義務化されたアルコールチェックとは?
「アルコールチェック」は、安全運転管理者が実施すべき業務のひとつで、道路交通法の施行規則で規定されています。
※参考:警察庁「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令の施行に伴うアルコール検知器を用いた酒気帯びの有無の確認等について(通達)」
安全運転管理者は、全ドライバーの運転前後に、必ず「酒気(アルコール)を帯びていないか」を確認する必要があります。また、検査結果は法律で定められた通りに記録し、最低1年間は適切に管理しなければなりません。
そもそもアルコールチェックは、どのような背景から厳格化されるようになったのでしょうか。次項からは、その理由に加え「アルコールチェック義務化の対象となる事業者」についても解説していきます。
アルコールチェック義務化の対象となる事業者
アルコールチェック義務化の対象となるのは、安全運転管理者を選任することが必要な事業所です。
これは道交法がアルコールチェックを企業に所属する安全運転管理者の業務と位置づけているからです。
一定台数以上の自動車を業務で使用する事業所では、法律により安全運転管理者を選任しなければなりません。具体的には、以下に該当する場合は対象となります。
安全運転管理者を選任する必要がない事業所は、現時点ではアルコールチェックは法令上求められていません。しかし、飲酒運転に対する社会的非難が苛烈である現状を踏まえると、このような事業所でもアルコールチェックを励行することで飲酒運転を極力回避することが望ましいといえます。
アルコールチェックでNGとなる基準数値は?
アルコールチェックによってドライバーからアルコールが検出された場合、「酒気帯び運転」に該当する基準は「呼気1リットル中、0.15ミリグラム以上」です。
ただし、道路交通法第65条では「何人も、酒気を帯びて車両などを運転してはならない」と規定されています。たとえ上記の基準に該当せずとも、ドライバーから少量でもアルコールが確認された時点で、そのドライバーはただちに運転を禁止すべきです。
一定時間が経過してアルコールが体内から完全に抜けきった後であれば、運転は可能となりますが、この判断は人間では限界があります。そのため、アルコール検知器を有効活用すべきことは上記で記載したとおりです。
万が一アルコールが検出された場合に備えて、「運転ができなくなったドライバーにはどのような業務を対応させるのか」などの対応をしっかりと考えておくようにしましょう。もちろん、飲酒運転による罰則を受けないよう、ドライバーをしっかりと教育することも重要です。
※参考:警視庁「飲酒運転の罰則等」
アルコールチェック基準値に関する罰則
飲酒運転をしたドライバーやアルコールチェックを的確に実施しなかった事業所には行政上、刑事上のペナルティが考えられます。その詳細について解説していきましょう。
4-1. アルコールが検出された場合の行政処分
4-1. アルコールが検出された場合の行政処分
まず、業務遂行中のドライバーが飲酒運転をしてしまった場合、そのドライバーには以下の行政処分が科されます。
・酒酔い運転
→基礎点数35点、免許取消し、欠格期間3年
・酒気帯び運転(呼気中のアルコール濃度が0.15mg/1以上、0.25mg/1未満の場合)
→基礎点数13点、期間90日の免許停止
・酒気帯び運転(呼気中のアルコール濃度が0.25mg/1以上の場合)
→基礎点数25点、免許取消し、欠格期間2年
※参考:警察庁『みんなで守る「飲酒運転を絶対にしない、させない」』
1つ目の「酒酔い運転」とは、アルコールの影響により車両などを正常に運転することのできない恐れがある状態で運転することです。
運転免許証の欠格期間が与えられたドライバーは、欠格期間が満了するまでは運転免許証を再取得できなくなります。当該ドライバー自身は運転資格を失うことで職を失うという大きな不利益がありますし、必要な人員が失われるという意味で企業にとっても損失となるはずです。
4-2. アルコールチェックが適切にされなかった場合の罰則
4-2. アルコールチェックが適切にされなかった場合の罰則
安全運転管理者がアルコールチェック業務を懈怠したことを直接対象とする罰則などはありません。しかし、安全運転管理者がアルコールチェックを的確に実施しないことが常態化しており、そもそも不適格と客観的に評価されるような場合には、行政当局から事業者に対して道路交通法第74条の3に基づいて安全運転管理者の解任命令が発令される可能性はゼロではありません。そして事業者がこの解任命令に従わない場合には、50万円以下の罰金が企業に科される可能性があります。
なお、安全運転管理者の選任が必要な事業所であるにもかかわらず、選任していなかった場合にも罰則はありますので、注意しましょう。
- 安全運転管理者を選任しなかった場合:50万円以下の罰金
- 安全運転管理者の届出をしなかった場合:5万円以下の罰金
また、無論ですが、飲酒運転をしたドライバーは刑事罰の対象になりますし、事業者がこれを知りながら容認していたような場合にも刑事罰がありますので、気をつけましょう。
- 酒酔い運転:5年以下の懲役、または100万円以下の罰金
- 酒気帯び運転:3年以下の懲役、または50万円以下の罰金
※参考:警察庁『みんなで守る「飲酒運転を絶対にしない、させない」』
上記のようなペナルティが事業継続に大きなダメージとなる可能性は十分あります。法律で規定された通りにアルコールチェックを実施し、ドライバーの飲酒運転防止に徹底して取り組むことが重要です。
アルコールチェックのタイミングと確認方法
具体的にどのようにアルコール検査を実施すれば良いのでしょうか。ここからは、運転前後のアルコールチェックの方法について解説していきます。
5-1. アルコールチェックを行うタイミング
5-1. アルコールチェックを行うタイミング
アルコールチェックは、ドライバーが業務に関わる運転をする前と後の2回行う必要があります。
なお、ドライバーが乗車・降車するすべてのタイミングで確認をする必要はありません。運転を含む、業務に初めて取りかかるタイミングや出勤時、その日の運転業務が終了する時、退勤時に確認をすれば、義務履行としては足りると考えられています。
業務の休憩中にコンビニなどへ立ち寄った場合や、会社から取引先までを往復する場合などに、何度も確認する必要はありません。
5-2. 目視による確認方法
5-2. 目視による確認方法
目視などでアルコール検査を実施する場合には、運転前後のドライバーの状態を目で観察したり、匂いを嗅いだりして、ドライバーが酒気を帯びていないかを確認します。
具体的には、警察庁からの通達にもありますが、安全運転管理者が一人ひとりのドライバーに対して以下の項目を確認していきます。
・ドライバーの顔色が赤くなっていないか
・呼気からお酒の臭いがしないか
・会話した際に「呂律が回っていない」などの異常はないか
※参考:警察庁「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令の施行に伴うアルコール検知器を用いた酒気帯びの有無の確認等について(通達)」
これらのポイントを確認し、ドライバーが飲酒状態にないと判断できればアルコール検査は完了です。
特別な理由がない限りは、対面においてドライバーのアルコールチェックをおこなうことが原則となっています。
しかし、直行直帰や出張などにより、事業所から遠く離れた場所で運転業務を開始・終了する場合には対面での確認が困難であるため、この限りではありません。そのような場合には、「これに準ずる適宜の方法」として、アルコール検知器を併用することを前提に、カメラやモニター、電話でアルコールチェックを実施しても問題ないとされています。
アルコールチェックの補助業務を外部業者に委託することも認められています。必ずしも自社の安全運転管理者が確認をする必要はありません。
5-3. アルコール検知器による確認
5-3. アルコール検知器による確認
アルコール検知器による確認方法としては、ドライバーにアルコール検知器に向かって呼気を吹きかけてもらいます。その際にアルコールが検出されなければ、アルコールチェックは完了です。もし検査にひっかかった場合には、以下の点を記録しなければなりません。
・その後、ドライバーにどのような指示を出したのか
・その後、どのような措置を取ったのか
数値を記録する必要はなく、「アルコールの有無」の記載だけで問題ないとされています。ただし、アルコールの検出値に応じて指示や措置の内容は変わりますので、警察庁からは数値による記録が推奨されています。
アルコールチェックの基準数値に関する注意点
アルコールチェックの基準数値に関する注意点
正確な数値結果を得るためには、運転者のアルコール濃度数値を正しく測定しなければなりません。正確な結果を得るためには、飲酒をしないだけでなく、使用するアルコールチェッカーの特性や口腔内の清潔さにも注意を払う必要があります。
以下では、アルコール濃度数値を正しく読み取るために、アルコールチェックの基準数値に関する注意点を解説します。
6-1. アルコールが含まれる可能性のある飲料や食品に注意する
6-1. アルコールが含まれる可能性のある飲料や食品に注意する
一部の食品や飲料には微量のアルコールが含まれていることがあります。例えば、アルコールを含む菓子やデザート、ノンアルコールビール、一部の発酵食品(キムチ、醤油、ヨーグルトなど)などです。これらを摂取した後にアルコール検知器を使用すると、微量のアルコールが検知されることがあります。
6-2. アルコールを含む口腔ケア製品を使用しない
6-2. アルコールを含む口腔ケア製品を使用しない
アルコールを含む口腔ケア製品(マウスウォッシュ、歯磨き粉など)を使用した直後にアルコール検知器を使うと、口腔内の残留アルコールが検知されることがあります。この場合、実際の血中アルコール濃度とは関係なく、口腔内の一時的なアルコールが反応するため、誤った結果が出ることがあります。
6-3. アルコールを含む薬品の影響に注意する
6-3. アルコールを含む薬品の影響に注意する
一部の医薬品やサプリメントにはエタノール(アルコール)が含まれていることがあります。特にシロップ状の薬品やエタノールを溶媒としている薬品を服用した後にアルコール検知器を使用すると、これらの薬品に含まれるアルコールが検出される可能性があります。
6-4. アルコールチェックを行う環境に注意する
6-4. アルコールチェックを行う環境に注意する
アルコールを含む製品を使用している環境(例えば、消毒用アルコールを多用する医療現場や工場)で検査を行うと、空気中のアルコール蒸気が検知器に影響を与えることがあります。この場合、実際に飲酒していなくてもアルコール反応が出ることがあります。
6-5. 故障によって誤った数値が出る場合がある
6-5. 故障によって誤った数値が出る場合がある
アルコール検知器の故障や不具合による誤測定に注意が必要です。センサーは経年劣化し、使用環境やメンテナンスの状況によっても誤った数値が出ることがあります。正確な測定のためには、日々の点検や定期交換が重要です。アルコール除菌シートやスプレーを使用すると誤反応が生じやすいため、乾いた布で拭き取り、マウスピースはアルコールを含まない除菌剤で清掃しましょう。取扱説明書を読み、適切にメンテナンスを行いましょう。
アルコールチェックを導入する際に押さえておきたいポイント
続いては、アルコールチェックの導入時に押さえておきたいポイントを見ていきましょう。
7-1. アルコール検知器の取り扱いには注意する
7-1. アルコール検知器の取り扱いには注意する
現在、アルコール検知器を常に使える状態にして保有しておくことが義務づけられています。以下の点を中心に、定期的な保全管理を実施しましょう。機器によっては定期的にパーツの交換が必要なものもあります。紛失や故障に備えて予備機を用意しておくのもよいでしょう。
<保全管理として確認しておくべきポイント>
確実に酒気を帯びていない者がアルコール検知器を使用したときに、アルコールを検知しないこと
アルコールを含む液体をスプレーにより口内に噴霧した上で、アルコール検知器を使用した場合に、アルコールを検知すること
7-2. アルコール除菌には注意する
7-2. アルコール除菌には注意する
アルコールチェックをする際には、検知器に息を吹きかける必要があります。
使い回しをする場合、新型コロナウイルス感染を予防するために“消毒”を行うのが一般的ですが、アルコール除菌は誤感知の原因となってしまいます。
人数分の検知器を用意するか、あるいは次亜塩素酸ナトリウム水で消毒をする、といった誤検知防止の対策も考えておきましょう。
7-3. 自社内でのチェックフローを明確にしておく
7-3. 自社内でのチェックフローを明確にしておく
安全運転管理者の不在時や、直行直帰時など、アルコールチェックの対応フローについては自社内で明確にしておきましょう。対応方法が明確に共有されていない場合には、日常業務に支障が出てしまう可能性があります。
もしITツールを使用する場合には、高齢の従業員のITリテラシーも考慮して、わかりやすいマニュアルを作成しておく、といった対策も必要になるでしょう。
アルコールチェックの代行ならパーソルビジネスプロセスデザインへ
アルコールチェックの代行ならパーソルビジネスプロセスデザインへ
アルコールチェックの義務化に伴い、白ナンバー車両においても法律に則ってアルコールチェックを実施する必要があります。
アルコールチェックが適切に行われなかった場合には、ドライバーおよび企業側に行政処分や罰則が科せられるため、細心の注意を払いましょう。
安全運転管理者が多くの業務を抱えていて十分なリソースがない場合や、早朝深夜にドライバーのアルコール確認作業が生じる場合などには、アルコールチェックのアウトソーシングがおすすめです。
私たちパーソルビジネスプロセスデザインでは、『アルコールチェック代行サービス』を用意しています。お客様のニーズに合わせて24時間365日対応のコールセンターを完備しており、自社で体制を構築するよりも業務負担を抑制して実施することが可能になります。
アルコールチェックの代行について何かお困りのことがありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。