証憑とは何なのか?証票との違いや書類の種類、管理方法や保存期間に至るまで徹底解説

証憑とは何なのか?証票との違いや書類の種類、管理方法や保存期間に至るまで徹底解説

企業の経理業務とは切っても切り離せないのが「証憑(しょうひょう)」です。経理担当者であれば、一度は取り扱ったことがあるのではないでしょうか。

本記事では、そんな「証憑」について改めてどういったものなのかを解説し、その重要性を振り返っていきます。併せて、証憑の種類について確認をしたうえで、その管理方法や保存期間についても解説していきます。

特に近年、連続して変更が行われた「電子帳簿保存法」については、その最新のルールに基づいて「新しくなった証憑の管理方法」を詳しく解説していきますので、ぜひご参考にしてください。

目次

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    証憑とは何なのか?

    そもそも証憑とは、企業が行った取引を証明するための証拠書類のことを指します。

    日本の財務会計における基本的なルールとして『企業会計原則』があります。『企業会計原則』は、1949年(昭和24年)に、旧・大蔵省の経済安定本部・企業会計制度対策調査会(現在の金融庁・企業会計審議会)によって公表されたものです。


    その『企業会計原則』では、「真実性の原則」について「企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない」と定めています。その“真実な報告”を証明するために、個々の取引に関する証拠書類を備えおく必要がありますが、それが『証憑』なのです。


    税務申告においても、その申告で利用する決算書の根拠として、個々の取引の正当性を証明するために『証憑』が必要になります。

    例えば、税務調査の際に調査官は「申告書」に基づいて企業の取引を調べ、その取引の証拠を求めてくることがあります。その際に『証憑』を提出することで、実際に取引が存在していて、それが正しく報告されていることを証明できるのです。

    証憑と証票の違いは

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    「証憑」に対して、同じ「しょうひょう」という読みで「証票」という言葉もありますが、どのように違うのでしょうか。

    証票は、「あることを証明するための札や書き付け」といった意味を持ちます。例えば、お金のやりとりにおいて交わされる文書や、自らの身分を示すための証明書などがこれにあたるわけです。

    「証憑」と異なるのは、「証憑」が“取引の正当性”を証明するための証拠であるのに対し、「証票」は“モノや事柄”を証明するための証拠だということです。

    財務会計においては、“取引”が証明の対象となりますので、その正当性を示すものは「証憑」だと考えて良いでしょう。

    証憑の書類、4つの種類

    証憑の書類の種類は、大きく下記の4つの種類に分けることができます。

    ・売上に関連するもの

    ・仕入に関連するもの

    ・人事・給与に関連するもの

    ・その他のもの

    それぞれ詳しく見ていきましょう。

    証憑の種類(1)売上に関連するもの

    1つめは、顧客による注文からモノ・サービスの提供、そして対価の請求にいたる一連のプロセスに関連した証憑です。

    具体的には、「契約書」「出荷指示書」「請求書」「領収書」「受領報告書」「返品に関する書類」などが挙げられます。

    「契約書」は、大規模なプロジェクトになると内容も膨大ですが、原則的にはすべてが証憑となります。また、「請求書」のように、証憑になりうるための記載項目が定められているものもあります。

    証憑の種類(2)仕入に関連するもの

    購入から支払いまでの、一連のプロセスに関連する証憑もあります。

    具体的には、「見積書」「注文書」「納品書」「受領書」などが挙げられます。

    「見積書」については、実務のなかで複数回の見積もりを取ることも多いので、どこまでを証憑とするかは悩ましいところかもしれません。

    証憑は「個々の取引を証明するための書類である」という観点からすると、最終的に取引につながった「見積書」を証憑とするのが適切と考えられます。

    証憑の種類(3)人事・給与に関連するもの

    従業員の給与などに関する証憑もあります。

    給与支払いの根拠となる「雇用契約書」もそうですし、時間単位で給与が支払われる場合には「タイムカード」「作業時間表」も該当します。

    他にも、給与の金額を証明するための「賃金台帳」、支払った給与について記録をした「給与支払明細書」などが挙げられます。

    証憑の種類(4)その他のもの

    最後に、その他のものとして、上記(1)~(3)以外の証憑が挙げられます。

    例えば、「賃貸借契約に伴う契約書」「引当金の計上の根拠となる見積書類」「誤った勘定の修正などを記録したメモ」などが該当します。

    以上のように、証憑の種類とその具体例を細かく説明してきましたが、実務上はそこまで難しく考える必要はありません。

    証憑は「取引の証拠となるもの」で、経理業務における取引は漏れなく「仕訳」として計上されています。ですから、仕訳をみたときにその仕訳の根拠や背景を説明できる書類はほとんど『証憑』だといって良いでしょう。

    証憑の保存期間

    証憑については、法律によって保存期間が定められています。それぞれ該当する法律とその保存期間を簡単に振り返っておきましょう。

    (1)法人税法……7年間、もしくは10年間

    法人は、帳簿を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引に関連して作成または受領した書類を7年間保存する義務があります。

    ここでいう「書類」とは、棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書などが該当し、証憑はこの「書類」に含まれています。保存期間の起算日は、事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から、となります。

    なお、下記の場合には保存期間が10年間と定められています。

    ・青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた事業年度

    ・青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失金額が生じた事業年度

    (2)会社法……10年間

    株式会社は、会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を10年間保存する義務があります。

    保存期間の起算日は、会計帳簿の閉鎖の時です。例えば、2023年3月末を会計帳簿の締切日としている会社であれば、「2023年3月31日から」となります。

    (3)所得税法……5年間(ただし実務上は7年間が望ましい)

    個人もしくは個人事業主は、法人税法と同様に「帳簿の保存」と、日々の取引の状況を証明するための「書類の保管」を求められています。

    証憑はこの「書類」に含まれています。保存期間は、所得税法施行規則において「作成又は受領の日の属する年の翌年3月15日の翌日」から5年間とされています。

    ただし、後述する「電子帳簿保存法」では、請求書などの一部証憑は帳簿との関連性を確認できることが求められるため、所得税法で定める帳簿等の保存期間と同じ7年間が望ましいと考えられています。

    (4)消費税法……適格請求書については7年間

    法人・個人事業主ともに、消費税の課税取引を行い「適格請求書」を発行・受領した場合には、その保存期間は消費税法により7年間と定められています。

    この7年間の起算点は「課税期間の末日の翌日から2月を経過した日」と定められています。

    なお、適格請求書の保存についての詳細は、国税庁からのアナウンスでもご確認いただけます。

    ※出典:国税庁「適格請求書等の写しの保存」(PDF)

    証憑の管理方法

    証憑の管理方法については、必要な時にすぐ参照できるよう保管しなければなりません。また、経年劣化などにより証憑が傷まないよう、安全な場所に保管しておく必要もあるでしょう。

    また、会計監査や税務調査において、公認会計士や税務調査官から証憑の提出を求められる可能性もありますので、保管方法はよく考えなければなりません。

    ここでは、いくつかの管理方法を紹介しましょう。

    方法(1)企業内にある書庫などで保管する

    まず考えられるのが、会社の書庫などで保管をするという方法です。

    この方法のメリットは、社内に証憑が存在していますので、その証憑を参照する必要が出てきた際にすぐに取りに行くことができる、ということでしょう。


    ただし、その証憑を確認する際に時間を要さないためにも、きちんとファインリングを行い「どこに」「なにがあるのか」について、管理台帳などを作成して把握しておく必要があるはずです。

    また、書庫の場所によっては、湿度が高かったりして紙が傷んでしまうリスクもあります。くわえて、鍵をかけられない場合には盗難のリスクもあるでしょう。

    もし書庫などで保管する場合には、その環境が「証憑の長期保管に適しているかどうか」「安全性は担保されているかどうか」について、事前に検討する必要があるでしょう。

    方法(2)外部の保管業者へ委託する

    もうひとつの保管方法として、専門の保管業者に委託するという方法もあります。この場合は、事前に保管業者が指定する保管用の段ボール箱に、どういった内容の証憑が入っているか説明をするラベルを貼り付け、箱ごと保管業者の倉庫などで管理してもらいます。

    この方法であれば、証憑の経年劣化や盗難のリスクは、ほぼゼロにすることができるでしょう。


    一方で、「証憑を参照したいときに、すぐに参照できない」というデメリットもあります。証憑を参照するには、業者に依頼して倉庫から証憑を宅配便などで送ってもらうプロセスが必要になってしまうのです。

    また、保存期間中には保管費用が発生しますので、そのコストも注意しておかなくてはならないでしょう。

    管理の負担が大きい「証憑」の電子化について

    ここまで説明してきたように、証憑は長期にわたって保存する義務が課せられています。そして、その保管に伴う負担は非常に大きなものになっています。

    6-1. 「電子帳簿保存法」によって加速した電子化

    大きな負担を軽減する目的で、「電子帳簿保存法」が定められました。

    この法律によって、今までは紙のままで保存することが義務付けられていた証憑を、スキャナで読みとった「電子データ」の形式で保存することができるようになったのです。


    「電子帳簿保存法」は、令和3年度税制改正、令和5年度税制改正と、頻繁に改正されており、その内容は、主として保存要件の簡便化や効率化です。つまり、より実務に沿った運用ができるように、法律のほうが変わっているのです。

    6-2. スキャナ保存の要件

    それでは、電子化するうえで重要な「スキャナ保存」の要件について見ていきましょう。

    スキャナ本体は、200dpiの解像度でカラー画像による読み取りが可能であるということが条件となっており、一般的に市販されているスキャナであれば、まずこの要件を満たすはずです。

    さらには、スマートフォンやデジタルカメラで撮影された画像でも「スキャナ」の要件を満たすことになっていますので、スマートフォン連動のアプリなどを使って証憑を電子化することも可能なのです。

    一方で、保存する証憑の真実性を担保するために「タイムスタンプ」もしくは電磁的な記録を行ったことが確認できるような「日時記録」が必要になります。


    また、検索についても、取引年月日、取引金額、取引先から証憑を特定することができるようにしておかなくてはなりません。そして、それを参照できるよう、企業はディスプレイ・プリンタなどを備え付けて可視性を持たせておかなくてはなりません。

    証憑の保管は変わりつつある

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    前述した「電子帳簿保存法」によって、証憑の保管に必要だった部屋や倉庫は不要になり、証憑が経年劣化するリスクもなくなり、盗難などの安全面でのリスクも大幅に軽減されました。

    さらに、令和3年度税制改正により、令和3年(2021年)までは、この保存方法を選択するには事前に税務署長の承認を受ける必要がありましたが、令和4年(2022年)1月1日以降は、その承認も不要になりました

    ※出典:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」(PDF)


    このように、大幅に簡便化された証憑の保管ですが、1つだけ、経理の実務の場面では負荷が増えた点があります。

    7-1. 証憑の電子化は大きな負荷に

    負荷が増えた点は、証憑を電子化するという作業そのものです。

    例えば、ある取引について、証憑を電子化する場合、1つの取引に5枚の証憑があり、1枚の証憑をスキャンするのに30秒かかるとすると、それだけで、150秒の時間が発生します。


    実際には、取引と証憑を結びつけるために「証憑」と「会計伝票」を一緒に電子化することが多いはずです。そうなると、さらに時間は多く掛かってしまうでしょう。

    この1取引150秒の時間について、月間1,000の取引がある会社で行う場合には、それだけで150,000秒、つまり42時間の工数が発生することになります。

    今までは紙保存だったためファイルに証憑を差し込んでおくだけで済んでいた作業が、別途「スキャナ保存」という作業が入ることによって相応の工数が追加で発生するようになる、ということは注意しなければならないポイントでしょう。

    7-2. 証憑の電子化による負荷に、どう対応すべきか

    こういった追加作業への対応としては、まず「今まで紙の証憑の整理や保管のために要していた時間を電子化の時間に充当する」といった方法が考えられます。

    紙での保存に比べて、工数は増えることが予想されるものの、社内の人材をそのまま活用できるという点で、最も簡便な方法といえるかもしれません。


    もうひとつの対応として、電子化の専門人材を採用する、もしくは専門業者にアウトソースするという方法も考えられます。

    電子化は、スピードと正確性が求められる作業ですので、「手が空いている人が対応する」などというよりも「専任の一人」が行ったほうが精度にバラツキも少なく、工数も少なくて済むのです。

    大企業では、「スキャンセンター」といった部門を設けて、膨大な数の証憑類を専門人材によって効率的に電子化しているところも多くあります。

    また、「そこまで証憑の数は多くない」、「社内の人材で行うと時間がかかりすぎる」、もしくは「正確性に不安がある」といった場合に、専門業者へアウトソーシングしている企業も増えてきています。

    経理のアウトソーシングならパーソルワークスデザインへ

    証憑の管理業務はミスが許されないため、経理担当者にとって大きな負担となります。そこで、業務効率化を図るためにアウトソーシングを活用すると、業務品質を維持しながら経理担当者の作業時間を削減することができます。

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