PBT(Paper Based Testing)とは
PBTとはPaper Based Testingの略称で、紙を使用したアナログな試験手段です。紙に記載して問題に解答するといっても、記述解答するタイプは少なくなっています。代わりに、択一問題が多く、マークシートに色を塗って解答する形式が主流です。
PBT形式では、受験者は会場で他の受験者と肩を並べて一斉にテストを受けます。年に一度しか開催されない人気の試験などでは受験者数も多く、主催者は規模の大きい会場を確保する必要があります。
ひとつの会場に収まりきらないようであれば、他の施設も確保したうえで、同じ日時に同じ問題で試験を実施しなければなりません。そのためにスタッフを確保して教育し、複数の試験会場を同時に運営することになりますが、手間がかかるため年に何度も実施するのは困難です。
さらに、感染症が懸念される昨今では、「何百人も集まる会場で試験を受けるのは避けたい」と考える受験者も多くいます。そこで現在は、次に解説するCBTやIBTが注目されてきているのです。
なお、『PBT』という単語は、デジタル形式で試験を受けるCBTやIBTと比較するために作られた言葉だと考えられています。
1-1. CBT(Computer Based Testing)との違い
1-1. CBT(Computer Based Testing)との違い
CBTとはComputer Based Testingの略称で、パソコンを使った試験手段です。試験会場で受験する必要がある点はPBTと同じですが、パソコンが用意されている点が異なります。
主催者は、パソコンが設置してあるテストセンターを試験会場として確保し、試験を実施します。そして受験者は、用紙に鉛筆で解答するのではなくパソコンを操作して受験する、というのがCBTの大きな特徴です。
そのため、受験者には最低限のパソコン知識が必要です。高度で複雑なパソコンスキルは必須ではありませんが、少なくともパソコン画面やマウス操作に慣れておく必要があるでしょう。
また、CBTは、試験問題をシステム上で作成できるため、試験日を年に何度も設定しやすい点が、PBTとの大きな違いです。紙に印刷する必要がないので、試験問題を柔軟に変更できます。年に何度も受験できる機会を設けられますので、受験者数の増加が見込めるでしょう。
さらに、出題方法や採点基準を統一しておくと、試験日が違っても同等のレベルで出題や採点ができるようになる点も、CBTの特徴といえます。
1-2. IBT(Internet Based Testing)との違い
1-2. IBT(Internet Based Testing)との違い
IBTとはInternet Based Testingの略称で、インターネットを使った試験手段です。紙を使わないのはもちろん、パソコンだけでなくスマホやタブレットでも受験できるのが特徴です。つまり、受験会場に行く必要はなく、インターネットに接続されていれば世界中のどこからでも受験できるのがPBTやCBTとの違いです。
現地でスタッフを雇用し、会場を借りて試験を運営するなどの必要がなくなりますので、主催者としてはコスト削減が期待できます。
また、団体受験の申し込みがあり、PBTやCBTでは会場のキャパシティ不足で日程を調整できない場合でも、IBTで自宅や会社から受験できれば問題ありません。さらに、大人数の受験であっても、感染リスクが軽減するどころか会場に赴く必要がないので感染症対策をする必要もありません。
しかし、不正行為のリスクが高いのがIBTのデメリットです。PBTやCBTなら試験会場で決められた場所に着席し、受験するためカンニング防止対策を講じやすくなります。一方でIBTは、適切なモニタリングシステムがなければカンニングしやすい受験環境です。主催者は受験者を公平に評価できなくなるため、カンニング防止に向けた対応が必須といえるでしょう。
CBTやIBTと比較した場合の、PBTのメリット
紙ベースで試験を実施するPBTのメリットを、CBTやIBTと比較しながら解説します。
PBTのメリット(1)大規模な試験実施が可能
PBTのメリット(1)大規模な試験実施が可能
PBTでは、パソコンを準備する必要がありません。会場やスタッフさえ確保できれば、受験者が1,000人以上の場合でも対応できるのがメリットです。
一方、CBTではパソコンを1,000台以上集めて一箇所に設置して管理するのは非常に難しくなります。1,000人規模の試験をCBTで実施するなら、複数の会場をおさえるか、出題内容を変更して別日程で実施する必要があるでしょう。しかし、その場合には手間やコストがかかってしまうのがリスクです。
ですから、ひとつの会場でも席数に問題がなければ一斉試験を実施できるのが、PBTの大きなメリットなのです。
PBTのメリット(2)1回の受験者数が多ければ単価が下がる
PBTのメリット(2)1回の受験者数が多ければ単価が下がる
PBTは、受験者数が多く大規模で実施できる場合、“コストパフォーマンスが高くなる”というメリットがあります。
PBTの実施に含まれるコストは、会場使用料、スタッフへの報酬や手配料金、問題用紙や解答用紙で発生する費用などです。これは、受験者数がたとえ1人だけであっても発生する経費となります。
ただ、受験者数が多くなると、受験者1人当たりにかかるコストは低くなります。もし受験者の増加や規模拡大が見込めるなら、PBTはコストパフォーマンスが高いといえるでしょう。
一方、CBTでは1名当たりの単価が決まっているケースが多くあります。CBTの方が収益の見通しはつきやすいですが、受験者数が増えるとその分コストも増加する点が、PBTとの違いです。
PBTのメリット(3)一斉試験で同じ試験を受けるため公平性を担保できる
PBTのメリット(3)一斉試験で同じ試験を受けるため公平性を担保できる
PBTは、全国の複数の会場で試験が実施されたとしても、「一斉試験」である点が特徴のひとつです。同じ日時に同じ出題内容で受験し、さらに誰もが使い慣れた紙とペンを使うため、公平性を担保しやすいのがメリットです。
一方、CBTやIBTは「随時試験」で開催されます。パソコンやスマホで受験できますが、操作に慣れていなければ公平性は失われてしまうでしょう。
CBTやIBTには、毎日のように受験できる資格試験もあります。しかし、出題される問題のレベルや採点基準が統一されていなければ、受験するタイミングによって合格基準に差が出てしまいます。
その点、一斉試験のPBTは公平性を担保しやすいので、CBTやIBTよりも試験への信頼感がより高まるでしょう。
CBTやIBTと比較した場合の、PBTのデメリット
次に、PBTのデメリットを、CBTやIBTと比較しながら解説します。
PBTのデメリット(1)受験会場が限定される
PBTのデメリット(1)受験会場が限定される
PBTでは受験会場が主要都市に限定されてしまう点が、デメリットのひとつです。特に、大規模試験を実施する場合、複数の場所を確保するのが難しくなるでしょう。
さらに、受験者数が多い一斉試験では、受験会場の運営は容易ではありません。ノウハウのあるスタッフを多く確保する必要があり、会場準備に手間や時間がかかります。そのため、一斉試験では規模を拡大していくのが難しいといえます。
その点、CBTは随時試験のため受験者を分散でき、会場もPBTと比べて小規模でも問題ありません。主要都市だけでなく、地方も含め全国で試験会場を見つけやすいのが特徴です。IBTならインターネットにつながっていればどこからでも受験できる点が特徴的ですし、会場をおさえる必要もなくなります。
CBTやIBTは受験会場が限定されず、PBTと比べて受験者の利便性が高まるため、受験者数の増加など規模の拡大も期待できるでしょう。
PBTのデメリット(2)トラブル時の再受験など対応が難しい
PBTのデメリット(2)トラブル時の再受験など対応が難しい
試験当日に大雪や地震など自然災害やパンデミックが起こり、受験者が会場まで来ることができない場合など、「再受験の対応が難しい」点はPBTのデメリットといえます。
PBTは一斉受験が前提であるため、当日来ることができなかった受験者は次の試験まで待たなければなりません。しかし、PBTは年間での試験回数が少なく、最悪のケースでは1年空いてしまうこともあります。
その点、CBTやIBTは随時試験のため、たとえ当日試験が受けられなくても、申し込みが間に合うなら翌日でも対応可能です。このように、CBTやIBTと比べて、PBTは柔軟性がなくトラブルに弱いというデメリットがあります。
PBTのデメリット(3)結果通知までに時間がかかる
PBTのデメリット(3)結果通知までに時間がかかる
PBTは紙ベースで実施されるため、採点や集計に手間がかかります。そのため、結果が出るまでに時間がかかる点がデメリットといえます。
PBT形式で実施する場合、試験会場で解答用紙を回収し、人数分の提出があるかスタッフが確認する必要があります。問題がなければ自社や採点を処理するサービス会社に送付し、マークシートを読み取り採点作業を進めます。
採点後、集計して結果を紙で発送する場合、通知書に印字して受験者に送付するのが一連の流れです。試験によっては、通知まで1ヶ月以上かかるケースも見られます。
一方、CBTやIBTでは試験の受験から採点、集計や分析までシステムで処理されるため、通知の早期化が可能です。受験者は期間を空けずに結果がわかるので、満足度向上に貢献できるでしょう。
PBT・CBT・IBT、どの形態の試験を実施すべき?
ここまでPBT・CBT・IBTの特徴や違いを説明してきましたが、「どの試験を実施すべきか」と疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれません。そこで、ここではさまざまなケースを取り上げ、どの試験形式が向いているか解説します。
4-1. 受験者の年齢が幅広いならPBT
4-1. 受験者の年齢が幅広いならPBT
試験の種類によっては受験者の年齢に幅があり、パソコン操作に慣れていない高齢者が受験することもあります。その場合、紙とペンで受験できるPBTを実施すると良いでしょう。
パソコンを使ったことがあっても、パソコン受験に慣れているとは限りません。そこで、PBTで受験することができれば、ITリテラシーに左右されず誰もが試験に挑めるようになります。
“デジタルネイティブ”と呼ばれる若い世代も同じ試験を受験するなら、PBTだけでなくCBTやIBTも設置しておくと利便性が高まります。受験者の年齢に応じて、どの形態が必要か判断しましょう。
4-2. 天候や災害リスクを避けたいならCBT・IBT
4-2. 天候や災害リスクを避けたいならCBT・IBT
天候や災害リスクを避けて試験運営したい場合、CBTやIBTを導入しましょう。2020年の新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、PBTから自宅で受験できるIBTに移行する試験も増えています。
CBTやIBTなら年間の試験回数がPBTよりも多いので、当日のトラブルで受験ができなくても、柔軟に日程を変更できます。受験者の満足度を高めたい場合には、CBTやIBTを検討すると良いでしょう。
4-3. 受験者の利便性を最も高めたいならIBT
4-3. 受験者の利便性を最も高めたいならIBT
受験者の利便性を最も高めることを目的にするなら、インターネット経由で試験を実施できるIBTが効果的です。受験者は会場に赴くことなく、世界のどこからでも受験できるからです。さらに、普段から使い慣れたデバイスで受験できるのも、IBTのメリットのひとつといえるかも知れません。
また、デジタル採点で試験結果を即座に出せるので、受験者を待たせることがありません。受験者の利便性を向上したいなら、IBTの導入を検討しましょう。
PBT・CBT・IBTの判断に迷ったら
PBT・CBT・IBTの中で、どの試験形式が向いているか判断に迷ったら、アウトソーシング事業者に相談しましょう。試験運営の代行業者に問い合わせると、現状や試験の特徴、規模といった条件から「どの形式が適切か」というアドバイスをもらえます。
さらに、必要に応じて試験運営業務を委託できます。規模が拡大し社内で対応しきれなくなった下記のような業務は依頼することが可能です。
- スケジュール管理
- 受験当日の会場運営
- 採点業務
- 結果通知
- 証明書の発行、発送
試験運営のプロにアウトソーシングすることができるため、品質が高まり顧客満足度の向上も期待できるでしょう。
特に、インターネット経由で受験するIBTは比較的新しい試験形式で、専用システムがなければ試験実施が難しい可能性があります。IBTはカンニングなど不正が発生しやすいため、厳格性を担保できるシステムの導入が重要です。
アウトソーシング事業者に依頼する際には、どのようなサポートが受けられるかを事前にしっかりと確認しておきましょう。
資格検定のアウトソーシングならパーソルビジネスプロセスデザインへ
資格検定のアウトソーシングならパーソルビジネスプロセスデザインへ
PBTは一斉試験で実施され、受験者数が多ければコストパフォーマンスが高くなるのが特徴です。また、受験者は紙とペンでテストを受けられるので、公平性を担保しやすいというメリットがあります。
パソコンを使用するCBTやインターネット経由で受験するIBTは、随時試験のためテストを受けられる機会が多く、受験者にとって利便性が高い点がメリットといえるでしょう。
それぞれにメリットやデメリットがあり、どの試験形式が自社に向いているか判断するのが難しい場合には、アウトソーシング事業者に相談すると効果的です。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、「資格検定アウトソーシング(IBT/PBT)」をご提供しています。紙ベースのPBTとインターネットベースのIBTに対応しており、システム開発から試験後の処理までお任せいただけます。
IBTで問題になりがちな不正行為を防止するために、リアルタイム監視を実施しているのも大きな特徴です。これにより、PBTと同様に厳格性を担保しながら試験を実施することができます。資格検定アウトソーシングをご検討の場合、ぜひパーソルビジネスプロセスデザインにご相談くださいませ。