アルコールチェック義務化とは
2022年4月より施行された改正道路交通法施行規則では、一定の条件を満たす企業に対して運転者へのアルコールチェックが義務化され、2023年12月1日からは、アルコール検知器を用いたアルコールチェックの義務化が開始されました。
1-1. アルコールチェック義務化が適用される事業者
1-1. アルコールチェック義務化が適用される事業者
アルコールチェック義務化の対象となるのは、安全運転管理者を選任することが必要な事業者(事業所)です。なぜならアルコールチェックは安全運転管理者がおこなうべき業務として義務づけられているからです。
安全運転管理者の選任が必要なのは、以下の条件に該当する事業所です。
・乗車定員が11人以上の自動車を1台以上所有している
・そのほかの自動車の所有台数が5台以上である
大型の自動二輪車、普通の自動二輪車については、1台を0.5台として計算します。
自動車の所有台数が20台以上40台未満のケースでは、1名の「副安全運転管理者」を任命しなければなりません。また、40台以上保有しているケースでは、20台増加するたびに「副安全運転管理者」を追加で1名、任命する必要があります。
なお、これらは「安全運転管理者制度」で定められていますので、詳しい情報については下記の参考資料をご覧ください。
マイカーで業務をする場合のアルコールチェックの必要性
社有車だけでなく従業員のマイカーで業務をする場合も、アルコール検査の対象となります。
「社有車」「レンタカー」「マイカー」といった自動車の種類に関わらず、業務で使用される車両はいずれもアルコールチェックが必要です。
マイカーで通勤する場合には、次の2パターンに分かれます。
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上記の通り、業務としてマイカーを運転しない場合にはアルコールチェックの対象外となります。
しかし、マイカー通勤中に飲酒運転による事故が起きた場合には企業のレピュテーションに大きく影響する可能性が否定できません。また、企業が飲酒を認識しながらマイカーでの通勤・退勤を容認していたような場合は、企業自身の不法行為責任を追及される可能性もあります。そのため、業務でマイカーを使用しない従業員に対しても飲酒運転を決してさせない姿勢は大切です。
アルコールチェックの具体的な方法
アルコールチェックの具体的な方法
ここからは、アルコールチェック実施の方法について具体的にご紹介していきましょう。
3-1. どのタイミングで確認すれば良いのか
3-1. どのタイミングで確認すれば良いのか
アルコールチェックが必要なタイミングは、業務の開始前後です。警察庁からの通達には、「運転しようとするドライバーおよび運転を終了したドライバー」と記載されていますが、この「運転」は、個々の運転ではなく「一連の業務としての運転」を指すとされています。
※参考: 警察庁「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令の施行に伴うアルコール検知器を用いた酒気帯びの有無の確認等について(通達)」
つまり、会社から取引先まで複数回往復する場合や、ランチで飲食店に立ち寄った場合などに、その都度確認する必要はありません。運転を含む業務の開始前や出勤したタイミング、業務の終了後、退勤時にアルコールチェックをおこなえば問題ないとされています。
3-2. どのようにアルコールチェックをすべきか
3-2. どのようにアルコールチェックをすべきか
アルコールチェックを目視などでおこなう場合には、視覚情報や嗅覚、聴覚情報をもとにドライバーの飲酒状態について検査します。具体的には、以下の項目を確認するようにしましょう。
・ドライバーの顔色
・呼気の臭い
・会話した際の声の調子
これらを確認したうえで、ドライバーが酒気を帯びていないことが認められれば、アルコールチェックは完了です。
基本的に対面での目視確認でアルコールチェックをするべきですが、直行直帰の場合など対面における確認が現実的ではないケースでは、「これに準ずる適宜の方法で実施すれば良い」と警察庁からの通達内にも記載されています。
「これに準ずる適宜の方法」としては、アルコール検知器を併用しながら次のいずれかの方法でアルコールチェックを実施するようにしましょう。
・カメラやモニターを通して、ドライバーの顔色や会話した際の声の調子を確認しつつ、アルコール検知器の数値を一緒に確認する
・携帯電話や業務無線などドライバーと直接会話できる方法で、やり取りをした際の声の調子を確認しつつ、アルコール検知器の数値を口頭で報告させる
また、アルコールチェックは、直行直帰や出張などの場合に限らず、「アウトソーシングによる委託」も可能です。自社の安全運転管理者だけで実施しようとしなくて良いのです。
実際にアルコールチェック業務を外注しようとする場合、以下のような業務を外注することができます。
従業員に対する運転前後のヒアリング、ヒアリング内容の記録、ヒアリング内容の記録のデータ化と保管、レポートや分析の提供などがあります。
他の事業所の安全運転管理者が立ち会った場合や、安全運転管理者の業務を補助する者が確認を行った場合でも、上記の方法にもとづいていれば、アルコールチェックは完了となります。
アルコールチェックの義務化に違反した場合の罰則
アルコールチェックを忘れてしまったり、法令に従って手続きを適切に行わなかったりした場合に、どのような罰則があるか気になる方も多いかと思います。自社でアルコールチェック業務を運用している場合は、罰則を正しく把握しておくことが重要です。
4-1 アルコールチェックを怠った場合の罰則
4-1 アルコールチェックを怠った場合の罰則
以下のような場合には、本人だけではなく事業者に対しても行政処分が科せられたり、刑事上の責任を問われたりする場合があります。
<罰則が適用される恐れのある違反行為>
・アルコールチェックをせず、飲酒運転を容認した
・アルコールチェックは実施していたが、抜け漏れにより、飲酒運転を原因とする事故が発生した
・アルコールチェックは実施していたが、適切な方法で行われなかったために、飲酒運転を原因とする事故が発生した
・安全運転管理者を選任していない
・安全運転管理者を選任したが届け出を行っていない
軽微な違反であれば指導や是正勧告で済むかもしれませんが、悪質な場合には事業停止などの重い処分を受ける可能性は否定できませんので、十分注意しましょう。
なお、アルコールチェックを怠ったこと自体に罰金などのペナルティはありませんが、そのようなことが明るみに出た場合に企業の評判を落とすリスクははかりしれません。このことも踏まえつつ、アルコールチェック業務を的確に処理するように心がけましょう。
4-2. 安全運転管理者の業務違反に関する罰則
4-2. 安全運転管理者の業務違反に関する罰則
選任した安全運転管理者がアルコールチェックを含む業務を適切に遂行できていないと判断される場合には、道路交通法第74条の3に則り、行政当局により安全運転管理者の解任命令が下されることもあります。この解任命令を受けながらも解任しなかった場合には、50万円以下の罰金が科されます。
なお、警察庁のサイトにも記載がある通り、安全運転管理者を選任する義務に違反した場合の罰金額はもともと「5万円以下」でしたが、当該選任義務を確実に履行させることを目的として令和4年10月1日より罰金額が「50万円以下」に増額されています。
※参考: 警察庁「安全運転管理者の業務の拡充等」
4-3. 飲酒運転を行った運転者に対する罰則
4-3. 飲酒運転を行った運転者に対する罰則
私用や業務利用に関わらず、飲酒運転を行った場合、厳しい行政処分や罰則が科されます。処分や罰則の具体的な内容は以下の通りです。
①酒気帯び運転
【アルコール基準値 0.15 mg/L以上0.25 mg/L未満】
違反点数:13点 処分:90日の免許停止 罰則:3年以下の懲役または50万円以下の罰金
【アルコール基準値 0.25 mg/L以上】
違反点数:25点 処分:免許取消し、欠格期間2年 罰則:3年以下の懲役または50万円以下の罰金
②酒酔い運転
【アルコール基準値 数値基準なし】
違反点数:35点 処分:免許取消し、欠格期間3年 罰則:5年以下の懲役または100万円以下の罰金
また、運転者だけでなく、車両を提供した者や酒類を提供した者、同乗者にも罰則が適用されることも注意が必要です。
運転者が飲酒運転をした場合の車両の提供者に対する罰則は以下の通りです。
①酒気帯び運転:3年以下の懲役または50万円以下の罰金
②酒酔い運転:5年以下の懲役または100万円以下の罰金
運転者が飲酒運転をした場合の酒類提供者または同乗者に対する罰則は以下の通りです。
①酒気帯び運転の場合:2年以下の懲役 または 30万円以下の罰金
②酒酔い運転の場合:3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金
※2023年10月時点での情報となります。
4-4. 事故発生時の企業の罰則
4-4. 事故発生時の企業の罰則
アルコールチェックを怠った結果、従業員が飲酒運転や飲酒による運転を行い、それによって事故が発生した場合、従業員自身だけでなく企業の代表者や責任者も同等の罰則を受けることがあります。車両の提供者に該当するため、企業の代表者や責任者も従業員と同等の罰則を科されます。
①酒気帯び運転:3年以下の懲役または50万円以下の罰金
②酒酔い運転:5年以下の懲役または100万円以下の罰金
また、罰則を受けるだけではなく、企業の社会的信用も失う可能性があるため、適切な対策を行うことが重要です。
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不備のないアルコールチェックのために「企業が行うべきこと」を解説していきます。
5-1. 運用ルールを明確化する
5-1. 運用ルールを明確化する
アルコールチェックを漏れなく実施し記録・管理するためには、社内で運用ルールを明確にし、統一していく必要があります。
社内の運用ルールが統一されていなければ、「事業所ごとにアルコールチェックのやり方が異なる」という問題が生じてしまうかもしれません。また、適切な方法で実施されなかった場合には、法律違反となってしまいます。
紙やExcelなど管理方法が事業所ごとに異なる場合にも、注意が必要です。管理方法がバラバラになってしまうと、管理が煩雑化するだけでなく、何かトラブルが起きた際にスムーズにデータを確認できない恐れがあります。また、アルコールチェックを実施する際には、その結果を詳細に記録し、保存することが法律で義務付けられています。
アルコールチェック運用ルールの統一や、アルコールチェック方法に不備がないかの確認を徹底することで、不要なトラブルを避けられるでしょう。
5-2. 担当者のリソース把握・調整
5-2. 担当者のリソース把握・調整
適切にアルコールチェックがおこなわれているかどうかだけでなく、担当者に過度な負担が生じていないかを確認することも重要です。
担当者は、アルコールチェック以外の通常業務にも追われているものです。多忙を極めるなかで、早朝や深夜にアルコールチェックを正確におこなわなければならず、肉体的・精神的に多大な負荷をかける可能性もあります。
負担が大きければ、確認・記録・管理が雑になり、気づかない間に法律違反を犯すリスクも上がってしまうため、担当者のリソースを把握することや調整することも忘れずに行うようにしましょう。
アルコールチェックは目視で実施するのが原則です。しかし、直行直帰時など実施が難しい状況の場合は、目視と同等の方法で確認することが認められています。
具体的には次の2通りの方法があります。
・アルコール検知器の結果をカメラやテレビ電話、モニターで報告する
・携帯電話や業務無線などで声の調子を確認するとともに、アルコール検知器による検査結果を報告する
いずれの場合も、酒気帯びの有無を確認するために、アルコール検知器が必要となります。直行直帰の予定がある従業員に対しては、忘れずに携帯させるようにしましょう。
安全運転管理者がアルコールチェックを行うことが難しい場合は、アウトソーシングを活用するのがおすすめです。警察庁の通知文書によれば「安全運転管理者の不在時など、安全運転管理者による確認が困難な場合には、副安全運転管理者または安全運転管理者の業務を補助するものに酒気帯び運転の確認をさせることは問題ない」とされています。
あくまで安全運転管理者の選出は必須にはなりますが、警察庁の見解としても「アルコールチェック業務は外注可能」という判断ができます。
アウトソーシングの導入により担当者の負担を減らせるとともに、より正確なアルコールチェック作業を実施できるようになります。
外部委託するならパーソルビジネスプロセスデザインへ
外部委託するならパーソルビジネスプロセスデザインへ
アルコールチェックの義務化により、白ナンバー車においても、業務の開始前後にアルコールチェックを行う必要があります。直行直帰の場合など会社に立ち寄らないケースであっても、電話やカメラを用いて、ドライバーが酒気を帯びていないかを確認しましょう。
社内の担当者に十分なリソースがない場合などには、アルコールチェックのアウトソーシングがおすすめです。
私たちパーソルビジネスプロセスデザインの「アルコールチェック委託サービス」では、オンラインでのアルコールチェック作業や確認後の記録作業を代行いたします。
特に、アルコールチェックの負担が大きい早朝や深夜の作業代行も受け付けていますので、担当者の負担を大幅に軽減することができます。担当者のケアレスミスなどによる行政処分や、罰則を受けるリスクも回避できるでしょう。
アルコールチェックの方法を検討することも含め外部委託をお考えなら、ぜひパーソルビジネスプロセスデザインにお任せください。