アウトソーシングの意味とは
アウトソーシングとは、自社の業務の一部を外部へ委託することを指します。その対象業務は事務や受付、コールセンター、営業などさまざまです。
アウトソーシングは、おもにコスト低減を目的として日本では1990年代に入って一気に拡がりましたが、現在は業務の効率化や人材不足の解消にも役立てられています。
また、アウトソーシングにはさまざまな手法があり、そのなかでも特に近年注目を集めているのが「BPO」「ITO」「KPO」といった手法です。
BPO(Business Process Outsourcing)とは、業務全体を外部に委託することを指します。
一般的にITO(Information Technology Outsourcing)とは、IT分野において業務委託を行うことを指し、KPO(Knowledge Process Outsourcing)とは、高度な分析能力や専門知識が必要になる医療分野や金融分野における業務委託のことを指します。
アウトソーシングとBPO・人材派遣との違い
アウトソーシングと似ている言葉に「BPO」や「人材派遣」があります。混同しやすいですが、実際はそれぞれ別物です。
以下では、それぞれの違いについて解説します。
BPOとの違い
アウトソーシングとBPOの違いは、委託する業務範囲とその目的です。
BPOは“一部の業務を委託”するのではなく、“業務プロセスを一括して委託”する形態を指します。人事や経理などバックオフィス業務、コールセンターや、マーケティング・営業などの業務がおもな対象となります。
アウトソーシングよりも外部へ委託する範囲が広く、総務部や人事部が行っていた業務を丸ごと委託する場合もあります。
さらにBPOは、経営改革や企業の課題解決を目的に活用されることが多いのも特徴です。
BPOについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
>>BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスとは?企業がBPOに取り組むべき理由を解説
人材派遣との違い
アウトソーシングと人材派遣との違いは、契約形態と業務指示者です。
アウトソーシングは、アウトソーシング企業と委託元企業のあいだで請負契約や委任契約(準委任契約)を結びます。
委託した業務に関する指示や人材の管理などを行ったり、業務の成果に対する責任を負ったりするのはアウトソーシング企業側です。
一方で人材派遣は、人材派遣会社と派遣先企業とのあいだで労働者派遣契約、人材派遣会社と派遣スタッフとのあいだで雇用契約を結びます。
派遣スタッフへの業務指示や指導は、派遣先企業が直接行います。
外部の人間を活用する、という部分は同じですが、その仕組みは大きく異なるのです。
企業のアウトソーシングが増加傾向の理由
アウトソーシングを活用する企業が増えている理由の一つに、少子高齢化にともなう人材不足が挙げられます。
内閣府が公表している「令和5年版高齢社会白書」によると、令和4年10月1日時点での65歳以上の人口は3,624万人となっています。総人口に占める割合(高齢化率)も29.0%という結果になりました。
また株式会社帝国データバンクが行った調査(「人手不足に対する企業の動向調査」)では、2023年4月時点で正社員の人材不足を感じている企業の割合は51.4%でした。
上記のことから、あらゆる業界で人材不足はもちろん生産性向上も課題になっているといえます。
アウトソーシングは、優先度の高い業務を集中して行えるのはもちろん、不足している人材も補完できることから、さまざまな企業で取り入れられているのです。
なお、生産性向上について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
生産性向上とは?生産性をあげる取り組み例や実際に生産性向上に成功した事例を解説
参考:令和5年版高齢社会白書
参考:人手不足に対する企業の動向調査(2023 年4月)
企業がアウトソーシングを実施するメリット
企業がアウトソーシングを導入することで得られるメリットは、大きく分けて以下の3つです。
人件費や固定費のコストの圧縮
ノンコア業務(直接利益を生み出さない業務)を外部に委託すれば多くの人材を抱える必要がなくなるため、固定費である人件費の圧縮につながります。
繁忙期には外部委託する量を増やし、閑散期には減らす、もしくは自社の人間だけで業務を行うことも可能です。アウトソーシングを活用することで、これまでほぼ固定されていた多額の人件費が変動費化するでしょう。
また、委託した業務に関する教育や育成はアウトソーシング企業が行ってくれるため、教育担当の人件費も削減できます。
外部の専門的な知識を活用できる
多くのアウトソーシング企業では、特定の分野に精通したプロフェッショナルを抱えています。そのため、年末調整や税金関係のような専門的な業務については、外部へ委託したほうが処理速度や正確性が高まるでしょう。
ノンコア業務のなかには、法令の改正など毎年のように新しい情報を取り入れ反映させなければいけないものもあります。外部の技術や長年培ったノウハウを自社で活用できることは、サービスの品質向上にも有効です。
コア業務に集中できる環境が作れる
多くのリソースが必要な業務を外注することで、より一層コア業務に注力できるのも大きなメリットです。企業が売上を伸ばしていくには、サービスの開発や成長に資するコア業務に人材を集中させる必要があります。しかし、企業を経営していくうえでは経理や人事のようなノンコア業務も欠かせません。
アウトソーシングを活用すれば、自社のリソースをコア業務に割くことができるため、競争力の強化につながるでしょう。また、企業の売上増加や組織の肥大化防止も期待できます。
アウトソーシングの実際の事例を紹介
それでは実際に、アウトソーシングの導入事例をご紹介します。
大手通信事業会社A社では、PM(プロジェクトマネージャー)が日々のプロジェクトタスクに追われて本来注力すべきマネジメントに工数を割けない状況が続いていました。
必要なことをあと回しにする状況が続いた結果、プロジェクトの遅延も懸念されていました。
そこで、システム構成に精通し、かつプロジェクトの立ち上げ経験が豊富な弊社のPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)チームにて、弊社独自のノウハウを活用し、プロジェクトを推進させるために以下のような業務をご支援しました。
- スコープ管理
- スケジュール管理
- 品質管理
- コスト管理
- コミュニケーション管理
- リスク管理
- ステークホルダー管理
- ドキュメント管理
アウトソーシングを導入したことで、当初のスケジュールから6ヵ月の遅延が生じていたプロジェクトを、3ヵ月ほどでオンスケジュールとなるまでに状況を改善できました。
業務のアウトソーシングをする際の注意点
企業経営を改善する手助けとなるアウトソーシングですが、導入する際には3つの注意点があります。
社内ノウハウは蓄積されない
業務をアウトソーシングすると自社のリソースが増える一方で、委託した業務のノウハウが社内で蓄積されなくなるという面もあります。
そのため、今後アウトソーシング企業が事業から撤退したり外注化を辞めたりしたときに、業務が滞ってしまう可能性があります。
アウトソーシングをする際は業務を丸投げして終わりにするのではなく、情報共有の機会をきちんと設けることが大切です。
社員の理解が必要
「なぜアウトソーシングを行うのか」「委託業務をもともと担当していた社員には、今後どのような業務を任せていきたいか」など、アウトソーシングの目的や考えを社員へ共有しておくことも重要です。
アウトソーシングでは、これまで一部の社員が担当していた業務を外部に依頼することになります。
そのため、これまで業務を担当していた社員にきちんとアウトソーシングする理由について説明しておかないと、トラブルの原因になったりメンバーのモチベーションの低下につながったりします。
情報管理はしっかりとする
アウトソーシングは社内の機密情報やノウハウ、顧客情報などを外部委託先へ共有するケースが多いため、情報の管理は徹底しなければいけません。
もし委託先から何かしらの情報が流出してしまった場合、発注元(自社)にも大きな責任が問われる恐れがあります。
アウトソーシング企業を選ぶときは、セキュリティ体制や認証資格の有無などを確認して、信頼できる企業であるかをよく見極めましょう。
まとめ
多くのアウトソーシング企業では、特定の分野に精通したプロフェッショナルを抱えているため、上手に活用すれば業務の効率化やコスト削減につながります。
導入する際は信頼できる企業であるかをしっかりと見極め、自社の社員へはアウトソーシングの必要性を十分に説明しておきましょう。
弊社でもBPOサービスを行っております。アウトソーシングの活用をお考えの方は、お気軽にご相談ください。
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