電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法とは、国税関係の帳簿や書類を電子データとして保存することを定めた法律です。1998年7月に施行されて以来、時代の変化に応じて改正を重ねてきており、直近では、2022年1月に改正されています。
以前の電子帳簿保存法と比較して、大きく変更された点は以下の通りです。
変更点 | 改正前 | 改正後 |
---|---|---|
事前承認制度 | 国税関係帳簿の書類を電子データ保存、もしくはスキャナ保存するためには、税務署への事前申請・承認が必要 | 税務署への事前申請・承認が不要 |
検索機能要件 | 帳簿書類の電子データや電子取引記録については、複数項目を掛け合わせて複雑な検索機能が必須 | 検索要件は「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3つのみ |
タイムスタンプ要件 | スキャナ保存時のタイムスタンプの付与期間は受領してから3営業日以内 | タイムスタンプの付与期限は最長約2ヵ月と概ね7営業日以内となり、訂正や削除履歴が残ったり訂正や削除ができなかったりするクラウドサービスを利用する場合には、省略することも可能 |
ペナルティ | 電子取引データ保存やスキャナ保存の際に隠ぺいや偽装などがあった場合には、35%の重加算税が発生 | 電子取引データ保存やスキャナ保存の際に隠ぺいや偽装などがあった場合には、35%+10%の重加算税が発生 |
適正事務処理 | 帳簿書類のスキャナ保存は、タイムスタンプが付与されてから記録事項をチェックして、原本とスキャンデータを確認 | 適正事務処理そのものが廃止 |
電子取引による電子データ保存 | 電子データとして受け取った場合、紙に印刷して保存することが可能 | 電子データとして受け取った場合、電子データのまま保存することが義務化 |
こうして比較すると、多くの項目が緩和されたことが分かります。では、なぜこうした変化が生じたのでしょうか? それには、「2025年の崖」問題を前に、多くの企業でDX推進が求められていることが要因として挙げられます。
「2025年の崖」問題とは「DX レポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」で取り上げられた内容であり、企業がDXを推進しなかった場合、2025年以降に年間で最大12兆円の経済損失が発生するという深刻な問題のことです。
「2025年の崖」問題の影響もあり、多くの企業で管理体制の変更やDX推進が急がれるため、今回の改正によって電子取引データ保存やスキャナ保存の際に隠ぺいや偽装などがあった場合、ペナルティが厳しくなっています。
また、納品書や請求書などを電子データとして受け取った場合、紙に印刷して保存するのではなく電子データのまま保存することが義務付けられています。2022年の法改正にて義務化されていましたが、2年間の宥恕(猶予)期間を経て2024年1月より完全義務化となっているため注意しておきましょう。
電子帳簿保存法では、電子保存の形式が「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3種類に分かれています。それぞれの意味や対象となる書類は以下の通りです。
「電子帳簿等保存」:電子的に作成した帳簿や書類をそのまま電子データとして保存すること
取引関係書類 | 注文書・見積書・契約書・領収書・請求書・納品書など |
「スキャナ保存」:紙の書類をスマートフォンやスキャナなどで読み取って保存すること
電子書類 | 注文書・見積書・契約書・領収書・請求書・納品書など |
請求書の概要、保存期間や記載項目について
請求書とは、仕事の報酬やサービスを利用した際に発生した料金を期日までに支払ってもらうための書類です。
請求書の発行は義務付けられているわけではありません。しかし、請求書を発行することで取引を行ったという証明ができます。
未然にトラブルを防ぐことにもつながるため、多くの企業は請求書を発行しています。請求書に記載する項目は以下の通りです。
- 請求書を発行する自社の情報
- 取引を行った日付
- 取引内容
- 取引金額(小計・消費税・合計)
- 請求書を発行する取引先の情報
請求書には保存期間が設けられており、一般的には個人事業主が5年、法人は7年です。紙も電子データも、同じルールが適用されます。
なお、個人事業主であっても年間の売り上げが1,000万円を超えている場合には消費税課税事業者となるので、保存期間は7年となります。また、法人で欠損金の繰越控除を適用している場合には10年となりますので、注意しましょう。
取引先から受け取る請求書のパターン別対応方法
取引先から請求書を受け取った場合、紙のパターンと電子データのパターンがあります。上述の通り、電子データに関しては紙ではなく電子データでの保存が義務付けられていますが、紙で発行された場合どのような対処になるのか、それぞれの対応方法について解説します。
パターン(1)紙の請求書を受け取った場合の対応方法
取引先から紙で受け取った請求書については、次の対応方法があります。
- 紙のまま保存する
- コピー機やスマートフォンでスキャンしてから電子データとして保存する(スキャナ保存)
紙で受領した請求書は、会計処理が終了したらファイリングして保管してかまいません。多くの企業で従来から実践している方法だと思います。
もう一方の「スキャナ保存」については、一定の要件を満たす必要がありますが、電子データとしてシステム上にアップロードし保管することができます。
日頃から馴染みのある機器を用いて行うため、ハードルが低く、すぐにでも実行できます。電子データ化しやすくするために、専用のシステムを導入している企業も少なくありません。
※電子データ化について詳しく解説しておりますので、併せてご覧ください
パターン(2)電子データの請求書を受け取った場合の対応方法
パターン(2)電子データの請求書を受け取った場合の対応方法
PDFなど電子データで受け取った場合、電子データのまま受け取った請求書をシステム上にアップロードして保管します。
以前は、電子データを紙に出力して保管することが可能でしたが、2024年1月からは電子データを紙に出力して保存することはできなくなったので、注意しましょう。なお、電子データのまま保存する際は、電子帳簿保存法における「真実性の確保」「可視性の確保」の要件を満たしておく必要があります。要件の詳細については後述いたします。
自社で請求書を発行した際の控えの保存方法
自社で請求書を発行した際には、控えを保存しなければいけません。控えの保存方法は、請求書を受け取ったときと同様に、紙もしくは電子データの2つのパターンがあります。
紙で発行した場合
- 紙のまま保存する
- コピー機やスマートフォンでスキャンしてから電子データとして保存する(スキャナ保存)
電子データで発行した場合
- 電子データのまま保存する
上述しましたが、請求書等を電子データで発行した場合には、電子取引データの保存要件を満たしたうえで電子データのまま保存しなければなりません。2023年12月31日までの宥恕期間が終わり、2024年1月以降は完全義務化されています。
なお、2023年10月にはインボイス制度が始まり、仕入税額控除を受けるうえで請求書控えの作成と保存義務となったので、注意しましょう。
請求書を電子データで保存する場合の注意点
請求書を電子データで保存するにあたって、「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つの要件が定められています。
詳しい内容は以下の通りです。
真実性の確保 |
|
可視性の確保 |
|
これらの内容を満たす必要があるので、注意しましょう。
請求書の取り扱いや経理業務についてお悩みならパーソルビジネスプロセスデザインへ
本記事では、電子帳簿保存法の基礎知識や請求書を受け取った場合の対処方法・請求書を電子データで保存する場合の注意点などについて解説しました。
電子帳簿保存法の改正により、電子取引による請求書は電子データとして保存する必要があります。また2023年10月以降、インボイス制度が始まり、仕入税額控除を受けるうえで請求書控えの作成と保存義務が発生していますので、必ず覚えておきましょう。
自分たちだけで紙の請求書を電子データとして保存できるか不安に感じているのであれば、弊社パーソルビジネスプロセスデザインにお任せください。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、経理業務アウトソーシングを提供しています。そのため、弊社に依頼することで経理業務におけるプロが紙の請求書の電子データ化や、各種申込書のスキャニングをサポートします。
その他にも、証憑のシステム入力業務や仕分けの処理・消し込み業務など、BPO専業50年のノウハウや実績を活用して、さまざまな業務をアウトソーシングすることが可能です。
「人件費を削減したい」「業務クオリティを向上させたい」などの課題をお持ちの企業様は、お気軽にご相談ください。