をオペレーターに行い、高い応対品質を実現することが可能になっています。