コールセンターにおける品質とは何か
そもそもコールセンターにおける品質とは何かというと、視点の違いにより「クオリティ」と「パフォーマンス」の2つの分野に分けることができます。それぞれを詳しく見ていきましょう。
1-1. クオリティ
1-1. クオリティ
「クオリティ」とは、お客様視点から捉えたコールセンター自体の品質に対する評価を指しており、『応対品質』と『接続品質』の2つに分けて考えることができます。
(1)応対品質
(1)応対品質
応対品質は、その名の通りオペレーターのお客様応対の質を指しています。応対品質の単純な数値化は非常に難しいため、様々な評価基準を使い複合的に評価を行います。
コールセンターごとに重視する評価基準は様々ですが、一例として以下のような内容が挙げられます。
- しっかりと傾聴を行えているか
- お客様へ正確な情報提供を行えているか
- 一般的なビジネスマナーは守られているか
- 誤った言葉遣いになっていないか
- 適切なスピードでアナウンスを行えているか
これらは一部ではありますが、さらに細かく数十個の項目に分けて採点、評価を行うのが一般的です。
(2)接続品質
(2)接続品質
接続品質は、電話のつながりやすさを指しています。
コールセンターの現場で業務を行っていると麻痺しがちな部分ですが、電話がつながらないことはお客様にとって相当なストレスとなります。電話がつながらないと印象が悪くなり、企業価値の損失につながるのはもちろんのこと、その後の応対でもクレームを誘発しやすい状況となるため、接続品質の悪化はできるだけ避けたいところです。
日々のコール数をチェックして、回線数の調整と着台数を十分に用意すれば、接続品質の向上は見込めます。ただ、後述する「パフォーマンス」の部分にも影響するため、コール量の見極めがとても重要なポイントになります。
1-2. パフォーマンス
1-2. パフォーマンス
「パフォーマンス」とは、企業視点で捉えたコールセンターの生産性を指しています。
日々膨大に発生する入電に対して「いかにコストを下げながら効率良く対応していくか」という課題がクリアになるほど生産性が高く、コールセンターのパフォーマンスは高いといえます。なお、これらは「処理品質」と「運営品質」の2つに分けて考えることが出来ます。
(1)処理品質
(1)処理品質
処理品質はオペレーターの業務処理能力の高さを指しており、一般的に以下のような視点で評価を行います。
- 無駄なく、正確にお客様への回答を行えたか
- お客様応対の通話時間は適切だったか
- お客様応対後の後処理時間は適切だったか
- 処理ミスを発生させていないか
これらはオペレーター個人の評価だけでなく、業務システムやマニュアル等の各種ツールなど、業務遂行をするうえで必要な環境が組織として整備されているかということも非常に大きなポイントになってきます。
(2)運営品質
(2)運営品質
これまでの3つの品質はオペレーターが主となる指標でしたが、運営品質についてはコールセンターとしての役割が全うできているかという、組織や管理者の質を表す指標です。
オペレーターは、毎日膨大な数の入電対応を行うことに加え、定期的にクレームが発生するなど心理的・精神的負担が大きい職種の一つです。そのため、“離職率や欠勤率の高さ”は多くのコールセンターが悩まされている共通課題となっています。
どの職種にも当てはまることですが、一度でも人材不足に陥るとまともな業務を続けることが難しくなっていきますので、欠勤率や離職率の改善は組織として重要な課題の一つなのです。
コールセンターにおける品質管理がなぜ重要なのか
近年ではコロナ禍の影響もあって店舗を持たない企業も多く、一番初めにお客様と接するのがコールセンターのオペレーターであることも多くなっています。
コールセンターは「企業の顔」ともいえるような存在であり、コールセンターでのお客様体験が企業の評価へと直結します。
そのため、コールセンターで品質の高いサービスを提供することができれば企業価値は高まりますが、逆に提供される商品やサービスがどれだけ優れていようとも、コールセンターでの応対品質が低くては企業価値を著しく下げてしまうことになりかねません。
そのうえで、パフォーマンスとクオリティのそれぞれの品質管理は非常に重要になります。一見すると相反するような2つの要素ですが、どちらか一方の品質が高くても、もう一方が低ければ良いコールセンターとはいえないのです。
昔から「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざがありますが、より良いコールセンターを運営するうえでは二兎とも追いかける必要があるというわけです。
コールセンターにおける品質管理の評価基準
コールセンターには、品質を評価する基準として様々な指数が存在します。続いては、その品質の種類ごとに代表的な評価基準をいくつか見ていきましょう。
3-1. 処理品質
3-1. 処理品質
- CPH(Call Per Hour):1時間あたりの対応コール数の平均値
- ATT(Average Talk Time):1コールあたりの平均通話時間
- ACW(After Call Work):コール終了後に発生する作業時間の平均値
- AHT(AverageHandling Time):ATT+ACWを合計した1コールの平均処理時間
※それぞれの指標について詳細を知りたい方は下記のコラムも合わせてご参照ください
「コールセンターのCPHとは?意味・効果・注意点・改善点まとめ」
「コールセンターのATTとは?意味や効率的な短縮方法を解説」
「AHTとは?データで分かる効率的なコールセンター改善策を4つ紹介」
3-2. 応対品質
3-2. 応対品質
- モニタリングスコア:オペレーターの応対音声を録音もしくはリアルタイムでモニタリングし、コールセンター内で事前に策定した評価基準を基にして採点を行う。
- ミステリーコール:お客様役の調査員がコールセンターに電話を行い、オペレーターの応対品質評価を行う。
- クレーム率:全コール数に対して、お客様からのクレームが発生した回数を割合として表示する。
- アンケート調査:WEBサイトや電話などの手段でお客様からアンケートを取得する。
- サンキューコール発生数:お客様からの謝意やお礼のお手紙の数。(他の指標と比べて発生数が少ないため、件数で評価することが多い)
※「ミステリーコール」について詳細を知りたい方は下記のコラムも合わせてご参照ください
「【コールセンター】ミステリーコールが企業の利益向上につながる3つの理由」
3-3. 接続品質
3-3. 接続品質
- 応答率:総入電数に対してオペレーターが応答できたコール数の割合
- 放棄呼率:オペレーターが応答する前に電話を切られてしまったコール数の割合
- 平均応答時間:着信からオペレーターが応答するまでの平均時間
- サービスレベル:着信からオペレーターが応答するまでの目標時間に対して、実際に時間内に対応できたコール数の割合(15秒や20秒など、目標時間は各コールセンターで取り決めた内容を使用する)
- 話中率:入電数がコールセンターで用意している回線数の上限を超えた結果、話し中となってしまったコール数の割合
※「放棄呼率」について詳細を知りたい方は下記のコラムも合わせてご参照ください
「放棄呼とは?コールセンターの利益損失を防ぐ『5つの対策』を解説」
3-4. 運営品質
3-4. 運営品質
「運営品質」について、具体的な指標としては各社で変わってきますが「いかに持続的なセンター運営が行われているか」という評価を行うものです。
一般的にはオペレーターの欠勤率や一定期間の離職率、そして各社で用意された人事指標などで評価を行っていきます。
コールセンターにおける品質管理を行ううえでの注意点
続いて、コールセンターの品質管理を行ううえでの注意点を3つ挙げて解説していきましょう。
注意点(1)品質管理に関する専任担当を決めておく
注意点(1)品質管理に関する専任担当を決めておく
品質管理の専任担当者および部門を事前に決めておくことが非常に重要です。できれば、現場責任者とは別で用意するのが望ましいでしょう。
コールセンターの応対品質管理は、言葉遣いなど評価基準の共通化がしやすい部分以外に、応対の丁寧さやお客様がオペレーターに対して信頼を置いている様子など、評価基準の共通化が難しい感覚的な部分も多いものです。そうなると、評価する人によって結果がぶれてしまうことが多々あります。
コールセンターでは品質維持の専任担当以外にもSV以上の現場管理者やセンター管理者が評価を行うことが一般的です。ただ、基本的に別部署の責任者が評価を行うため、普段対応していない業務内容については正しい評価を加えることができない恐れがあります。
それらの問題を防ぐためにも品質管理を行う専任担当者および部門を設置して、部署ごとの重要指数をもとに評価基準も細かくカスタマイズすることが重要です。
正しい評価は、コールセンターの品質向上はもとより、オペレーターのモチベーション向上という観点でも非常に重要なポイントになるのです。
注意点(2)評価基準本位にならず、お客様の気持ちに沿った応対をする
注意点(2)評価基準本位にならず、お客様の気持ちに沿った応対をする
前述した通り、コールセンターとしての品質にはお客様への丁寧な応対(応対品質)に加え、いかにお客様をお待たせしないか(接続品質)という点も非常に重要な品質の一つとして挙げられます。
ただ、接続品質を重視するあまりにお客様の会話に被せて話を進めてしまうとか、会話を切って急いでしまうなど、処理スピードを優先して1つ1つの応対が雑になってしまっては元も子もありません。
逆に応対品質を気にするあまり、お客様が急いでいる様子にも関わらずゆっくりと極端に丁寧な言葉づかいで応対するなどというのも、お客様の立場に立った応対とはいえません。
業務ボリュームや入電ジャンルなどをもとに、コールセンターとしての重要指数や優先順位を適宜調整することで、パフォーマンスとクオリティの両方を追い求められる、バランスの良い評価基準を設定するように心がけましょう。
注意点(3)継続的な品質管理とフィードバックを実施する
注意点(3)継続的な品質管理とフィードバックを実施する
品質管理は一過性のものではなく、継続的に実施することで真価を発揮します。
特に応対品質の評価は、オペレーター1名で月に多くて数千コールという応対の中から一部だけをピックアップして評価を行いますので、散発的な品質管理ではどうしても正しい評価を加えることが難しくなってしまいます。
できれば月に1回は定期的にコールのチェックを行い、継続的な品質管理を実施することで品質の高いコールセンターを目指すことが重要でしょう。
加えて、評価内容については必ず該当のオペレーターへのフィードバックを定期的に行うようにしましょう。お客様目線に立った丁寧な応対を行えるように課題点や改善点を伝え、その後の応対に活かすという点も重要ですが、正当な評価をオペレーターに伝えることはモチベーション向上の一環としても非常に重要です。
たとえ評価内容がオペレーターにとって厳しい内容だったとしても、基準の意図をしっかりと説明したうえでフィードバックを行うことで、自身の目標設定が明確となり結果としてモチベーションの向上につながります。
品質管理とフィードバックは必ずセットで行うことが、品質の高いコールセンターを運営するポイントなのです。
コールセンターの品質管理をするならパーソルビジネスプロセスデザインへ
コールセンターでは、応対品質の向上が必須です。『ミステリーコール』や『モニタリングスコア』などを活用することで、オペレーターのスキルは改善できるでしょう。
しかし、「モニタリングをしてみたけれど、なにが高品質の応対か基準がよく分からない」といった悩みを抱える担当者もいらっしゃるかもしれません。モニタリングをやみくもに行ったとしても、それだけでは適切な品質管理は難しいのです。
そこでぜひご利用いただきたいのが、パーソルビジネスプロセスデザインの『応対品質改善サービス』です。オペレーターの応対をモニタリングや面談で評価し、個人のスキルに合わせた教育までお任せいただけます。
評価の基準として、国際的に認知されたサポート標準である『HDI国際スタンダード』を採用しているのが本サービスの特徴です。オペレーターの公正な評価ができるだけでなく、カスタマーサービスに共通の指標を用いた評価が実現します。
ミステリーコールをはじめ多種多様なモニタリングで応対をチェックさせていただきますので、コールセンターの品質管理でお悩みであれば、ぜひパーソルビジネスプロセスデザインにご相談くださいませ。