アウトソーシングとはどのような意味なのか
アウトソーシングの意味
アウトソーシング(Outsourcing)とは、業務に必要な人やノウハウを社内の外(アウト)から調達(ソーシング)する経営戦略のひとつです。アウトソーシングのうち特にビジネスのさまざまなプロセスを外部に委託する動きをBPO(Business Process Outsourcing)といいますが、BPOは近年において拡大傾向にあります。
たとえば、5つのプロセスの業務があったとして、1つだけのプロセスをアウトソーシングしていた企業が2つ3つと委託する範囲を増やすことも多くなっています。そもそも業務プロセスを決める最初の段階からアウトソーシング企業に入ってもらうという動きも増加しています。
矢野経済研究所が実施した「国内BPO市場規模推移・予測」によると、「2023年度のBPOサービス市場は委託業務内容の拡大に加え、官公庁においても外注化機運が高まっている」とし、「今後も拡大基調で推移する」と予測されています。
下図からも分かる通り、BPOサービスは今後も拡大していくといえるでしょう。
アウトソーシングの需要が高まる背景
ではなぜ、近年になってアウトソーシングの動きが拡大しているのでしょうか。その理由として大きく関係しているのは「労働人口の減少」です。
株式会社帝国データバンクが調査した結果によると、2022年9月時点で正社員の人手が不足している企業の割合は50.1%となっており、新型コロナウイルスの感染拡大後としては最大となったようです。つまり、「人手が不足している」と感じる企業が増え続けているといえるでしょう。
※引用: <速報>人手不足に対する企業の動向調査(2022年9月) | TDB景気動向オンライン
人手不足に陥ってしまうと、どうしても自社の業務を社内だけで行うことは難しくなってしまいます。そこで、コア業務へ専念できる体制を整えるために、ノンコア業務をアウトソーシングするようになるのです。
このように、アウトソーシングは「自社の従業員」などの限られた経営資源を有効に活用することを目的として、使われる場合が多いといえます。
アウトソーシングと人材派遣の違い
アウトソーシングとよく比較されるサービスの1つに「人材派遣」があります。人材派遣会社から必要な人材を手配してもらい、派遣スタッフの方に自社の業務を行ってもらうことで人手不足を解消できるのが「人材派遣」というサービスです。
リソース不足を解消できるという点でアウトソーシングと派遣は同じですが、“指揮命令者”と“対価の発生方法”で大きな違いがあります。
違い(1)指揮命令者
アウトソーシングと派遣の大きな違いとして、業務を指示する「指揮命令者」が挙げられます。
アウトソーシングでは「請負契約」「委任契約(準委任契約)」のいずれかを締結するのが一般的です。その場合、業務の指揮命令権はアウトソーシング会社の責任者や管理者となります。そのため、アウトソーシングを依頼した企業から業務スタッフへ直接指示をすることはできません。
もし「請負契約」「委任契約(準委任契約)」を結んでいるにもかかわらず、アウトソーシングを依頼した企業(依頼元の企業)からスタッフへ直接指揮命令を行った場合には『偽装請負』とみなされ、違法と判決される可能性もあるため、注意が必要です。
一方、人材派遣の場合は人材派遣会社と「労働者派遣契約」を締結します。その場合、派遣先企業(スタッフが派遣される企業)から派遣スタッフへ業務の指示を直接行うことができます。そのため、派遣スタッフの教育・管理も派遣先企業の役割のひとつとなるのです。
違い(2)対価の発生方法
また、対価の発生方法でもアウトソーシングと派遣では異なる場合があります。
アウトソーシングでは「成果物の納品」や「作業の遂行」で対価が発生する場合が多いです。一方で人材派遣の場合は、派遣スタッフの労働時間で対価が発生します。
そのため、繁閑差が激しい業務の場合には、業務量に応じて費用を変動させやすいアウトソーシングを活用するのが適切といえるでしょう。
アウトソーシングできる業務内容
アウトソーシングにも実施する業務内容によって「BPO」「ITO」「KPO」の3種類に分けられています。それぞれに該当する業務を次から説明します。
BPO:業務プロセスの委託
会社のなかでも部門ごとに委託できる業務は異なっているため、以下の表で解説します。
部門 | 委託できる業務 |
コンタクトセンター | ・問い合わせ対応、予約受付 |
人事 | ・人事労務(給与計算、入社手続き) |
採用 | ・応募者対応(スクリーニング、日程調整) |
経理 | ・証憑の作成、会計データの入力 |
総務、庶務 | ・受付対応 |
営業 | ・新規開拓営業 |
その他 | ・データ作成、管理 |
上記のようにBPOでは部門の垣根を越えて、幅広い業務をアウトソーシングできるのが特徴となっています。
ITO:情報システム関連の業務を委託
ITO(Information Technology Outsourcing)とは、企業のIT関連部門が行う業務の一部を委託することを指します。
近年はDX化が推進されているため、さまざまな業務でITが活用されています。ですが、IT分野では専門性の高い知識が求められており、高度なデジタルスキルを持った人材を確保することも難しい状況です。そのような場合にITOが活用されています。
具体的には以下のような業務をアウトソーシングできます。
- ヘルプデスク対応
- システムの開発、保守、運用
- サーバーの保守、監視
ITOにより専門的なノウハウを活用できるため、ビジネスをより一層加速させることができるでしょう。
KPO:データ分析など知的業務を委託
KPO(Knowledge Process Outsourcing)とは、データの加工や処理・レポーティングなどの業務をアウトソーシングすることを指します。日本語では「知的業務委託」と略されているようです。
近年ビッグデータを活用したマーケティング施策や、経営戦略の立案も行われています。しかし、これらのデータを加工したうえで業務へ活かすには高度な知識を持った人材が必要です。
KPOを利用することで高いスキルを持つ人材を採用せずとも、データ分析における専門的なノウハウを基に業務を遂行できます。
アウトソーシングによる5つのメリット
メリット(1)コストの削減につながる場合がある
業務効率の向上
アウトソーシング企業はその作業を専門的に行っていますので、自社で業務を進めるよりも効率が高くコストを下げることができる場合が多いです。
ムダな業務の削減
アウトソーシングの導入を検討する際には、現状の業務フローを調べたうえで可視化していきますので、ムダを発見しやすくなります。結果的に、アウトソーシングの導入自体がムダな業務を削減するきっかけになります。
人件費の抑制
アウトソーシングをすることにより、有能な社員に定型作業をさせてしまうといった損失が減らせますので、社員を適性に配置できます。これにより、ムダな人件費を抑制することにつながります。
人材育成費の削減
アウトソーシングをすると研修をはじめとした、人材育成に費やしているコストを減らすことができるでしょう。社内で教育が完結している場合でも、アウトソーシングにより教育担当の人件費を削減できます。
固定費の削減
情報システムなどをアウトソーシングする場合は、システムを維持するための固定費が削減できます。また、設備ごとアウトソーシングすると空きスペースが生まれますので、スペースの有効利用が図れることにもつながります。
メリット(2)専門的なノウハウを活用できる
アウトソーシングをすることにより、その委託先企業の高度な技術や長年培ってきた専門ノウハウなどを自社で活用することができます。その形式も多様で、業務によっては豊富なデータベースにアクセスすることができたり、専門家の知見とノウハウを取り入れたアドバイスを受けることができたりするケースもあります。
メリット(3)日常の業務の品質が向上する
専門的なノウハウを外部から入れることで、業務の品質向上が見込めます。最新のツールやテクノロジーなどが必要になる場合、社内で導入することなくアウトソーシングによって最新技術を適用でき、サービス品質が向上します。
また、アウトソーシングの導入時にルーティン業務と複雑な判断が必要な業務を切り分けることで、社内では判断が必要な業務に集中できるようになりますので、そういった点からも業務品質の向上につながっていきます。
メリット(4)「選択と集中」ができる
企業が競争力を強化するためには、サービスの価値を高めていく必要があります。そのためにはサービスの開発・成長にリソースを投下していくことになりますが、煩雑な業務に忙殺されてサービスの改善に集中できていない企業も多くいらっしゃいます。
アウトソーシングを活用すると、自社のリソースをコア業務へと集中させることができ、競争力の強化につながっていきます。
メリット(5)組織を健全化させることができる
会社が成長していきますと、人員が増え、部署が増え、間接業務が増えていきます。会社の成長よりも組織の肥大化ばかりが進んでしまうと、本業の収益を圧迫することにもなりかねません。
そのためにも、一部の定型業務はアウトソーシングしたり、自社にいない専門家を活用して業務を効率化したりしながら、組織を健全にさせていくことができます。
アウトソーシングによる5つのデメリット
デメリット(1)社内の情報を外に出すリスクがある
会社のなかには、人事情報や顧客情報など、多くの機密情報があります。業務のアウトソーシングをすることにより、これらの情報を外部の企業へ提供するケースがあります。
アウトソーシング企業のセキュリティレベルをあらかじめ確認したうえで、さらにどういった情報をどのように扱うか、しっかりと取り決めておく必要があるでしょう。
デメリット(2)ノウハウが社内に蓄積しない
アウトソーシングをすることによって社員がその業務を担当する必要がなくなりますので、業務負担が軽くなる一方で「経験値を高められない」というデメリットも生じます。アウトソーシング企業の高度な技術や長年培った知見などを吸収できる機会でもあるため、決して丸投げしてしまうのではなく、定期的な運用報告を受けるなかでノウハウを共有してもらう必要があるでしょう。
デメリット(3)費用対効果が悪くなるケースがある
社内でおこなっている業務に「自社特有のツール」や「自社特有の業務フロー」がある場合に、標準化しにくいためにコストが増加してしまうケースがあります。アウトソーシングをすればコストダウンになると思っていたのに、実際には費用対効果が悪くなってしまうのです。この場合、「自社特有の作業が多くても、標準化させることが得意」というアウトソーシング会社を選定することが、重要なポイントになってきます。
デメリット(4)業務の煩雑化や、フローのブラックボックス化
社内でやっていた業務をアウトソーシングすることで外部とのやり取りが増えて、業務がかえって煩雑化してしまうケースがあります。また、一部の業務プロセスを外部に持っていくと『ブラックボックス』のようになってしまい、「業務の実態を正確に把握することが難しくなった」という企業もあります。煩雑化させないよう速やかな対応をしてくれて、しっかりとした業務報告をしてくれるアウトソーシング企業を選ばなければなりません。加えて、“運用フロー”や“業務マニュアル”を委託先の企業と作成することで、ブラックボックス化を防止できます。
デメリット(5)担当スタッフのモチベーション低下
ごく稀に、社内の中核となる業務をアウトソーシングしてしまい、担当していたスタッフや該当の部署全体としてモチベーションが低下してしまうケースもあるようです。業務を分析する際に、どの業務をアウトソーシングするべきなのかをしっかり見極めて外部に依頼するようにしましょう。
また、アウトソーシングをすることで会社にとってどういったメリットがあるのかをしっかりと社内で共有しておくようにしましょう。
アウトソーシングを依頼する注意点
せっかくアウトソーシングを利用したのに、期待した効果が得られない場合もあります。そのため、導入に失敗しないための注意点を2つ解説します。
注意点(1)自社の課題や目的を明確にする
まず、委託する前に「なぜアウトソーシングを利用するのか?」という目的を明確に定めておきましょう。「コア業務へ専念するため」「専門的なノウハウを外部から取り入れるため」「メンバーの工数を減らすため」など、アウトソーシングを行う背景はさまざま考えられますが、各社で目的は異なっているはずです。
目的が明確でなければ、委託先の選定軸も抽象的になってしまうでしょう。すると、いざアウトソーシングを始めても「思ったような効果が出なかった」という事態になりかねません。
そのため、「自社が課題に感じている項目は何か?」「アウトソーシングを導入する目的は?」といった項目について、社内で共通認識を持ったうえで委託先を選ぶことが大切です。
注意点(2)取り決めを詳細に行う
また、アウトソーシングを行う場合には、業務範囲や締結する契約内容などの項目について委託先と共通認識を持っておくようにしましょう。事前に取り決めておくべき項目としては、以下のような内容が挙げられます。
項目 | 内容 |
業務範囲 | ・自社で行う業務と、委託する業務内容の線引き |
KPI(評価指標) | ・処理速度、納期 |
業務の責任範囲 | ・トラブルが起こったときの対処 |
情報共有をする仕組み | ・定例会の実施頻度 |
これらの項目を事前に委託先の企業と取り決めておくことで、利用を開始した後にトラブルが起こる可能性を減らすことができるでしょう。
アウトソーシングならパーソルビジネスプロセスデザインへ
パーソルビジネスプロセスデザインは
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