見積業務とは
発注を受けた商品やサービスの金額、数量、納期などの取引内容を提示する書類を見積書といいます。見積書を作成し、お客さまに提出するまでの流れが見積業務です。
見積書はお客さまが発注の可否を判断する際に重要な書類であり、受注者との認識のズレを回避する上でも欠かせません。見積業務は営業成果に少なからず影響を与えることから、正確で迅速な対応が求められます。
見積業務の主な業務フローは以下の通りです。
- 見積価格の算出
- 見積書の作成
- 見積もりの申請・承認
- 見積書の提出
- データの一元管理
それぞれの工程について、以下で詳しく解説します。
1.見積価格の算出
お客さまから発注を受けた商品やサービスにかかる価格の概算を算出します。あくまで大まかな金額を計算する工程ですが、見積書の精度を上げるためにはこの段階で細かく作業を洗い出し、価格に反映させることが大切です。例えば材料費や送料に加えて、工数を踏まえた人件費なども見積価格に加える必要があります。
2.見積書の作成
算出した見積価格を踏まえて見積書を作成します。見積書は、お客さまが契約するか否かを判断する重要な書類の一つです。また、見積書の内容が正しく伝わらなければ、契約後にトラブルが起こる恐れも考えられます。そのため、見積書は具体的かつ慎重に作成する必要があります。
なお、見積書に記載する一般的な項目は以下の通りです。
タイトル・宛先・通し番号・発行者の情報・発行日・有効期限・納期・見積内容・見積金額 などこのうち発行者の情報には企業名、住所、電話番号、担当者の名前を記載する必要があります。また、見積内容には商品名や単価、個数などの商品情報を記載するケースが一般的です。
3.見積もりの申請・承認
作成した見積書は管理職に申請して承認を受ける必要があります。見積書は大きな契約にもつながる書類であり、社員個人では判断しづらいことも多いでしょう。また、ミスなく適正な見積価格を提示することや、属人化を防ぐためにも、上長への見積書の申請・承認は大切な工程です。
一般的には、提出予定の見積書とその内容を説明する書類を添え、内容によって決裁権限を持つ管理職に回覧します。見積内容に問題があれば、この段階で調整します。
4.見積書の提出
見積内容が問題ないと社内判断の後、お客さまに見積書を提出します。主な提出方法として「郵送」「メール」が挙げられます。見積書は特定の受取人に提出するものであり「信書」に該当するため、宅配便は使えません。なお、最近では見積書をメールで提出し、データで保管するケースが多いです。
5.データの一元管理
見積書を提出した後は、自社において見積内容を管理する必要があります。見積書をデータ化して一元管理することで、過去の情報や進行中のプロジェクトに関する見積内容を随時確認することが可能です。
見積書の作成では仕入値を確認したり、他の営業担当者が算出した相場を踏まえたりと、他部署との連携も必要になります。一元管理ができていないと一つひとつの工程に手間がかかり、見積書の発行までに時間がかかるでしょう。
一方でデータの一元管理が浸透していれば、こうした手間を削減できます。また、見積書をPDFに変換してメールで提出し、ブラウザで確認することも可能なため、ペーパーレス化も可能です。
見積書作成における課題
見積書を制作するソフトや管理システムが数多くありますが、それでもExcelを活用している企業は多いでしょう。Excelは見積書に限らず、さまざまな業務で活用できる表計算ソフトです。活用範囲が広く、手軽に見積書の作成ができる点はメリットといえます。
一方で、Excelを使った見積書作成における課題も多いです。主な課題として以下の4点を解説します。
積算の精度が低い
見積価格では材料費や人件費など、製品を提供するまでにかかる経費に利益を加えて算出します。適切な見積もりを作成するためには、原価情報を踏まえた計算が必要です。しかし、Excelでは原価情報がまとめられた資料との連携が取りづらく、見積もりの作成に手間がかかります。
また、見積もりでは確認すべき項目が多く、Excelからの転記時にミスが起こりやすい点も課題の一つです。小さなミスであっても積算に影響すれば、大きなトラブルにつながりかねません。
属人化しやすい
Excelは多くの企業が採用しているソフトであり、見積作成にも役立ちます。しかし、数字を入力するだけでなく関数も使いこなす必要があるため、苦手意識を持つ方も多いでしょう。その結果、Excelやパソコンに関する業務が得意な社員に負担がかかり、属人化しやすい点も課題の一つです。
見積作成は日常的に発生する業務の一つであり、属人化してしまうと担当者が異動・退職した際に支障をきたします。また、特定の社員が管理するパソコンに見積書が保存されている場合には、必要時に担当者が不在で確認できないこともあるでしょう。その結果、お客さまを待たせてしまった場合、今後の取引にも影響を与えかねません。
情報を共有しづらい
Excelで見積書を作成する企業では、作成した社員が個人的に管理するケースがあり、他の社員と情報を共有しづらい点も課題の一つです。適切な見積価格をスムーズに算出するためには、過去に作成した見積もりや単価情報などを踏まえて積算する方が効率的ですが、情報共有がおろそかになってしまうと各担当者が改めて一から算出することになり手間がかかります。
一方で情報共有がスムーズにできれば、社内はもちろん社外にいても必要な情報を得られます。その結果、移動時間やテレワーク中でも、時間を無駄にすることなく誰でも見積業務を遂行することが可能です。
承認から提出までに時間がかかる
Excelで見積書を作成する場合、承認から提出までに時間がかかります。見積書は契約に直結する書類ということもあり、できる限り速やかに提出したいと考える担当者は多いでしょう。しかし、Excelで作成した見積もりを承認してもらうためには、以下のステップが発生します。
- 見積書の印刷
- 回覧
- 承認・押印
- 承認された見積書をPDF化
- メールで提出
見積書の内容によっては、複数の管理者に確認してもらう必要があります。近くに管理者がいる場合はパソコン上でも確認を依頼できますが、部署が違ったり出先だったりする場合は各工程で時間がかかるだけでなく、紙に印刷してから回覧することもあるでしょう。
さらに、承認を得た後は押印が必要です。その上で書類をPDF化してお客さまに提出します。電子印鑑を採用していれば、承認後の押印から提出までの流れをパソコンで対応できるため、時間を短縮できるでしょう。しかし、電子印鑑を使用していない企業では、見積書を印刷してから押印しなければなりません。押印した見積書をスキャナーで読み込む作業も加わるため、ますます提出までに時間がかかります。
見積業務を効率化するポイント
手間がかかり属人化しやすい見積業務ですが、要点を押さえれば効率化することも可能です。主なポイントとして、以下の3つを解説します。
過去の見積もりをデータ化して一元管理する
これまで対応してきた見積内容をデータ化して一元管理すると、あたらしく見積書を作成する際に役立ちます。特に同様の案件を受けた場合、以前の情報があれば一から細かくデータを拾い出す必要がありません。以前の情報を参照することで、よりスムーズに見積書を作成できるでしょう。
また、見積書の形式を統一できる点も一元管理のメリットです。データ化して一元管理できていない場合、どうしても担当者ごとに体裁がバラバラになってしまいます。統一されていない見積書は承認時間を遅延させる要因の一つです。一方で体裁が統一化された見積書であれば一目で確認しやすく、承認から提出までの時間短縮も可能になります。
承認フローを電子化する
見積書の承認フローを電子化する方法も、効率化する上で大切なポイントです。アナログ方式だと、承認の度に印刷・押印しなければなりません。承認を担当する管理者が社内にいればよいですが、外回りやテレワークをしていることもあるでしょう。この場合、出社するのを待つ必要があり、お客さまへの提出が遅れます。
一方で承認フローを電子化すると、Web上で確認することが可能です。パソコンやスマートフォンなどの媒体があり、インターネット環境が整っていれば、時間や場所を問わず承認作業ができるようになります。
見積提出メールを半自動化する
一般的に見積書の提出はメールを使って行います。郵送やFAXに比べると効率的な方法ですが、メールを送る際はその都度文面を作成し、承認された見積書を添付する作業が必要です。一日のうちに複数の見積書を送る場合、こうした細かい作業も積もり積もって大きな手間となります。
そこで、見積提出を効率化させる上で役立つ方法が半自動化です。見積提出用のテンプレートを作成し、ワンクリックでメールを送信できる環境を整えておくと、メールを作成する手間が省けてスムーズに提出できます。
見積業務を効率化におすすめの方法
見積業務はExcelを活用した方法だけではありません。より効率的に作業を進めるのであれば、「見積作成ソフト」や「アウトソーシング」の活用もおすすめです。それぞれの方法について解説します。
見積書作成ソフトの活用
見積書作成ソフトとは、見積書の作成から承認、提出まで一連の流れを一貫して対応できるソフトです。テンプレートに沿って必要な項目を入力するだけで、簡単に見積書を作成できます。また、過去のデータ管理も同時に行えるため、Excelに比べて適正な見積書を作成しやすいでしょう。
その他、紙媒体では時間や手間がかかっていた、承認から提出までのフローを円滑化させる上でも見積書作成送付ソフトが役立ちます。多くの見積書作成ソフトで、メール送付やリンク共有を1クリックで行うことが可能です。
さらに、会計システムと連携できるソフトも多く、請求書や領収書、帳簿への反映も自動的に行われるため、効率化や転記ミスの防止も期待できます。
営業事務のアウトソーシングを活用
見積書の作成を含む営業事務全般を、アウトソーシングに依頼する方法もおすすめです。見積書の作成は外回りする営業社員が担当するケースも多く、見積書作成のようなバックオフィス業務を兼任することで、本来注力したい業務にリソースを割けず売上の停滞につながる恐れもあるでしょう。忙しい業務の中で正確性が問われる見積書を作成すると、人為的ミスが増えることも考えられます。
一方で、営業事務に関する豊富な知識を持った外部企業に見積書の作成を任せることが出来れば、営業業務にリソースを割くことが可能です。また、適正な見積書をスムーズに提出できるため、取引先との良好な関係の構築も期待できるでしょう。
見積業務の効率化ならパーソルビジネスプロセスデザインへ
見積業務は契約に関する重要な業務の一つであり、正確性やスピードが求められます。しかし、従来のExcelを活用した方法では見積書の作成や承認に時間がかかり、お客さまへの提出が遅れることが懸念点です。提出が遅れれば商機を逃す可能性も高く、見積業務に関する課題を抱えている企業も多いでしょう。
見積業務を効率的に進めるためには、見積書作成ソフトやアウトソーシングの活用がおすすめです。特にアウトソーシングであれば、担当者がこれまで見積業務に割いていたリソースを確保できるだけでなく、営業社員が本来注力したい営業業務に集中できます。なお、アウトソーシングを活用する際は、自社の課題を可視化し最適な提案をしてくれる事業者を選ぶことが重要です。
パーソルビジネスプロセスデザイン では、営業事務アウトソーシングの一環として見積業務のサポートにも対応しており、多くのお客さまにご選択いただいています。その理由としてメーカーやIT、建設業、商社など幅広い業種に対応している点が挙げられます。現状の課題を把握した上で経験豊富な人材を適切に配置するため、効果的な見積業務のサポートが可能です。
見積業務を含む営業事務のアウトソーシングを検討している方は、ぜひパーソルビジネスプロセスデザイン にお問い合わせください。
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