二重派遣の定義と原因とは|発覚した際の罰則や対処方法まで解説

二重派遣の定義と原因とは|発覚した際の罰則や対処方法まで解説

人材不足は多くの会社が抱える問題の一つです。仕事を円滑に進めるためにも、派遣スタッフの導入を検討されている方も多いでしょう。

しかし、派遣スタッフの扱い方を誤ると、二重派遣となる可能性があります。

二重派遣とは、派遣元から提供された派遣スタッフを別の現場に派遣させる行為のことです。二重派遣は違法であり、発覚すると罰則が待ち構えています。

本記事では、二重派遣の定義や具体例、対策方法を解説します。二重派遣の概要を理解して、コンプライアンス違反リスクを下げましょう。

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目次

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    二重派遣の定義

    二重派遣の定義

    二重派遣は、派遣元から供給された派遣スタッフを別の企業や現場に再派遣させる違法行為のことです。

    派遣の考え方は元々、派遣スタッフと雇用関係を結ぶ派遣元の企業が人材不足の派遣先に労働力を提供することです。( 労働者派遣法第二条一項

    その際、派遣先には派遣スタッフへの指揮命令権が発生する一方、雇用関係は結んでいないため、別の派遣先に引き渡すと二重派遣となります。

    二重派遣は、職業安定法や労働基準法の観点でも禁止されています。

    他の事業者が用意した雇用関係のない労働者を派遣先の指揮命令下で別の企業で労働させる
    派遣先が二重派遣で仲介手数料を受け取り、中抜きをする

    二重派遣に該当する具体例を紹介

    二重派遣に該当する具体例を紹介

    二重派遣の定義を理解しても、具体的にイメージできない方も多いのではないでしょうか。

    本章では、二重派遣に該当する具体例を2つ紹介します。

    • 雇用契約外の環境で派遣スタッフを働かせる
    • 派遣スタッフを関連会社に出向させる

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    派遣契約外の環境で派遣スタッフを働かせる

    派遣スタッフを雇用契約外の環境で労働させると「二重派遣」扱いとなります。

    (該当例)

    1. A社が派遣スタッフをB社に派遣
    2. B社が、プロジェクトの一部を外部に委託するために、C社に派遣スタッフを派遣する

    このように、本来の派遣先であったB社がC社に派遣スタッフを送り込んだ時点で、二重派遣となります。


    派遣スタッフを関連会社に出向させる

    自社の関連会社に派遣スタッフを出向させる行為も、二重派遣となります。関連会社への出向は契約書に定められていないためです。

    (例)

    1. A社が派遣スタッフをB社に派遣
    2. B社が業務の一部をグループ内のC社で処理する必要があると判明
    3. 派遣スタッフに業務を遂行してもらうために、C社に「出向」

    契約上では、B社が指示出しの権限を持ちますが、実際にはC社の業務指示を受けてはたらくため二重派遣の扱いになります。


    二重派遣が禁止されている理由

    二重派遣が禁止されている理由

    次に、二重派遣が法律で禁止されている3つの理由を解説します。

    • 契約時の業務内容や労働条件が遵守されなくなる
    • 雇用責任の所在が不明確になる
    • 派遣スタッフが不利益を受ける場合がある

    契約時の業務内容や労働条件が遵守されなくなる

    二重派遣が発生すると、派遣先との契約内容や労働条件の遵守が難しくなります。

    二重派遣先の業務内容は契約に含まれておらず、本来必要のない労働を強いられるおそれがあるためです。想定される違法業務には、以下の例が挙げられます。

    • 契約外の業務を強要される
    • 勤務時間・休憩時間などが守られない
    • 報酬に合わない業務内容になる
    • 契約書に明記されていない危険作業を命じられる
    • 福利厚生が適用されなくなる

    雇用責任の所在が不明確になる

    二重派遣が発生すると、元々の契約とは異なる勤務地や指揮命令者となるため、派遣スタッフの雇用責任所在が不明確になります。

    雇用責任が不明確になると、労働者の権利が曖昧となる可能性も否定できません。

    たとえば、二重派遣先で事故が発生してしまった場合、責任の所在が曖昧だと以下の主張となります。

    A社(派遣元)の主張 現場の安全管理はC社の責任
    B社(契約上の派遣先)の主張 雇用主であるA社の責任
    C社(二重派遣先)の主張 研修・教育はB社の責任

    雇用責任が不明確になると、トラブルが発生した際、責任の押し付け合いが発生してしまい、労働者の治療費や休業補償の遅延に発展するおそれがあります。


    派遣スタッフが不利益を受ける場合がある

    二重派遣の結果、通常の契約と異なる業務内容や労働環境となるため、派遣スタッフが不利益を受ける場合があります。

    たとえば、二重派遣が発生すると仲介手数料を引かれてしまうなどの不利益を、派遣スタッフが被ります。

    (例)派遣スタッフが時給1,500円分の労働を8時間はたらいた場合

    • 通常の給与:1,500円×8時間 = 12,000円
    • 二重派遣の給与:1,000円×8時間 = 8,000円

    ※500円/時の給与を仲介手数料として中抜き


    上記例の場合、本来支払われる4,000円分の給与が中抜きされるため、派遣スタッフ側の負担は大きくなります。


    二重派遣が発覚した際の罰則

    二重派遣が発覚した際の罰則

    二重派遣は法律違反の行為となるため、発覚した場合は罰則が科されます。

    ここでは、二重派遣が発覚した際の罰則を法律ごとに解説します。

    • 労働基準法の罰則
    • 職業安定法の罰則

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    労働基準法の罰則

    労働基準法6条 により、二重派遣による仲介手数料の中抜きが罰則の対象となります。

    第六条

    何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

    引用: 労働基準法 | e-Gov 法令検索


    二重派遣に違反すると、 労働基準法118条 により1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が、派遣先と二重派遣先の企業に課されます。

    なお、二重派遣先が二重派遣の存在を認識していない場合は、刑罰の対象となりません。


    職業安定法の罰則

    職業安定法44条 により、厚生労働大臣から認可のない事業者が労働者供給事業を実施してしまうと刑罰の対象になります。

    第四十四条

    何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。

    引用: 職業安定法| e-Gov 法令検索


    こちらも原則として二重派遣を実施していた派遣先と二重派遣先が罰則の対象となり、 職業安定法64条 により1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が課されます。

    二重派遣だと認識しておらず派遣スタッフを受け入れていた場合は、故意ではないと判断され刑罰の対象外となります。

    なお、二重派遣として労働していた派遣スタッフは、当然刑罰の対象ではありません。労働環境が二重派遣だと気づいた場合は、雇用関係のある派遣元に相談しましょう。


    二重派遣が発生する原因

    二重派遣が発生する原因

    二重派遣は法律で違法と定められているため、コンプライアンス違反のリスクを下げるためにも、防止策を打たなければいけません。

    まずは、二重派遣が発生する原因を押さえましょう。

    • 二重派遣に対する知識が不足している
    • 人材不足による弊害を受けている
    • 違法と知りながら契約せざるを得ない事情が存在する

    二重派遣に対する知識が不足している

    そもそも二重派遣の知識がなく、知らない間に発生してしまうケースが考えられます。

    派遣契約の締結内容が複雑になると、派遣先の企業が適切に理解できず、派遣スタッフの対応を間違えてしまうおそれがあるためです。

    コスト優先による認識不足 コスト削減のため、派遣先企業が再委託先での派遣スタッフ利用していた
    労働法令の知識不足 派遣法に関する教育を受けておらず、再委託先での指揮命令が二重派遣に該当すると知らなかった
    再委託に対する知識不足 「派遣スタッフをそのまま委託先の現場に配置すれば効率的」と考えている

    人材不足による弊害を受けている

    以下の状況下で、関連会社に応援に行かせた結果、二重派遣となるケースも考えられます。

    緊急性の高い場面 急いで問題を解決するために違法と知りながら、バレなければ問題ないと考えていた
    仲介手数料が目的 人材不足を解消させる口実で仲介手数料をもらうために、二重派遣だと知りながら契約を結んでしまう
    人材の管理不足 管理不足の結果、派遣スタッフだと知らずに人材不足の場所に配置してしまう

    人材不足の解消は緊急度の高い事案ですが、法律違反を起こしてしまうと元も子もありません。

    派遣スタッフを別の場所へ出向させる前に、雇用関係上問題ないか適切に理解しておく必要があります。


    違法と知りながら契約せざるを得ない事情が存在する

    取引会社との力関係により、違法と知りながら契約せざるを得ない事情が存在します。

    親会社として強要してしまうケース 自社が人材不足なため、下請けやグループ会社に圧力をかけて、派遣スタッフを派遣させる
    子会社として断れないケース 取引会社との関係性を壊さないために違法と知りながら派遣スタッフを派遣させる

    親会社、子会社の事情は関係なく、二重派遣は法律違反で処罰の対象となります。

    とくにグループ会社の場合、一部の会社がコンプライアンス違反となるだけでブランドイメージ、売上の低下に発展する可能性が高いため、後述する方法で対策しましょう。


    二重派遣を発生させないための対策方法

    二重派遣を発生させないための対策方法

    最後に、二重派遣を発生させないための対策方法を3つ紹介します。

    • 指揮命令者が契約書と一致しているか確認する
    • 契約内容と現状の業務に差異がないか確認する
    • 派遣スタッフへの聞き取り調査を定期的に実施する

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    指揮命令者が契約書と一致しているか確認する

    派遣スタッフの指揮命令者が、契約書と一致しているか確認しましょう。実際の業務指示者と契約書上の指揮命令者が異なると、二重派遣と判断される可能性があります。

    業務内容の変更により指揮命令者が変わる場合でも、契約書を書き換える必要があります。

    また、派遣先の企業は二重派遣を発生させないためにも、自社の従業員に対して教育を事前に実施しておくのがおすすめです。


    契約内容と現状の業務に差異がないか確認する

    現在、勤務している派遣スタッフの業務内容が、契約で締結させた業務と差異が発生していないか再度確認しましょう。

    契約書で取り交わされた業務内容外の作業を実施していた場合、二重派遣先になる可能性があるためです。

    指揮命令者以外の社員からの依頼で契約外の業務を担当してしまうと、責任の所在が不明確になります。

    契約に準じた業務内容か、指揮命令者以外の社員から業務を受けていないか、今一度確認しておきましょう。


    派遣スタッフへの聞き取り調査を定期的に実施する

    社内の対応だけでなく、派遣スタッフからも聞き取り調査を実施して、二重派遣が発生していないかを確認しましょう。

    目の届かない範囲で、二重派遣になる可能性が考えられるためです。

    派遣スタッフへ定期的に契約時と異なった担当者から指示を受けたり、業務内容が変わったりしていないかを確認しましょう。

    ただ、注意点として、派遣スタッフに不利益がないよう、回答情報は慎重に取り扱いましょう。

    回答結果により派遣スタッフに不利益が発生すると、今後正しく回答してもらえなくなったり、従業員同士や企業同士のトラブルに発展する可能性があります。


    派遣契約を守りコンプライアンス違反リスクを下げよう

    派遣契約を守りコンプライアンス違反リスクを下げよう

    二重派遣とは、派遣元から受け入れた派遣スタッフを自社の社員として、別の企業や現場に派遣させる違法行為のことです。

    派遣スタッフの契約だけでなく社員への教育も徹底して、二重派遣を発生させないために十分注意しましょう。

    なお、パーソルビジネスプロセスデザインでは、業務に合わせた幅広いBPOの提供をしております。ご興味のある方は、以下のページを併せてご覧ください。

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