請求書の保管期間はどのくらい?保存年数や管理方法まで徹底解説

請求書の保管期間はどのくらい?保存年数や管理方法まで徹底解説

日常の経理業務のなかで、頻繁に発行したり受領したりすることの多い請求書。

その請求書の保管期間については、法人税法やその施行規則、所得税法、消費税法などで定められています。ただ、経済社会のデジタル化を踏まえて、近年ではその管理方法に関する規則が抜本的に見直されてきています。

2024年1月に施行された「電子帳簿保存法」改正により、電子取引による請求書などの電子保管が義務化されました。

そこで本記事では、請求書の保管期間や管理方法についてわかりやすく説明するとともに、保管の際に注意するべきことや効率的な請求書の管理方法について、ポイントをまとめて解説していきます。

目次

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    請求書は、モノやサービスの提供が行われた際、その提供した事業者(つまり「売り手」)が、提供された事業者(つまり「買い手」)に対して対価を請求するために発行する書類のことです。

    請求書は、「買い手」側の支払対価の根拠となることから、非常に重要な書類といえます。また、支払いの場面だけでなく、「会計士監査」の場面や「税務調査」の場面でも、それぞれ取引の正当性を証明するための書類として提出を求められることになります。

    請求書に記載されるべき項目

    請求書の形式については、消費税法における仕入税額控除のメリットを「買い手」が享受するという観点から、その適用を目的に一定の項目がしっかり記載されているかを重視するケースが多くなっています。

    さらに、2023年10月1日以降は「適格請求書保存方式」(通称:インボイス制度)が施行され、以下の8つの項目が記載されていない請求書については、原則として「仕入税額控除」の対象外となりました。必要な項目が記載されているかどうか、確認が必要です。

    1. 請求書発行者の氏名・名称
    2. 請求書発行者の登録番号
    3. 取引年月日
    4. 取引内容(軽減税率の対象の場合は、その旨)
    5. 税率ごとに区分して合計した税込対価の額
    6. 適用税率
    7. 税率ごとに区分した消費税額等
    8. 請求書受領者の氏名・名称

    他にも、請求書には取引事業者同士がスムーズにその内容について事実確認ができるよう、お互いの会社の住所や電話番号、担当者の名前などを記載していくことが一般的です。

    請求書の保管期間はどのくらい?

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    請求書は、法人税法やその施行規則、所得税法、消費税法などによって、一定期間の保存が求められています。それでは、保管期間は一体どのくらいなのでしょうか。

    請求書の保管期間を定めている法律は、3つあります。それらの法律によって適用される対象と期間が異なりますので、それぞれ確認していきましょう。

    (1)法人税法:7年間、もしくは10年間

    法人税法の適用対象となるのは、その名の通り法人です。

    法人税法では、帳簿において取引を記録させるとともに、その「取引に関して作成した書類」の保管を求めており、この「取引に関して作成した書類」に請求書およびその写しが含まれています。

    保管期間は、事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間です。


    確定申告書の提出期限は、各事業年度終了の日の翌日から2カ月とされています(延長の特例を受けた場合は4カ月)。ですから、例を挙げると下記のようになります。

    例)2023年3月31日が事業年度終了の法人の場合
    確定申告書の提出期限:翌日の2023年4月1日から2ヶ月後の2023年5月31日
    請求書の保管期間:2023年6月1日から2030年5月31日まで

    なお、法人税法施行規則(第26条の3)では別の規定がありますので注意が必要です。それは、「青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた事業年度、もしくは青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失金額が生じた事業年度においては、7年間ではなく10年間となる」ということです。

    ※参考:e-gov「法人税法施行規則」

    (2)所得税法:5年(ただし実務上は7年が望ましい)

    所得税法の対象となるのは、個人もしくは個人事業主です。

    所得税法では、法人税法と同様に、「帳簿」の保存と「日々の取引の状況を証明するための書類」の保管を求めています。この書類のうち「取引に関して作成し、又は受領した上記以外の書類」という分類のなかに、請求書およびその写しが含まれます。


    保管期間は、所得税法施行規則において「作成又は受領の日の属する年の翌年3月15日の翌日」から5年間とされています。こちらも下記に例を挙げてみましょう。

    例)請求書を2023年4月1日に作成・受領している場合
    「翌年3月15日の翌日」から5年間の保存義務
    →2024年3月16日から5年間の保存義務がある

    ただし、5年と規定されているからといって、5年間経過後に請求書を破棄することは、あまりお勧めできません。

    その理由として、1つは帳簿の保管が7年間とされていること。そしてもう1つは、後述する電子帳簿保存法において、仮に請求書をスキャナ保存する場合もしくは電子データで受け取った場合、「重要書類」として帳簿との関連性を確認できるようにしておくことが求められているからです。


    つまり、帳簿を7年間保存するのであれば、「重要書類」である請求書も7年間保存する必要があり、請求書を帳簿より先行して破棄してしまうことは、電子帳簿保存法違反となってしまう可能性があるのです。

    なお、個人事業主については、青色申告と白色申告の2種類の確定申告の方法がありますが、その区別なく同様の保管期間が求められています。

    (3)消費税法:7年

    法人・個人事業主ともに、消費税の課税取引を行って「適格請求書」を発行・受領した場合には、その保存期間は消費税法により7年間と定められています


    この7年間の起算点は「課税期間の末日の翌日から2月を経過した日」と定められています。こちらも下記に例を挙げてみましょう。

    例)課税期間の末日が2023年3月31日だった場合
    保管の起算点:翌日の4月1日から2カ月を経過した日であるため、2023年6月1日
    請求書の保管期間:起算点より7年間の保存義務なので、2030年の5月31日まで

    請求書を保管する際に注意すべきこと

    請求書の保管期間を見てきましたが、続いて「請求書の保管方法」とその際に注意すべき点について見ていきましょう。

    請求書の保管方法は「紙で受け取るか」「電子データで受け取るか」によって取り扱いが異なります。これを具体的に定めている法律が『電子帳簿保存法』です。


    電子帳簿保存法の改正は、デジタル社会への適応を目的としています。法的な手続きや証明書類などのデジタル化が進むなか、請求書の電子化によって経理業務の効率化や情報セキュリティの向上を図ることが狙いです。
    ビジネス環境の変化に対応するため、効率的な電子帳簿保存が必要となっているのです。
    これにより、紙による煩雑な保管作業を軽減し、データの安全性や検索の容易さなど、業務効率の改善が期待できます。


    電子帳簿保存法は、令和3年度税制改正、令和5年度税制改正と、2回にわたって大きく内容が改正されました。以下では、令和5年度税制改正後の最新情報に基づいて、具体的な保管方法と注意点を解説していきます。

    ※出典:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」(PDF)

    (1)紙で請求書を受け取った場合の注意点

    紙で請求書を受け取った場合、原本を紙の状態で保存することができます。また電子帳簿保存法により、紙で受け取った請求書は、スキャナやスマートフォンで読み取った電子データとして保存することもできるようになりました。

    スキャナ保存の際に要求される解像度は200dpiで、階調(色や明るさの濃淡)については、請求書の場合は原則として「カラー画像」です。

    保存する請求書の真実性を担保するために、タイムスタンプもしくは電磁的な記録を行ったことが確認できるような日時記録が必要です。ただし、「改ざんを防止するための規定を定め、それを守る」といった社内規定で代えることができます。


    また、検索についても「取引年月日」「取引金額」「取引先」から請求書を特定することができるようにしておかなくてはなりません。

    さらに、ディスプレイやプリンタなどを備え付けて、可視性も担保しておく必要があるでしょう。

    (2)電子データで請求書を受け取った場合の注意点

    2023年12月31日までは、電子取引で受領した請求書を紙にプリントアウトして、税務調査の際に提出できるようにする方法も可能とされていました。
    しかし、2024年1月1日以降、法人・個人事業主を問わず、電子データの状態で保存することが義務化されました。

    請求書を受け取った場合だけでなく、送った場合でも保存が必要となったのです。
    保存する際の注意点として、スキャナ保存の条件と同様に、保存する請求書の正しさを担保するために「タイムスタンプ」もしくは「電磁的な記録」を確認できるようにしておく必要があります。


    さらに、検索についてもスキャナ保存の場合と同様です。「取引年月日」「取引金額」「取引先」から請求書を特定することができるようにしておかなくてはなりません。

    実際の経理業務では、請求書は紙で郵送するよりも、EメールにPDFファイルなどとして添付して送付することが多くなっている企業も多いでしょう。

    国税庁による電子帳簿保存法の改正の意図としては「デジタル社会への適応」という点のようですから、より業務を効率化するという観点で法律を改正しているといえそうです。

    請求書の保管を電子化するメリット

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    請求書の保管について、電子データでの保存が義務化されたことで、業務改善が進んでいるのではないでしょうか。
    ここでは、請求書を電子データで保存するメリットを4点ほど挙げて解説していきます。

    メリット(1)保管スペースがいらないため、経営の効率化が図れる

    電子化する最大のメリットは、紙での保存に必要なスペースが不要になることです。

    請求書の保管期間が7年分という点を考えると、その保管に必要なスペースは膨大になります。すでに経理業務をされている方は、請求書などの証憑類を保管するための書庫や倉庫が身近にあるのではないでしょうか。

    それらのスペースを有効活用し、紙での保管に必要な管理費用を圧縮できることは、企業経営の効率化につながりますし、ひいてはコストダウンにもつながるのです。

    メリット(2)安全性が高く、盗難や災害に強い

    2点目のメリットは安全性です。紙の保管には、どうしても紛失や盗難、災害などによる「滅失」のリスクがつきまといます。一方で、電子データの保管はデジタルデータとして格納されるため、盗難や災害に強い保管方法だといえるでしょう。


    しかし注意しなければならないのは、ウイルスなどによるサイバー攻撃のリスクや、人為的に誤ってデータを消してしまったことによる紛失のリスクです。

    このようなケースに備えて、ウイルス対策のソフトウェアを導入することはもちろん、データをクラウド上に保管するとか、複製してバックアップデータをとり遠隔地のサーバーに保管するといったことが推奨されています。

    メリット(3)検索性が高く、見つけやすい

    紙による請求書の保存は、保存時にはファイルに入れて書庫などに保管するだけなので短時間で簡単に保存できます。しかし、次にその書庫から特定の請求書を探し出す際に、相当な労力を必要とします。


    過去の請求書を参照する機会があるのかというと、経理業務においては何度かそういった機会があります。会計士監査や税務調査などで特定の請求書の提示・提出が求められるケースです。

    電子データ化しておけば、検索をすることで短時間に資料を特定することができ、速やかに提示することが可能になるのです。

    メリット(4)管理する場所の柔軟性が高い

    スマートフォンなどでも使用できるさまざまなアプリケーションと組み合わせることで、時と場所を選ばない請求書の管理も可能になります。

    離れた場所から請求書の内容を確認したり、在宅勤務の際に、自宅から請求書をサーバーにアップロードして保管書類に加えたりすることも可能になるのです。

    請求書の保管を電子化するデメリットと対策

    ここまで請求書の保管を電子化するメリットについてお伝えしてきましたが、一方で電子化するデメリットも存在します。

    紙で受け取った請求書については、電子化する際に新たにスキャナ保存を行う必要があり、その際に相当な工数が必要になってしまうのです。

    また、電子データで受け取った請求書であっても、その保管に際してタイムスタンプをつける必要も出てきます。さらに、検索機能が備わっているかの確認を行い、不足している場合には必要な情報を補充したりするといった、新たな作業が発生します。

    このような作業への対策としては、今まで紙の請求書の保管や管理に携わっていた人たちを教育し、新たに「請求書を電子化するためのチームとして再編成する」という方法があるでしょう。


    しかし、そのような人的リソースがない場合や、電子化のノウハウに不安がある場合には、「業務をアウトソースして専門の業者に任せてしまう」といった対策も考えられます。

    自社で内製化するほうが良いのか、他社にアウトソーシングするほうが良いのかは、必要となるコストや社内の状況によって変わってきます。一度、専門業者に相談し、見積りをとるなどをしたうえで比較してみると良いかもしれません。

    見逃せない請求書保管のポイント

    請求書の保管には、法的な要件だけでなく、事業者としての効率性や安全性も考慮する必要があります。
    以下のポイントに留意することで、請求書の保管をスムーズに行えます。

    6-1. 納品書とのまとめ管理

    請求書には、納品書への参照番号を記載することを求められる場合があります。これにより、請求書が独立していても、納品書との関連性を明確にすることができます。
    請求書と納品書はセットで保存し、検索時に便利なまとめ管理を心がけましょう。

    6-2. クラウドを利用した保管

    請求書の電子保管には、クラウドを活用すると効果的です。
    クラウドストレージサービスを利用することで、保管スペースを節約しながらもセキュアな環境で請求書を保存できます。また、クラウド上のデータはバックアップや冗長化が行われているため、災害やデータの消失リスクを軽減することもできます。

    6-3. 無料の電子帳簿保存サービスを活用

    システムによる電子帳簿保存を導入するにあたり、初期費用やランニングコストが課題となることもあります。
    そこで、無料で利用できる電子帳簿保存サービスを活用することも1つの選択肢です。これらのサービスを利用することで、手軽に電子帳簿保存を始めることができます。ただし、セキュリティ対策や利用規約をよく確認し、信頼性の高いサービスを選ぶようにしましょう。

    6-4. データのバックアップとリカバリープラン

    電子的なデータはハードディスクの故障やデータの破損、サイバー攻撃などのリスクに晒されています。
    そこで、定期的なデータのバックアップを行い、リカバリープランを策定することが重要です。バックアップデータは複数の場所に保存し、保存場所ごとに冗長化させることで、データの喪失を防止することができます。

    6-5. データの整理と削除

    保管期間が経過した請求書や納品書は適切に削除することも大切です。
    保存の必要性がないデータを残しておくことは、データ管理の効率性を損なうだけでなく、データのセキュリティリスクを高めることにもつながります。必要なデータのみを選別し、定期的な整理を行いましょう。

    以上のポイントを踏まえながら、請求書の保管を適切に行い、経理業務の効率化と企業の情報セキュリティを確保しましょう。

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    請求書の保管業務はミスが許されないため、経理担当者にとって大きな負担となります。そこで、業務効率化を図るためにアウトソーシングを活用すると、業務品質を維持しながら経理担当者の作業時間を削減することができるでしょう。

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