営業部門でよくある10個の課題と対策
営業部門でよくある課題として主に10個が挙げられます。課題を抱えた状態で営業活動を続けても思うような成果につながらないため、まずはよくある課題を把握した上で対策を取ることが肝要です。それぞれの課題と対策について詳しく解説します。
営業部門の課題 | 対策例 |
---|---|
組織的な営業活動が実施できていない | 営業サポートを行う部署を立ち上げて負担を分散する |
本来のコア業務に専念できていない | 業務を仕分けして効率化を図る |
業務が属人化している | 情報共有の体制を整えてマニュアルを作成する |
人材育成のノウハウ・リソースがない | 外部講師を活用する |
顧客管理ができていない | SFA(営業支援システム)を活用する |
新規開拓営業の効率が悪い | 営業戦略を立て直す |
営業部門とマーケティング部門の連携が取れていない | 目標を一致させて情報共有を徹底する |
営業成績に差がある | 属人化を解消して業務標準化を行う |
社員のモチベーションが上がりにくい | 評価制度を整える |
営業社員のスキルが不足している | 自己分析を通してスキルアップの機会を設ける |
1.組織的な営業活動が実施できていない
営業体制が整っていない企業で多く見られる課題が、組織的な営業活動が実施できていない点です。営業活動は見込み顧客の発掘や育成、商談、契約、発注、事務作業など多岐にわたります。本来であれば企業全体で営業活動を行い、複数人で連携して各業務を遂行することが望ましいです。しかし、十分に体制が整備されていない状態だと少数の社員ですべての業務を対応する必要があり、リソースがひっ迫してしまいます。
また、営業に関する業務は煩雑になりやすいため、社員間の連携が取りづらい状態だと特定の社員に負担がかかる場合があります。その結果、商談の機会が減るなどして売上の低下につながることが懸念されます。
【対策】営業サポートを行う部署を立ち上げて負担を分散する
営業活動を組織的に進めるためには、営業部門内に営業サポートを専門に担う部署を立ち上げることも対策の一つです。部門を分けて役割が明確になると、営業担当者は煩雑な業務から解放され、顧客との商談やアフターフォローなどに集中できます。
ただし部門が分かれると、組織間のコミュニケーションが取りづらくなる可能性があるため注意が必要です。営業活動をスムーズに進めるには、営業担当者とサポート担当者の連携が求められます。負担を分散したことで効率が下がらないように、密にコミュニケーションを取って認識のズレが発生しないようにすることが大切です。
2.本来のコア業務に専念できていない
営業活動の中には、顧客に提示する資料や契約書・見積書・請求書といった書類の作成、社内会議の準備、交通費の精算など多くの事務作業が含まれています。こうした事務業務は、細かな計算やリサーチが必要となるため、時間や労力がかかるケースが多いです。
営業担当者が事務作業まで抱えると、商談や顧客とのコミュニケーションに時間を割けません。本来注力すべき業務に専念できなければ売上達成にも影響が出る他、リソースがひっ迫して長時間労働につながることも懸念されます。
さらに、事務作業を進めるために休日出勤を強いられれば、疲労やストレスがたまって生産性も下がるでしょう。結果として業務負担により社員の離職にもつながりかねません。
【対策】業務を仕分けして効率化を図る
営業活動をスムーズに進めるには、現状行っている業務を事務業務と本来注力すべき業務に仕分けることが大切です。例えば書類作成やファイリング、経費計算などの業務は営業サポートを専門に担う社員に任せることで、営業担当者は商談や顧客とのコミュニケーションに注力できます。
さらに、事務業務の効率化を進める手段としてアウトソーシングの活用も効果的です。煩雑な業務をプロに任せられるため、人材不足に悩む企業でも営業業務を仕分けして効率化を図れます。
パーソルビジネスプロセスデザインでは営業事務のアウトソーシングを行っており、多くのお客さまにご活用いただいています。業務の標準化も進められるため、営業事務に関するコスト削減が可能です。
営業アシスタントの業務改善については、こちらの記事でさらに詳しくご説明しています。>>営業アシスタントの業務改善方法や標準化ステップを分かりやすく解説
3.業務が属人化している
営業活動では、社員ごとに担当する顧客が割り当てられるケースが一般的です。各担当者が個別で業務を進めるため、商談内容や進捗などが不透明になりやすく属人化につながります。
属人化が進むと担当者が休んだり退職したりした際に、他の社員が進捗状況を把握していないためスムーズな対応ができません。万が一、担当者と顧客の間でトラブルが起こった場合も、状況が分からなければ的確なサポートができず、問題が深刻化する恐れもあるでしょう。
また、属人化が進むとナレッジやノウハウの共有も不十分になり、顧客対応やスキルに差が出る点も課題の一つです。スキルや知識がある社員が退職した結果、業務品質が下がり、企業全体の不利益につながることも考えられます。
【対策】情報共有の体制を整えてマニュアルを作成する
属人化を回避するには、普段から情報共有しやすい環境を整えておく必要があります。社員間で情報共有ができれば進捗状況や顧客情報が可視化され、互いにサポートすることが可能です。また、ナレッジやノウハウの共有によって成績のよい社員のスキルが周知されると、企業全体における営業スキルの底上げにもつながります。
加えて、共有された情報をもとに業務マニュアルを作成することも大切です。マニュアルが整備されていれば、担当者が退職する場合でも対応品質を維持しながら業務を引継げます。
なお、属人化の原因や業務標準化については、こちらの記事で詳しくご説明しています。>>業務の属人化とは?原因と標準化による対策方法をご紹介
人材育成のノウハウ・リソースがない
人材不足が懸念される中、育成のためのリソースを十分に取れない企業も多いでしょう。加えて、ノウハウの蓄積やマニュアル整備が進んでおらず、人材育成を適切に進められないケースも考えられます。
このように社内の体制が整っていない場合や、社員が業務に追われてリソースを割けない状況では、人材育成を円滑に進められません。その結果、対応品質やスキルに差が生じてしまいます。
【対策】外部講師を活用する
自社のリソースだけでは人材育成に対応できない場合や人材育成に関するノウハウがない場合は、外部講師を活用するとよいでしょう。
費用は発生しますが、専門知識を持った講師に依頼することで、営業職に求められるノウハウを効率的に習得することが可能です。教育を受けた社員の自信にもつながり、現場での活躍が期待できます。
5.顧客管理ができていない
営業業務では顧客の個人情報や取引内容、購入履歴の記録など顧客管理の徹底が求められます。しかし、顧客数が増えたことにより管理が行き届かないといった課題を抱える企業は多いです。
顧客管理が不十分な状態では、ほしい情報を迅速に収集できず商談の機会を逃す可能性があります。担当者の変更があった際も顧客に関する情報を正しく引継げなければ、顧客との関係性に影響を及ぼすでしょう。さらに、情報管理のセキュリティ不足により個人情報を漏えいしてしまえば、企業としての社会的信頼を失うリスクも考えられます。
【対策】SFA(営業支援システム)を活用する
SFAとは「Sales Force Automation」の頭文字を取った言葉で、「営業支援システム」を意味します。営業部門における情報管理や蓄積されたデータの分析に役立つシステムで、顧客情報や案件管理、売上予測などにも活用可能です。
営業業務で活用するあらゆる情報を一元管理できるため、多部署との連携や引継ぎ時の情報共有などで重宝します。また、アクセス権限制御機能や暗号化機能などが搭載されているものを選べば、機密情報への不正アクセスを防止できるためセキュリティ対策にもつながります。
ただし、SFAを活用するためにはシステムに関する知識が求められます。ITに苦手意識を持つ社員がいる場合は、活用方法や意図を十分に説明してサポートすることが大切です。
6.新規開拓営業の効率が悪い
事業拡大や営業成績を上げるには、顧客数を増やす必要があります。しかし、新規開拓営業の効率が悪く、思うような成果が上がらないといった課題を抱える企業は多いでしょう。
いくらよい商品やサービスを取り扱っていても、ターゲットに訴求できなければ契約・受注には至りません。また、購買層によっては飛び込み営業や電話でのアポイントよりも、オウンドメディアやSNSを活用したアプローチが適している可能性もあります。
その他、既存顧客への対応に追われて、新規開拓営業に十分なリソースを割けないケースも考えられるでしょう。
【対策】営業戦略を立て直す
営業効率を上げるには、適切な営業戦略を立てることが肝要です。新規開拓営業がうまくいかない場合は、従来の営業戦略が曖昧になっている可能性があります。まずは自社の営業戦略を紐解いて、「どこに問題があるのか」「アプローチ方法は正しいか」「ターゲットは合っているか」を細かく見直します。
また、営業戦略を立てた当初とは社会情勢が異なっていることも考えられるでしょう。定期的に市場調査を実施し、変化し続ける顧客のニーズに対応することも重要です。
7.営業部門とマーケティング部門の連携が取れていない
近年、見込み顧客の発掘や育成をマーケティング部門に任せる企業が増えています。営業部門では商談や契約、受注を担当する分業制を採用している場合、各社員の負担は軽減されますが、部門をまたぐため情報共有がおろそかになりやすいです。
せっかくマーケティング部門で自社の商品やサービスに興味を示す見込み顧客を発掘できたとしても、引継ぎがうまくいかなければ成約につながりません。
【対策】目標を一致させて情報共有を徹底する
部門を超えて連携を図るためには、互いの意識を一致させることが肝要です。例えば、最終的な目標やターゲット層などが異なれば、各部門が尽力したとしても成果が上がりにくいでしょう。互いに同じ目標に向かって進むことで、より強固なタッグが組めるようになります。
また、情報共有の徹底も重要なポイントです。マーケティング部門がどのような流れで見込み顧客を発掘したのかを理解しておくと、営業部門で引継いだ際にスムーズな対応ができます。マーケティング部門も営業部門に引継いだ後の状況を把握できれば、自分たちの業務が売上につながっていることが理解でき、励みになるでしょう。
加えて、普段から部門間で気軽に交流ができる環境を整えておくと、日常的な会話の中から各部門に役立つ情報が得られる可能性もあります。
8.営業成績に差がある
営業社員のスキルやノウハウ、経験値によって営業成績に差が生まれる点もよくある課題です。企業によっては、特定の社員が達成した売上に頼ってしまうケースもあるでしょう。そのような状態では成績のよい社員が退職した際に、安定して利益を生み出せない可能性が出てきます。
企業全体の目標額を達成していると課題解決を後回しにしがちですが、特定の社員に負担をかけることにもつながるため速やかな対応が求められます。
【対策】属人化を解消して業務標準化を行う
営業成績に差が生まれる大きな理由は、業務標準化ができていないことです。担当者だけが各案件の進捗状況や顧客情報、営業プロセスなどを認識していると属人化が進みます。互いの状況が把握できなければ、営業成績が上がらない社員に対するフォローもできません。
そのため、まずは属人化した体制を解消する必要があります。成果を上げている社員の手法やナレッジを共有して、業務標準化を進めることが大切です。営業部門全体でナレッジの共有ができれば、企業全体の営業スキルも上がるでしょう。
営業プロセスの標準化については、こちらの記事で詳しくご説明しています。>>営業プロセスの基本を押さえる。可視化で自社の営業課題を解決
>>業務標準化とは?メリットや実現するための進め方を分かりやすく解説
9.社員のモチベーションが上がりにくい
社員のモチベーションは営業成績に直結します。士気が下がった状態ではパフォーマンスも下がり、結果的に売上にも影響を及ぼすでしょう。
日常生活を送る中でモチベーションが下がることは誰にでも起こり得ます。本人にモチベーションを上げるよう指摘したところで、自在に上がるものではありません。社員のモチベーション向上を図る場合は、企業全体で原因の改善に取り組む必要があります。
【対策】評価制度を整える
社員のモチベーションを維持するには、評価制度の見直しが効果的です。努力に見合った報酬が得られる環境を整備し、社員自身が企業に貢献している事実を実感できれば、モチベーションの向上につながります。
例えば、上司だけが評価するのではなく、同僚や後輩も含めた複数の社員から評価を受けられる「360度評価」を取り入れてみるのもよいでしょう。多方面から評価を受けることで、評価を受ける社員だけでなく他の社員も納得しやすくなります。
また、個人の目標が企業全体の目標の一部であると自覚してもらうことも重要です。目標の意図が不明瞭では、行動がおざなりになりがちでモチベーションも上がりません。企業成長における自分の役割を見出せればモチベーション向上につながり、営業活動のパフォーマンスも上がるでしょう。
従業員エンゲージメントを上げる対策を進めると、モチベーションアップにもつながります。従業員エンゲージメントについてはこちらの記事をご覧ください。>>従業員エンゲージメントを向上させる方法とは?メリットと測定指標
10.営業社員のスキルが不足している
営業成績が上がらない場合、社員のスキルが不足している可能性もあります。例えば「顧客ニーズをくみ取りきれていない」「商品の魅力や価値を伝えきれていない」「顧客との関係を構築できていない」などの悩みを抱える社員も多いでしょう。
営業社員に求められるスキルは多岐にわたります。ヒアリング力を高めて、商談時に顧客ニーズをくみ取る必要があります。また、商品やサービスについて正しく伝えるためのマーケティング能力や、顧客との信頼関係を深めるためのコミュニケーション能力も重要です。
【対策】自己分析を通してスキルアップの機会を設ける
スキルアップを図るためには、まず営業社員の現状を知る必要があります。そのためには普段の業務を振り返りながら、苦手な部分やうまくいかなかった点を洗い出します。
例えば、商談まで持ち込めるけれど契約に至らない場合は、クロージングに関するスキルが低い可能性があります。その他、見込み顧客の発掘ができない場合は、マーケティングについて学んだ方がよいでしょう。
自己分析を通して課題の把握・共有ができたら、スキルアップに向けた取り組みに移ります。企業側は定期的に研修やセミナーを開く他、場所や時間を問わず学習できるオンラインコンテンツを用意するなど、スキルアップの機会を設けることが大切です。
営業部門の課題を放置することへの懸念点
営業部門の課題を放置すると、以下のような懸念点が出てきます。
- 組織的な連携が取れず、特定の社員に負担がかかる
- 属人化が進み、担当者が不在の際に速やかな対応ができない
- 特定社員の売上に依存してしまい、退職した際に売上不振に陥る
- 見込み顧客の発掘ができず、売上低下につながる
- 既存顧客に対するフォローがおろそかになり、不信感をあおる
- 適切な顧客管理ができず、情報漏えいの恐れがある
これらはすべて企業経営を揺るがす恐れがあるため、放置するのではなく速やかな対処が必要です。
営業部門の課題を解決できれば安定した売上向上が図れる他、社員のモチベーション維持にもつながり、離職率の低下も期待できるでしょう。
営業の課題を解決するための手段
営業部門が抱える課題を解決するための手段は、主に以下に挙げる3つです。それぞれのメリットだけでなく懸念点もご紹介します。
SFAなどの営業支援ツールの活用
営業の課題解決にはSFAを活用するとよいでしょう。営業活動に関する情報を一元管理できるため、部署内だけでなく他部署との連携を図る際にも効果を発揮します。また、蓄積されたデータをもとに分析する機能もあり、見逃していた課題を見出す上でも役立つでしょう。
ただし、SFAを効果的に使うためには、ある程度ITに関する知識が求められます。ITに対して苦手意識を持つ社員が多い企業では、知識を持つ社員に任せきりになるケースも少なくありません。
そのため、SFAを活用する際は、誰もが理解できるアニュアルを作成することが大切です。その上で実際にSFAを使った社員にヒアリングし、マニュアルを見直すといったPDCAを回せれば、より効果的にSFAを活用できます。
研修サービスの活用
各社員の力量に任せる営業スタイルでは属人化が進み、企業全体の営業力を伸ばせません。一部の社員に依存するのではなく全社員で一丸となって売上を上げていくためには、企業全体で営業力を強化する必要があります。
そこで活用できるのが、営業力の育成に特化した研修サービスです。サービスを提供する企業によって内容はさまざまですが、新入社員に向けた営業の本質や基礎が学べるコース、リーダー向けの営業マネジメント力を高めるコースなど、対象者に合わせたカリキュラムが用意されています。
その他、商談力やプレゼンテーション力など、課題に合わせたカリキュラムを提供している研修サービスもあるため、自社の状況に合わせて選ぶことが可能です。
研修サービスを選ぶ際は、講師の経歴にも注目する必要があります。中には、説明はうまくても営業経験が乏しい方が講師を担っているケースもあるため、実績や経歴を確認した上で信頼できる講師の研修を受けることが大切です。
ただし、研修を受ける目的がはっきりしていないと課題の解決にはつながりません。事前に自社の課題を洗い出し、社員自身も研修を受ける理由を把握しておく必要があります。研修後には振り返る時間を設け、研修の目的が達成できたかを確認することが大切です。
アウトソーシングの活用
社員の営業力が不足しており、思うように成績が上がらないと悩んでいる場合は、営業専門のアウトソーシングを活用することで課題解決が期待できます。営業に関する知識や経験値、スキルの高い人材に業務を任せられるため、人材の新規採用や育成にかかるコスト削減も可能です。
また、営業事務や受発注などに追われて、本来注力すべき商談や顧客とのコミュニケーションに専念できないといった課題を抱えている方は、営業事務のアウトソーシングを活用するとよいでしょう。
アウトソーシングを活用する際の留意点としてコストがかかる点が挙げられますが、経験豊富なプロがサポートするため、効率的な課題解決が可能で費用対効果も期待できるでしょう。
営業部門の課題解決のお悩みはパーソルビジネスプロセスデザインへご相談ください
営業は企業経営で重要な部門であり、課題があれば速やかな解決が必要です。課題を放置してしまえば属人化の浸透やさらなる売上低下、顧客からの信頼低下などさまざまなリスクが考えられます。しかし、煩雑な業務に追われる中で、具体的な課題を把握できずに困っている方も多いでしょう。
自社だけでは課題の洗い出しや改善が難しい場合は、アウトソーシングの活用が適しています。現状の調査や改善策の提案、経験豊富なプロの業務サポートを受けられるため、スムーズな課題解決が可能です。
パーソルビジネスプロセスデザインでは営業事務アウトソーシングを行っており、多くのお客さまにお選びいただいています。煩雑になりがちな営業事務をサポートすることにより、お客さまがコア業務に注力いただける他、非定型な業務においても最適なリソースデザインをご提案しています。
また、お客さまのもとへ訪問して実際の様子を確認し、担当者さまからヒアリングした上で、システムの活用や業務の自動化などのご提案も積極的に行っています。営業部門に関する課題解決に向けてアウトソーシングをご検討の方は、ぜひパーソルビジネスプロセスデザインへご相談ください。
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