インシュアテックとは?保険業界のAI活用・DX化のトレンドについて事例やポイントを解説

インシュアテックとは?保険業界のAI活用・DX化のトレンドについて事例やポイントを解説

現在、多くの業界でAIの活用やDX化などのデジタル化がトレンドになっています。コロナ禍による行動規制によって、その傾向は一気に強くなったといえるでしょう。

それは保険業界も例外ではなく、急速にAI活用やDX化が進んできています。しかし、なんとなく知ってはいるものの、日々の業務に忙殺されてAI活用やDX化について考える時間がない方もまだまだ多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、保険会社のAI活用やDX化を意味する『インシュアテック』について詳しく解説していきます。インシュアテックの基本から事例まで網羅的に説明していきますので、ぜひ最後までお読みください。

目次

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    インシュアテックとは?

    インシュアテックとは、保険を意味する「Insurance」と「Technology(テクノロジー)」を掛け合わせた造語で「InsurTech(インシュアテック)」と表記します。


    金融技術(フィンテック)の一環として注目されていますが、この分野は保険業界における革新的なテクノロジーの応用を指しており、いくつかの要素を含んでいます。その要素について、解説していきましょう。

    デジタル化と効率化

    インシュアテックの最大の特徴として、保険申込みのプロセスをデジタル化して迅速かつ簡単にすることが挙げられるでしょう。従来の紙ベースの手続きをオンライン化し、顧客が自宅からでも保険に申し込むことが可能になるなど非常に効率的です。

    カスタマイズされた製品

    データ分析と機械学習を活用して、顧客のニーズに合わせたカスタマイズされた保険商品を提供することができます。顧客のライフスタイルやリスクプロファイルに応じた製品開発が可能となり、より個人向けにカスタマイズされたサービスを提供することが可能になります。

    リスク管理の革新

    センサーやIoT(モノのインターネット)を活用することで、リアルタイムのデータを収集して、リスク評価や予防策の提供に役立てることができます。例えば、自動車保険の分野では、運転行動をモニタリングして「安全運転者に対して保険料の割引を提供する」といったことが考えられます。

    ブロックチェーンとスマートコントラクト

    取引データをブロック単位で記録して管理できる「ブロックチェーン」技術を活用することで、保険契約の透明性とセキュリティが向上します。

    また、契約履行管理の自動化である「スマートコントラクト」も活用でき、契約条件が満たされた際には自動的に履行されるため、請求プロセスをより迅速かつ効率的にすることができます。

    ユーザー体験の向上

    モバイルアプリケーションやオンラインプラットフォームを通じて、顧客は簡単に保険商品を比較・選択することができます。また、AIを活用したチャットボットによる24時間対応のカスタマーサポートも普及しています。


    以上のように、インシュアテックが普及することで、保険業界は顧客中心のサービスを提供することが可能になり、保険会社と顧客の双方にメリットをもたらします。伝統的な保険会社も、この新しい技術動向に適応することで競争力を保持し続けることが重要でしょう。


    インシュアテックはすでに海外では先行していますが、日本国内でも最新テクノロジーを駆使して、新しいサービスや運営体制を構築している保険会社は出てきています。後ほど、詳しい事例などもご紹介していきます。

    インシュアテックを導入するメリットとは

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    先ほども少し触れましたが、インシュアテックを導入することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。AI活用やDX化では多くのメリットがあるのですが、主なメリットとしては下記のものが挙げられます。

    • 業務効率化につながる 
    • 顧客のニーズに合った商品の提案ができるようになる 
    • 顧客とのコミュニケーション手段が増える
    • 収益の向上につながる
    • 新たな保険の開発につながる

    それぞれのメリットについて、少し踏みこんで解説をしていきましょう。

    メリット(1)業務効率化につながる

    インシュアテックを導入することによって、大きく業務効率化につながることは説明するまでもないかもしれません。


    例えば、顧客からの問い合わせについて、AIチャットによる自動対応を導入するだけでコールセンターへの負荷は減少され、人件費の削減にも貢献するでしょう。


    また、損害保険や生命保険の審査業務についても、DX化させることにより審査を担当する人員を減らしたり工数を減らしたりすることもできるはずです。


    業務の負担が軽くなった分については、営業活動や企画など収益が期待できる業務に割り振れば、企業の売上向上にもつながることになるでしょう。

    メリット(2)顧客のニーズに合った商品の提案ができるようになる

    インシュアテックの導入によってデジタル化が進むわけですが、それにより膨大なデータを蓄積できることになりますので、より顧客のニーズに合った商品の提案ができるようになるはずです。


    データを活用できれば、その顧客の属性に合わせた最適な商品を瞬時に提案できるようになるでしょう。また、属性だけでなく顧客の行動や心理などのデータも分析の対象にすることができます。


    つまり、保険会社の営業特有の「人と人との触れ合い」といった感情面をデータ化できることになりますので、インシュアテックを利用することでより効率的な営業活動ができるのです。

    メリット(3)顧客とのコミュニケーション手段が増える

    インシュアテックを導入することによって、保険会社の顧客とのコミュニケーションは大きく変わるはずです。


    従来は対面営業が基本でしたが、インシュアテックを導入することによってオンラインでの営業やウェビナーを使った顧客集客など、柔軟なコミュニケーションが可能になります。


    また、顧客のフォローに関しても、多くの保険会社では対面もしくは電話での対応を行っていましたが、スマートフォンのアプリなどを活用したフォローによって、営業活動の負担を減らすことができるでしょう。

    顧客から見てもさまざまな方法でコミュニケーションをとることができるようになるため、双方にとってメリットは大きいはずです。

    メリット(4)収益の向上につながる

    保険会社の経営の立場から見てもメリットは大きいものです。インシュアテックを導入することによって、事務の効率化や営業の効率化につながり、結果的に収益の向上につながりやすくなります。


    例えば、保険会社の営業の契約事務は、従来は紙ベースで行っており内容も非常に煩雑でした。入力の不備があるために対応に追われた営業担当も少なくないはずです。


    しかし、インシュアテックの導入により、タブレットなどのデジタル機器を使った契約が可能になります。すでに取り入れている企業も多いですが、今後も加速していくでしょう。その結果として効率的に営業活動が行え、会社の収益アップにつながるはずす。


    また、事務部門や審査部門にもインシュアテックを導入することで、複雑かつ工数のかかる事務手続きを簡略化することができ、収益の向上に貢献できるでしょう。

    メリット(5)新たな保険の開発につながる

    インシュアテックを導入することにより膨大なデータを蓄積できますので、顧客に合った保険を提供できるようになります。すでに新しく開発された保険の例として下記の3つが挙げられます。

    • テレマティクス保険
    • 割り勘保険
    • オンデマンド保険

    それぞれ解説していきましょう。

    「テレマティクス保険」
    テレマティクス保険は、自動車保険に活用されています。ドライバーごとの運転データを収集することによって、一律の保険料ではなく、ドライバーごとに保険料を設定することが可能になりました。


    走行距離や運転技術などによってドライバーごとに保険料が設定される
    ため、非常に満足度の高い保険になっています。


    「割り勘保険」
    割り勘保険とは、その名の通り、保険金の額を複数人で割って保険料を負担する保険です。


    割り勘保険は通常の保険のように加入者が毎月保険料を負担するのではなく、保険金を支払う必要が出た際に、対象者全員で保険料を割り勘して負担する仕組みです。


    加入者が多ければ多いほど一人当たりの負担が少なく、効率的に保険をかけられるので最近注目されています。


    「オンデマンド保険」
    オンデマンド保険とは、必要な時だけ保険をかける仕組みです。車におけるカーシェアリングなどをイメージすると分かりやすいのではないでしょうか。


    オンデマンド保険については、今までも「一日自動車保険」や「海外旅行傷害保険」などがありましたが、今後さらにインシュアテックの発展によってさまざまな保険が出てくると考えられます。スマートフォンで簡単に契約できるのも、大きな特徴といえるでしょう。



    インシュアテックの導入事例

    多くのメリットがあるインシュアテックですので、すでに保険業界でもAI活用やDX化は積極的に推進されています。では、どのような形でAI活用やDX化が進んでいるのでしょうか。


    ここからは、保険業界におけるインシュアテックの導入事例を目的別に取りあげながら解説していきます。


    (1)新規お客様対応……アクサダイレクト

    保険にはさまざまな補償がありますが、「どの補償が自分に合うのか分かりにくい」という声もユーザーからよく聞かれます。


    そんなユーザーの潜在ニーズに応えるため、アクサ損害保険株式会社(アクサダイレクト)では、「補償おすすめ機能」を開発し2020年9月より提供を開始しています。


    「補償おすすめ機能」は、ダイレクト型自動車保険業界で初めての機能であり、Webサイトで自動車保険の見積り結果を出した際、その画面上で特定の補償内容をAIが提案してくれるものです。


    ユーザーが入力した情報だけでなく、100万件以上の契約内容を含む匿名化したビッグデータをもとにAIがリアルタイムで個別の分析を実施し、補償を提案してくれるのです。


    その結果、ユーザーは従来よりも納得感の高い検討が可能になり、導入からわずか1カ月で成約率は5%向上することになったようです。


    そもそもアクサダイレクトでは、2017年より経営戦略としてDXの推進を行っていました。2019年12月には基幹システムの刷新やWebサイトのリニューアルを行い、ダイレクト型保険会社の生命線を強化。見積りから申込みまで、一貫してデジタルだけで完結できる仕組みを構築していたのです。


    こうしたDXの推進により、デジタルチャネル経由での新規申込みの割合は90%以上になったといいます。


    (2)被保険者への対応……オリックス生命

    被保険者への対応で煩雑になりがちなのは、住所変更などの申請手続きです。オリックス生命保険株式会社は、それら住所変更申出の受付自動化を実現しました。


    もともと年間で約6万件の住所変更を受け付けていましたが、株式会社BEDOREが提供する音声対話エンジン「BEDORE(べドア)Voice Conversation」を導入したことにより、自動音声応答で受付を自動化することができたといいます。


    これにより、「オペレーター工数の削減」と「緊急事態下におけるコールセンター運営の維持」が可能になったようです。また、自動音声応答を用いることで、コールセンターにありがちな「つながらない」という問題が起きず即座に受付を実施できるため、お客様の利便性向上にもつながっています。


    もともとオリックス生命は、お客様のニーズに応えるため、住所変更の受付はWebや書面、電話などさまざまなチャネルで受け付けていました。しかし、お客様のなかには「コールセンターの時間外にも音声で対応して欲しい」というニーズがあったのです。


    住所変更の受付を自動応答で完結させるにあたり、「契約者情報の特定」と「新しい住所の正しい認識」が重要なポイントになりました。


    実際、自動応答では「契約者名」「生年月日」「証券番号」をヒアリングして契約者を特定します。そのうえで、新しい住所をヒアリングして復唱してもらい、正しく認識できていれば受付完了となります。


    導入開始時点では、自動音声応答による受付はコールセンター営業時間内のみとなりましたが、将来的には24時間365日に拡張することになるでしょう。一方で、電話でのオペレーターとのやり取りや、Web、書面での受付も継続しており、お客様の多様なニーズに対応し続けているようです。

    (3)業務効率化……日本生命

    保険会社といえば、やはり業務で大量の書類を扱うことが多いでしょう。しかし、それによって業務効率が落ちてしまったり、余計なコストがかかってしまったり、といったこともあるはずです。


    日本生命保険相互会社の金融商品の新契約受付業務においては、AI inside株式会社のAI-OCR「DX Suite」が採用されたことが発表されていました。「DX Suite」では、よりセキュアに大量の事務処理に対応できるといいます。


    金融機関ごとに異なる申込み書や付随する帳票の情報を「DX Suite」でデジタル化し、これに加えてRPAを活用することで、別のシステムへデータを自動的に連動する仕組みも取り入れられています。


    この機能により、新規契約の申込み受付業務における点検作業の大幅な自動化が実現できており、約40〜50%の事務コストが削減できたようです。

    (4)トレーニング……明治安田生命

    保険会社の営業職員は定期的にトレーニングを受けているものですが、このトレーニングにもAIを取り入れたのが明治安田生命です。


    明治安田生命保険相互会社の全国約32,000人の営業職員が持っている業務用スマホに対し、株式会社シーエーシーは、AIを活用したトレーニングアプリ「心sensor for Training」を提供しました。


    導入された「心sensor for Training」では、営業職員の外出時の笑顔チェックや、笑顔のセルフトレーニングを行うことができるようになっており、緊張しがちな商談前の表情を改善させていくことが可能だといいます。


    このアプリを継続的に活用することで、営業職員が笑顔を忘れず自信を持って業務を行えるようになることが期待されています。

    (5)不正防止……東京海上日動

    保険業界では、時に不正に保険金を請求されてしまうケースがあります。そこで東京海上日動火災保険株式会社では、2021年10月より米国企業であるメトロマイル社と連携し、契約内容や事故の申告状況などに関する情報からAIが不正な保険金の請求を検知する取り組みを開始しました。


    保険金の請求にAIを導入することによって、これまでに蓄積された膨大な保険金支払データをAIに分析させ、不正請求と相関関係の高い事案をいち早く検知することが可能になったようです。


    具体的な仕組みとしては、事故の申告内容を分析して不正請求につながる可能性がある要素の抽出を行います。そして、事案ごとにスコアリングを実施します。これにより、慎重に精査する必要がある事案だけを洗い出していくことができるため、不正の防止を効率的に実施できるのです。

    インシュアテックと生成AIで保険業界はどうなっていくか

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    いくつかの事例をご覧いただきましたが、インシュアテックを導入することによって、保険会社の収益力は大きく上がっていくはずです。また、収益力だけではなく、従業員の「働きやすさ」も向上していくと考えられます。

    保険を提供するためには、保険商品だけではなくサポート体制も非常に重要です。最たる例としてコールセンターが挙げられますが、クレーム対応も多く精神的に負担が大きいのも事実です。

    インシュアテックを導入することでクレーム内容をデータ化して初期対応をAIに任せることができれば、劇的にストレスは減るでしょう。


    また、そもそも「コールセンターのノウハウを持ちインシュアテックが導入されている企業」にアウトソーシングをすることで、業務負担を軽減することが可能です。保険会社の従業員は営業や事務などの本来の業務に集中することができますので、収益の向上につながっていくでしょう。


    さらに、昨今では生成AIにも大きな注目が集まっています。生成AIの代表格である『ChatGPT』を活用している方も多いのではないでしょうか。ChatGPTの精度は日々向上しており、やがては曖昧な指示であっても精度の高い回答を得られるようになるでしょう。


    ChatGPTのような生成AIを保険会社に取り込むことで、やはりサポート体制において非常に重要な役割を果たしてくれるはずです。生成AIは24時間365日稼働でき、自動応答やチャットボットとして顧客の質問に即座に対応することができます。


    これにより顧客サポートの可用性が向上し、人件費の削減、迅速な情報提供、問題解決の効率化などが実現します。保険契約者はより良いサービスを受けられ、顧客満足度も向上するでしょう。


    保険会社向け代理店サポートサービスならパーソルビジネスプロセスデザインへ

    保険業界に大きな影響をもたらすインシュアテックについて解説してきましたが、私たちパーソルビジネスプロセスデザインでも、「保険会社向け代理店サポートサービス」を提供しています。


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