営業プロセスとは
営業プロセスとは、営業活動における見込み顧客との商談から受注に至るまでの一連の流れを意味します。例えば「見込み顧客へのアプローチ」「アポイント獲得」「ヒアリング」「提案」「商談」「クロージング」「契約」など、営業活動を細かく分類したものが営業プロセスです。
多くの場合、営業活動は担当者の経験やノウハウに委ねられてしまうため、担当者が不在の際にスムーズな対応ができないといった問題が発生します。また、退職した場合の引継ぎがスムーズにできない点も課題の一つでしょう。
営業活動が属人化すると業務停滞や対応品質のバラつきが起こり、企業全体の不利益にもつながります。こうした営業の属人化を解消する上で重要なポイントが、営業プロセスの可視化です。
営業フローとの違い
営業プロセスと類似した言葉として「営業フロー」が挙げられます。どちらも営業活動を可視化することですが、対象となる範囲が異なります。
営業プロセスは営業活動における「骨子」であり、詳細な手順までは含みません。一方で営業フローは、営業プロセスの可視化によって洗い出された工程を踏まえて、手順も具体化します。
基本的な営業プロセス
営業プロセスは事業内容や取り扱っている商品、顧客層によって異なります。ここでは、一般的な営業プロセスとして5つのフェーズをご紹介します。
1.見込み顧客の発掘
まずは、自社の商品やサービスに対して興味がありそうなユーザーや、今後契約する可能性がありそうな見込み顧客を発掘します。例えば展示会やセミナーなどを開催して、興味のある方に情報を提供する方法が挙げられます。以前取引があった顧客に対して、DMや資料を送付する方法もあります。その他、オウンドメディアやWebプロモーションといったオンラインでも見込み顧客の発掘が可能です。
2.見込み顧客の育成
見込み顧客の発掘ができたとしても、商品やサービスに対する関心の度合いには違いがあり、必ずしも契約につながるとは限りません。確実かつ効率的に契約につなげるためには、見込み顧客との継続的な関係性を構築することも肝要です。
具体的には、メールマガジンやSNSなどを活用し、発掘した見込み顧客に対して有益な情報を発信する方法が挙げられます。多くの情報が飛び交う現代において、顧客は自分自身で情報を得ることが可能です。こうした中、競合他社と差別化を図るには、中長期的な情報発信やユーザーの行動分析が求められます。
また、関心が高い顧客に対しては、直接商品やサービスに関するプレゼンテーションを行ってもよいでしょう。その中で丁寧にヒアリングすれば、商談する際の参考になります。
3.商談
見込み顧客が商品やサービスに対して関心を示したら、実際に契約してもらうために商談します。商談では、具体的な活用方法や事例を提示しながら、顧客が抱える疑問を解決することが重要です。顧客に寄り添い、潜在的な課題を掘り下げていく必要があります。
商談を通して、顧客の不安や疑問を払拭した後に行う作業がクロージングです。クロージングとは顧客の意思決定につながる重要な段階であり、クロージングがうまくいかなければ契約不成立となるケースもあります。
安心して契約してもらうためには、強引にクロージングするのではなく、顧客の様子を踏まえてよきタイミングでまとめることが大切です。
4.契約・受注
クロージングによって顧客の購入意思を確認したら、契約・受注となります。このとき、商談の段階で伝えた契約金額や納期、支払方法など細かな取引条件に間違いがないかを確認することが大切です。万が一、相違点が発覚した場合は速やかにすり合わせして、互いに納得した上で契約手続きを進めます。
契約を交わす際も、顧客が疑問に感じることがあれば随時対応する必要があります。なお、あまりに事務的な対応になってしまうと不信感を与えかねません。契約は商談における最終段階ではありますが、商談中と同様に丁寧な対応を心がけることで継続した取引にもつながります。
5.顧客の育成
営業プロセスは契約や受注だけで終わりではありません。大切なのは顧客との関係を維持し、次なる受注へとつなげることです。そのためには顧客との接点を積極的に設け、よい関係性を築く必要があります。
そのためには、実際に商品やサービスを利用した顧客の状況・満足度の調査や、トラブルや問題が発生した際の速やかな対応などを心がけるとよいでしょう。
また、新規顧客からリピーターへとステップアップするには、顧客育成も重要になります。例えばアンケートを実施し、その結果を踏まえてニーズや課題に沿った情報を発信するのも一つの手段です。定期的に顧客とコミュニケーションを取りつつ効果的な情報を伝えることで、顧客との信頼関係が深まり次の受注が期待できます。
営業プロセスを可視化する6つのメリット
営業プロセスを可視化するとさまざまなメリットが得られます。主なメリットとして挙げられるのが以下の6つです。それぞれのメリットについて詳しく解説します。
進捗状況を明確化しやすい
営業プロセスの可視化によって、見込み顧客の発掘から受注、顧客との継続的な関係性を構築するまでの流れが明確になると、営業社員はもちろん他の社員も、稼働している取引がどの段階にあるかを把握しやすくなります。
取引がうまく進まない状況に陥った場合も、どのステップでつまずいているかを判断できるため、円滑にサポートすることが可能です。トラブルやミスが発生するたびに担当者に確認する手間が省け、時間短縮にもつながるでしょう。
また、時間や場所を問わず進捗状況の確認が可能になることから、リモートワークが浸透している企業でも的確なマネジメントができます。
営業活動のボトルネック・課題を発見できる
トラブルが発生した際に、もっとも問題となっている部分を「ボトルネック」といいます。ボトルネックを放置してしまうと、部署だけでなく企業全体の流れにも影響が出るため、速やかに解消しなければなりません。しかし、どこにボトルネックがあるかを見出せない場合も多いでしょう。
営業プロセスを可視化すると業務を俯瞰(ふかん)できるため、ボトルネックや課題を発見しやすくなります。例えば「顧客のニーズにマッチしていない」「クロージングのタイミングが悪い」など、案件ごとに状況を把握できれば、的確な改善策を立てることが可能です。
業務を切り出しコア業務に専念できる
営業の仕事は顧客とやり取りするだけでなく、提案資料の作成や顧客情報のファイリング、データ集計、発注業務など多岐にわたります。営業プロセスが不明瞭だと、こうした煩雑な業務を営業社員のみで対応することになりかねません。
一方で営業プロセスを可視化すると、営業社員がどのような業務を行っているかを明確にすることが可能です。その上で、事務作業を営業事務社員やサポートメンバーに振り分ければ、営業社員は受注活動に専念できます。
営業活動の属人化を脱却し標準化できる
営業活動は顧客ごとに担当者が決められるケースが多く、どうしても属人化しがちです。属人化した状態が続けば、担当者が休んだり退職したりした際にスムーズに対応できず、トラブルが発生しかねません。
こうした属人化を脱却する際に有効なのが、営業プロセスの可視化です。営業活動の流れが明確になると、あらゆる作業の要否を判断できます。その結果、営業活動の標準化を進められ、誰が担当しても同じレベルで対応できるようになります。
なお、業務標準化について解説した記事がありますので、併せてご参考ください。>>業務標準化とは?メリットや実現するための進め方を分かりやすく解説
>>業務の属人化とは?原因と標準化による対策方法をご紹介
受注率の向上が期待できる
営業活動におけるボトルネックを発見できることや、コア業務に専念できることで受注率の向上も期待できます。また、成績がよい営業社員のやり方を社内で共有し標準化を図れば、企業全体の受注率アップにもつながるでしょう。
これまで思うような結果が出なかった社員も、標準化された営業プロセスを踏まえて行動できるため、一部の営業社員に売上を依存することなく営業力を底上げできます。
ナレッジ・ノウハウの蓄積につながる
営業活動が属人化された状態では、社員ごとに保持しているナレッジやノウハウを共有できません。しかし、営業プロセスが可視化されると全体に情報が共有されるため、誰もがナレッジやノウハウを活かした営業活動ができるようになります。
例えば、失敗した事例も成功に向けての参考となるナレッジの一つです。また、提案方法やクロージングのタイミング、顧客とのやり取りなど細かな記録が蓄積されれば、営業だけでなく広報やマーケティングなどさまざまな部門で役立つでしょう。
なお、ナレッジの蓄積については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。>>社内ナレッジを蓄積する方法と業務に活用する際の注意点を解説
営業プロセスを設計・標準化する3つのステップ
営業プロセスを設計・標準化する際の一般的な手順は以下の3つです。各ステップについて解説します。
1.顧客の購買ステップを理解する
まず把握するべき大切なポイントは、顧客がどのようなプロセスを経て契約・購買へと至るのかという点です。自社の商品やサービスを認知してもらう段階から、深く興味を持って最終的に購入を決断するまでの一連の流れを具体的に辿り、理解する必要があります。
2.既存の営業プロセスを可視化する
顧客の購買ステップを確認した上で、自社が従来行ってきた営業プロセスを可視化します。購買ステップに合わせて自社が取るべき行動を検討しますが、この際、自社の利益や目先の行動に捉われてしまうと失注しかねません。顧客が得られる価値を最大化することを念頭に置いて、自社の行動を検討することが大切です。
また、他の部署と連携を取るフェーズもあるため「どのような情報共有が必要か」「システムの導入が必要か」など、営業部門だけでなく全体の流れを踏まえた上で可視化することが大切です。
3.営業プロセスごとの定義を明確にする
営業プロセスが可視化できたら、誰が担当しても同様の行動が取れるように定義を明確にする必要があります。例えば発掘した見込み顧客を育成する際、ヒアリングから始めることもあれば、商品のサンプルを用いてデモを実施する場合もあるでしょう。しかし、社員によって具体的な行動が異なれば、営業プロセスにズレが生じるだけでなく結果にも差が生まれる可能性があります。
勤務歴やスキルを問わず効率的に営業活動を進めるためには、フェーズごとに取るべき行動を明らかにし、全体の共通認識とすることが大切です。
営業プロセスを標準化させるために有効な手段
営業プロセスの標準化をスムーズに行う上で有効な手段として、以下の3つが挙げられます。それぞれの手段について解説します。
トークスクリプトやメールテンプレートの活用
トークスクリプトやメールテンプレートを活用して営業プロセスを標準化できます。トークスクリプトとは、お客さまとの会話に関して属性や質問内容、課題などそれぞれの状況に適した対応方法をまとめた台本です。例えば、営業成績のよい社員の会話術を共有できれば、営業スキルの統一化が期待できます。
また、見込み顧客に資料を送る際や商談後のお礼メールを送る際などに、同じような内容を送るケースが多々あります。雛形となるメールテンプレートを活用すれば時間短縮になる他、誤字脱字などのリスクも回避することが可能です。
ただし、あまりにもマニュアル化し過ぎてしまうと機械的な印象を与えてしまいます。柔軟な対応が求められるイレギュラーな事態では特に注意が必要です。
SFAツールの活用
SFAツールとは「Sales Force Automation」の略称で、営業支援システムを指します。顧客情報や進捗状況に加えて、過去の商談履歴なども記録できるため、営業活動におけるナレッジの蓄積に役立つツールです。
蓄積されたデータを分析し企業全体で活用できれば、より効率的で効果的な営業プロセスの構築につながります。また、Web上での情報共有・閲覧が可能で、場所や時間を問わず必要なデータを確認できる点もメリットの一つです。
ただし、SFAツールを導入したとしても、使いこなせる社員がいなければ効果を十分に発揮できません。社員によってはITに苦手意識を持つ方もいるため、活用時には十分なサポートが必要です。
そもそも社内の課題を正確に特定するには十分な分析が必要であり、自社だけで対応するのは難しいケースも多いでしょう。課題を見出したとしてもリソースを割けず、業務改善のPDCAサイクルを回せないことも考えられます。
アウトソーシングの活用
効率的に営業プロセスを標準化したい場合は、アウトソーシングの活用がおすすめです。営業プロセスの標準化だけでなく各プロセスの業務対応も依頼できます。
アウトソーシングと比較してトークスクリプトやメールテンプレートの活用は、自社で対応できるため費用はかかりません。また、SFAツールはある程度費用がかかるものの、アウトソーシングと比べてリーズナブルです。
しかし、効果を最大化させる場合は、営業プロセスの標準化に関する知識や経験が必要です。そのため、自社だけで営業プロセスを構築することが難しい企業も多いでしょう。
アウトソーシングでは、営業プロセスの構築に長けた専門家のサポートが受けられます。多少費用はかさむものの、自社の業務内容や状況を洗い出した上で的確に標準化できるため、効率的な受注率・売上アップが可能です。
営業プロセスの可視化はパーソルビジネスプロセスデザインへ
受注率や売上が上がらないといった悩みをお持ちの企業は、営業プロセスを見直す必要があります。そこで重要となるのが営業プロセスの可視化です。見込み顧客の発掘から受注・契約、顧客との継続的な関係性構築に至るまで、具体的に紐解くことが大切です。
今回ご紹介したステップを踏まえて営業プロセスを可視化できると、属人化しがちな営業活動の標準化につながります。その結果、企業全体の営業スキルの底上げを実現できるでしょう。
しかし、営業プロセスは業務内容や状況によってさまざまであり、自社だけで対応しても課題を見逃す可能性があります。より確実に営業プロセスを可視化し、標準化につなげるためには、アウトソーシングの活用がおすすめです。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、営業事務アウトソーシングの一環として、営業プロセスの可視化・標準化を行っています。多くのお客さまからご選択いただける理由として、業務全体の工数データを把握し、本来必要な工数やスタッフ育成に必要な時間を算出している点が挙げられます。なお、作業難易度を踏まえてスキルを分解し、担当者が入れ替わっても品質を担保できる仕組みの構築も可能です。
さらに、アウトソーシング活用後も業務品質の維持・向上のために、定期報告やステップアップ研修、業務改善のご提案などを行っています。営業プロセスの可視化に向けてアウトソーシングをご検討の方は、ぜひパーソルビジネスプロセスデザインへご相談ください。
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▼アウトソーシング・BPOサービスの導入事例