戦略総務とは
戦略総務とは、通常は備品整理などの定型的作業をこなすことに集中する総務が、企業が抱える問題を解決するために積極的に問題提起や改善案の提案などをしていく、『攻めの総務』のことを指します。
通常の総務と戦略総務の違い
通常の総務と戦略総務の違いは、次の通りです。
分類 | 内容 |
---|---|
通常の総務 | ・単純な作業を決められたルーティンに沿ってこなす ・企業の戦略に関わる意思決定の必要な業務はほとんどなく、会社を事務・管理面などでサポートする |
戦略総務 | ・総務が企業の成長のために率先して業務改革を目指す ・社内の生産性向上や制度改革などといった企業の“コア業務”を、総務が主体となり推進する |
戦略総務が注目を集めている理由
戦略総務が注目を集めている主な理由としては、ビジネス情勢が大きく変化していることが挙げられるでしょう。
近年では、アウトソーシングサービスの台頭や社員の働き方の多様化、人材不足などにより、ビジネスの環境が目まぐるしく変化し続けています。
人材不足の状況下では、企業は少数精鋭で利益を出していく必要性が高まりました。また、単純な“ノンコア業務”はアウトソーシングし、空いたリソースを重要な“コア業務”に充てて、企業の生産性を高めようとする風潮も強くなってきています。
そうした環境の変化を受けて、これまでは“直接的には利益を生まない部門”という意味の「コストセンター」として捉えられてきた総務部門でも、企業活動で利益を出す役割を担うことが求められるようになってきたのです。
戦略総務が組織で担う役割
それでは、具体的に戦略総務とはどのような役割を担うのでしょうか。戦略総務が組織で担う主な役割は、主に次の3つが挙げられます。
・経営陣と現場の橋渡し
・体制の改革
・業務のIT化とアウトソーシングの推進
ここからは、これらの詳細について解説していきます。
3-1. 経営陣と現場の橋渡し
3-1. 経営陣と現場の橋渡し
戦略総務には、経営陣と現場の橋渡しをすることが求められます。
経営陣と現場の社員の間にはどうしてもギャップが生まれやすく、特に会社の規模が大きくなるほどその傾向が強くなるものです。
しかし、経営陣と現場が企業の方向性や在り方について共通認識を持てていなければ、現場の社員から「会社がどのような方向性に向かっているのかわからない」といった声が上がるようになってしまいます。
同様に、経営陣からも「現場の社員は何も会社のことを分かっていない」といった不満が生まれてしまうでしょう。そして、両者の間にこのようなギャップが生まれると、組織に一体感や統一感がなくなってしまいます。
そのため戦略総務は、現場と経営陣がコミュニケーションを取りやすい体制を作ったり、相互の情報共有をしたりして、組織の一体感を支えていく役割を担うのです。
3-2. 体制の改革
3-2. 体制の改革
戦略総務の担当者には、業務体制や組織体制の改革も求められます。
従来の総務は、会社の別の部門や経営層が決めたルールに則って業務を行うことが主流でした。しかし戦略総務では、積極的に業務体制や組織体制の変革に携わっていきます。
そのため、「Aのやり方は非効率だから、新しいBのやり方で統一したら業務の効率化に繋がるのではないか」「他社が導入している〇〇という制度は自社にも適しているのではないか」といったアイデアを出し、実現に向けて行動していくことが求められます。
また、戦略総務では、自身の部門内でコネクションを構築するだけでは不十分です。社内の他の部署・部門とも積極的に関わり、情報収集に奔走していく必要があります。
そして、集めた「社内の情報」をもとに、会社全体の業務フローや働き方、チーム体制などにおける課題を発見し、解決していくことが戦略総務の大きな役割でもあるのです。
3-3. 業務のIT化とアウトソーシングの推進
3-3. 業務のIT化とアウトソーシングの推進
戦略総務の役割として、業務のIT化やアウトソーシングの推進も挙げられます。
昨今では、リモートワークが普及するなどワークスタイルが変化しているだけでなく、業務の環境も大きく変化しています。
以前までは、表計算ソフト上で多くの自社情報を管理するのが主流でしたが、昨今では専用の管理システムが導入されるケースも増えています。総務業務に特化したシステムでは、システム上で情報の一元管理や物品管理をするなど、さまざまな総務業務を処理できるようになるため、業務の効率化が実現できるのです。
また、業務自体を外部の業者に委託して代行してもらう「アウトソーシング」も、業務負担の削減の方法として注目されています。
このように、積極的に自社に新しいツールや新しいサービスを導入し、業務の効率化や業務負担を削減していくことが、戦略総務には求められています。
戦略総務の施策例
続いて、戦略総務の施策例を見ていきましょう。代表的な施策例は、次の2つです。
- 福利厚生の導入や見直し
- リモートワークの導入
それぞれの詳細について解説します。
4-1. 福利厚生の導入や見直し
4-1. 福利厚生の導入や見直し
戦略総務の施策例に、福利厚生の導入や見直しが挙げられます。
福利厚生を充実させることで、社員にとって働きやすい職場環境になっていきます。その結果、従業員が高いモチベーションで働ける環境を整えることができ、社員満足度の向上や離職率の低下につながるでしょう。
福利厚生が未導入の場合には「福利厚生を充実させることで、どのようなメリットがあるのか」をしっかりと調べ、社内の上層部に向けて導入のプレゼンテーションをします。導入が決まったら「どの程度の予算でどのような福利厚生を採用するのか」などを検討していくのです。
福利厚生を既に導入している場合には、現在の福利厚生の内容やコストの整理、社員の満足度の調査などをしていくことになるでしょう。
「コストが多く掛かっているものの、社員の利用率や満足度が低い」というものは廃止を検討したり、新規導入の要望が多いサービスの導入を検討したりしていきます。
4-2. リモートワークの導入
4-2. リモートワークの導入
戦略総務の施策例としては、リモートワークの導入も挙げられます。
リモートワークの導入経験のない現場では、「リモートワークの実現のためには何が必要なのか」「現状維持を好む経営陣や上司が多いなかで、どのように導入の許可を取るのか」など、不明点や課題を多く抱えていることでしょう。
そうした不明点の解消や課題の解決に向けて、戦略総務の担当者が多角的に情報収集をしたり、社員間で意見交換をしたりしていきます。また、導入の際にツールが必要であれば、まずは自ら使ってみてツールについて勉強します。
そうして、「どのようにすれば導入後に社員がツール利用でつまずかないか」などのアイデアを出していきます。
戦略総務で働き方改革を推進する場合、このような要領で行っていくことになるでしょう。
戦略総務を実現するためのポイント
戦略総務を実現するためのポイント
ここまでご紹介してきた「戦略総務」を実現するためには、下記の通りいくつかのポイントがあります。
・経営陣と社員を繋げる行動をする
・企業活動に参画する
・多角的な情報収集をする
・社内で良好な人間関係を構築する
・ツールやアウトソーシングを活用する
それぞれの詳細について解説していきましょう。
5-1. 経営陣と社員を繋げる行動をする
5-1. 経営陣と社員を繋げる行動をする
戦略総務は、前述の通り「経営陣と現場の社員を橋渡しする役割」を担うべきです。そうした行動をするうえでは、戦略総務の担当者が両者と深くコミュニケーションを取っていくことが重要です。
担当者が両者とのつながりを強くし、相互の意見や情報について時間をかけて共有していきましょう。そうすることで「経営陣がどのような考えで現在の戦略や方針にしているのか」を社員に理解してもらいやすくなります。
さらに、現場の課題や社員の声を経営陣が理解できるようにもなりますので、今までより経営陣に現場の社員のことを考えてもらいやすくなるでしょう。
その結果、これまでは導入が進んでいなかった新しい制度や体制、ツールなどの導入が進んでいくことにもなるはずです。
5-2. 企業活動に参画する
5-2. 企業活動に参画する
戦略総務を実現するためには、担当者が企業活動に参画する意識を持つことも重要です。
受け身の姿勢で上層部の指示通りに動くのではなく、「総務が会社を変えていく」という意識のもと、当事者意識を持って企業活動へ能動的にチャレンジしていくようにしましょう。
具体的には、社会や業界のトレンドをキャッチしたら、積極的に自社組織への反映を推進していきます。
例えば、昨今では総務業務の効率化の手段として、クラウドツールの導入やアウトソーシングの活用がトレンドになっています。こうした変化に対して上層部が動き出すまで待つのではなく、担当者が積極的に上層部に提案をしていくのです。
このように、誰かに与えられた仕事を単にこなすのではなく、組織をより良くしていくため“参画していく”という姿勢を持つことが、戦略総務の実現につながっていきます。
5-3. 多角的な情報収集をする
5-3. 多角的な情報収集をする
戦略総務を実現するためには、担当者が多角的な情報収集をしていくことも重要です。
部門・部署の垣根を越えて、積極的に社員とコミュニケーションを図っていくようにしましょう。そうすることで社員が自社に対して「どのような点に不満を抱いているのか」「どのようなことが改善されればより働きやすくなると考えているのか」などが明らかになってきます。そうした情報は、戦略総務の施策を考えるうえで有用な情報になるのです。
また、社内に留まらず、社外のステークホルダーと定期的にコミュニケーションを図ることも重要です。「ステークホルダー」とは、企業の“利害関係者”を意味し、取引先や地域住民、行政機関、金融機関など、企業活動に関わりのある立場を指します。
社外のステークホルダーと接点を持つことで、自社の状況を客観的に捉えやすくなったり、競合他社の動向に敏感になれたりするというメリットがあります。
5-4. 社内で良好な人間関係を構築する
5-4. 社内で良好な人間関係を構築する
戦略総務の実現のためには、担当者が社内で良好な人間関係を築いていくことも必要です。
社内で新しい取り組みにチャレンジしていくうえでは、総務担当者だけでは成り立たないことがほとんどでしょう。
新しい体制や制度、ツールの導入などをする際には、経営陣と現場の社員の意見を取りまとめる必要があります。しかし、そうした人達に信頼されていなければ、そもそも担当者に情報が回ってこない可能性があります。また、新しく何かを導入したとしても、現場の社員に理解してもらえず浸透していかないリスクもあるでしょう。
こうしたリスクを払拭するためにも、社内で良好な人間関係を築き、取り組みに対して協力してもらいやすい状態を作っておくことが重要です。
そのためには、担当者が現場に出向いて社員の意見を聞いたり、積極的に経営陣とコミュニケーションを取って経営陣の意見も聞いたりして、社員・経営陣の双方と良好な信頼関係を築いておきましょう。
5-5. ツールやアウトソーシングを活用する
5-5. ツールやアウトソーシングを活用する
戦略総務を実現するためには、ツールやアウトソーシングを活用することも重要です。
戦略総務として「働き方改革」など時間や労力のかかる分野に新しくコミットメントしていくうえでは、既存の業務を効率化しなければなりません。
担当者が膨大な総務業務を抱えておりキャパシティがオーバーしている状態で、無理に戦略総務を取り入れようとすると、社員が疲弊して質の高い戦略総務を実施できない恐れがあります。また、心身の調子を崩したり、離職に至ったりするリスクもあるでしょう。
そのため、既存業務をこれまで通りこなしつつ、新しく戦略総務を推進していくうえでは、ツールの活用により業務を効率化したり、一部業務をアウトソーシングしたりすることにより、社員の業務量を調整していくことが重要となるのです。
戦略総務に向けたアウトソーシングならパーソルグループへ
戦略総務では、企業の抱えるさまざまな問題の解決に向けて総務が積極的に参画していきます。
戦略総務を“机上の空論”で終わらせずに着実に実現していくためには、担当者が社内で良好な人間関係を構築したり、企業活動に参画する意識を持ったりすることが重要です。
また、現状でノンコア業務に追われている場合、無理に戦略総務を推し進めることで社員に過大な負荷がかかり、多くの問題が生じてしまうリスクもあります。
そのため、ツールやアウトソーシングを積極的に活用して既存の業務負担を減らし、担当者が戦略総務にリソースを費やせる環境を作ることが重要なのです。
私たちパーソルグループでは、『総務アウトソーシングサービス』を提供しております。
100業務以上の幅広い対応にとどまらず、社員が迷うことなく利用できる「ワンストップ型オフィス」の構築など、企業の将来を見据えた「戦略総務」へと生まれ変わるご支援をしております。
戦略総務に向けて何かお困りのことがある場合には、ぜひお気軽にお問い合わせください。